超次元ゲイムネプテューヌ Origins Unknown   作:シモツキ

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第五十七話 友達だから

 時空の歪みの収束。本来あり得ない、時間と空間が異常な状態となった『結果』が、更に異常な事態を起こした事による…理解も想定も不可能な、破壊の襲来。…それを、ウィードさんが押し留めた。防ぎきり、わたし達を守り抜いた。

 ウィードさんの存在も、力もまた、きっと本来ならあり得ないもの。その力と、瞳や声から感じる意思を見て、ユニちゃん達はウィードさんを信じる事に決めた。わたしは、今一番身体を張らなきゃいけないのは、皆を守らなきゃいけないのはわたしだって思っていたけど…雰囲気が、それをさせてくれなかった。皆の言う通り、不確実なのはわたしも同じで、しかもわたしは消耗していたから…皆の判断には、合理性もあると思った。だからわたしは、二段階目としての準備と、サポートに回った。もしもの時は、無理矢理にでも代わろうって。わたしは、そうしなきゃいけないって。

 でも、出来なかった。目の前の光景に、歪みの猛威に…その破壊に全身を食い破られて、今にも崩れ落ちてしまいそうな程ズタボロになりながらも、一歩も引く事なく、膝を突く事なく、堪え続けるウィードさんの姿に、圧倒されてしまっていた。わたしにもどうにか出来るか分からない、この場の全員が手出し出来ないような中で、元はただの人間だったウィードさんがわたし達皆を守って……そして、乗り越えた。計算も、勝算もない、純粋な力で。思いの、力で。

 

「……っ、ほんとにお前は…格好付け過ぎなんだよ、馬鹿…っ!」

「こんなところで男を見せなくたっていいじゃないか…そんな事しなくたって、いつだってウィードは……っ!」

 

 支えられた状態から弱々しく、けれど確かなサムズアップを見せたウィードさんの手を、うずめさんとくろめさんが強く握る。全員を守ってくれた、守ってみせたウィードさんを、皆が囲んで…だけどお二人と、そんなお二人の前で笑ってみせるウィードさんの姿を見て、小さく肩を竦め合う。これは邪魔しちゃいけないな、なんて事を言うように。

 

「男が覚悟決めて、身体張ろうとしてんだ…でしたっけ?やはりこの類いの事を言わせたら、ブランはピカイチですわね」

「思えばガナッシュも、ルウィーに戻ってからは一層の忠臣らしいしね。貴女のそういう熱いところ、悪くないと思うわよ?」

「うっせ、茶化すんじゃねぇよ。…わたしはただ、見てらんなかっただけだ」

 

 代わりににまにまとした顔で、ノワールさんとベールさんがブランさんに賛辞を送る。それにブランさんは、からかうなと鼻を鳴らして…そのやり取りを聞きながら、わたしはビヨンドフォームを解きつつぐるりと周囲を見回す。

 

(ここはまだ、アルテューヌさんが作り出した歪みの中。って事は、アルテューヌさんは健在?…いや、でも……)

 

 一度見回した限りでは、特に変化なんてないように見える。だけど本当に何もないなら、さっきまでの異常はなんだったんだって話になる。勿論わたしも歪みの事を全て把握してる訳じゃないし、単にわたしの想定が甘かっただけって可能性もあるけど…分からない。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。今はっきりしているのは、確かにあれは異常だったって事だけ。それ以外の事は、全部直接確かめるしかない。

 

「…………」

 

 うずめさんとくろめさんに肩を借りながら、ゆっくりとウィードさんは立ち上がる。これまでと同じように、歪みを殆ど一人で防ぎきった今も、ウィードさんの身体は元に戻っていて…それでも疲れはあるのか、へろへろな顔。へろへろだけど、やりきった顔。

 ちらりと少し視線を移せば、ユニちゃんもほっとしたような顔をしている。その顔を見て、わたしも安心する。これなら大丈夫。何も心配はない。だから……

 

「──どこへ行こうというのかな、ネプギア」

 

 背を向けたわたしを呼び止める、マジェコンヌさんの声。振り向けば、マジェコンヌさんはわたしを見つめていた。鋭い訳じゃない、怒りを帯びている訳でもない…だけど真剣な眼差しが、わたしを見ていた。

 

「…お姉ちゃんの、ところです」

「そのお姉ちゃん、というのは……」

「お姉ちゃんは、お姉ちゃんです。お姉ちゃんと…アルテューヌさんの、ところです」

 

 見つめる視線へ真っ直ぐに見返して、答える。マジェコンヌさんの声で、皆の視線もわたしに向く。

 

「ネプギアちゃん、それは何の為ですの?もしそれが、加勢の為だとしたら…それは、どちらの為の事ですの?」

「違いますよ、ベールさん。わたしは、加勢しに行く訳じゃありません。お姉ちゃんとアルテューヌさんの戦いは、お姉ちゃん達のものです。たとえお姉ちゃんが負けるとしても、アルテューヌさんが負けるとしても…わたしはそれに手出しなんてしませんし、誰であっても絶対にさせません」

「…ならば、ネプギアちゃんの目的は……」

 

 邪魔も、加勢も、させはしない。わたし自身にも、許さない。その為にわたしは、戦ったんだから。

 だからこそ、わたしは望まない。お姉ちゃんとアルテューヌさんの決戦が、お姉ちゃん達以外の手で終わってしまう事を。……なんていうのは、理由の半分。本心だけど、全部じゃない。お姉ちゃん達には、お姉ちゃん達の戦いには、お姉ちゃん達自身の手で決着を付けてほしいけど…やっぱり、心配だった。何かあったんじゃないかって、心配で心配で…居ても立ってもいられない。

 

「…いえ、これを訊くのは野暮というものですわね」

 

 そんなわたしの心を察してくれたのか、ベールさんはわたしとのやり取りを切り上げてくれる。小さく肩を竦めて、したいようにすればいいというように頬を緩める。

 加勢する訳じゃないとは言ったけど、わたしは理由を言わないまま。さっきまで矛を向けていたわたしがちゃんと言わないなんて、疑われるのが普通の事で…それなのにベールさんは、これ以上聞かない事を選んだ。きっと察したからだろうけど、確かめる事に固執しなかった。…ベールさんは、まだ信じてくれている。そう思うと、嬉しくて…けれど同時に、心が痛んだ。戦う前より、今の方が、ずっと痛んだ。

 けれど今は、それよりも確かめたい。今すぐに、自分の目で確かめたい。だからわたしは、今度こそ飛び立とうとして……再び、止められる。

 

「…待ちなさいよ、ネプギア」

 

 わたしを呼び止める声。ユニちゃんの声。ユニちゃんもまた、わたしを見つめる。…これまでとは違う、鋭い視線で。はったと強く、赤い瞳がわたしを射抜く。

 

「アンタにアンタなりの考えがあった事は分かってるわ。ネプギアの行動がなければ、アタシ達は打つ手無しになっていたかもしれないっていうのも認める。…だけど、それはそれ、これはこれよ」

「…うん。わたしだって、自分がしたのがどういう事か位、よく分かってるつもりだよ」

「だったら…言う事、あるんじゃないの?」

「…そうだね。だけど、今は待ってくれないかな?ちゃんと話すから、自分のした事の責任は、ちゃんと女神として果たすから」

 

 それはそれ、これはこれ。…わたしだって、そう思う。そう思うし、わたしは『自分の行動がなければ、ユニちゃん達は…』なんて事、微塵も考えていない。ただわたしは、わたしに出来る事をしただけだから。

 有耶無耶にはしない、後でちゃんと話す。それはきっちりと言った上で、また皆へ背を向ける。話なら、後でも出来る。今は、それより優先したい事があって…だから、ゆっくりなんてしていられない。

 

「だから、待ちなさいよ」

「ごめんねユニちゃん。気持ちは分かってる。でも、今は……」

 

 もう異常が起きてから、それなりに経っている。これ以上時間を掛ける訳にはいかない。とんでもない事になっているかもしれないからこそ、わたしは逸る気持ちを努めて抑えながら、アルテューヌさんがいる教会へと飛び立ち……

 

 

 

 

──頬を、張られる。腕を掴まれて、引っ張られて、振り向いた直後…ユニちゃんに、頬を、叩かれる。

 

「…ぁ、え……?」

 

 一瞬、何が起きたか分からなかった。熱い痛みが頬に走って、視界がブレて…それから叩かれたんだって事に気付く。

 

「だけど、今は何よ…でも、今は何よ…アタシはいいわ、アンタとの戦いで、今のビンタで、アンタへの怒りはぶつけたから。けど、二人は…ロムとラムは、ずっとネプギアの事を心配してたのよ!前みたいに、分かり易くそういう姿を見せてた訳じゃないけど、ネプギアが何の相談もなく敵に回って、二人が平気でいられる訳がないでしょ!?さっきだって二人は、アンタの事を信じて、戦わないで済む道を望んでたでしょ!?なんで戦う前提なんだって、ネプギアは味方だって!それなのに、責任だの、気持ちは分かってるだの…アンタが言わなきゃいけないのは、そんな言葉じゃないでしょうがッ!それが、アンタの、友達への言葉だなんて……アタシは絶対に、言わせないッ!」

 

 茫然とするわたしへ叩き付けられる言葉。じんわりと広がる頬の痛みよりも、ずっと響くユニちゃんの声。そこに籠る…怒りの思い。

 

「ユニ、ちゃん……」

「ユニ……」

 

 わたしと戦っていた時より、銃を向け合っていた時よりもずっと怒っている、肩を震わせるユニちゃんの肩越しに見える、二人の姿。不安そうな、悲しそうな表情を浮かべる、ロムちゃんとラムちゃんの姿。

 その顔を見て、はっとした。今になって、ユニちゃんにこうまで言われて、漸く気付いた。二人はずっと、一度もわたしに厳しい眼差しを向けてはこなかった事に。ずっとずっと、わたしの事を思って…わたしの事を、敵だと思わずにいてくれた。

 

(…あぁ、そっか……馬鹿だな、わたしは…)

 

 これが、ロムちゃんとラムちゃんへの…友達への言葉なのか。後でって、今はそれよりもって言って、今ちゃんと向き合わないのが、わたしにとっての『友達』なのか。…違う。そうじゃない。そんな訳がない。ロムちゃんとラムちゃんに…大切な友達だからこそ、そんな事は絶対に違う。

 

「…ロムちゃん、ラムちゃん」

 

 きゅっと両手を握って、二人を呼ぶ。ロムちゃんとラムちゃんは、何も言わずにわたしを見る、見てくれる。

 なんて言葉を掛けるべきか。どんな言葉を口にして、何を伝えたらいいか。…すぐには答えは出てこない。色んなものが浮かんでは、頭の中をぐるぐると回る。でも、どれも違うような気がして、何が良いのか分からなくて…けれどわたしを見つめる二人の目を見て、また気付く。気付かされる。必要なのは、考えた言葉なんかじゃないって。考えるべきじゃなくて、心に聞くべきなんだって。

 そうしてすぐに、分かった。浮かんできた。伝える言葉が。伝えたい、思いが。

 

「……ごめん…ごめんね、二人共…勝手な事して、ごめん…心配を掛けて、ごめん…ちゃんと話さなくて、何も言わなくて…本当に、ごめん…」

 

 浮かんだのは、謝罪だった。ごめんねって言葉だった。…そうだ、そうに決まってる。友達を悲しませたら…友達に酷い事をしたら、最初にしなきゃいけないのは謝る事以外、ある訳がない。

 

「わたしは皆の事が、嫌いになった訳じゃない。わたしは今でも、皆の事が大好きだよ。だけどわたしは、アルテューヌさんの事が放っておけなくて…アルテューヌさんを、どうしても敵だとは思い切れなくて…。…だって、アルテューヌさん…本当に美味しそうに、プリンを食べてたから…わたしに見せてくれる笑顔が、嘘のものだなんて思えなかったから…記憶喪失になる前のお姉ちゃんは、わたしの知らないお姉ちゃんで、だからわたしとアルテューヌさんは完全な初対面で……それでもアルテューヌさんは、アルテューヌさんも…お姉ちゃん、だったから…っ」

 

 謝罪の後を追うように、思いが口から漏れていく。隠していた訳じゃない、でもずっと伝えられていなかったわたしの気持ちを。わたしがアルテューヌさんに、もう一人のお姉ちゃんに思っていた事を。

 言い訳するつもりはない。でも、話さなくちゃって思った。わたしを思ってくれていた二人だからこそ、全部ちゃんと話すのが誠意。

 

「出来る事なら、わたしも皆とは戦いたくなかった…!こんな事には、なってほしくなかった…!だけど、分かっちゃったから…!アルテューヌさんも、お姉ちゃんも、戦わなくちゃ、決着を付けなくちゃ、どんな結果になっても納得出来ないって…!わたしの言葉じゃ止められないし、アルテューヌさんには最初から止まれる場所なんてなかったんだって…!だからせめて、止める事が出来ないなら力になろうって、アルテューヌさんだって一人じゃないって伝えたくて……っ!」

 

 どんどん言葉が溢れていく。声に、形になっていく。わたしのずっと抱えていたものが。止めたい思い、止められないんだって現実、そして諦められない…諦めたくない、もう一人のお姉ちゃんという存在。

 思えば、こうして言葉にする事は初めてだった。誰にも話さず、ずっと一人で何とかしようとしていたから、いつの間にか誰かに伝えるって考え自体がなくなっていた。…だからきっと、二人の思いにも気付けなかった。お姉ちゃんと、アルテューヌさんと…自分自身の事ばっかりで、頭がハツカネズミみたいになっちゃってた。

 

(そっか、わたし…こんなに、わたし……)

 

 迷いはなかった。自分に出来る事を、全力でやっているつもりだった。…でも、ほんとは…本当は、辛かったんだ。人を、国を、次元を守る女神なのに、それとは真逆の事をしてしまっている事が。皆の敵として、矛を向けて、戦う事が。わたしじゃアルテューヌさんを止められなくて、本当に支えられているかも分からなくて…ずっとずっと、怖かったんだ。

 気付いてしまえば、止まらなくなる。どんどん辛く、苦しくなって、抑えが効かなくなる。自分で選んだわたしより、一方的に突き付けられた皆の方がもっと辛い筈なのに、自分が悪いだけなのに、辛さが込み上げて、じわりと視界が歪んで……

 

「──だいじょうぶだよ、ネプギアちゃん」

 

 ふわり、と柔らかな感覚が頭に触れる。自分でも気付かなかった、いつの間にか俯いていたわたし。そのわたしの頭に触れる、柔らかくて温かい感覚。それと共に、優しい声が聞こえてきて……わたしの頭に、手が触れていた。側にまで来ていたロムちゃんが、わたしの頭に触れて…優しく、撫でてくれていた。大丈夫だよって、そう言いながら。

 

「もー、泣かないの。…ちゃんと、わかったから。……ネプギアだって、つらかったんでしょ?」

「ぇ、あ、あれ…?…そんな、わたし…、ぁ……」

 

 ぽふりと、また一つ温かさが触れる。ロムちゃんの右手の隣で、ラムちゃんの左手もわたしに触れて、撫でてくれる。怒る事も、悲しむ事もなく…わたしの事を、思ってくれる。

 泣かないの。…そう言われるまで、わたしは涙が零れている事にも気付かなかった。本当にわたしは、何にも気付けていなくて…わたしの心は、ずっとぐるぐる回っていた。前を向いて、突き進んでいる裏で、心の奥はずっと不安なままだった。

 

「わたしたちも、ごめんね。ネプギアちゃんの、力になれなくて」

「ち、違うよ…っ!これはわたしが勝手にやった事で、ロムちゃんが謝るような事は……」

「いーの。…わたしたちだって、力になりたかったんだから。ネプギアは、わたしとロムちゃんの…だいじな友達なんだから」

「……っ…ロムちゃん、ラムちゃん…っ!」

 

 だから、ごめんね。…そう、二人は言った。力になれなかったって事と、力になりたかったって事と…どっちかが悪いとかじゃなくて、どっちも謝って、それでおあいこだっていう事の全部が、わたしを思ってくれる二人の優しい気持ちが、全部全部伝わってきた。

 ロムちゃんは、ラムちゃんは…二人はまだ、わたしを友達だと思ってくれている。…それが何より、嬉しかった。今回の事は、皆を頼ればもっと上手くいった…とは、限らない。結果は変わらないかもしれないし、むしろもっと悪くなっていたかもしれない。だけど…頼れたんだ。話しても、良かったんだ。だって、わたし達は…友達、なんだから。

 

「…でもね、ネプギアちゃん。一つだけ、おこってることも…あるんだよ?」

「…怒ってる、事……?」

「けがしてる時は、ちゃんとたよって。そしたら、ちゃんと治してあげるから。わたしは、痛いのはいやだけど…みんなが痛い思いをするのは、もっといやだから」

 

 頭から手を離したロムちゃんは、そう言いながらわたしの胸元へ手をかざす。その手に魔法の光が灯って、わたしの怪我を癒してくれる。

 頼ってほしい。それはわたし達女神候補生が、ずっとお姉ちゃんに思っていた事。今思えば、小さな…でもその思いを抱えていた頃は、本当に深く悩んでいた事。それを今、口にしたのは…それを『怒っている』と表現したのは…ひょっとしたら、ロムちゃんなりの意地悪なのかもしれない。こういう言い方をする事で、わたしに釘を刺そうっていう事かもしれない。

 

「…うん、約束するよ。…それと……」

「……?」

「…怪我の事、すっかり忘れてたよ…痛た……」

 

 治癒魔法を受けた事で、逆に一番の怪我を、ユニちゃんに撃たれた胸元の事を思い出して、その痛みに苦しめられるわたし。皆が痛い思いをするのは嫌だと言うロムちゃんだけど、結果的にはむしろロムちゃんの治癒によって痛い思いをさせられていた。…悪いのは自分なんだけども。

 

「忘れてた、って…撃たれといてよく忘れられるわね……」

「ネプテューヌちゃんたちのことで頭がいっぱいだったんじゃない?あ、ユニ、ちょっとうごかないで」

「あ、うん…って、なんでラムはアタシの方に来てるのよ。一緒に治してあげたら?」

「ネプギアにはロムちゃんが付いてるんだからだいじょーぶに決まってるじゃない。…ユニだって、けがしてるでしょ?」

 

 呆れた声が聞こえてきたと思って顔を上げれば、その声の通りにユニちゃんが呆れていた。その発言に答えつつ、ラムちゃんはわたしの前、ロムちゃんの隣から離れていって…ロムちゃんと同じように、ユニちゃんの胸元へ手をかざす。わたしが打ち込んだギア・ナックルの怪我を癒し始める。

 

「…世話かけるわね」

「べっつにー?…友達でしょ?わたしと、ユニだって」

「…えぇ、そうね。ありがと、ラム」

 

 軽い調子で一度答えてから、静かな声で言うラムちゃん。その言葉に、ユニちゃんは目を丸くして…それから、頬を緩めた。

 

(…友達…友達、か……)

 

 少しずつ痛みが引いていく。その中で、わたしは考える。前にアルテューヌさんに言った時は、否定をされた。今言っても多分、答えは同じ。だけど、もしかしたら…そんな風に、ぼんやりと思う。

 

「ふぅ…これで、よし」

「さっすがロムちゃん、早いわね!こっちは…このけがを治ったことにして、次にすすむ?」

「いやなんでよ、じっとしてるからちゃんと治して頂戴…」

「あはは…」

 

 少しだけ治癒の開始が遅かったのと、ロムちゃんの方が得意だって事から、もう少し掛かりそうなユニちゃんの怪我。治してもらったわたしは胸に触れて、ロムちゃんに感謝を伝えて…ユニちゃんに、歩み寄る。

 

「…ユニちゃんも、ごめんね」

「…アタシはいいわよ。さっきも言った通り、ネプギアへの不満はもうぶつけたんだから」

「だとしても、だよ。…それから、ありがとう。二人の為に…わたしの為に、怒ってくれて。最後までわたしと、向き合ってくれて」

 

 最初に、謝る。それから、ありがとうと言う。どっちも大事な事。どっちも伝えたかった事。だってユニちゃんの怒りは…わたしを思ってくれているからこそだから。それは分かる。自信を持って言える。ユニちゃんは、そういう子で…自信を持てる位の繋がりが、わたしとユニちゃんにはあるから。

 

「…行きなさい、ネプギア。アンタのやりたかった事を、望みを、意思を…最後まで、貫いてきなさい」

「…うん」

「それと…今回のは引き分け、或いはノーカウントよ!いいわね?」

「勿論。わたしとユニちゃんの勝負に…ライバル関係に相応しい戦いは、こんなものじゃないもんね」

 

 ユニちゃんの言葉に深く頷いて、わたしは軽く拳を突き出す。するとユニちゃんは小さく笑って…自分の拳を、わたしの拳に合わせてくれる。…こういうの、なんだかちょっと良いよね。そんな風に思いながら、わたし達は笑い合う。

 

「あ、それわたしもやりたーい」

「わたしも…」

 

 更にロムちゃんとラムちゃんも左右から拳をくっ付けてきて、なんだか新しい円陣みたいな格好に。それがおかしくて、今度はくすりと笑って……いつの間にか、心は軽くなっていた。知らぬ間に、気付かない内に重く、固くなっていた心が、いつも通りになっていた。

 

「…本当に、ありがとう皆。──行ってきます」

 

 三人からの頷きを受け取って、何も言わずに見守ってくれていたノワールさん達にお辞儀をして、飛び立つ。アルテューヌさんの下へ、全速力で向かう。

 何が起きているかは分からない。もし大変な事になっているなら助けたいし、お姉ちゃんとアルテューヌさんの決戦がわたしの予想した通りに起こって、今もまだ続いているなら、見届けたい。そして…ちゃんと、伝えたい。これまでは言わなかった、言えなかった、遠慮していた…わたしも『当たり前』になっていたからこそ頭に浮かんでいなかった、色々な事を。今、わたしの心の中にある…伝えたい、思いを。

 

 

 

 

 ネクストフォームでの全力を、力の全てをぶつけるネプテューヌ。感情のままに、諦められぬという執念のままに、自らの全てを力へと注ぐアルテューヌ。互いの刃は激突し、その度研ぎ澄まされていく。意識が、感覚が…その身に纏い、振るう力が。

 

「でやぁああああぁぁッ!」

 

 次々飛来するエクスブレイドを躱しながら、超低空飛行でネプテューヌは接近。そこからネプテューヌは反転するように身体を回し、爪先で地面を蹴る。砂煙を舞わせ、一瞬アルテューヌの視界を奪い、その一瞬で横薙ぎを打ち込む。

 

「ぐッ…!」

「ち…ッ!」

 

 砂煙の中から飛び出してきた斬撃を、アルテューヌは真正面から受け止める。大太刀で防御しても尚、断ち斬られるような衝撃が、感覚が全身を走り…アルテューヌが背にしていた教会の壁が、横一文字に斬り裂かれる。触れていない、それどころかネプテューヌの大太刀の刃が届かない距離にある筈の壁面が、斬撃の形で消滅する。

 

(…やっぱり、アルテューヌには効きが悪い…確かにアルテューヌにも流れているのね、シェアエナジーが…)

 

 せめぎ合いからアルテューヌが押し返し、ネプテューヌも自ら一度退く。そこからアルテューヌは反撃を仕掛け、連続斬りをネプテューヌは凌ぐ。

 ネプテューヌの持つネクストフォームの力は、破壊の極致。消滅そのもの。防御も、性質も、世の法則も関係なく、極まれば万物全てが斬り裂かれ、消滅する。しかしその力の根源は、あくまでシェアエナジー。故に同じシェアエナジーを持つ、シェアエナジーを高いレベルで使いこなす存在に対しては、ネクストフォームの超常的な力もそう簡単には素通り出来ない。受け止めたアルテューヌは無傷でありながら、その背後の壁は斬り裂かれたのが、その証左。

 

「まだよ…もっと、もっと…もっと、もっと、もっと!もっとッ!」

 

 斬撃と共に、小型のエクスブレイドが飛ぶ。左から、右から、上から、背後から…四方八方から、ネプテューヌを襲う。一発一発は、大した脅威ではない。されどそれが立て続けに、アルテューヌの攻撃の鋭さはそのままに襲い掛かるとなれば、全て対処するのは容易ではない。普通に戦えば、完全に凌ぎきるのは困難。…そう、普通ならば。

 

「そんな刃、わたしには届かない…ッ!」

 

 迫る斬撃を弾くと共に振り抜かれる、ネプテューヌの大太刀。その軌道は紫紺に煌めき、触れたエクスブレイドは忽ち消える。エクスブレイドは迎撃せずとも、攻防の余波だけで消えていく。

 比類なき破壊。絶対の攻撃。それは即ち、その力を防御に、迎撃に当てれば、突破不可な守りとなるという事。攻めも守りも、ネプテューヌに隙はなく…されどアルテューヌは、攻撃を続ける。攻撃が、続く。

 

「届かない?いいや、届かせる…ッ!」

 

 更に飛来するエクスブレイド。依然として幾本もの剣が消し飛ばされ…しかしその内の一本が、抜ける。アルテューヌの言葉通り、ネプテューヌの力を突破し彼女へ迫る。

 咄嗟に、寸前のところで身体を捻り、躱すネプテューヌ。その隙を突いてアルテューヌが斬り上げ、辛うじて防御したネプテューヌを弾き飛ばす。

 

「貴女、何を…!」

「さて、何かしらね…ッ!」

 

 距離を離された先にも、斬撃とエクスブレイドが飛ぶ。先行する斬撃を避け、続くエクスブレイドを力を纏わせた斬撃で斬り飛ばす。斬り飛ばし、確信する。先の一撃も、今のエクスブレイドも、自身が力の制御を損ねたのではなく、エクスブレイドに力が通用しなかったのだと。

 そして同時に、気付く。通用しなかった理由に。エクスブレイドの刀身が、薄っすらと歪んでいた事に。

 

「まだ終わりじゃないわよ…!貴女のターンなんか、来させない…ッ!」

 

 突進からの刺突を、ネプテューヌは飛び越える形で回避。尚且つ上から反撃を打ち込もうとするが、それを読んでいたように四方からエクスブレイドが現れ、同時に襲い掛かる。更に下からも、三つ編みの先のパーツがネプテューヌを突き上げてくる。

 六方向からの、カウンターへのカウンター。対するネプテューヌは大太刀から左手を離し、その手で両手剣サイズのエクスブレイドを作り出し掴む。二振りを同時に振るう事で、四本のエクスブレイドを弾き、下からの突き上げも脚のプロセッサで受けて防ぐ。

 

「歪みの力を…ううん、性質を纏わせる事で、わたしの力を阻むなんてね…けれどそれなら、能力に頼らず物理的に凌ぐまでよ!」

「そうね、凌げるならね…ッ!」

 

 全て弾いた直後にネプテューヌが腕を振ってエクスレイドを投げ放てば、振り向いたアルテューヌは打ち払い、再び刺突。ネプテューヌは差し込むような動きで自らの大太刀の側面をアルテューヌの大太刀の側面へと当て、防ぐのではなくその軌道を逸らす。まだ片手持ち状態であったが故の、負荷の少ない防御であり…刺突が逸れていく中で、左手の指を真っ直ぐ伸ばす。アルテューヌの首元に向け、貫手を打ち込む。一方アルテューヌもアルテューヌで迫り来る貫手を見据え…同じく大太刀から左手を離して、その手でネプテューヌの手首を掴む。

 

『……ッ!』

 

 その瞬間、二人は同時に、同じ選択を取る。触れた手首と掌から、ネプテューヌはネクストフォームの破壊の力を、アルテューヌはカオスエナジー…そして無理矢理引き出した『歪み』を流し込み、その力で相手を食い破らんとする。結果、全く性質の違う…されどどちらも高位且つ常軌を逸した力同士がぶつかり合い、喰らい合い…直後、爆ぜるようにして衝撃波が両者を襲う。刃同士でぶつかり合い、無力化し合った一度目とは違う、行き場のないエネルギーの暴走とでも言うべき衝撃波で互いに弾かれ、しかしすぐさま次の一手を放つ。構え直したネプテューヌは大上段から大太刀を振り抜き、大太刀を掲げたアルテューヌは防ぐと共にがら空きの胴を蹴り付ける。

 

「ぁぐ…っ!」

 

 爪先が腹部へ食い込むも、堪えてネプテューヌはアルテューヌを押し切る。アルテューヌは姿勢を崩し…しかし追撃は敵わない。後一歩のところでまた、エクスブレイドに阻まれる。歪みを帯びたエクスブレイドは、どうしても躱すか弾くしかない。

 

(完全に、わたしの優位がなくなってる…無理をしている筈なのに、むしろより強くなってる……!)

 

 既にネプテューヌは実感していた。自身にあった、純粋なパワーでの優位はもう失われ、ほぼ互角になっていると。ネクストフォームの力にも歪みを用いて対応されている以上、今のままでは通用しないと。依然としてプロセッサの防御能力では優っているが、その分アルテューヌは身軽であり、その防御能力もダメージによって低下気味。最早明確な優位は殆どなく…むしろ活動限界という、はっきりとした不利だけがネプテューヌに付き纏う。長時間は持たない筈という見立ても、鬼気迫るアルテューヌの姿が、感じ取れる力が、その認識を揺らがせる。

 しかしそれは、驚きではあっても不可解ではなかった。無理をしているからこその、限界の無視。無茶を飲み込んで、それでも尚力を振り絞る…それも一つの強さだと、ネプテューヌは知っている。

 

「消されるのなら消されない攻撃をするまで、弾かれるのならそれ以上に仕掛けるまで、まだ終わりはしないわ…まだ、まだ…ッ!」

 

 至近距離では、大太刀と共にエクスブレイドがネプテューヌを襲う。距離を開ければ、飛翔する斬撃とエクスブレイドの連携が、次から次へと押し寄せる。ネクストフォームの力を以ってネプテューヌが攻勢に回れば、勿論生半可な防御など許さないが、アルテューヌ側の攻勢を捩じ伏せるだけのパワーかスピードがない限り、まずその許さない状況を取り戻せない。

 そしてそれをアルテューヌも理解していたからこそ、アルテューヌは攻撃の手を緩めない。斬り付け、打ち込み、際限などなくその力を振るう。

 

「これでッ!」

 

 大きく飛んだアルテューヌの、全身の力を込めた斬撃。それをネプテューヌは地面を踏み締めての斬り上げで迎撃するが、それを目眩しとする形で直後にアルテューヌはエクスブレイドを四本射出。放たれた刃は空から地へと真っ直ぐ飛び…しかしその全てが、ネプテューヌには触れず地面に刺さる。

 一瞬ネプテューヌは、それを注意を逸らす為の囮だと思った。一本程度ならともかく、四本全てがただ外れる事などある筈がないと考えた。しかしそれは、半分正解。半分は正解であり…半分は、間違い。

 

(これは…ッ!?)

 

 刀身に歪みを帯びていたエクスブレイド。だが次の瞬間、それぞれの歪みは増大する。渦巻くように、一気にその歪みが濃くなり…陣を組むように突き立てられた四本、その内側の空間へと一気に歪みが押し寄せる。

 本能的に、ネプテューヌは真上へ飛んで回避。四本の内側は、完全に歪みへと包まれ…そこへアルテューヌが突進。二人は空中で斬り結び、すぐにネプテューヌが押し返す…が、すぐにまた、今度は三本のエクスブレイドが飛ぶ。同じように陣の内側へ歪みが生まれ、広がった歪みがネプテューヌへ迫る。

 

「舐めないで頂戴…こんなもので、この程度でッ!」

 

 一度目は、咄嗟に離脱を選んだネプテューヌ。しかし二度目の今は、迫る歪みへ斬っ先を向ける。力を研ぎ澄まし、力を刃へと集め…宙で踏み込むようにして、歪みへと刺突。歪みへと触れた刃は、これまで経験した事のない感覚をネプテューヌの手に伝えながらも深く食い込み…そのまま貫く。

 

「えぇそうね、この程度じゃないわ…そうよ、もっと強く…もっと深く…全てを、飲み込むッ!」

「冗談じゃないわ…貴女、まだ……ッ!」

 

 ちらりとネプテューヌが下を見れば、四本のエクスブレイドによって生まれた歪みは周囲へと溶けるように薄れ始めていた。逆にいえば、多少の間はそこに留まっていた。そしてネプテューヌは視線を戻し、その目に捉える。アルテューヌの纏う歪みが、その密度を増している事に。それまではアルテューヌの周囲に留まっていた歪みは、少しずつ…されど着実に、広がっている事に。

 このまま広がれば、拡大と共に密度も増せば、近付く事はおろか、まともに戦う事すら厳しくなる。その前に決着を…そんな思考も過ぎるが、恐らくそれは敵わない。一太刀や二太刀浴びせたところで止まりはしない、それだけの気迫をアルテューヌ自身が放っている。

 

(…だけど、今ので分かった。歪みだって、斬る事は出来る。時空の歪みを消滅させてしまうのは危険でも、そこにあるまま、ただ斬るだけならきっと大丈夫。…そう、わたしがわたしの力に囚われる必要なんてない。これはわたしの力よ。いーすんが、皆が望んでくれた、限界を超えて未来へ進むわたしの姿。だからその在り方だって、わたしが……)

 

 一時は勝敗が決する目前まで至っていたネプテューヌは、今や押され気味。無理をしている筈のアルテューヌは、しかしその底を見せず、それどころか底がなくなったかのような鬼気迫る勢い。

 それでもまだ、ネプテューヌは勝利への道を信じていた。その道はまだ閉ざされていないと、まだ自身の力は届き得ると、戦う者としての心を崩さずにいた。そして自らの力の由来が何だったのかを思い出し、真に限界を超えるとは何たるかを確かめ直して……

 

──気付く。可能性、その意味を。限界を超えた先にあるのが、何なのかを。

 

「落ちなさいッ!」

 

 歪みを伴い迫るアルテューヌの上段斬り…と見せかけ、腕を身体で強引に引っ張る形で軌道を変えた、ネプテューヌからすれば袈裟懸けの様な形となった斬撃。角度を変える事で適切な防御をさせない事を狙ったその一撃を、ネプテューヌは大太刀で受けるのではなく、後ろに下がる事で躱す。続く打ち込みも同じように避け、距離を取る。追撃として放たれたエクスブレイドも、一本たりとも弾く事なく、全てを避ける事で凌ぐ。

 

「逃がさない…逃げ場なんて、どこにもないわッ!」

 

 次々打ち込む攻撃の全てを、ネプテューヌは回避し乗り切る。反撃はその気配すら見せず、引き付けてから躱す最小限の動きで避けていく。こと、ここにきて煽るつもりか、それとも活動限界が近くこれまでのように攻められないのか。回避一辺倒なネプテューヌの動きの理由をアルテューヌは数瞬考え…しかし、何であろうと関係ないと思考を打ち切り、意識を自らが纏った力、そしてネプテューヌのみに向ける。

 無論、何も考えない訳ではない。なんであろうと打ち破り、飲み込む。その自信を持つが故の判断。そしてそれを現実なものとすべく、大太刀を振るう。斬撃を飛ばし、エクスブレイドを放つ。攻撃の一つ一つに歪みを帯びさせ、歪みを拡大、拡散させていく。狙い通りに歪みは広がり、歪み同士が繋がり混ざり合う事で、ネプテューヌの行く先を着実に奪う。

 

「でぇいッ!」

「ぅ、く……ッ!」

 

 攻撃を続けるアルテューヌと回避に徹するネプテューヌでは、当然負担が大きいのはアルテューヌの方。しかし触れる訳にはいかない歪みが点在する中となれば話は別で、アルテューヌの狙い通り、少しずつネプテューヌの回避は苦しくなっていく。それでも一発たりとも受けないのは、流石歴戦の女神と言ったところだが、いよいよアルテューヌの斬り上げた刃が、ネプテューヌの顔を掠める。もし顔を逸らしていなければ当たっていた…それ程までに、ネプテューヌは追い詰められる。

 

(これでもまだ反撃しないというの?やっぱり、何か……)

 

 それでも尚反撃の意思を見せないネプテューヌを前に、再び抱く疑問。だが次の瞬間、アルテューヌは見る。ネプテューヌの瞳を。そこに宿る、勝つ意思を。

 ならばやはり、考える必要はない。ただ仕留めるまで。終わらせるまで。アルテューヌもまた、その意思を研ぎ澄まし…最後の仕込みを、放つ。

 

「言ったでしょう?もう貴女に、逃げ場は……ないッ!」

「……っ!?」

 

 打ち込む複数のエクスブレイド。それ等が生み出す新たな歪み。これまでも同じように、ネプテューヌは避け…気付く。放ったエクスブレイドの一つ一つが周囲の歪みを繋げ、一つにし、一気にネプテューヌを覆っていくさまを。完全に退路が塞がれた事を。

 唯一残った道は、正面のみ。だがそこにアルテューヌが躍り出る。目を見開くネプテューヌ。得物を振り被るアルテューヌ。そしてアルテューヌは大太刀を振り抜き…歪みに包まれた斬撃が最後の道を塞ぎ、包む。

 

「このまま消えて、無くなるがいいわ…ッ!」

 

 叩き付ける言葉と共に、斬撃も融合。歪みは全てを包み込み、飲み込み……完全に、ネプテューヌの姿は見えなくなる。

 

「…漸く、これで……」

 

 斬った訳でも、貫いた訳でもない。ただ歪みで煽っただけ。ただ歪みが、飲み込んだだけ。ここまでの戦いからすれば、あまりにも呆気ない…最後の一手。

 爽快感はない。ある筈がない。しかしそれでも現実として、歪みは完璧に包み込んだ。そしてそれが示す答えは、ただ一つ。明確な、絶対的な、確定的な、アルテューヌの勝利……

 

 

 

 

 

 

──そんな思考を覆す、両断する一太刀。静かに、ただただネプテューヌを覆い隠した、飲み込んだ筈の歪みを……紫の一閃が、斬り裂く。

 

「な……ッ!?」

 

 それまでは一度もなかった、エクスブレイド自体が弾かれる事はあっても、それそのものが砕かれる事はなかった、時空の歪み。それが斬り裂かれ、切り開かれ……霧散していく歪みの内側から、大太刀を振り抜いたネプテューヌが姿を現す。絶句するアルテューヌを前に、双眸へより強い意思を灯らせた、ネプテューヌが見据える。そして……

 

「──もう、貴女の力は通用しないわ。カオスエナジーも、歪みも、全て…わたしが、斬り裂く」

 

 ネプテューヌは響かせる。声を、意思を。アルテューヌへ向けた……最後の勝利宣言を。




今回のパロディ解説

・「──どこへ行こうというのかな〜〜」
天空の城ラピュタに登場するキャラの一人、ムスカことロムスカ・パロ・ウル・ラピュタの代名詞的な台詞の一つのパロディ。マジェコンヌの場合、ラスボス繋がりでもありますね。

・「〜〜このけがを治った事にして、次にすすむ?」
マリオブラザーズシリーズにおける、システムの一つとその際のテキストのパロディ。ネプギアとロムは優しい言葉を掛け合う関係、ユニとラムは軽口を言い合う、言い合える関係…なんて風に思っています。

・「〜〜もっと、もっと…もっと、もっと、もっと!もっとッ!」
プロレスラー、高橋ヒロムこと高橋広夢さんの代名詞的な台詞の一つのパロディ。…ではあるのですが、これ単体だと本当に分かり辛いですね。もっと、の後に続く部分まで入れた方が良かったかもです。
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