超次元ゲイムネプテューヌ Origins Unknown 作:シモツキ
守りの策、信次元のイストワールと神次元のイストワールに入れ替わってもらう事で、
ただ、上手くいったのはあくまで、原天界帰を避ける事が出来たというだけ。元々保険である守りの策の、更に保険としてネプテューヌが潜んでくれているとはいえ、イストワールが危機である事には変わりない。
イストワールは、危険を承知でわたし達に協力をしてくれた。だから今度は…わたし達が、助ける番。
「間違いありません。この辺りで、反応が完全に消えています」
「となるとやっぱり、ここで何かしらの妨害を行ったか、探知出来ない状態になった…その場から消えたかの二択になるわね」
画面上に表示されたプラネテューヌの地図、その一部を指差すネプギア。それにわたしは…イストワール捜索の為に奔走し、今はプラネタワーに集合しているわたし達は頷き合う。
「妨害っつっても、ねぷのーとのページの事を知らなきゃ、そんな事はしないよな?」
「んで、妨害してるだけで信次元の…下界、だったよな。…にいるんだったら、インカムが通じる可能性があるよな。けど、インカムも全く通じない訳だ」
「となると、現実的なのは後者…天界、或いは別次元に飛んだって方になるわね。向こうにはクロワールもいるんだし」
一拍の後、うずめ、ウィード、アイエフと言葉を繋いでいく。今の状況、そこから考えられる推測を、全員で共有していく。
「でもさ、天界か別次元…って言っても、これ全然二択じゃないよね?次元なんてたっくさんあるんだから、手掛かりがなくちゃ見つけるのは……」
「いいや、そもそも向こうの目的である原天界帰は、イストワールによって、イストワールを介して信次元全体に干渉するものだ。だからその性質上、別次元に移動している可能性は低いと言える。…勿論、どこかの次元に拠点があって、まずはそこに…って動いている可能性も、否定はし切れないが…」
「でも、それならまずは天界に行ってみた方が良いと思うです!一番あり得そうなところから、ですっ!」
どこかに飛んだ可能性の方が高い。だけど、どこかってどこ?…大きいネプテューヌの口にした、わたしも気掛かりだった事に対し、くろめが冷静に答えてくれる。そして、コンパが握った拳をぐっと上げて…再び、わたし達は首肯する。
「そうと決まれば善は急げね。皆は各国への連絡と、念の為インカムでの通信をもう暫く試して頂戴。ネプギア、わたし達で先行するわよ!」
「はい!…っと、そうだ。天界と下界じゃ普通の通信は出来ないので、こっちで想定外の事が起きた時の為にうずめさん達には一旦残っていてほしいんですけど……」
「おう、任せとけ!なんかあったら俺達で対応してやるよ」
「必要とあれば、オレ達で天界への扉を開いて情報を伝えに行くよ。ふっ…先輩を連絡役にだなんて、ぎあっちも大胆な判断をするようになったね」
「あ、いや、それはその……」
「気にしなくて大丈夫だよ、ネプギア!今のはくろめの冗談…正にブラックジョークだから!」
「えぇ、判断としては妥当なものですしね。…セイツさん、ネプギアさん、宜しくお願いします
( ̄^ ̄)ゞ」
神次元からの交信という形での、イストワールの言葉。それをわたしとネプギアは受けて、パーティーの皆に今一度「こっちはお願い」と伝えて、シェアクリスタルの間へと向かう。…部屋を出る直前、大きいネプテューヌの返しを受けたくろめの何とも言えない…「くろめの冗談、正にブラックジョーク!」…と言われたくろめの、本当に何とも言えない感じの顔が見えたりもしたけど…まあ、これは別にいいわね、うん。
「…ネプギア。わたしはネプテューヌの事だから、きっと持ち堪えてくれている、何とかわたし達が来るのを信じて耐えてくれているって思うわ」
「わたしも、そう思います」
「…だけど、今もネプテューヌは本調子じゃない。わたし達の考える、『いつものネプテューヌ』には、まだ一歩届かない状態だとも思っているわ」
「…そう、ですね」
「だから…頼むわよ、ネプギア」
一度足を止め、隣のネプギアへと振り向き目を合わせて、わたしは言う。ネプギアからの、無言の首肯を受け取って…再びわたし達はシェアクリスタルの間へと急ぐ。
最悪の状態は脱したように見える今のネプテューヌだけど、心が万全では、きっとない。普通の戦闘なら、今のネプテューヌでも何ら心配する事はないと思うけど…いざという時、ギリギリのギリギリで勝利を掴めるかどうかっていう時に、心の状態は響いてくる。だからこそ、それは頭に置いておかなくちゃいけない。いざって時、そういう時に…わたしとネプギアで、何とかしなくちゃいけない。
(…でも…もしかすると、わたしも同じかもしれないわね…)
思い出すのは、さっき…この事態となる前に、神次元のイストワールから言われた言葉。姉であるイストワールのおかげで、わたしはわたしらしさを取り戻せたって思ってるけども、もし本当にイリゼの事が頭から離れないなら…わたしもネプテューヌの事を、どうこう言えないかもしれない。そういう意味でも、ネプギアが頼りになるかもしれない。…勿論、わたしも全力を尽くすつもりだけど。
そんな風に思いながら、わたし達はシェアクリスタルの間へと着く。すぐにネプギアが、天界への扉を開いて…天界へと、踏み込む。
「お姉ちゃん、聞こえる!?お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
すぐさまわたしとネプギアは女神化し、飛び上がりながら通信を掛ける。何度か呼び掛けを行って…次の瞬間、インカム越しにネプテューヌからの声が届く。
「ネプギア…!それにセイツも…!…良かった、待っていたわ……!」
「ネプテューヌ、イストワールは無事!?今いる場所は分かる!?」
「いーすんは、無事よ…!場所は…ぅぐ…!…何とか、伝えてみせるわ…!」
「な、何とか?何とかって……」
質問からは少しズレた、ネプテューヌの回答。思わず困惑してしまったわたしだけど、すぐに「分からないし説明も出来ないから、口頭以外の方法で伝える」という意味だと気付く。そしてわたしとネプギアが気を張る中…『目印』が、現れる。
「…あ…セイツさん、あそこです!」
反射的に振り向き、ネプギアの指差した方向を見るわたし。指し示された方向の、遥か先にあったのは…一面空に包まれた天界の、更に上空へと打ち出されるエクスブレイド。
アイコンタクトを交わし、見えた方向へと急加速。ネプテューヌがどんなサイズでエクスブレイドを作ったのかが分からないから、正確な距離は分からないけど、少なくとも近くないのは事実。それに……
「…セイツさん、さっきのお姉ちゃんの声は……」
「えぇ。急ぐわよ…!」
プロセッサに装填した圧縮シェアエナジーを一斉に解放。翼は勿論、腕や脚も上手く角度を調整する事で、可能な限り多くの圧縮シェアエナジーを前進への推力に活用する。アサルトなブーストが如く、一気に見えた場所へと向かっていく。そしてわたしは、ネプテューヌを…アルテューヌを、視界に捉える。
「お姉ちゃん!」
「アル、テューヌッ!」
初めに放たれたのは、M.P.B.Lによるネプギアの光芒。わたしはネプギアの照射位置よりも踏み込んで、圧縮シェアエナジー弾頭を撃ち込む。斬り結んでいたネプテューヌはネプギアの声を受けて飛び退き…アルテューヌは、光芒を斬り裂く。続くわたしの攻撃も、ひらりと飛び上がる事によって難なく躱す。
「…はぁ…はぁ…ギリギリセーフ、ね……」
「お、お姉ちゃん…!?」
「相当消耗してるわね…それに、アルテューヌのあの姿は……」
避けられはしたけど、端からこれで決まるだなんて思っていない。飛び退いたネプテューヌの下へネプギアが降り立つと、ネプテューヌは地面に大太刀を突き立て、それを支えに荒い呼吸を繰り返す。
対するアルテューヌは涼しい顔。わたし達がここまで来た事も大して驚いていない様子で…その装いは、前に天界で一線交えた時とは違う。
「思ったよりも早いわね。けど、『わたし』の一対一の戦いに横槍を入れるだなんて、随分な事をしてくれるじゃない。お詫びにプリンを要求するわ」
「へ?…今プリン…?」
「向こうのペースに乗せられちゃ駄目よネプギア。イストワールを攫っておいて横槍?そっちこそ、随分と図々しい事を言ってくれるじゃない」
話しながら、わたしはイストワールを背にするような位置へと移動する。それと共に左剣を肩に掛け、右剣を軽くアルテューヌへと向ける。
気配からして、恐らく今のアルテューヌの姿は、皆にとってのリバースフォームやネクストフォーム、ビヨンドフォームに当たるもの。ネプテューヌがネクストフォームじゃないのは、使わない…使えない理由があるのか、それとももう活動限界まで使い切った後なのか。前者ならネプギアのビヨンドフォームにも支障が出る可能性があるし、後者なら…アルテューヌの真の実力は、ネクストフォームのネプテューヌでも劣勢になる程って事になる。どちらにせよ、わたし達にとっては良くない状況。
「お姉ちゃん、一旦下がって息を整えて。その間は、わたしとセイツさんで何とかするから」
「……っ…悪いわね、ネプギア…二人共、アルテューヌと斬り結ぶ時は気を付けて頂戴…!侵食されるような感覚があるわ…!」
「侵食…天界では広範囲に広げていた力を、自分に収束させたって事かしらね。もしそうなら…うん、納得よ」
広範囲に広げていた、広範囲に蔓延させていた力を自分という一点に集めているなら、ネプテューヌに対して大きく優位に立っていたのも納得というもの。
けど、だからってやる事は変わらない。アルテューヌは敵であり、話し合いで解決出来ないのなら打倒するまで。まだ時間が掛かるだろうとはいえ、各国から皆が来てくれるのは間違いないんだから、逃げられないよう落ち着いて立ち回れば……
「それと…セイツ…!イリゼは…そこに、いるわ…!」
そう、思っていた時だった。思考がアルテューヌへ向いていた中での、ネプテューヌの言葉。その言葉で、離れた場所にある結晶体へ引き付けられる、わたしの視線。そして、結晶体を…その内側に見えるものをはっきりと認識した瞬間……わたしの意識は、完全に切り替わった。
「セイツさん、支援します。斬り結ぶのは不味いって事なら、ヒットアンドアウェイで……」
「…先に謝っておくわ、ネプギア。今、わたしは冷静さを欠こうとしているわ…」
恐らくわたしの一歩後ろ、斜め後ろへと来たネプギアに、振り返る事なくわたしは言う。ふつふつと湧き上がる感情を、ギリギリのところで抑えながら、二本の得物を握り締める。
「相手は二人、向こうのわたしが回復すれば三人…まんまと嵌められた以上、せめて深手の一つでも負わせておきたいと思っていたけど…流石に分が悪くなってきたわね。貴女といーすんを見つけた時、千載一遇のチャンスだと思って安易に仕掛けたのは失敗だったわ」
「ふん、初めから貴女は致命的な失敗をしてるのよ。…イリゼを嵌めて、イリゼをこんな目に遭わせて、わたしの国民までを危機に晒した時点でねぇッ!」
余裕を崩さないアルテューヌに対し、言葉を叩き付ける。叩き付けると共に地面を蹴って…真正面から、わたしは仕掛ける。
連結剣を、直列合体させて大剣状態へ。その状態で振り上げ、会話しつつ装填し直した圧縮シェアエナジーを再び解放。怒りと共に、激情と共に、わたしは両手で持った得物を振り抜く。
「真巓解放・貞淑ッ!」
「凄まじい速さ…ねッ!」
爆ぜるような加速によって一気に肉薄し、斬撃一閃。振り抜いた刃はアルテューヌを捉え掛け…けれど寸前のところで躱される。
避けたアルテューヌは宙で跳ね返るように戻ってきて、そのアルテューヌもまた大太刀を振るう。対するわたしは連結剣の合体を解除し、短くした状態で片方の斬っ先をアルテューヌへ向ける。圧縮シェアエナジー弾頭を撃ち込んで、迫るアルテューヌを迎え撃つ。
「その姿、その力、一体なんだか知らないけど……」
不可視のシェアエナジー弾頭。けれどこれがどういうものなのかはもうアルテューヌも理解しているようで、余裕を持って避けられる。でも、それでいい。最初からわたしは、避けさせるつもりで撃ったんだから。不可視且つ炸裂するシェアエナジー弾は、こと『大きく避けさせる』という点に関しては抜群の強さを有している。そして、アルテューヌの回避によって開いた距離を…わたしは、詰める。
「わたしは貴女を、許しはしないッ!」
突き出す左剣。大太刀の斬撃で打ち払われた瞬間、触れた一瞬、天界の街、その教会での戦いの中で感じたのと同じ感覚が走り…けどそんな事は無視して、右剣を振るう。身を捩る事でアルテューヌが躱せば、こっちは捻りに加えて回転もする事によって回し蹴りを叩き込む。急接近からの三連撃は、狙い通りアルテューヌに届き……
(…いや、違う…!これは……ッ!)
遠心力を乗せた蹴りは、アルテューヌの腕を打った…ように見えた。そう思えた。でも、上手く捉えた感覚がない。これは、ダメージを与えた時の感覚じゃない。
そう思った直後、逆に蹴りを放たれる。反撃を受ける直前、わたしは気付く。わたしの打ち込んだ蹴撃は、寸前で肘打ちを合わされ相殺されてしまったのだと。
「ぐぅぅ…ッ!」
「別に許されようとは思っていないわ。ただわたしは、邪魔をするなら捩じ伏せるだけよ」
跳ね飛ばされる中、意趣返しとばかりにアルテューヌが肉薄してくる。迫るアルテューヌに対してわたしは二振りを同時に振るうも、アルテューヌは上昇で両方避ける。回避しながら大太刀を引き、わたしへ向けて突きの構えを……見せたところで、光弾の連打がアルテューヌを襲う。
「も、もうっ!さっき言ってた『頼むわよ』って、こういう事じゃないですよねぇ!?」
素早くアルテューヌが飛び退く中、わたしの前に躍り出たネプギアはそのままフルオート射撃でアルテューヌを追い立ててくれる。
それと共に、背中を向けたまま発されるネプギアの声。怒ったようなネプギアの詰問は、全く以ってその通り。その通りだとは思うけど…ここで完全に切り替えられる程、割り切れる程…わたしの中の激情は、緩くはない。
「…本当に、申し訳ないって思ってるわ。わたしが悪いんだから、支援のミスで何度誤射しようと、今回は軽い調子で流すって約束するわ。だから…ほんと、頼りにさせてもらうわよ…ッ!」
「あ、ちょっ…!?…わたしだって、色々思うところはあるんですからね…!」
なんて迷惑な仲間だろうか。誤射しても大丈夫だなんて言ったって、気遣いと気配りに溢れるネプギアが「ならいいか」と思う訳ない事も分かってる。
だとしても、今のわたしにこの激情を抑え切る術はない。激情を最大限力に変えて、鋭さに変えてアルテューヌへとぶつける他ない。むしろ、これでもわたしは冷静な方。幸か不幸か、少し前にも仮想空間でイリゼが危機に陥って、心が内側から切り裂かれるような激情に駆られた…そしてその結果、手痛い反撃と指摘を受けるという経験をしていたからこそ、激情に燃えながらもわたしの頭はきちんと働いてくれている。
わたしはネプギアの肩に手を置いて、頼んで…下がるアルテューヌを追う。後ろから聞こえるネプギアの言葉に、自分の大人気なさと、色んな思いを抱えながらも冷静に戦おうとしてるネプギアの立派さを痛感しながら、連結剣を双刃刀の形態に変える。
「衝動的ね。ネプギアの方がずっと大人じゃない」
「そうね。感情的になりまくってるわたしより、ずっと周りに心配をかけてるネプテューヌより、志がどうしようもなく低くて下らない貴女より…今ここにいる女神の中じゃ、誰よりもねッ!」
今の位置なら、わたしがネプギアの射撃に対する盾になると判断したのか、アルテューヌは振り出した斬撃を大太刀で受け止める。そのまま斬り結ぶ形になり、またあの感覚が得物越しに流れ込む。
「下らない、ですって…?」
「そうよ、下らないわ…ッ!そんな低い、誇れもしない志で戦おうだなんて、それでよく女神を名乗れるものだわッ!」
「言ってくれるじゃない…だけど、分かっているの?そういう言葉は、勝てなきゃどれだけ言っても虚しいだけだって!」
現段階…前の戦いから戻った時点では大丈夫だったとはいえ、この力、この感覚は長く浴びていて良いようなものじゃない。…なんて事は、今は二の次。初めっから短期決戦のつもりで仕掛けているんだから、違和感も、危険も、全て頭から投げ捨て力を込める。
けど、押し合いに勝利したのはアルテューヌ。斬り結んだ状態からわたしは押し返され、大太刀から離した左手での貫手が迫る。辛うじてそれをわたしは回避…し切れず頬を軽く裂かれるけど、怯まずわたしは得物を振るう。踏み込み、回し、流れるように立て続けに斬る。
「独特な動きね…けど、それなら……ッ!」
(ちっ、切り替えが早い…!)
上下に、互い違いに刃を持つ双刃刀形態だからこそ出来る、他の武器には…大概の近接武装には出来ない動き。更にわたしは連結剣の強み…分離と合体を自在に組み合わせられる事を活かし、斬撃での変幻さを加速させる。イリゼが武器そのものを切り替えるように、わたしは武器の状態を切り替える事で、相手を翻弄し調子を崩す。その狙いは、その目論見は、少しの間上手くいき…けれど、アルテューヌは近距離でのぶつかり合いから、力と速度を活かした一撃離脱に戦い方を変えた事で、大きく効果が薄れてしまう。
普通なら、わたしもまた女神である以上、力には力で、機動性にも機動性で対抗する事で簡単に一撃離脱を許したりはしない。だけど…今のアルテューヌは、パワーもスピードも、明確にわたしを上回っている。今のままだと、どうにもならない。
「セイツさん、挟み込みます!上昇して下さい!」
「……!助かるわ、ネプギア…!」
急接近からの刈り取るような横斬りを、双剣状態で剣を交差させて受ける。その勢いで弾かれたわたしが体勢を立て直している中、駆け抜け反転したアルテューヌはすぐさま次の攻撃に移ろうとして…そのアルテューヌを、直上から射撃が襲う。
反射的に、わたしは突撃。ネプギアは射撃をばら撒く事で、アルテューヌの動きを邪魔する。あくまで行動妨害のみを狙っているからこそ、今のアルテューヌにも通用している的確な射撃で、言われた通りにわたしは上昇。ネプギアならば絶妙なタイミングで射撃を止め、わたしが突っ込めるようにしてくれると信じて……けどその時、突撃する中で、わたしの視界にあるものが映る。そしてわたしは、加速を増して…アルテューヌの下を、すり抜ける。
「え……!?」
「何を…って、まさか……!」
聞こえる動揺の声に申し訳ないと思いながらも、わたしはフルスピードで駆ける。続けてアルテューヌの、わたしの狙いに気付いたような声も聞こえたけど、既に距離は開いている。追い付かせは、しない。
わたしの中で燃える激情。許せないという、燃え盛る思い。でも、何より強い思いは違う。そんな事より、こんな怒りより…イリゼへの思いの方が、ずっと大事。だからこそわたしは、アルテューヌよりもイリゼを優先させる。結果的にはネプギア諸共アルテューヌを出し抜く形になったチャンスを利用し…イリゼの眠る結晶体へと、全力で肉薄。
(今助けるわ…!今すぐに、これで……ッ!)
結晶体が、恐らく封印系統の技によるもの。けど、封印だろうと拘束だろうと、壊せばいいだけ。斬り裂けばいいだけ。
初めと同じように、連結剣を大剣状態へ切り替える。最初と同じように、圧縮シェアエナジーの解放を行って最終加速を掛ける。そして結晶体をはったと見据え、得物を振り抜──
「やめとけやめとけ、そいつは封印で状態を維持してるんだ。無理に解放しようとすれば、衝撃でどうなるか分かったもんじゃないぜ?」
「……──ッ!!?」
その時だった。これまでずっと傍観に徹していた、黙って見ていたクロワールが、おもむろに口を開いたのは。わたしに対する、警告を口にしたのは。
ここでイリゼを奪還されるのは困るという事なのか、どうなるか分からない…というのが周囲にも危険が及ぶという事なのか、はたまたもっと戦闘を眺めていたいというだけなのか。その理由は、今の言葉だけでは分からない。分からないけど…わたしの斬撃を逸らさせるには、十分過ぎる内容だった。
「クロワール、貴女…ッ!」
「セイツさんッ!」
ここまで黙っていた、ここぞというタイミングで明かしてきたクロワールへの憤慨と、もしクロワールの言う通りなら私は取り返しのつかない事をしかけていた…結果的にはクロワールがイリゼを守ってくれたとも言える状況へのやるせない思いが、混ぜこぜになってわたしの中で氾濫する。イリゼの封じられた結晶体を背にして浮かぶクロワールを、そんな感情のままにわたしは睨み…次の瞬間、ネプギアの言葉で我に返る。本能的に、剣を掲げて…その剣諸共、アルテューヌの突進攻撃で跳ね飛ばされる。
(ふざけないで、ふざけないで頂戴…!騙して、傷付けて、おまけにそのまま封印までして…イリゼを、わたしの妹を、どれだけ踏み躙るつもりよアルテューヌ……ッ!)
宙で翼を広げて立て直す。一度我に返った事で、クロワールの言葉に対する理解が進み、アルテューヌへの怒りは更に増す。満身創痍のイリゼへ対するこの仕打ちに、全身の血が沸騰しそうな位に憤怒の感情が湧き上がる。
それとは対照的に、冷えていく思考。冷めた…後から思えば逆に、感情的ではない一方で「落ち着いている」とも言えないような思考の中で、ある案が浮かび上がり…今度こそ、アルテューヌへと向けて突進。
「ネプギア!わたしに考えがあるわ!仕掛けるのを手伝って頂戴!」
「考え…今度こそ、ちゃんと仕掛けて下さいね…!」
「分かってる!」
さっきは途中で挟撃を投げた癖に…とネプギアが思っているなら、それもまたご尤も。だけど今度は、途中で投げたりはしない。そう心を固めながら、わたしは連結剣を双剣状態に戻して突っ込む。吹っ飛んだわたしをカバーしようとしたのか、近距離戦を行っていたネプギアは、下がりながらまたアルテューヌへと射撃を掛ける。
接近するわたしに対し、アルテューヌはその場で迎え討つ…事なく、エクスブレイドを放ちつつ後退。わざわざわたしはインカムを使わず、大声でアルテューヌと接近戦中のネプギアへ「考えがある」と言ったんだから、下がる選択を取るのは当然の事。
「はッ、逃げるなんて情けないわね!ネプテューヌなら、堂々と迎え討ってたところよ!」
「安い挑発ね。だったらそっちこそ、二人で来るのは卑怯なんじゃないかしら?」
「二人?ネプテューヌもいるから三人よ!勘違いしないでほしいわね!」
「それは反論になってませんよ…!?」
射撃を交わしながら放たれるエクスブレイドを、躱して、或いは斬り裂いて進む。向こうからも仕掛けてくる時ならともかく、速度で勝るアルテューヌに下がられると、ネプギアの支援があっても中々追い付けない。だからこその挑発。言葉の駆け引き。
「ふん、まあいいわ!逃げるなら逃げなさい!その先にあるのは、皆の到着で八方塞がりになる末路だけよ!」
「あら、それはわたしがこのまま貴女達に勝てない場合でしょ?」
「逃げてるだけの貴女に、勝ち目なんてないわッ!」
「そうね、それはその通りよ。…逃げてるだけなら、ねッ!」
声を張り上げるわたしとは対照的に、アルテューヌはまだ余裕の面持ち。向こうも何か策があるのか、その為に今は引いているだけなのか。…それに答えるかのように、これまで左に右に、上に下にと回避を繰り返していたアルテューヌが、一転して仕掛けてくる。
(来た、これで…ッ!)
迫るアルテューヌを前に、わたしは大きくブレーキング。アルテューヌの事を待ち構え…けれど次の瞬間、アルテューヌは斜めに上昇しわたしを飛び越える。
一瞬、訳が分からなかった。一体何をしているのか、と困惑した。けど、すぐに気付く。…アルテューヌに、わたしは意趣返しをされたんだって。
「……っ、やられた…!」
「悪いけど、あまり貴女には興味がないの。少なくとも、ここにいる人達の中ではね…ッ!」
わたしを躱し、アルテューヌが向かっていく先。そこにいるのは、後退し体力回復に務めていたネプテューヌ。ネプギアからの射撃を機敏な機動で躱していき…ネプテューヌもまた、飛び立つ。
「せめて重傷の一つでも負ってもらうわよ?でなきゃ、この姿まで見せた意味がないもの…ッ!」
「舐めないで頂戴…!やられるのは、貴女の方よ…貴女は、わたしが…ッ!」
互いに加速をしながら、二人は激突。大太刀同士がぶつかり合い…ネプテューヌが弾かれる。下がるネプテューヌに対し、すぐさまアルテューヌは踏み込もうとし、そこをネプギアの照射が薙ぎ払う。回避行動を取ったアルテューヌの背後を、追い掛けていたわたしが取る。
「悪くない連携ね。…これも、貴女がわたしから奪ったものよ」
「それは……」
「ふん、散々逃げた上で今度は僻み?本っ当に、同じネプテューヌとは思えない位情けないのねッ!」
振り返る事なくわたしの斬撃をアルテューヌは躱す。牽制程度の攻撃を返し、即座にアルテューヌは離れていく。わたし、ネプギア、そしてネプテューヌと視線を走らせ、続けてネプテューヌへ言葉をぶつける。
返す言葉に詰まるネプテューヌから代わるように、わたしもアルテューヌへぶつけ返す。するとアルテューヌは視線をわたしの方へ移し…睨む。
「セイツ貴女、いつになく煽るわね…気持ちはわたしも分かるけど……」
「煽ってないわ、事実を述べているだけよッ!それにそもそも、奪うって何よ!?だったらアルテューヌは、ネプテューヌが記憶を取り戻していたらそっくりそのまま人格が上書きでもされていた訳!?」
「それは……」
事実を述べているだけ…わざとわたしはそう言って、更にぶつける。浮かんだ疑問を、更なる煽りとして言葉に乗せる。
結果、口籠るアルテューヌ。その反応は、まるでさっきのネプテューヌの再現で…けど、口籠もったのは一瞬だけ。
「…問題の本質は、そこじゃないわ…あった筈の過去を、取り戻せた筈の記憶を、そっちのわたしは否定した!少なくとも貴女がそんな選択を、否定をしなければ、今ここにわたしはいなかった筈だものッ!」
「否定した…そうね、貴女からすればそうかもしれない。だけどわたしは、貴女の存在そのものまで否定したつもりはないわ…!」
「そんな理屈は求めていないわ!わたしはッ!事実の話をッ!しているのよッ!」
さっきまでとは対照的に、アルテューヌはネプテューヌへの近接戦を執拗に仕掛ける。その意図は分かる。近距離戦ならネプギアも射撃での支援がし辛いし、わたしの中にある案も、ネプテューヌが狙われている状況じゃ上手くいかない。
ただ、でも…恐らくアルテューヌは、ただそれだけの為にネプテューヌを狙っている訳じゃない。だって明らかに、声音が違う。確かにアルテューヌの言った通り、ネプテューヌへの関心、向けている感情は、わたしへ対するものより遥かに強い。
「だったら貴女だって、今の信次元の在り方を、皆の紡いだ関係を、結果的にそうなっただけだって否定したでしょうッ!?貴女が、ネプテューヌが記憶を持ったネプテューヌだったら、今あるものはなかったかもしれない…!そしてそうしようとしている貴女が正しいだなんて、わたしは絶対に…思わないッ!」
力でも速度でも押されながらも、ネプテューヌは引かない。攻撃は大太刀の腹を滑らせる事で、機動戦ではアルテューヌの方から攻めてくる前提のカウンター戦法を取る事で、劣勢になりながらも喰らい付く。
勿論わたしも、それをただ眺めるなんて事はしない。横槍を入れる形でアルテューヌの攻撃を潰し、勢いを殺して、ネプテューヌの反撃に繋げる。
「貴女は、そう言うでしょうね…ッ!でなきゃ、貴女の選択も、記憶を捨てた貴女の在り方も、全て自ら否定する事になるんだから…ッ!」
「その言葉、そっくりそのままお返しするわ…ッ!」
わたしの横槍で勢いが削がれたアルテューヌとネプテューヌの、互いの袈裟懸けがぶつかり合う。斬撃と共に、言葉もぶつけ合う。激突するネプテューヌの瞳に浮かぶのは、怒りと決意。対するアルテューヌの瞳に浮かぶのも、怒りと決意と……そしてもう一つ、もう一つ何かが浮かんでいるようにも見えた。
だけど、それが何なのかは分からない。いや…理解しようとは、思わなかった。それよりも、わたしにはやる事があるんだから。
「漸く隙を晒したわねッ!」
「ち……ッ!」
ぶつかりながら止まるというチャンスを逃さず、アルテューヌを側面から蹴り付ける。咄嗟に大太刀から片手を離し、その手で受け止めようとしたアルテューヌだったけど、わたしの蹴りとネプテューヌの斬撃、それを左右の手で、それも同時に受け止めるなんて出来る筈もなく、わたし達はアルテューヌを押し切る。ネプテューヌは大太刀を振り抜き、わたしは即座に追撃を掛ける。
「アルテューヌ。貴女はさっき、問題の本質はそこじゃない…って言って答えるのを避けていたわね。わざと避けたのかどうかは知らないけど…そっちが答える気ないって言うなら、代わりにわたしが言ってやるわ!」
「何を…ッ!」
「ある女神の話よッ!散々身勝手な事して、信じてくれた人皆を裏切って、その癖責任転嫁までした女神崩れが記憶を失って、後に取り戻したらどうなったか分かる?…記憶を取り戻した結果、元通りよッ!結局女神崩れは女神崩れ、クズはどうしたってクズって事なのよッ!」
「…それが、なんだって言うのよ…そんな女神とわたしを一緒にしないで頂戴ッ!貴女の怒りを、義憤を…わたしに押し付けるなッ!」
目一杯の力を込めて、立て直すアルテューヌに剣を叩き付ける。打ち付け、斬り付け、更に突っ込む。燃える怒りに自ら燃料を、きっといつまでもわたしの中で消える事のない憤怒をくべて、感情を、激情を爆発させる。
その連撃を受ける中で、アルテューヌもまた声を荒げる。目に、声に怒りを満たし、わたしの攻撃に対して防御ではなく攻撃で返す。打ち返し、切り返し、アルテューヌもまた突っ込んでくる。斬り結びながら、互いに頭がぶつかりそうになる程接近し…アルテューヌの方から、わたしとわたしの剣を弾く。
「どこが違うって言うのよッ!もう今は、今の信次元は…貴女の居場所じゃないッ!」
「……ッ!だからわたしはッ、わたしはぁああああぁぁぁぁッ!!」
弾かれたのは左剣。左半身が押された状態。そこからわたしは立て直す事なく、圧縮シェアエナジーの解放で無理矢理動く。半ば半身になったまま、肉薄を掛け右剣を振り抜く。それと共に言い放つ。アルテューヌを…過去のネプテューヌを、完全否定する為の言葉を。
その言葉で、アルテューヌは目を見開く。見開き、一瞬絶句し…感情がそのまま音になったかのような声で、叫ぶ。わたしの斬撃を、紙一重で躱し…叫びと共に、大太刀を突き出す。そして、わたしの斬撃は空を斬り……アルテューヌの刺突が、わたしを貫く。
「ぐぅぅぅぅ…ッ!」
「セイツッ!」
「セイツさんッ!」
「はッ、はッ…違いが分からないなら、見ていなさい…わたしはその女神とも、そっちのわたしとも……」
肩口を穿ち、そのまま貫通する大太刀。焼けるような、抉れるような激痛が迸り、一瞬痛みが頭の中を埋め尽くす。ネプテューヌとネプギアの声が聞こえ、怒号と感情剥き出しの刺突で軽く息の上がったアルテューヌは真っ直ぐにわたしを見やりながら、ならば見ていろと言ってくる。そしてアルテューヌは、わたしから大太刀を引き抜こうとし……
「──ふ、ははっ…あははははははははッ!!やっと、やっと…やっと捕まえたわよ、アルテューヌぅぅ…ッ!」
『……──ッ!?』
わたしは、笑う。歓喜に。達成感に。漸くアルテューヌが、全力でわたしへ仕掛けてきてくれた…おかげで上手くいった事に。
「まさか、ずっとこれを狙って…ぐ、ぁ…ッ!?」
「捕まえたって、言ったでしょう…?逃す訳…ないでしょうが……ッ!」
驚愕に再び目を見開いたアルテューヌは、すぐさま退こうとする。けどそれよりも早くわたしは右剣を手放し、貫手を放つ。わたしの左肩を貫いた大太刀と同じように、アルテューヌの肩を穿掌で突き刺す。
これが、これこそが、わたしの考えていた一手。大太刀より遥かに浅く、貫くまでには至らなかったけど…互いに突き刺している今なら、そう簡単には抜け出せない。抜け出させない。
「貴女といい、オリジンハートといい…姉妹揃って、どういう思考してるのよ……ッ!」
「貴女みたいなのがいなければ、こういう事はせずに済んだのよ…貴女がいなければ、わたしも…イリゼも……ッ!」
信じられないものを見るような目をするアルテューヌに、誰のせいだと睨み返す。離れようとするアルテューヌの右腕を、何とか動かした左手で掴み、更に右手を喰い込ませる。
「……ッ、ぅ…!」
「逃がさないって言ったでしょ…ッ!それとも、根比べでもしてみる…?貴女は武器で貫いている、わたしは手で突き刺しただけ…はッ、貴女の方が圧倒的に有利よ…ッ!わたしは頑張ってもせいぜいこのまま貫くだけだけど、貴女は頑張ればわたしを両断出来るかもしれないわよ…ッ!だったら逃げる理由なんてないわよねぇ…ッ!?さぁ、斬り裂いてみなさいよ、斬り落としてみなさいよ…ッ!貴女にそれが、出来るならね……ッ!」
「……っ…ほんと、姉妹揃って無茶苦茶ね…!姉妹揃って、こんなにも…こんなにも……っ!」
痛みと激情と大きな怪我による身体の反応とで、異様な高揚感がわたしを包む。逃しはしない。このまま根比べしたいのなら受けて立つ。そして斬り裂いてこようとするなら、それが出来るというならしてみればいい。そんな思考が、そのまま言葉になって流れ出す。
そんなわたしの眼前で、アルテューヌは表情を歪める。それは痛みによるものか、わたしに恐れ慄いたのか、それとも別の意味があるのか。…知らない、そんな事はどうでもいい。わたしはただ、今はただ、この敵を追い詰めるまで。
そして、逃げられないと判断したのか、アルテューヌが作り出すのはエクスブレイド。通常の大剣サイズのエクスブレイドが精製され、その斬っ先がわたしに向けられ…けれど次の瞬間、エクスブレイドを大太刀が斬り裂く。
「無茶し過ぎよ、セイツ…!」
「く……ッ!」
断ち斬ったのは、当然ネプテューヌ。そのままネプテューヌはアルテューヌの背後に回り込み、後ろからアルテューヌの両腕を掴む。
「こんなもの、イリゼの苦しみに比べれば些細なものよ…それに、無茶も勝機と上手くやれる自信があれば無茶じゃないわ…!」
「そんな理論が通用するのはそれこそ貴女かイリゼ位よ…!…でも、これで終わりよ、アルテューヌ…!」
前からわたしが、後ろからはネプテューヌがアルテューヌを捕縛する。こうなればスピードは完全に機能しない。パワーも肩を突き刺された状態で、後ろから両腕を掴まれれば、本来の力なんか発揮出来ない。つまり…これで、決まり。
「……!…ネプテューヌ」
「えぇ。…今、皆から通信が入ったわ。もうすぐノワール達も来る。いい加減、諦めなさい」
更に、そこでインカムから聞こえてきた声。わたしはアルテューヌと頷き合う。皆が到着すれば、本当に決まり。もう、状況が覆る事はない。
「…ふ、ふふ…また、またね…またなのね……」
出来る事ならこのまま押さえ付けて、完全に無力化したいところ。けどこの状況、互いに突き刺し合った状況じゃわたしも下手には動けない。
その中で、不意にアルテューヌは笑い出す。声に反して全く嬉しくも面白そうでもない顔で、低い笑い声を漏らし…また、わたしを睨む。
「いつもそうよ、ずっとそうよ…!こうやっていつも、貴女達には…そっちのわたしには、仲間が現れる…!そうね、そうでしょうね…!そうやって仲良しこよしでやってきたんだものね…!決めるべきものを捨てて、それまでのものに全部背を向けて、そうして築いたんだものね…ッ!…だけど、わたしは認めない…!わたしにだって、築きたいものがあった…!貫きたいものも、守りたいものも…!だから、わたしは…ッ!」
紡がれる言葉で、わたしは気付く。それはわたしを睨んでいるようで、わたしじゃないんだと。わたしではなく、ネプテューヌ…もう一人の自分への感情だったんだと。
深い感情を帯びた言葉に、ネプテューヌの表情が揺らぐ。けど…次の瞬間、アルテューヌから力が溢れ出す。大太刀を通じて流れ込んでくるものも、その勢いと密度を増す。
「……ッ!ネプテューヌ、わたしじゃ無理よ…!アルテューヌを仕留めて頂戴…!」
「仕留めるって…下手に重傷を負わせたら、イリゼの解放が……」
「アルテューヌだって女神よ、そう簡単には死なないわ…ッ!」
「今の貴女が言うと、説得力が凄まじいわね…!」
何が起こるか分からない。だから、何が起こってもおかしくない。ここまできて、後少しで皆も到着するって状況で逃げられるなんて以ての外。だからわたしはネプテューヌに言う。ネプテューヌも一度は躊躇ったけど、もう一度わたしが言った事で納得をしてくれる。
アイコンタクトを取り、タイミングを合わせる。次の瞬間、ネプテューヌは腕を離し、わたしは両腕に力を込める。
顕現させた大太刀を振り上げるネプテューヌ。見据える先は、アルテューヌの背中。そしてネプテューヌは、アルテューヌ目掛けて振り下ろし……
──けれどその一撃は、阻まれる。アルテューヌを斬る寸前、割って入った飛翔体が…そこから発振されたビームの刃が、ネプテューヌの斬撃を受け止める。
『…………ぇ?』
突如現れた、割って入った存在。斬撃を邪魔した、四基の飛翔体。それにわたしも、アルテューヌも茫然とする。
理由は当然、全くの予想外の形で止められたから。だけど、それだけじゃない。
「くッ、ぅ…!そんな、どうして…ッ!」
わたし達が茫然とする中、更に別の飛翔体が飛んでくる。八基の飛翔体が、ネプテューヌを追い払うように突撃する。
それを、ネプテューヌは下がって躱す。飛翔体はさっきの四基の様にビーム刃を発振、或いは別の方法で攻撃…といった事は一切せず、ただただネプテューヌを追い払う。更にその隙に、ネプテューヌが離れてわたしも動揺から抜け切らない隙を突いて、アルテューヌは脚を上げる。踏み付けるように、わたしの胴を蹴り飛ばし…強引に、わたしの貫手と大太刀を引き抜く。
迸る激痛。本当に肩から先が引き千切れるんじゃないかと思う程の痛み。でも、それでも…それ以上に、わたしの頭は目の前で起きている事で一杯だった。ネプテューヌの斬撃を、わたし達を阻んだ端末。わたしは…わたし達は、その存在に見覚えがある。その存在を知っている。そう、それは……
「どういう事なの、ネプギア…っ!」
大型四基と小型八基。計十二基の、飛翔体。遠隔操作された端末。それ等はアルテューヌが離れたところで、同じ方向へと飛んでいく。そしてその先、端末が戻っていった先にいたのは──ビヨンドフォームを解放した、ネプギアだった。
今回のパロディ解説
・アサルトなブースト
ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONに登場する要素の一つ、アサルトブーストの事。ただ、今回セイツがやったのは長距離移動に向いた加速ではないので、オーバードブーストの方が近いですね。
・「セイツさん、挟み込みます!上昇して下さい!」
機動戦士ガンダムUCに登場するキャラの一人、リディ・マーセナスの台詞の一つのパロディ。この時の彼の乗機はリゼルですが…リゼル、良いですよね。私の好きな要素の多くが詰まっている機体です。
・「止めとけ止めとけ、あいつ〜〜してるんだ。〜〜」
ジョジョの奇妙な冒険 ダイアモンドは砕けないに登場するキャラの一人、吉良の同僚の代名詞的な台詞の事。吉良の同僚、名無しのモブなのにインパクトも知名度もかなりのものですよね。