超次元ゲイムネプテューヌ Origins Unknown 作:シモツキ
あの日、わたし達は約束をした。スカネク、東ザナ、乙戦…イリゼが天界の街で出会い、脱出の為に協力し合い、その中で仲間として…友として繋がりを紡いだ三人と、一つの約束を交わした。イリゼの思いを、願いを汲んで三人をそれぞれの次元へと送り出す時に、とある頼みを受け取った。
今こそ、この戦いでこそ、その頼みに応えるべきだと思った。そう思ったから、決戦の前に、わたしは三人と連絡を取った。わたしからの呼び掛けに、三人はこう答えてくれた。待っていた、と。三人は約束を形だけのものにしない為に、万全の準備を整えてくれていた。…だからこそ、わたしは三人との約束を果たす。共にイリゼを助け出すという、その時は必ず力になるという──三人との、約束を。
「レジストハート様、本艦後方に正体不明の高エネルギー反応が検知されました。対応は……」
「艦長!レーダーに感有り、数は四!所属は不明!…くっ、この距離で初めて捕捉出来るなんて、なんてステルス性能なの…!?」
紅の華に彩られた門。それが放つエネルギーをアヴァラスが感知し、インカムに通信が入る。その直後、ブリッジからの声が、現れた謎の戦闘機に対する驚愕の叫びが耳に届く。
「大丈夫、心配しなくていいわ。その戦闘機は…味方よ」
まさか最新鋭の特装艦でもすぐには捕捉出来ないなんて…と内心舌を巻きつつ、わたしは戦闘機が味方である事、高エネルギー反応についても警戒する必要はない事をアヴァラスに伝える。
その間も、高速で戦闘機は空を疾駆する。敵と認識したのか、飛行型モンスターの群れの一つが戦闘機へと向かっていき…四機の戦闘機は散開。接近される遥か前にミサイルを放ち、近接信管により爆ぜたミサイルが群れを襲う。逃れた個体も各機の機銃に蹴散らされ、瞬く間にカオスモンスターの群れは壊滅する。そして編隊を組み直し…わたしの方へ、歪みの方へと近付いてくる。
「…信じていたわ。貴女達なら、来てくれるって」
歪みを背にした状態から、呟きと共にわたしは戦闘機の方へと飛んでいく。道中邪魔になるカオスモンスターは最小限の動きと対処で凌いで、わたしもまた戦闘機へと近付いていく。理由は単純、三人と言葉を交わす為。ここは時空が歪んだ領域…そこへ介入する存在が現れた事で特異な状態が生まれたのか、門が開いた直後は三人の声が聞こえたけど、今はもう聞こえないし、インカムも設定を合わせなくちゃ当然繋がらない以上、言葉を交わすには直接声が聞こえる距離まで行くしかない。
(…あれ?けど、四機?もう一人誰かいるって事?というか、乙戦ちゃんはともかく、二人は操縦出来るの…?)
イリゼの紡いだ繋がりが生んだ力、とっておきの隠し球。その事ばかりに意識が向いていたわたしだけど、そこでふと戦闘機の数について疑問を抱く。
でも、わざわざ考えなくても合流すれば分かる事。だからわたしはそのまま加速し、戦闘機の進路と交差する直前に急ブレーキ。戦闘機がわたしの左右を駆け抜け…反転したわたしは、その後を追う。すぐさま四機へ追い付き、その隣を共に飛ぶ。
「皆、聞こえる!?」
「大丈夫だ、聞こえている!」
「状況を教えて頂戴、出来るだけ端的に」
戦闘の一機、そのキャノピー越しに見える乙戦ちゃんの姿。続けてスカネクの声も聞こえて、わたしは今の戦況、そして歪みによって突入を阻まれているって事を三人へ伝える。……因みにちらりと他の機体も見たけど、他の三機はスカネクや東ザナちゃんが操縦してる訳でもなければ、四人目がいる訳でもなくて、それぞれ人型の…けど人ではない存在が操縦をしていた。多分それは、乙戦ちゃんの操る『兵』。よくよく見れば、兵の操縦する三機は、乙戦ちゃんの動きにリンクしているようだった。
「この場の戦闘は…確かに任せても大丈夫そうだ」
「となると、求められるのは歪みの突破…東ザナ、出来そう?」
「…えぇ、いけるわ。やってみせる」
別々の機体の後部座席に座るスカネクと東ザナちゃんが、頷き合う。その声から感じるのは…強い意思。
「セイツさん、私達がここに来たのと同じ方法で門を作るわ。…同じといっても確実に作れる確証はないし、そもそも同じ方法が通用するかも分からない。それでも、いい?」
「何も問題ないわ。可能性があるなら、わたしはそれに賭ける…!」
確実じゃない。その言葉に、論ずるまでもないとわたしは返す。わたしには、わたし一人だけじゃ、歪みを突破出来る可能性なんてゼロ。そこに僅かでも可能性が生まれるなら、それだけでも賭ける理由としては十分。ましてや同じ方法が通用するかどうかは分からないといっても、現に皆は外と隔絶されているここへ、時空の歪みへ飛び込んできたんだから…わたしからすれば、十分どころか十二分。何も躊躇う事はない。
「…なら、決まりね。スカネクさん、乙戦さん、時間が惜しいわ。ここでやるわよ」
「ええ、こっちはいつでも大丈夫よ」
「了解した。こちらも全力で姿勢制御を行うが…二人共、振り落とされるなよ?」
そして、東ザナちゃんはスカネクと乙戦ちゃんへ呼び掛ける。二人はそれに応じて…次の瞬間、四機の内二機、スカネクと東ザナちゃんの乗る機体のキャノピーが開かれる。蓋の開いたコックピットの中で、二人は立ち上がる。
高速で飛ぶ戦闘機のキャノピーを開いて、そこで立ち上がればどうなるかなんて言うまでもない。初めから開いていたならともかく、高速飛行中にいきなり開けば、そこで立てば、並の人間は耐えられない。…けど、二人は踏み留まる。某超時空シンデレラばりに風に煽られながらも、その髪をなびかせながら、歪みを見据える。
「邪魔は…させないッ!」
追い縋ろうとする、或いは正面から突っ込んでくるカオスモンスターの悉くを、わたしは斬り裂き撃ち落とす。スカネクと東ザナちゃんが突破へ、乙戦ちゃんが二人の負担を少しでも減らす事へ集中出来るように、障害は全て斬り伏せる。
その内に、二人へ力が集まり始める。はっきりとは分からない、わたしには漠然と感じられるだけ。それでも並大抵のものじゃないと伝わってくる程の大きな力が、スカネクと東ザナちゃんの中で収束して……二人はそれを、解き放つ。
「──ゲート、顕現!」
東ザナちゃんが手にした端末、そこから波紋の様に力が広がり、わたし達の向かう先…紫色を帯びた歪みの一部へ、幾何学模様が現れる。直後にスカネクが腕を突き出し、その手から糸の様な紅い光が紋様へ伸びる。光は絡み付き、一つとなって……そして、紋様は門へと変貌する。
「二人共、着席を!このまま突っ込む…ッ!」
言うが早いか、キャノピーは閉まる。乙戦ちゃんの駆る機体を先頭に、
ほんの一瞬速度を落として、わたしは編隊の最後尾へ。片脚を蹴り出すようにし、鋭く反転。歪みの先、向かう先から
「ここは任せるわよ、皆。必ずわたしが、わたし達がオリジンハートと…妹と、共に戻ってくるわッ!」
言葉を響かせ、わたしはもう一度反転。進路を自分の目に映して、彼岸花の咲く門へと突入する。…勿論、肉声を届けている訳じゃない。あくまでインカムで伝えただけ。だから振り返る必要なんてなかったけど…必要はなくても、意味はある。女神として、支えてくれる皆への言葉なんだから…背中越しに置いていくんじゃなくて、顔を向けて、目で皆を見て、ちゃんと届けたい。そう思ったから、そうした。ただそれだけの…大事な事。
*
ネクストフォームは、未来への力。未来へ、明日へと手を伸ばし続ける力の結晶。自分自身を超えていく、決意と覚悟。…考えてみればそれは、アルテューヌに対してこの力は、皮肉を浴びせるようなものなのかもしれない。自分に、過去に打ち勝とうとしている今の状況には、あまりにもぴったりで…だけど今更、アルテューヌはそんな事を気にしないと思う。ただ倒すのみ。勝って示し、自分の道を切り開くのみ。アルテューヌはきっと、そう思っているんだから。わたしも…そのつもりなんだから。
「散りなさいッ!」
「そんなもの…わたしは薙ぎ払うまでよ、全てッ!」
半円状に展開され、一斉に放たれるエクスブレイド。同時に放たれる、全てがわたしに向けて飛来する、大太刀と同じかそれより少し大きい位の大剣の束に対し、わたしは横薙ぎ一閃。言葉通りに薙ぎ払い、その全てを叩き斬る。
「想定が甘いわね。飛んでくるタイミングが同じだなんて、全部叩き落としてほしいと言っているようなものよッ!」
振り抜いた姿勢のまま、わたしは突進。一直線に踏み込み、次の行動を許す事なく振り抜いた大太刀をひっくり返して復路の横薙ぎ。自身の大太刀を斜めに掲げたアルテューヌと、刃同士でぶつかり合う。激突し、斬り結ぶ。
「飲み込む…ッ!」
「斬り裂く…ッ!」
アルテューヌの大太刀に暗い光が揺らめき、カオスエナジーが侵食する。わたしの力が刀身で煌めき、形が無いから斬れない…なんて常識諸共カオスエナジーを斬り刻む。互いの力をぶつけ合い、打ち消し合う。
「ふ…ッ!」
「ぐ…ッ!」
激突から更にわたしは力を込め、突進の勢いも乗せて大太刀を振り抜く。防御するアルテューヌを弾き飛ばす。
下がるアルテューヌへ、即座に追撃。刺突を仕掛け、躱したアルテューヌに素早く蹴り込む。今の、ネクストフォームのわたしの脚を包むプロセッサは、流線主体のブーツ型。それを利用し、爪先を衝角の様にアルテューヌへ打ち込む。対するアルテューヌはまた大太刀で受け、刀身を傾ける事で滑らせ…わたしの背後に、回り込む。
「今度は、こちらの番よッ!」
すぐさまわたしは振り向く。反転しながら大太刀を持ち上げ、向き直ると同時にアルテューヌが振り出した斬撃を受け止める。再びわたし達は斬り結び…気付く。わたしと同じ髪型、わたしと同じように後ろで作った二つの三つ編み…それがアルテューヌの動きとはリンクせず浮かび上がっている事に。
(これは…ッ!)
咄嗟にわたしは大太刀から左手を離し、身を捩る。直後、浮かび上がった一対の三つ編み…その先端にあるプロセッサのパーツが、わたしに向けて突き出される。伸びてきた二本の内、片方は避けて、もう片方は左腕プロセッサの手甲で受けて…今度はわたしが押し切られる。両手持ちと片手持ちの差で、わたしは押し込まれ後退する。
「まるで触手ね…ッ!」
「真似してくれても構わないわよ?その緩んだ三つ編みで出来るならね…ッ!」
開いた距離を即埋めるように、またアルテューヌはエクスブレイドを放ってくる。両断して迎撃すれば、その一瞬で迫ったアルテューヌが上段斬りを仕掛けてくる。斬り合う中で、僅かに生まれる隙や空白を、三つ編みの先端に備えた薄い板状のプロセッサで文字通り突いてくる。決して刃の様に鋭利という訳じゃないし、髪なんだから三つ編みの強度も大した事はない筈。けどそれはアルテューヌも重々承知なのか、それを攻撃の主体にはしない。あくまで隙を突く事、一瞬を埋め突き出した後は即座に引き戻す事を徹底しているからこそ、処理したくても処理出来ない。いやらしい…でもだからこそ上手いと言わざるを得ない、巧みな攻撃。アルテューヌ単独での、連携攻撃。
(でも、それなら…ッ!)
降下と後退を織り交ぜて、斬撃を防ぎ、突き出しを打ち払う。ほんの少し高い高度からの、頭を狙った横薙ぎを後方宙返りで躱して…上下逆さになったわたしは、教会の屋根に手を突き腕力で跳ぶ。屋根の上を滑るように、更にアルテューヌの攻撃を躱していく。
幾度目かの回避の後、ここだと思ったわたしは逆袈裟で反撃。振り出されたアルテューヌの一撃とぶつかり、互いに弾き…互いに軽く仰け反ったその瞬間に、三つ編みのプロセッサが刺突をしてくる。上半身と下半身、左右でそれぞれを狙ってくる。
けれどその時、わたしも既に動いていた。わたしは踏み付けるように教会の屋根へと爪先を突き出し、破壊する。砕けた破片が飛び散り…三つ編みの先端のパーツを弾く。
「……ッ!」
「そこッ!」
目を見開くアルテューヌへ捩じ込む、左の拳。アルテューヌは右手を大太刀から離し、ナイフの様に小さなエクスブレイドを作り出す。精製されたブレイドをアルテューヌが握るのと、わたしの拳が届くのはほぼ同時で…わたしの拳が、剣を砕く。そのまま拳を打ち付けて、アルテューヌを後方に下がらせる。
「どうやら攻撃も防御も、わたしの方が上のようね。小手先の技術はそっちの方が豊富なようだけど…それももう、通用しないわ」
「…それはどうかしら。確かに力押しなら、そちらの方が…ネクストフォームの方が上のようだけど、その『余裕』がいつまで続くのか見ものだわ」
ゆっくりと構え直して、はっきりと言ってみせる。軽く煽りも混ぜながら、わたしは言い…けれどアルテューヌは動じない。アルテューヌもまた構え直し、わたしを見据える。
根拠はある。プロセッサが重装化しているわたしは、ただの殴打や蹴撃でも十分な威力を出せるし、半端な攻撃なら手足で弾ける。対照的にアルテューヌのプロセッサは必要最低限しかないから、どうしたって大太刀で受けるか、さっきみたいにエクスブレイドを有効活用するしかない。三つ編みのパーツも、結局のところ『軽い』っていうのはさっきの迎撃で証明出来た。それにこれはあくまで、単純なぶつかり合いだけの話。攻撃においても、防御においても…わたしの力は、比較なんて次元を遥かに超えている。
そしてそれは、アルテューヌだって把握している筈。わたしのネクストフォームの力を、きっと断片的程度には理解している。それでもまだ余裕を見せているのは……
(…継戦能力は…燃費の良さは、向こうが上。より柔軟に立ち回れるのは…アルテューヌの方)
長期戦に向かない…というか出来ないネクストフォームのわたしと違って、アルテューヌはエクスブレイドを何度も使ってきている。三つ編みのパーツによる攻撃も、派手さや破壊力はないけど、使い勝手は間違いなく良好。だから、アルテューヌは余裕でいられる。アルテューヌに、焦る必要はない。このまま普通に打ち合っていれば、先に息切れするのはわたしだから。わたしは『勝つ戦い』をしなくちゃいけないのに対して、アルテューヌは『負けない戦い』を続けるだけで、最後には勝てるんだから。…尤も、負けない『だけ』の戦いなんてアルテューヌはしていないけど。そんな及び腰の戦いをしているなら、とっくに決着は付いているだろうけど。
「…見た目の割に、随分と堅実なものね」
「ここまで見せた力が全てだと思っているなら、是非ともそのままそう思っていて頂戴。その方が、こっちも好都合だもの」
「その言葉、そっくりそのままお返しするわ」
ハッタリか、それとも本当の事か。…どちらにせよ、わたしのやる事は変わらない。もう十分身体も温まった、自分自身の力を研ぎ澄ます事が出来た。後はそれを振るうのみ。未来と勝利を斬り開くのみ。
仕切り直しからの見合い。でもわたしに待ちの選択肢はない。わたしは仕掛ける、アルテューヌは迎え討つ。その形で再びわたし達は斬り結ぶ…そうなると思った、無意識の内に想像していた…次の瞬間だった。──空に、門が開いたのは。
『……──っ!?』
反射的に、わたしもアルテューヌもそちらへと向き直る。その動きでわたしもアルテューヌも、お互いそれが相手の意図したものじゃないと理解する。そして、空に浮かび開いた門から現れたのは、戦闘機。編隊を組んだ四機の戦闘機と……セイツ。
「セイツ!?それに、その機体は……」
「待たせたわね、ネプテューヌ!これからわたしが、わたし達が…イリゼを、助けてくるわッ!」
急降下からの女神の力にものを言わせた着地を見せるセイツと、ランディングギアを展開し、減速しながら着陸を行う戦闘機。一体どういう事か、どういう原理で歪みを抜けてきたのかは分からない。だけど、セイツはそこにいる。セイツ達が、抜けてきている。それは紛れもない、事実。
「今のは一体…けど、そんな事は……」
「──させないわよ?セイツ達の、邪魔なんて」
アルテューヌの視線の先、向かおうとした先へわたしはひらりと割って入る。
「くッ…退きなさいッ!もう貴女に構ってる時間は……」
「焦っているわね。ここまでの戦闘で、貴女がダメージを受けたどんな時よりも。…わたしは貴女の、未来を掴む上での噛ませ犬なんかじゃない。目を…逸らしてるんじゃないわッ!」
一息で踏み込み、袈裟懸けを打ち込む。防御なんてさせない。もしわたしが眼中にないというなら、最悪無視してもいい事柄程度に思っているのなら…そんな寝惚けた意識ごと、防御も、アルテューヌも弾き飛ばす。
「貴女の相手はわたしよ。わたしの相手は、わたしよ。間違った過去を正したいと言うなら、わたし自身を倒して、自らの正しさを証明してみなさい。…出来る、ものならねッ!」
「…そんなの…言われるまでもなく、そのつもりよッ!」
攻め込み、連続で得物を振るう。一度に何度も打ち込むのではなく、勢いを乗せた攻撃で弾いて、距離を詰めてまた打ち込んで、再び弾いてを繰り返す。わたしの力を、アルテューヌへ見せ付ける為に。それと共に、少しずつアルテューヌを教会から引き剥がす為に。
幾度目かの弾き飛ばしの末、これまで防御に徹していた…そうせざるを得ないようにわたしが重い攻撃を仕掛けていた中で、アルテューヌの動きが変わる。弾かれた状態から立て直し、大太刀を振り上げたわたしの懐に、飛び込むように突っ込んでくる。
「勝つのは……」
「わたしよッ!」
発された言葉の最後を、奪い取る。刀身を後ろに回した状態から、振り出すんじゃなくそのまま柄尻を突き出す形で仕掛けてくる攻撃を、同じく振り上げた大太刀の柄尻を真下に落とす事で打ち付け防ぐ。
(イリゼの事は、任せるわ。セイツを…貴女達を、信じるわ。だから、わたしは全力を尽くす。最後の最後まで、全身全霊力の限りで…アルテューヌを、倒す…ッ!)
自分の中で、更にギアを上げていく。セイツ達が来てくれたおかげで、後顧の憂いはなくなった。イリゼの救出までを見越して戦う必要はなくなった。…そう。アルテューヌに放った言葉は、わたし自身に向けたものでもある。アルテューヌはイリゼを助け出す上での、ただの障害なんじゃなくて、絶対に越えるべき…超えるべき壁。わたしの手で、打ち勝つべき存在。そこから目を逸らす事は出来ない。…それが、わたしとアルテューヌの戦い。女神である、ネプテューヌの戦い。
*
「行くわよ、皆!」
時空の歪みの中に出来た、更なる歪み。その突破に成功したわたしは、皆に先んじて着地する。着陸した戦闘機から飛び出す皆の姿を確認したところで、教会正面の扉を斬り裂き、蹴り破る。
「セイツさん、一つ確認いいかしら?」
「えぇ、どうかした?」
「イリゼさんの場所は分かっているの?」
「全く分かっていないわ!」
分からない。そうわたしは堂々と返す。…えぇ、堂々と言う事じゃないのは分かっているわよ?けど今更取り繕っても仕方ないし、だったら誤魔化さず、伝えるべき事を端的に伝えるのが一番でしょ?
「…つまり、わたし達が初めて教会に突入した時と似た状況という訳か」
「まあ、仕方のない事ね。だけど、前と今とはまるで状態が違う。分からないなら……」
わたしの宣言に乙戦ちゃんが肩を竦め、スカネクが返す。まるで、何か策のあるような声で言葉を返し…その言葉は、途中で止まる。
「…その前に、まずは目の前の障害を何とかする必要があるわね」
開いた、蹴破った扉の奥でわらわらと出てきたのは、カオスモンスター。予想通りの、教会内に配置された戦力。そしてこのカオスモンスターも、歪みの外で相手していたモンスターと同じなら…倒したところで、回復する。カオスモンスターの時間も、空間も、正常に流れたりはしない。
「丁度良いわ。この怪異…もとい、モンスター相手に、私は私の戦い方を見せる。だからセイツも、どう戦うのか見せて頂戴」
「確かに、わたしは貴女達の戦い方を殆ど知らないものね。了解よ、けどそれはそれとして……」
『速攻で、片付ける…!』
声を揃えた東ザナちゃんと乙戦ちゃんの言葉を合図に、わたし達は中へと飛び込む。突入と同時に刃を振るい、飛び掛かってきたカオスモンスターを一撃で斬り裂く。
「シュートッ!」
「制圧する!」
真正面へわたしとスカネクが切り込む中、東ザナちゃんと乙戦ちゃんは左右に展開。東ザナちゃんは宙に浮かんだ青い光弾で、乙戦ちゃんは従えた兵との一斉射撃で、カオスモンスターを次々と叩く。そしてスカネクは、手にした刀と舞う幾つもの刃を駆使して、近距離と中距離の二面攻撃。系統の違う二種類の武器を自在に操り、カオスモンスターを斬り刻む。
かと思えば、ある程度撃破したところで、スカネクは後方へと大きく跳躍。最前線から、一番の後方まで下がり…何をする気かと視線を向けたわたし達に、ふっと目配せ。
「二人にも、見せておくわ。私の…私が紡いできた、力を」
そう言って、小さく息を吐くスカネク。そして次の瞬間、スカネクの背後に赤い光が浮かぶ。光は円の形になり…同じ光で編まれたような五つのコードが、突き刺さる。
尾の様に、或いは翼の様に揺らめく赤のコード。それをなびかせながら、再びスカネクは跳ぶ。カオスモンスターの大群の中へ、躊躇う事なく身を踊らせる。
「借りるわ、皆の力…ッ!」
大きく跳んだスカネクの振り下ろす刃。刀は真っ直ぐに振り抜かれ…そして炎が、燃え上がる。刀身から火炎が噴き上がり、斬り付けたモンスター諸共、周囲のカオスモンスターも炎で飲み込む。
焼き払う炎の一撃。けれど攻撃を逃れたカオスモンスターは怯む事なく、すぐさまスカネクを囲う。囲って、一気に飛び掛かる。不味い、とわたしは飛び込もうとし…だけど気付く。スカネクが、余裕の表情をしている事に。
迫るカオスモンスターに対し、スカネクはゆっくりと立ち上がる。回避はおろか、防御すらしないスカネクへ、飛び掛かったカオスモンスターの牙が、爪が襲い掛かり……止まる。貫く事も、それどころか傷付ける事なく、カオスモンスターの攻撃は弾かれる。直後にスカネクは身を捻り、刀に炎を纏った回転斬りで纏めて薙ぐ。
「これが、貴女の……」
「えぇ、だけどこれだけじゃないわ…!」
完璧な返り討ちを見せたスカネクは、再び跳躍。今度は上に大きく跳び…その姿は、三人に増える。乙戦ちゃんの兵とは違う、分身の様に新たなスカネクが二人現れ、三人は同時に刃を放つ。
その刃が帯びるのは、電撃。三方向に放たれた刃が上からカオスモンスターに喰らい付き、貫く。更に床へ突き刺さると共に放電し、次々とカオスモンスターを感電させていく。…具体的な事は、分からない。だけどこれが、スカネクの力。最初から見せていた念力以外にも、複数の力を扱う事が出来るのが彼女。
「やるわね…なら、今度はわたしの番よ!」
様々な力を使う姿をしっかりと目に収めたわたしは、ハイキックで突っ込んできた一体を迎撃。続けて連結剣の柄尻を、刃が同じ向きになるよう連結し、振り下ろしと振り上げの二連斬撃で他より一回り大きい個体を斬り伏せる。
仕留めたところで、すぐに連結を解除し左右共に逆手持ちへ。立ち止まる事のない、常に動きながらの移動斬りで斬り付けていき、最後は両腕を広げる形で左右へ同時に刺突を掛ける。
そこからわたしは手の内の動きだけで左剣を回し、左右で互い違いにして再度連結。双刃刀形態に移行し、途切れる事のない斬撃を仕掛ける。その後は大剣に、更に分離からの双剣にと切り替えていって、圧縮シェアエナジー弾頭の砲撃も混ぜる。皆にわたしの戦い方を見せる為に、今だけは効率よりも多彩さを優先する。勿論その間も、皆のスタイルをしっかりと確認し…気付けば残存するカオスモンスターは、まばらな程度となっていた。…ただ、倒された個体も消えてはいない。
「…やっぱり、ここのカオスモンスターも元に戻るって訳ね…」
「聞いた通りという訳か。だが、殲滅速度はこちらが上だ」
「けどそもそも、ここでの殲滅に拘る理由も必要もないわ。出来れば振り切りたいところだけど……」
「…なら、考えがあるわ」
考え。その言葉を口にしたスカネクが見据えているのは、教会の奥。多くは語らないスカネク、だけどその視線で分かる。まずはこの場からの突破が、彼女の「考え」には必要なんだと。
ならば、とわたしは東ザナちゃんと乙戦ちゃんに目をやり、頷き合う。そして双刃刀形態の連結剣を投げ放ち、声を上げる。
「わたしが殿を務めるわ!皆、道を切り開いてもらえる?」
機動力ならわたしが一番上だもの。そう示すように、言いながらわたしは翼を広げる。その甲斐あってか、皆はすぐに頷いてくれて…初めに動いたのは、乙戦ちゃん。
「皆、わたしの後ろに!」
言うが早いか、乙戦ちゃんは兵と共にグレネード弾を一斉発射。教会の奥、その方向へ纏めて撃ち込まれたグレネードは炸裂し、進路上のカオスモンスターを吹き飛ばす。乙戦ちゃんの攻撃で、道の原形が生まれ…乙戦ちゃんを飛び越える形で、東ザナちゃんが素早く前へ。
「穴は私が作り出すわ。援護、頼めるかしら?」
『任せて(くれ)!』
背中越しに返答を受け取った東ザナちゃんは、床を蹴り突進。手にした細剣を突き出し、その刀身からは強力な冷気が放たれる。乙戦ちゃんが作った原形を、東ザナちゃんの突進が完全な道へと変える。奥へと進む、道を開き…そこへとスカネク、乙戦ちゃんの二人が駆ける。乙戦ちゃんはライフルで、スカネクは聖堂の椅子を念力で操り叩き付ける事で、道の両端のカオスモンスターを迎撃する。
「後は、わたしが…ッ!」
広がった道へと、わたしも飛び込む。二振りでそれぞれに圧縮シェアエナジー弾頭を撃ち込み、迫るカオスモンスターを斬り払う。倒す必要はない。ただ躱し、凌ぎ、進めればいいだけ。最小限の迎撃で、わたしもまた突進していき…カオスモンスターの大群を、突破。三人と共に、奥の廊下へ真っ直ぐ飛び込む。
「ふ……ッ!…で、ここからはどうするつもり?」
「それは…いや、説明するより見てもらった方が早いわね。二人共、手を出してくれる?」
真っ先に飛び込み待機していた東ザナちゃんは、氷塊を作り出す事で廊下と聖堂とを分断。カオスモンスターは破壊しようとしているのか、すぐに氷が音を立て始めるけど…大丈夫。音の具合からして、短時間なら持つ。
問われたスカネクは、手を出してほしいと二人へ言う。怪訝な顔をしながらも、東ザナちゃんと乙戦ちゃんは手を差し出し、スカネクはそれぞれの手に触れる。そして次の瞬間…三人は、消える。
「……!?まさか、瞬間移動…じゃ、ない…?」
「違うわ。これは透明化、無制限に使い続けられる訳ではないけど、見えなくなればモンスターに襲われる事はないでしょう?」
一瞬いなくなったと思ったわたしだけど、東ザナちゃんと乙戦ちゃんの驚く声が聞こえた事で、そうではないと把握。続けてスカネクの声も聞こえてきて…力を解除したのか、三人の姿が再び見えるようになる。
成る程、確かにこれならただ隠れるのと違って場所を選ばないし、足音に気を付ければ移動しながら行う事も出来る。で、戦闘中に使って聖堂から抜ける、って手を使わなかったのは…モンスターの数が多い以上、想定外の動きをしたモンスターと接触して気付かれる可能性を考慮した、ってところかしらね。こっちを認識してるモンスターより、認識してないモンスターの方が、逆に動きは読み辛いし。
「こういった芸当も出来るのか…凄いな、脱帽だよ」
「これも、ここまで見せた力も、念力以外は全部一時的に借りただけ。…仲間のおかげよ」
「ふふっ、そうなのね。…透明化が他者にも適応出来るのはさっきので分かったけど、今の方法だと三人同時は無理でしょう?そこはどうするつもり?」
「それなら簡単な話よ。必要なのは触れている事であって、面積が問われる訳じゃないもの」
仲間。その言葉を口にした瞬間、スカネクの表情はちょっぴりだけど和らいだ。仲間への強い信頼…それが、ひしひしと伝わってきた。…くっ、惜しいわ…!有事じゃなければ、もっとその思いを掘り下げたいところなのに…!…こほん。
ともかく、スカネクはもう一度二人に手を出してもらって、更にその手を指先が触れる位まで近付けてもらう事で、二人の手…というか指へと同時に接触。確かに簡単な話だったわね。なら後はわたしもスカネクと……あっ。
「ちょ、ちょっと待った。スカネク、手を出してくれればわたしの方から握らせてもらうわ」
「……?まあ、わたしから触れないといけない訳でもないから、構わないけど……」
「そ、そうでしょ?じゃあ、手を出してもらって……」
怪訝な顔をしつつも、手を差し出してくれるスカネク。寸前でピンチに気付いたわたしは、心の中で危なかった、と胸を撫で下ろす。そして気を取り直し、わたしの方からスカネクの手に触れ──ようとした直後、明らかにこれまでとは違う音が氷から響く。
「……っ!?不味い、思ったより崩壊が速いわ…!」
「くっ、二人共壁に寄って!セイツも!」
「へっ!?あ、いやっ、ちょっ……」
激しい破砕音と共に、急速に氷塊へ広がっていく亀裂。それを見たスカネクは二人へ指示を出し…有無を言わさず、言う間もくれずにわたしの手を掴む。掴んで廊下の壁まで下がる。さ、下がる。スカネクが下がる。わたしの、手を握って、スカネクから握って……あぅ、あぅあぅあぅあぅ…っ!
「静かに、物音を立てないで…!」
氷が砕ける。カオスのモンスターが飛び出してくる。唸って、目をギラギラさせて…廊下を、走っていく。どのモンスターも、わたし達には気づかず行っちゃう。その内にどのモンスターもいっちゃって、いなくなって…作戦、せいこう。だいせいこう。
「…ふぅ、上手くいったようだな」
「助かったわ。ありがとう、スカネクさん」
「まだ油断は出来ないわ。その内戻ってくる個体もいるだろうし、早々にわたし達も奥に進んで……セイツ?」
聞こえる、みんなの安心の声。うん、ほんとに助かった。うまく凌げた。…でも……
「…手……」
『手?』
「手…は、はな…離し、て……」
ぺたんと座ってしまったまま、見上げる。スカネクを、見上げる。もう見えてる。透明化、してない。だから、スカネクに言って…やっと、手が、離れる。
「…その…嫌だった?」
胸に、手を置く。両手を置いて、何度も何度も深呼吸。しっかり吸って、しっかり吐いて、心の中を整える。心を、頭を、感情を整えて…立つ。
「…そうじゃ、ないわ」
「いや、でも、明らかに様子が……」
「ちょ、ちょっとテンパっただけよ。そう、テンパっただけテンパっただけ…ちょっとドキドキして、ぐるぐるして、かぁってなってあわあわしてうきゅうってなっちゃっただけで、全然嫌なんかじゃないんだからねっ!」
『えぇ……?』
わたしは説明する。そうではないと、ほんの少し調子が狂っただけだと三人に伝える。丁寧に、しっかりと、包み隠さず伝えて……結果、三人から困惑されてしまった。この人は何を言ってるんだ…?…みたいな顔をされてしまった。…むぅぅ…ほ、ほんとにすこーしだけ、ちょーっぴり慌てただけなんだから!皆だって、急に手を握られたらびっくりするでしょ?わたしはそれが、ちょこっと皆より過敏なだけなんだからねっ!
「ほんとなんだからね!?ほんと、なんだ、からね!?」
「せ、セイツさん大丈夫…?何がほんとだって言うの…?というか、それは誰に言っているの…?」
「…そういえば、イリゼも脈絡なく話し始める事があったな。ふっ、流石にイリゼの姉なだけある」
「そ、そんなところで姉妹を感じないで頂戴…!……こほん。…驚かせてごめんなさい。でも、ほんとに動揺しただけだから気にしないで」
今度こそほんとに自分の調子を取り戻して、皆に謝る。今はわざとじゃなくても、こんな事に時間を割いている場合じゃない。だから時間を無駄にしてしまったわたしは謝り…皆も頷くだけで、何も言わなかった。それよりも今は先に進もう、そんな意思を表情で示してくれた。
「一先ずここから離れるとして…問題は、イリゼさんを見つける方法ね。前の時みたいに、また虱潰しに探すというのは避けたいところだけど……」
「それも、私に任せて」
『え?』
どうしたものか。そんな風に東ザナちゃんが口元へ手を当てる中、さらりとスカネクが言葉を返す。わたし…というかわたし達が目を丸くする中、スカネクは「まずは移動ね」と言いながら先陣を切り、わたし達は後に続く。そうしてある程度歩き、周囲の安全を確認して…スカネクは、足を止める。
「セイツ、イリゼは今どういう状態なの?ただどこかに囚われているだけ?」
「状態…今は結晶の中に封じられているわ。結晶の大きさは、この位で……」
手を挙げ、軽く跳ねて大体の大きさをスカネクに伝える。するとスカネクは、頷いて…その瞳が、赤色に変わる。ゆっくりと、ぐるりと見回し…首を、横に振る。今見える範囲には、いないと言う。
また移動し、スカネクは見回す。カオスモンスターと出会さないよう最新の注意を払いながら、数度それを繰り返す。そして……
「……っ!」
「…スカネク?まさか……」
不意にスカネクが見せた、これまでとは違う反応。もしや、とわたしが呼び掛ければ…スカネクは、頷く。
「…はは…本当に凄いわね、貴女は…戦闘能力もそうだけど、歪みの突破も貴女の力が関わっていたのよね?…これはもう、全部貴女一人で何とかなりそうな気がしてきたわ……」
「そんな事はないわ。さっきも言った通り、わたしは力を借りているだけ、貸してもらっているだけ。それに門は東ザナの…彼女の側の力と協力したからこそ出来たものだし、乙戦がいなければ、戦場を一気に駆け抜ける事は出来なかった。…人が一人で出来る事なんて、たかが知れている。だから手を取り合う、それこそが一番の力になるんだって、私は思うわ」
「……ふふっ、そうね。同感よ」
「あぁ、全くだ」
もし彼女がいなければ、聖堂のカオスモンスターにもっと時間を取らされていただろうし、イリゼを探すのも難航していた。けれどそれを、スカネクが難なく解決してしまった。…凄い、凄過ぎる。その驚愕で、わたしは乾いた笑いを漏らし…けれどスカネクは、それを微塵も自慢しなかった。そんな事はないと否定し…本当に凄いのは、手を取り合う事、そうして作り出す『協力』だと、ここまでと同じ声音で言った。同じ声音で…けれど、ほんの少し柔らかな笑みを浮かべて言った。
同じように頬を緩める、東ザナちゃんと乙戦ちゃん。…わたしも、それに頷く。頷き…じんわりと、心の中が温かくなった。手を取り合う事、協力する事、その力を信じる事…それはわたしが、女神の皆が大切にしている事。それがまるで違う次元に住む、きっと歴史もその在り方も大きく違う次元でそれぞれの道を歩んできた皆も、同じように思っている、感じているって事が…嬉しかった。
「案内するわ、付いてきて」
「もしその道中でモンスターが邪魔になるようなら……」
「その時は、全て叩き潰す!」
場所まで分かったならもう回り道なんてしない、最短距離で突き進むと乙戦ちゃんに返す。実際、ただカオスモンスターとの接触を避けるだけならともかく、向かう先が決まっていて、ここは教会という『建物』である以上、回り道なんてしようがない場所も当然ある筈。それにわたしは、ダークメガミ以外では大きく消耗する事なくここまで来れた。もしカオスモンスターが出てきたとしても…速攻で、纏めて斬り飛ばすだけ。
「あそこ、あの奥よ!」
「……っ、イリゼ…!」
けれど幸い、カオスモンスターと遭遇する事はなかった。後から知った事だけど、一度だけ遭遇する可能性はあって、けれどスカネクは力…透視でモンスターの事も見えていて、回り道が出来る段階で回避する事で接触を避けてくれていた。そのおかげで、聖堂以降は完全に戦闘を回避しここまで…後一歩のところまで来られた。
上がるスカネクの言葉を受けて、反射的にわたしは加速。一気に前に出て、目の前の扉へと肉薄して、二振りによる同時刺突で扉を破壊すると共に突入する。部屋の中へと、身を踊らせる。
(……ッ!これは……)
入った瞬間、周囲が一変した。中は大きな広間。大きく、広く、何もない…けれど明らかに、異質な空気に満ちた場所だった。床に、壁に、紫の光を帯びる幾つもの線が伸び、それ等は全て一つの場所へと向かっていた。その一点から、恐らくは『歪み』が広がっていた。
そしてその一点、大広間の中央。そこに鎮座するようにして、眠るようにして……イリゼが、いた。
今回のパロディ解説
・某超時空シンデレラ
マクロスfrontierに登場するヒロインの一人、ランカ・リーの事。走っている電車の上とか、飛んでいる飛行機の上とかに立つシーンって創作だと偶にありますが、実際の難易度は凄く高い筈ですね。
・「〜〜わたしは薙ぎ払うまでよ、全てッ!」
ガンダムSEEDシリーズの主人公の一人、シン・アスカの名台詞の一つのパロディ。ネプテューヌ以外いない(他に薙ぎ払える人がいない)という事で、わたし『が』ではなくわたし『は』にしました。
・「〜〜わたしは貴女の〜〜逸らしてるんじゃないわッ!」
新日本プロレス所属のプロレスラー、海野翔太の台詞の一つのパロディ。来週だったら1.4が終わってしまっているところだったので、ギリギリ間に合いました。