超次元ゲイムネプテューヌ Origins Unknown   作:シモツキ

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第四十五話 これからも、また

 正体不明の、天界の街。その街の消失によって、わたし達は一時離脱を余儀なくされた。単に街が消えていくだけならいいにしても、街の中に問答無用で消していく力が、街以外だろうと消してしまえる何かがあるなら、留まるのは危険過ぎるというものだから。

 幸いというかなんというか、消失のおかげでそのまま脱出出来るようになっていたから、わたし達は飛んで街から離脱した。モンスターの妨害もなく、結果ネプテューヌ以外は想定していた戦闘が何一つなく終わってしまい…そして、街を離れたわたし達は気付いた。異質な、正に異空間の様な…巨大な、歪みの存在に。

 

「という訳で、プラネタワーに戻って参りました!このシリーズではお馴染み、今作でももう何度もやってる会議パートだよ!」

「えぇ…いきなりなんだよねぷっち……」

「プリン専門店、いきなり!ねぷーちです!」

「はいはーい!オススメのプリンは何ー?」

「お勧めはねぷのプリン、略してねぷりんかな!」

「…うん、まぁ…うん。…悪い、皆…ここはスルーするべき場面だったんだな……」

 

 早速はっちゃけるネプテューヌのノリに、うずめは片手で頭を押さえる。確かにその通り、その通りではあるけど…ネプテューヌのノリを完全にスルーするっていうのも中々に困難なもの。大概は誰かが堪らず突っ込んじゃう訳で…今回はそれが、うずめだっただけの事。だから責めはしないわ、うずめ…。

…因みに、ネプテューヌの発言に乗っかったのは、大きいネプテューヌ…ではなく、なんとラムちゃん。そのノリの良さにネプテューヌは喜び、先を越された大きいネプテューヌは悔しがり…そしてブランは、片手どころか両手で頭を抱えていた。

 

「…おねえちゃん、だいじょうぶ…?(おろおろ)」

「大丈夫、大丈夫よ…。これも一つの成長…そう、他国から学ぶ事も大事だものね…」

「これは相当堪えてるわね…けど、自分だったらって思うと、そうなる気持ちは分かるわ……」

「お、お姉ちゃん…?アタシはそんな、今のタイミングで乗ったりはしないよ…?」

「ふっ…その点うちは何の心配もないわね。なんたってイリゼはしっかり突っ込む子だもの。……イリゼ…」

「うわぁ!?いきなり落ち込まないで!?」

 

 しゅん…と小さくなるわたしを見て、大きいネプテューヌが突っ込んでくれる。…まあ、冗談なんだけどね。多分返しの内容的に、大きいネプテューヌもそれを察した上で『突っ込む』という形で乗ってくれたんだと思うけどね。…大丈夫。イリゼはわたしが、わたし達が必ず助け出す。だから…大丈夫。

 

「えぇと、皆さん…そろそろもう少し、細かい話を聞かせて頂いても…?(ーー;)」

「あ、うん。ねぷりんことねぷのプリンは、わたしが『ねぷの』って書いたプリンで……」

「そっちについて細かく聞きたい訳ではありません!( *`ω´)」

 

 びしぃ!と突っ込むイストワールの言葉に、ネプテューヌは満足そうな顔をしつつ後頭部を掻く。ただまあ、ふざけてていい状況でもないっていうのも事実。だからわたし達は気持ちを切り替え、街の外で待機していたイストワール…それに大きいネプテューヌへと、街の中で起きた消失についての事を話す。

 街突入前の人海戦術では、パーティーを始めとする皆に手伝ってもらったけど、だからって全員が集まるとなると、意思疎通…というか、意見を求めるだけでも大分手間になる事は明白(何せ、メンバーを絞ってもこの通り脱線する訳だし)。だから取り敢えずは代表としてイストワールと大きいネプテューヌに参加してもらう事になった。で、最初は街の外で何があったか、外では消失がどんな感じに起きていたかをわたし達が聞いて、次にわたし達が街の中であった事を話して…今に至る。…まあ、ざっくりした事は街の外で待機してくれていた皆と合流した時点で話したんだけど、ね。

 

「詰まるところ、わたくし達が見たのは消失の様子と状態だけで、原因についてはさっぱり分かりませんわ。これが罠か、別の狙いがあるのか、それ以前にアルテューヌ達が意図したものなのか…わたくし達の知る限りでは、『何が起きたか』しか分からないのが現状ですわね」

「それはわたし達も同じかな。あんまりにも何も起きないから、暇を持て余した神々の遊びごっこをしようと思ったら、変な感覚がして、いきなり街がちょっとずつ見えるようになって、かと思えば今度は消え始めて…って感じでさー」

「なんでよりにもよってアタシ達不在の時にその遊びをしようとしてるんですか…っと、そうだ。ネプギアの事は、見ませんでしたか?」

「わたしは見ていませんね。今回は大所帯でしたし、近くにいたのであれば誰かしら気付くでしょうから、予め用意していた方法で離脱したと考える方が良いかもしれません。…そして、もう一つ。皆さんが脱出してきた時点でもお伝えしましたが、街が見えるようになったのとほぼ同じタイミングで、あの歪みも観測されました(´-ω-`)」

 

 歪みの存在、それにイストワールが触れた事で、会議室内の空気が一段と引き締まる。

 初めはまだ小さい…というか、小規模だったらしい空間の歪み。それは少しずつ範囲が広がっていったようで、脱出したわたし達が視認した時にはもう、中々の規模にまでなっていた。天界自体は今いる下界と同じように、どこまで続いているのか分からないから、それと比べればまだ大した事はないけど、それはあくまで今現在の話。正体不明で、尚且つ少しずつとはいえ拡大を続けているんだから、ここから先どうなるかなんて、全く以って分からない。

 

「…あれ、何なんだろね。天界は実はゲームとかプログラムの空間で、何かの不具合でバグっちゃってるとか、そういう事ではないでしょ?」

「仮想空間形成装置じゃないんだから、流石にそれはないだろうね。ただ、それについては…ねぷっち達、何か思うところがあるんじゃないかい?」

「……よく分かったね、くろめ」

 

 首を傾げる大きいネプテューヌの発言を、くろめが否定し、くろめは視線をネプテューヌ達守護女神の四人へ移す。それを受けた四人は顔を見合わせて…こくりと頷く。

 

「思うところがあるっていうか、感じるものがあったっていうか…」

「ただ別に、はっきりした事が言える訳ではありませんわ。上手く言語化出来ない、感覚を刺激するものがあった…と言えばいいのかしら」

「わたしもそんな感じよ。皆は何も感じなかった?」

「んーん、なんにもなかったよ?」

「わたしも…」

「二人に同じく、わたしもこれといって感じるものはなかったわ。…わたし達は感じなくて、ネプテューヌ達は感じた…守護女神か否か、っていうのはあくまで立場の違いだから、関係ないでしょうし…ネクストフォームが関わってるとか?」

 

 かもしれない、と四人はわたしの返しに首肯してくれる。あの歪みとネクストフォームにどんな関係があるのか…それも気になるところだけど、まだ考えるには情報が少な過ぎて、答えなんて出しようがない。だから一旦そっちの方向での思考は保留にして…もう一つ、今度はくろめへ問う。

 

「くろめは、貴女はどう?貴女も何か、気付いた事はない?」

「…それは、嘗てオレ達が創り出した負のシェアの城…それを包むように広がっていた『空間の歪み』と、今回のものとが似ていると言いたいのかな?」

「そういや確かにそうだな…ん?じゃあ、同じ方法で何とかする事が出来るんじゃねぇのか?」

 

 わたしはそれを、あの歪みを見た時、思い出していた。同じように『歪み』と評した、あの存在の事を。もしもあれと同じ…とまでは言わずとも、似た存在であるなら、それに対処した経験と、それを生み出した経験の両方が役に立つんじゃないか…そう思ってわたしは訊いた。…けど、くろめは首を横に振る。わたしの視線にも、うずめの問いにも、否定で返す。

 

「確かにこの二つは似ている。まるっきり違う…という事はないだろう。けど、嘗て空間の歪みを解除した皆なら分かっていると思うが、あれは複数の次元に渡る仕掛けを、次元同士が近付いているとでも言うべき状態を利用した歪みだ。だが今のところ、そのような状態は起こっていない…そうだろう?イストワール」

「それは…はい。現在観測している範囲では、そのような事はありません(´・ω・)」

「であれば、やはり違う筈だ。実際に色々仕組んだからこそ分かる。あれは、あの状況だからこそ成り立ったもので、似たような状態を作れば…なんていう、簡単なものじゃない」

 

 はっきりとした否定、その口振りから感じる説得力。今回の歪みに関してはまだ視認しただけで、分析は殆どしていないけど、くろめがここまで言い切るなら、やっぱりその線はないんだと思う。

 

「ねぇねぇ、あそこの中にネプギアっているの?」

「他のところに、かくれてたりしない…?」

「そう、そこの問題…というか、疑問もあるわよね。ここまでは前の時と同じように、あれが外と中とを隔てる壁みたいに話してきたけど、あの歪みに『内側』なんてものがあるかどうかも分からないし、仮にあってもアルテューヌ達がいるっていう確証はない…調べてみる必要はあるけど、その事は念頭に置いておくべきじゃないかしら」

「同感よ。二人共、良い事に気付いたわね」

 

 よく気付いた、とブランが頭を撫でれば、ロムちゃんとラムちゃんは胸を張りつつ心地良さそうな顔をする。その光景に、わたしや皆も癒され…だったら、とネプテューヌが声を上げる。

 

「やっぱりさ、ここは一度確かめてみるべきじゃない?今言った、内側があるかどうかっていうのもそうだし…皆も、思ってるでしょ?あれは多分、いつまでも放っておいていいようなものじゃないって」

「それが分かっていたのに、冒頭からふざけてメタ発言をしていたんですのね…」

「いやぁ、ボケは出来る時にしておかなきゃでしょ?戦闘回でもないのに、一話丸々真面目な話だけなんて、読者の皆も望んでないだろうし」

「読者の方々をふざける口実にするのは止めなさいっての。…貴女の意見には賛成だけどね」

 

 腕を組みつつのノワールの言葉に、わたし達も頷いて見せる。それから視線は、再びネプテューヌへと集まる。

 ネプテューヌの言いたい事は分かる。ネプテューヌの考えも、それをするのに一番適しているのは、ネプテューヌだって事も。

 

「だから、一回試してみようよ。解除の方法を探すとか、どういうものなのか細かく調べてみる前に…一回、強行突破出来るかどうかを」

「まずは一番単純な方法で、力技でどうにかならないか試してみる…そういうの好きだぜ、ねぷっち」

「やはり力技…!力技は全てを解決する…!…なーんて、ね。もし上手くいかなくても、それはそれで空間の歪みの時と同じようにちゃんとした手段が必要なんだって分かる訳だし、分析の準備もしておけば反応も観測出来る訳だし、まずは一歩目としてわたしのネクストフォームで……」

 

 

 

 

「──そいつは、止めておいた方がいいぜ」

 

 万物を斬り裂く、形ないものすら破壊してしまえる、ネクストパープルの力。それはきっと、空間の歪みであっても通用する。単に大火力をぶつけたり、下手に頭を捻ってみるよりは遥かに可能性があるし、ネクストパープルの力でも通用しないなら、力技じゃどうにもならないって事の証明になる。ネプテューヌの言う通り、試す上での初手としてはこれがベスト。

 だからわたしは、賛成するつもりで聞いていた。多分皆も、そうだと思う。そんな中で、ネプテューヌは言い切ろうとして……その声は、遮られる。わたしのものでも、皆のものでもない…この場の誰でもない声が、言葉を遮る。

 反射的に、わたし達は振り向く。声のした方へ首を振る。そして、そこにいたのは……

 

「く…クロちゃん!?」

「よぉ、少し振りだなネプテュー…うおっ!?」

 

 まさかの存在、単身現れたクロワールに、大きいネプテューヌが仰天の声を上げる。それに対し、クロワールは見慣れた調子で声を返し…けれどクロワールが言い切る前に、わたし達は女神化。瞬時に包囲し、得物をクロワールへ突き付ける。

 

「待て待て落ち着け!女神が即実力行使は、随分な挨拶過ぎるっての!」

「問答無用で撃ち抜かなかっただけありがたいと思いなさい。…下手な事するんじゃないわよ?もしちょっとでも妙な動きをすれば、その時は本当に……」

「だから待てって!…俺はお前等と争うつもりもなきゃ、妙な事をする気もねーよ。ほら、見ての通りだ」

 

 そう言って、クロワールは両手を上げる。降参のジェスチャーを、わたし達へ見せる。

 なんだ、そういうつもりはなかったのね。それなら安心だわ。…とはならない。確かに女神がいきなり武力に訴えるのはどうかと思うけど、そもそもクロワールは明確に敵対行動をしている相手なんだから、いきなり、では決してない。

 

『…………』

「…まぁ、そういう反応になるのも当然だけどな。だからここは一つ、くろめにでも決めてもらおうじゃねぇか」

「…どうしてここでオレなんだい?」

「つれない事言うなよ。一緒に悪巧みした仲だろ?」

「オレが果たそうとした事をそう言われるのは心外だな。結局は身勝手な害悪でしかなかったとはいえ、オレなりに真剣だったんだ」

「そーだそーだ、もしこの場にウィードくんがいたら、クロちゃんキレられてたかもしれないんだからね?テキサスクローバーホールドとかされてたかもしれないからね?」

「な訳あるかよ、体格差あり過ぎて固め技なんてほぼ成立しねーだろうが…」

 

 よく分からない指摘をする大きいネプテューヌに、クロワールは半眼で突っ込む。結果、変な雰囲気になり…咳払いが、響く。

 

「…とはいえ、まるっきり嘘という訳でもないだろうね。クロワールを信用する訳じゃないが…オレの知るクロワールは、自分の楽しみの為に力を貸す事はしても、積極的に自分が矢面に立ったり、ましてや囮や陽動役を担ったりはしない筈だ。自分の身が第一という事なのか、あくまで『傍観者』として楽しみたいからなのかは分からないけど…逆に言えば、ここにこうしている時点で、少なくともアルテューヌの策略である可能性は低いという事さ」

「へっ、よく分かってるじゃねぇか。そういう事だから、話をしようじゃねぇか。平和的に、理性的によ」

 

 わざとらしく、煽るように言うクロワール。いや…わざとらしくじゃなくて、これは絶対にわざと言っている。見た目こそイストワールに似ているクロワールだけど、その小根が捻くれてる事を、わたしや神次元の皆はよく知ってるんだから。

 でも、理由はどうあれくろめは策略以外の可能性を口にした。嘗ては行動を共にしていたくろめが、その可能性を示した。だからわたし達は顔を見合わせ…女神化を解く。

 

「ふぅ…この人数の女神から一斉に詰められるのは、生きた心地がしねぇな…」

「ふん、勘違いしない事ね。わたしはくろめの言葉を信用しただけで、貴女への疑いが晴れた訳じゃないわ」

「あ、セイツがノワールみたいな事言ってる」

「そうね、私みたいな…って、誰がツンデレよ誰が!」

「いやノワール、わたしツンデレとは言ってないんだけど…」

 

 臨戦態勢は解いたけど、警戒は緩めない。あくまで「別の企み」を念頭に、取り敢えずわたし達は席に戻る。…ネプテューヌとノワールが漫才みたいなやり取りしてたけど、わたしだってツンデレじゃないわよ?

 

「…で、争うつもりも妙な事をする気もねーなら、お前は何しに来たんだよ。つか、ここまで一体どうやって来やがった」

「誰からも報告がないという事は、恐らく次元間移動を用いて直接中まで来たのでしょう。本当に厄介な…いえ、危険な能力ですね…(。-_-。)」

「ん?違ぇぞ?偶発的なものならともかく、国の中でも特に加護の強い教会…いや、ここはタワーだが…内に、狙って扉を開くのは難しいからな」

『なら、どうやって…』

「どうも何も、怒ったフリして『ネプテューヌさんはどこですか!?』…って言いながら通ったら、職員も警備員もスルーしてくれたぜ?」

「えっ…つまりこれ、わたしのせい!?」

 

 次元間移動なしでここまで素通り出来る訳がない。…そう思っていたわたし達の予想を超える、まさかの方法。それはイストワールと背格好がよく似た…それでいて髪型や肌の色は違うクロワールだからこそ出来る、悔しいけどちょっと『上手い』と思ってしまうような方法で…自分の普段の行いが付け入る隙を作り出したのだと知ったネプテューヌは、流石にショックを受けていた。

 

「おねえちゃん、どういうこと…?」

「あー…ほら、クロワールはイストワールと似てるでしょ?イストワールが爆発に巻き込まれたら、あんな感じになりそうな気がしない?」

「あっ、知ってる!バクハツしたら、まっくろになってアフロにもなっちゃうのよね!…あれ、でもアフロじゃない…」

「アルテューヌと違って、似てはいるけど一目瞭然って事と、クロワールが自分からのこのこ現れる事はないだろうっていう思い込みが、完全に仇になったわね…」

「しかし、微妙に某部長オチ感がありますわね…」

 

 考えが甘かった、とわたしは呟きながら自分の頭を軽く叩く。わたし達はクロワールの存在を知っているし、アルテューヌと違って見た瞬間クロワールだと判別出来るから思い浮かばなかったけど、クロワールを知らない人からすれば、当然見ても「クロワールだ」とは分からないし、その存在がイストワールらしい事を言えば、違和感は残るにせよイストワールなんだと誤認してしまうのは自然な事。それにくろめも言った通り、クロワールはこれまで自分から前に出るような事は殆どしてこなかったから…わたしも、皆も、無意識の内にクロワールをノーマークにしてしまっていた。もし今回、クロワールが奇襲目的で来ていたら…それを思えば、これは反省せざるを得ない。

 

「なんかもう普通に受け入れてますけど、別次元の同一人物って本当に厄介ですね…アタシ達も少し前にそれを利用した作戦をやりましたし、厄介っていうか、武器にも脅威にもなるって言うべきかもですが…」

「あれ、っていうかクロちゃんは別次元のいーすんなんだっけ?というか…止めておいた方がいいっていうのは、どういう事?わたしの力は通用しないって言いたいの?」

「逆だ逆、通用する可能性があるから止めておけって言ったんだよ」

 

 珍しくネプテューヌが話を本題に戻し、わたし達もさっきの…最初のクロワールの発言を思い出す。無駄だからなのかとネプテューヌは訊き、逆だとクロワールは返す…けど、その返答だけじゃ意味不明。ただ、それはクロワールも承知の上なのか、すぐに次の言葉を口にする。

 

「詳しくは知らねぇが、お前の力は問答無用で、とにかく対象を消しちまうってもんだろ?だから良くねぇんだ、何せあれは時空の歪み…時空間が歪んだ結果として発生してるもんだからな」

「こら、クロちゃん!そんな説明じゃ誰も理解出来ないよ!もっと分かり易く言いなさい!」

「…一応訊くが、お前はどこから理解出来てねぇんだ?」

「詳しく、の部分から」

「一番最初じゃねぇか!説明の入り口にすら立ってない時点で分からねぇなら、そりゃもうお前の頭の問題だ!」

「くーっ、結構鋭いクロちゃんの突っ込みが染みるぅ…!これこれ、この感覚も久し振りぃ…!」

 

 ぐっと拳を握り締めて突っ込みを噛み締める大きいネプテューヌに、わたし達全員が半眼を向ける。…うん、これこそスルー推奨ね…。

 

「…こほん。あれは異物じゃなくて、元々あったもんが歪んだ結果だ。んで、時間も空間も次元におけるルール、次元を成立させる根底要素の一つ…みたいなもんだ。状態が変貌しているとはいえ、なくてはならないものの一部…それを一切合切無視して消しちまったら碌な事にならねぇのは、お前等も分かるだろ?」

「前に、次元の扉や歪みに関する話をしたわね。あれと似たような感じで考えれば良いのかしら」

「そういうこった。時空の歪みに関しても、今言った解釈も、多分に俺の推測が含まれちゃいるが…下手すりゃ次元がぶっ壊れちまうかもしれないリスクを、『試しに』程度で背負うってのか?」

 

 袖に覆われた手を口元に当てつつ言うブランの返しをクロワールは肯定し、それでもやるのか、と訊いてくる。

 訪れるのは、沈黙。取り敢えず感覚でそんなリスクを背負うかと言われれば…勿論、そんな訳がない。クロワールの説明も、納得が出来るもの。だから後は、それを語るクロワール自身を信用出来るかどうかで…わたし達は、頷き合う。

 

「…助言を感謝します、クロワールさん( ̄^ ̄)」

「気にしなくていいぜ?前の時も言ったが、面白くもなきゃ見栄えもしないような形で次元が潰れてはいお終いじゃ、詰まらねーにも程があるからな」

「またまたー、ツンツンしちゃって〜。でもツンデレは、ノワールみたいにツンの時ももう少し可愛げがなくちゃ、良いツンデレにはならないんだよ?」

「そうそう私みたいに…って、誰がかれこれ八作目で大分洗練されてきてるツンデレよ誰が!」

「だからわたしそこまでは言ってないよ!?え、ノワールは何か別の声でも聞こえてるの!?旧世代型の強化人間なの!?」

「お姉ちゃんが完全にネプテューヌさんをダシにして、突っ込みっぽくボケてる…だ、大丈夫…?疲れてない…?」

 

 再び巻き起こる、ネプテューヌとノワールによる謎の漫才。しかも今度はユニの言う通り、完全にノワールがボケで、ネプテューヌが突っ込みになっていた。…本当に、この二人に何があったのかしら……。

 

「女神のわたしをボケで手玉に取るなんて、やるねノワール…。…でもさ、クロちゃん。ほんとに何のつもりなの?どういう風の吹き回しなの?」

「あぁ?だから、俺はそういう終わり方は望んじゃいない……」

「うん、けど元々いた前と違って、今回は偶々女神のわたしの発言が聞こえただけでしょ?ここにいるのは、別の理由があるから…そうでしょ?クロちゃん」

 

 そう言って、大きいネプテューヌはクロワールを見つめる。それまでは楽しそうな顔をしていた大きいネプテューヌが、ふっ…と落ち着いた、どこか冷静さも感じる表情を浮かべて、クロワールに問う。

 大きいネプテューヌが言ったように、ネプテューヌの提案を止めた事は、ここにいる…プラネタワーに来ている理由にはならない。他の理由が…本来の理由があるから、クロワールはここにいる筈で…わたし達もまた、クロワールへと視線を向ける。

 

「んー…まあ、あれだ。ぶっちゃけ、向こうに付いてるのが詰まらなくなっちまったんだよな」

『詰まらなくなった…?』

「面白くなりそうにねぇって事だ。このままじゃ面白くなりそうにねぇし、このままアルテューヌが勝っちまったら、今後の信次元もおもしれー場所にはなってくれなさそうだからな。そうなるよりは、お前等に勝ってもらう方が良い…至ってシンプルな理由だろ?」

「だから、こっちに力を貸すってか?」

 

 半信半疑。そんな面持ちでうずめが返し、クロワールは軽く笑ってみせる。その表情で、肯定を示す。

 言っている事は、分かる。クロワールらしいとも思う。そしてクロワールが力を貸してくれるなら、ありがたい。クロワールの協力を得られるという事は、つまり向こうからクロワールが抜ける事でもあって…それは、凄く大きい。

 

「うーん…怪しいなぁって言いたいところだけど、クロちゃんは現金っていうか、自分の損得で割と態度変えるイメージあるし、これは信じてもいい…のかなぁ?」

「でもでも、こんな悪いようせいみたいなのをしんじちゃってもいいの?見た目はかわいいけど」

「あとでだまされちゃいそう…かわいいけど…」

「二人共、見た目で判断するのは…ああいや、クロワールは普通に悪い事してきてるから、悪い妖精『みたいなの』じゃなくて、実際悪いのよね…けど、現状あの歪みについて一番分かってるっぽいのはクロワールだし…」

 

 腕を組んで考えるネプテューヌに続いて、女神候補生の三人もそれぞれの考えを口にする。半信半疑なのは皆同じで、そんなすぐには決められない。見回せば、くろめも思案顔をしていて…そんな中で発されたのは、大きいネプテューヌの声。

 

「…クロちゃん、それは本当の話?それが、クロちゃんの本心?」

「なんだ、信じられないってか?」

「そういう訳じゃないよ?そういう訳じゃないけど…なんか、違うよーな気がするんだよね」

「つまり、信じられないって事じゃねーか」

「あ、言われてみると確かに…じゃ、わたしは今のクロちゃんの言葉を信じられないって事で!」

「…その理由を、訊いても?」

「今さっき言ったけど、なんか違う気がするんだ。具体的にどこが、って言われると上手く言えないんだけど…」

 

 理由の説明を求めるくろめに対し、大きいネプテューヌは答える…けど、大きいネプテューヌ自身ぼんやりしているみたいで、肩を竦めて頬を掻く。…でも、根拠はぼんやりしていても、気持ちはぼんやりしていない。そんな風に、再び大きいアルテューヌはクロワールに言う。

 

「ねぇ、クロちゃん。本当の事、話してよ。一緒に色んなところを旅した仲でしょ?」

「…次元の扉を開く能力目当てで、お前に連れ回された…の間違いだろうが」

「いやぁ、それを言われると半分は否定出来ないなぁ…」

「半分?」

「連れ回したのは、事実だからね。…けど、次元の扉を開く能力目当てで…っていうのは違うよ。確かに最初は『ひゃっほう!便利な能力だぜ!』…的に考えてた部分もあるけど…仮にクロちゃんが次元の扉を開けない、ただの悪い子だったとしても、きっとわたしは連れ回してたよ。だってクロちゃんとの旅は、楽しいもん」

「お前……」

 

 次元の扉を開く能力だけが、クロワールを連れ回していた理由じゃない。そう語る大きいネプテューヌの眼差しは真っ直ぐで、その言葉にクロワールは口を噤む。一瞬、目を見開いて…けれどすぐに、鼻を鳴らす。

 

「だから、なんだってんだ。楽しいって言われた俺は、それに感謝でもすりゃいいのか?」

「もう、そんな捻くれた捉え方しなくてもいいのに…うん、でも…そっか、そうだ。わたし、分かったよ。さっきの理由が、クロちゃんの本心じゃないように思う訳が」

「ほーぅ。じゃあ、聞かせてもらおうじゃねぇか。一体俺の何が引っ掛かって──」

「だってクロちゃん、楽しそうじゃないもん。一緒に旅をしてた時の方が…悪い事考えてた時の方が、ずっと楽しそうだったもん」

「…それは…そりゃ、そうだろ。俺がお前等に協力しようってのは、詰まらなくなるのを避ける為であって、面白くなりそうだからじゃ……」

「だったら、もっと面白そうなもの、面白くなりそうな次元を探せばいいんじゃないの?それがクロちゃんには出来るでしょ?別にクロちゃんにとって、信次元は特別思い入れがある訳でもないでしょ?」

 

 核心を突く大きいネプテューヌの指摘で、再びクロワールは黙る。『ネプテューヌ』らしからぬ落ち着いた、ゆっくりと歩み寄っていくような声音で、雰囲気で、大きいネプテューヌは問いを重なる。

…いや、違うかもしれない。むしろこれは、ネプテューヌらしいのかもしれない。普段はどの次元だろうと、女神だろうと人間だろうとはっちゃけてるネプテューヌだけど、その実相手の事をよく見ている、いつも心に目を向けている事は…わたしだって、知っている。

 

「教えて、クロちゃん。クロちゃんの、本当の思いを。クロちゃんが、本当にしたいって思ってる事を」

「…俺はいつも、これまでもこれからも、自分が面白いと思うものを最優先にするだけだ。お前が何を期待してるのかは知らねぇが、俺の中に大層な理由なんかねぇよ」

「別に、大層な理由なんて求めてないよ。わたしはそんな事求めてない。クロちゃんが力を貸してくれるなら助かるし、悪い事をしようとしてるなら、これまで通りに止めるだけ。でも…期待は、してるかな。わたし…またクロちゃんと、一緒に旅をしたいから」

 

 その言葉と共に、大きいネプテューヌは笑う。にこりと、曇りのない笑みをクロワールに見せる。…わたし達は、何も言わない。多分…一番クロワールを側で見てきたのは、くろめ以上に知っているのは、大きいネプテューヌだから。

 

「…何だよ、それ…こちとら散々苦労してきたんだぞ…?お前は無鉄砲で、好奇心に忠実で、マジで後先考えなくて…その癖生存能力は高いからなんだかんだ何があっても毎回なんとかなっちまって…そのせいで俺が、一体どれだけ心臓に悪い思いしてきたか、全く分かってねぇだろ…」

「それは、その…うん、ごめんね…」

「…あの、今口を挟むのは絶対違うって事は分かっていますが…今のクロワールさんの言葉は、わたしの中で凄まじい共感が……(´∀`; )」

「うん、ごめんいーすん…ほんと、常々お世話になってます…」

 

 動揺とも違う、狼狽の声。初めてクロワールが口にする、どこか震えているようにも聞こえる言葉。感じるものがあった様子のイストワールとネプテューヌのやり取りはともかくとして…クロワールの返しに、大きいネプテューヌも申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

「ごめんじゃねぇよ、ごめんじゃねぇっての!ほんとに、お前はなんなんだよ!?あんだけ振り回しておきながら、俺との旅は楽しかっただぁ?また一緒に旅をしたいだぁ?そういうとこだぞネプテューヌ!お前はそうやって、無自覚に周りを振り回すんだよ!毎度毎度えらい事になって、予想なんざ出来なくて、滅茶苦茶な事になるんだよ!遠目に見るだけなら、その中で助けられる側なら常識に囚われない、頼れる存在なのかもしれねぇが、近くにいるやつにとっちゃ幸運と周りの協力で何とかなってるだけの、非常識女なだけなんだよ!お前、俺がいなかったら終わってた事が何度あったか分からねぇんだからな!?あー、くそッ!クソッ、クソッ!なんでお前なんかに捕まっちまったかなぁ!?お前のせいで俺は、俺は……ッ!」

「…クロちゃん…ごめん、ほんとにごめん…わたし、クロちゃんがそこまで怒ってたなんて、不満だったなんて、思いもしなかった…クロちゃんの言う通り、わたしは何度もクロちゃんに助けられてたのに…なのに、わたし…。…さっき言った事は、忘れて…そんなにも怒らせておきながら、期待なんて──」

「違ぇわ馬鹿!そういう事を言ってるんじゃねぇよ!つか、撤回するんじゃねぇッ!」

「へ…?…え、と…クロちゃん、つまりそれはどういう……」

 

 打って変わって怒鳴るクロワールにわたし達は面食らい、大きいネプテューヌは本当にショックを受けたように表情を曇らせる。自分は楽しかったけど、相手はそうじゃなかったのか。むしろ相手は嫌な気持ちだったのか…そんな風に声を震わせ、見ていたネプテューヌもまた複雑そうな顔を見せる。

 けれどそれすら、クロワールは否定する。不満が爆発しているのは分かる、けれど一体何を結論にしようとしているのか分からないクロワールにわたし達は困惑し、大きいネプテューヌも答えに窮する様子を見せ…当のクロワールも、イライラした様子で激しく頭を掻く。怒り散らし、怒鳴り散らし…そうして最後に大きいネプテューヌを見据えて、クロワールは言った。

 

「だから、だから…ッ!──楽しかったんだよ!訳が分からねぇけど、自分でも笑っちまうけど…どんな混乱や動乱を見るより、俺好みの展開になるようちょっかいを出してその末を眺めるより、お前と一緒に馬鹿な事してる時の方が……ずっと、楽しかったんだよッ!畜生!」

 

 クロワールの、告白。これまで見てきた中で、一番の…どんな時よりも心の内を晒したクロワールの、本当の本心。予想だにしない、想像すらもしなかったその告白に、答えに、わたし達はぽかんとなり……大きいネプテューヌもまた、目を丸くする。

 

「え?え?ちょっ…く、クロちゃん?楽しかったって言った?わたしと一緒の時の方がいいって、そう言った?」

「あぁそうだよ言ったよ言いましたよ!あーもう、なんでこんな事に気付いちまったかなぁ!」

「クロちゃん…ね、もっかい!もっかい言って!」

「い、言うか馬鹿!二度と言わねぇからな!?」

 

 余程恥ずかしかったのか顔を真っ赤にするクロワールに、大きいネプテューヌは嬉しくて堪らないとばかりに、きゃっきゃとはしゃいで詰め寄り迫る。それを振り払おうとするクロワールだけど、全く大きいネプテューヌの方はお構いなしで…二人のやり取りを見ていたわたし達は、思わず笑ってしまう。声を上げて…って訳じゃないけど、自然に口元に笑みが浮かぶ。

 

「んと…つまり、クロワールは大きいネプテューヌちゃんといっしょにいたいから来た…ってことよね!」

「そう!んっふっふー、そういう事だった訳だね!」

「大きいネプテューヌさん、うれしそう…(にこにこ)」

「もっちろん、すっごく嬉しいよ!だってクロちゃんは、わたしにとって旅の相棒みたいなものだったんだから!」

「おいそこ、本人を前にして盛り上がってんじゃねぇよ!」

「まさか、クロワールがこんな本心を抱いていたなんてね…素敵よ、素敵だわクロワール!わたしは今、これまでで一番貴女にときめいているわ!」

「知るか!あぁくそッ、ネプテューヌだけでも鬱陶しいのにお前まで絡んでくるんじゃねぇ!」

「はは…けどほんとに意外だな。意外だが…そういう事なら、信じられる…んじゃねぇか?」

 

 幾らわたしでも、自分の楽しみの為に他者…どころか次元を引っ掻き回そうとする存在を肯定なんて出来ないし、その感情が琴線に触れても、流石にデートに誘ったりはしない。だけど今のクロワールは別、今のクロワールなら恥ずかしがってる…恥ずかしいって感情も上乗せされている状態なんだから、これはもうときめかずにはいられない。くぅっ、貴女がこんな思いを隠してただなんて…ニクいわ、クロワール!

 と、テンションの上がったわたしが大きいネプテューヌと一緒にきゃっきゃする中、うずめが肩を竦めながら言う。皆もそうかもしれない、という反応を見せて…でもくろめが、待ったをかける。

 

「それは、どうだろうね。クロワールには悪い経歴がある。それもやむを得ずではなく、自分の楽しみの為に悪事を行えるという実績がある。しかもクロワールの語った通りなら、大きいねぷっちとの日々以上に楽しいと思う動乱を見つけてしまえば、そちらに気が向く事も十分にあり得る筈だ」

『それは……』

「…まあ、判断は任せるよ。少なくともオレは、クロワールの事をとやかく言える立場じゃないからね」

 

 そう言って、くろめは発言を締め括る。反対意見を言っておいて、判断は任せる…っていうのは少しズルい気もするけど、自分が判断に加わるべきじゃない…っていう気持ちも分かる。そしてくろめの指摘はクロワールも理解していたのか、「ちょっと真面目な話するから引っ込め!つかお前等元々会議中だったろ、少しは自重しろ!」…と、完全な正論でわたしと大きいネプテューヌを黙らせた後、皆の前へ。

 

「くろめの言う事は最もだ。つか、何の保険もなしに信用するなんざ、そりゃもうお人好しじゃなくてただの馬鹿だ。そんな馬鹿は、ネプテューヌ一人で十分だっての。だから……」

「……!それは……Σ(・□・;)」

 

 別に、私達だって無条件に信用しようって訳じゃ…とノワール達が言う中、クロワールは目を閉じる。集中するように、ゆっくりと息を吐き……何か知っている様子のイストワールが目を見開く中、クロワールの前に一本のペンが現れる。

 

「これは…まさか、OP第二十五話でロムちゃんが探してたペン!?」

「ほぇ…?…ここに、あるよ…?」

「ロム、ネプテューヌの発言は放っておきなさい。クロワール、それは何かしら?」

「これは俺の、俺の本専用のペンだ。イストワールもそうだろうが、俺も本体と言うべきなのはこの身体じゃなくて、こっちの本だからな。んで、本は俺の本体であると同時に、俺の在り方がプログラミングされているハードウェアみたいなもんでもある。だからこのペンで、本に書き込みを行えば……」

「クロワールを書いた通りにする事が出来る、という訳ですのね」

「それはまた、悪用されたら恐ろしいペンね…もしや、イストワールにもそういうペンが…?」

「えぇ、まあ。けれどわたしと同じであれば、クロワールさんのペンでわたしの本に書き込んでも意味はないですし、わたしの意思なくわたしのペンを出す事は出来ません。まぁ、何らかの能力で操られればその限りではなくなってしまうかもしれませんが…そもそも操られているのであれば、わざわざ書き込みを用いて行動の制限なり強要なりをするまでもないでしょう(。-∀-)」

 

 まさか、と思ってわたしが訊けば、イストワールは頷く。…なら、妹であるわたしやイリゼにもひょっとしたら…とは思ったけど、それは流石にない…と、思いたい。

 

「そういう訳だから、『悪い事をしたら死ぬ』なり、『裏切りが出来なくなる』なり、好きに書いてくれ。そうすりゃ俺を警戒する必要はなくなるだろ?」

「貴女…本気なの?そりゃ、確かにその通りなら、私達としては都合が良いけど…自分の自由を明け渡すって言ってるようなものなのよ?」

「構わねぇよ。ネプテューヌとの時間が何より楽しかったって気付いた時点でもう、俺の人生は滅茶苦茶だからな。今更自由を制限されようが、この屈辱に比べりゃ大した事ねぇんだよ。つか、自由の制限ならねぷのーとで既に経験済みでもあるしな」

「…本気、みたいだな。だったら後は、何を書くかって話になるが……」

「それなら、大きいネプテューヌちゃんが決めればいいんじゃない?」

 

 皮肉たっぷりに…けど確固たる思いを感じさせる表情を浮かべて、構わないと返すクロワール。その真剣さをわたし達が感じる中、うずめが皆を見回して…ラムちゃんが、左手を挙げつつ提案する。ラムちゃんの提案について、数秒考え…わたしも皆も、首肯で返す。

 

「いいの?こういうのはわたしより、女神の皆が決めた方が……」

「いいんだよ、おっきいわたし。だってクロちゃんは、おっきいわたしとの時間の為に、覚悟を決めたようなものでしょ?なら、おっきいわたしが適任だよ」

「そっか…。…うん、それなら……」

 

 気持ちは決まった。そんな表情を浮かべながら、大きいネプテューヌはクロワールからペンを受け取る。少しの間考えて、こくりと一つ頷いて…クロワールの本へ、ペンを走らせる。

 

「……っ…お前、これは……」

 

 さらさらと書き終えた大きいネプテューヌがふぅ、と息を吐く中、クロワールは驚いた様子を見せる。一体何を書いたのか。何をプログラミングしたのか。それが気になったわたし達は、クロワールの本を覗き込み…同じように、驚く。

 クロちゃんと、これからも楽しくいられますように。──それが、書かれていた内容だった。それが大きいネプテューヌからの…クロワールへの、指示だった。

 

「…ったく、ほんとにお前はよぉ…これじゃただの願い事じゃねぇか……」

「うん、でもこれでいいんだ。これだけあれば、わたしはクロちゃんを信じられるから。っていうか正直、もう信じてるから」

「…あぁ、そうだな。お前は、そういう人間だもんな」

 

 呆れた声を出すクロワールへ、大きいネプテューヌは朗らかに笑う。そんな笑顔を前にしたクロワールもまた、どこか晴れやかな顔をして肩を竦める。そして……

 

「それじゃあ、クロちゃん。また一杯振り回すと思うけど、非常識な事ばっかりやっちゃうと思うけど…クロちゃんも楽しくいられるように、頑張るから。だから…これからも、宜しくね」

「おう。俺がお前をフォローしてやる、これからもいざって時は助けてやる。だから…馬鹿馬鹿しくておもしれー日々を、これまで以上に過ごさせてくれよ?」

 

 にっ、と笑い合う二人。クロワールがこれまでしてきた事を思えば、大きいネプテューヌやわたし達がしている事は、あまりにも甘いけど…それはそれ、これはこれ。その件はまた別で考えるとして…今は、このやり取りを邪魔しようだなんて思わない。

 初めは全然違う形だったと思う、間違いなく今も普通の形ではないと思う。けれど確かに、そこには……心から笑い合える、大きいネプテューヌとクロワールの絆があった。




今回のパロディ解説

・「〜〜いきなり!ねぷーち〜〜」
ステーキ専門店、いきなり!ステーキのパロディ。いきなり!ねぷーちはネプテューヌの厳選したプリンが売ってるのでしょう。そして恐らく、ちょいちょいネプテューヌが摘み食いしてるのでしょう。

・「うわぁ!?いきなり落ち込まないで!?」
デスノートのコラ画像の一つのパロディ。落ち着くのではなく、落ち込んでいます。そして上記のネタとは、「いきなり」繋がりですね。意図した訳ではありませんが。

・「〜〜暇を持て余した神々の遊び〜〜」
お笑いコンビ、モンスターエンジンのコントの一つの事。ユニが突っ込みの中で触れていますが、女神の面々が暇潰しに遊んでいたら、本当に暇を持て余した神々の遊びになりますね。

・「やはり力技…!力技は全てを解決する…!〜〜」
金田一少年の事件簿シリーズに登場するキャラの一人、桐江想子の代名詞的な台詞(心の声)のパロディ。これは、この台詞は知っていても元ネタは何か知らない、って人が多いような気がします。

・「〜〜一緒に悪巧みした仲だろ?」「〜〜そう言われるのは心外だな〜〜」
ヴァンガードシリーズに登場するキャラの一人(二人)、伊勢木マサノリと向江ジンキのやり取りのパロディ。今回の話により、この二人のやり取りが「元悪役同士の会話」となりましたね。

・「〜〜某部長オチ〜〜」
こちら葛飾区亀有公園前派出所に登場するキャラの一人、大原大次郎が武装した状態で現れるオチの事。武装したイストワールから逃げるネプテューヌ…何だか普通に想像出来ますね。

・「〜〜旧世代型の強化人間〜〜」
ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONに登場する要素の一つの事。ノワールはコーラルの変異波形の声が聞こえている…とかではないと思います、多分。
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