超次元ゲイムネプテューヌ Origins Unknown   作:シモツキ

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第五十八話 全てを断

 思えばわたしは、自分の過去に思いを馳せる事なんて殆どなかった。自分が記憶喪失だと気付いたばかりの頃は、記憶よりも目の前の事で頭が一杯だったし、いーすんが記憶喪失を治してくれるってなってからは、特に思い悩む理由もなくなったし…わたしはノワール達と争っていた過去より、絆を結べた今とこれからの方が大事だから、もう過去について考える事はなくなった。わたしの中で、記憶喪失になる前のわたしの事は、わたし自身が完全に過去のものとして…わたしとは別のものとしていた。

 ここに、良いも悪いもない…と思う。だって、自分の記憶の扱いなんだから。アルテューヌの事についても、結果論且つ普通はあり得ない事であって、わたしには責任があると思っているけど、じゃあわたしは間違っていたのか…って言われると、それには頷けないから。…でも、だけど…もしほんの少しでも、わたしがわたしの過去に思いを馳せていたら、手を伸ばしていたら、こんな事にはならなかったのかもしれない。何かが違ったのかもしれない。

 だから、わたしは向かい合う。ちゃんと向かい合う、向かい合いたい。刃を交える形で、アルテューヌと。わたしの過去と。もう一人の…わたし、そのものと。

 

 

 

 

 もう通用しない。ネプテューヌはそう言った。アルテューヌへ向け、そう言い切った。

 戦いにおいて、強い言葉、大きく出る表現を使う事は、そこまで珍しい事ではない。ハッタリとして駆け引きに使う事は勿論、相手に言葉で力の差を示す事により、不要な戦いを避ける手段としても時にそれは有用となる。

 だが、この時のネプテューヌは違っていた。意図的に強い言葉を使っているのではなく…単純に、純粋に…ただ、事実を述べているだけかのように、通用しないと言っていた。そう聞こえてしまう、そうとしか思えない程に…自然にネプテューヌは、言っていた。

 

「……何を…」

 

 悠然と、最早勝敗は決したかの如く構え直すネプテューヌ。そのネプテューヌの姿に、言葉に、アルテューヌは唖然とし…そこから怒りが湧き上がる。決まったと思った状態から覆された…その事実よりも、既に勝利したと言わんばかりの態度に怒りが湧き立ち、得物を握る手に力が籠る。

 

「…何を、ふざけた事をッ!」

 

 声を叩き付けると共に、アルテューヌは大太刀を振るう。歪みを帯びた斬撃を、ネプテューヌへと向けて放つ。

 それは、本来ならばあり得ない力。時間が、空間が、当たり前に存在するものが歪み、異質な状態となった、触れてはならない筈の攻撃。だが……

 

「……ッ…!」

 

 唸りを上げて襲い掛かる斬撃に対し、ネプテューヌは大太刀を当てる。振り抜くでも、叩き付けるでもなく、まるでペーパーナイフを扱うかのように、滑らせるように刃を振り…されどたったそれだけで、歪み諸共放たれた斬撃は両断される。

 再び驚きながらも、間髪入れずにアルテューヌはエクスブレイド二本を射出。二本はそれぞれ別の角度からネプテューヌへ迫り…しかしそれも、大太刀の一振りで真っ二つとなる。

 

(一体、何が…まさか、完全に消し去っているとでもいうの…?)

 

 二度連続で、ネプテューヌを飲み込んだ筈の歪みも合わせれば三度立て続けに斬り裂かれた事で、アルテューヌの中では怒りよりも動揺と、目の前で起こった事を分析しなければならないという思考が上回る。そしてネプテューヌの力を既にある程度把握していたアルテューヌは、これも彼女の力、ネクストフォームの能力によるものかと考える。

 だが、斬撃もエクスブレイドも、両断こそされども帯びた歪みは消えていなかった。歪みはそこにあるまま、刃が歪みを纏ったまま、ネプテューヌの大太刀は斬り裂いていた。

 故に、アルテューヌは困惑する。消し去られたのなら分かる。消し去ってしまう事自体、歪みに負けず劣らずの非常識だが、まだ消し去ったというのなら、そういうものだと理解してしまえる。…が、ネプテューヌは斬っている。ネプテューヌの大太刀は、確かに歪みを歪みのまま、消し去るのではなく切断している。それはあまりにも理解し難く…されどアルテューヌに、それ以上の事を落ち着いて考える時間はなかった。

 

「これで分かったかしら?…なら、今度はこちらからいくわよ」

 

 息を吐くような落ち着いた声音で、ネプテューヌは言う。微かにネプテューヌは身体を前に倒し…直後、静止状態から一気に加速。一息で肉薄し、アルテューヌに向け得物を振り出す。

 咄嗟に大太刀を掲げ、それを受けようとしたアルテューヌ。だがその直後、反射的にアルテューヌは躱す。思考ではなく本能的に、直感的に身体を逸らし…紙一重を、振り下ろされた刃が通り過ぎる。アルテューヌが躱した事で、大太刀は空を切り……アルテューヌの背筋に、悪寒が走る。

 

「……ッ!?(今、何が……)」

 

 確かにアルテューヌは避けた。斬撃は当たらず、空を切った。それは間違いない。間違いないが…アルテューヌは感じる。ネプテューヌが、空を斬った事を。単なる表現ではなく…真にネプテューヌの一太刀は、虚空を斬り裂いていた事を。

 自分自身、その意味は把握し切れていない。見えない、触れられないものを斬り裂いたかどうかなど、通常の感覚で把握出来る筈がなく…それでも斬ったのだと、理解する。分かってしまう。

 

「随分と余裕そうね。それとも…茫然とでもした?」

 

 ネプテューヌの声で、アルテューヌは我に返る。すぐさま次の一太刀が振るわれ、アルテューヌは大きく後ろへ下がる。横薙ぎが一筋の線を描くように放たれ、再びその空間が切断される。

 

(ふざけた、事を…まだ先を行くというの…?これだけ手を伸ばして、今届くもの全てを掴んで、費やしても尚、貴女の方が上だっていうの……?)

 

 把握出来ない。即ちそれは、それ程までに高位の、自身が理解出来る範囲よりも遥か高みの力という事。

 今のアルテューヌは、カオスエナジーの力を限界まで引き出している。自身の限界ではなく、自らの中で渦巻くカオスエナジーを限界まで行使し…時空の歪んだこの領域を強引に掌握する事で、歪みをも力に変えている。ほんの少しでも気を抜けば、その制御を見誤れば、自身が歪みに飲み込まれる…そんな瀬戸際の、ギリギリの均衡の中でアルテューヌは全てを力に変えて、その刃を振るってきた。誇るつもりはない、女神本来の在り方や強さとはかけ離れた今の力を、アルテューヌは誇らしいとは思っていない。しかしそれでも、その強さに自信はあった。今のネプテューヌを超えていると、思っていた。

 

「…認めないわ…そんなもの、そんな力…ッ!」

 

 三度目の攻撃を仕掛けるべく、ネプテューヌは振り被る。だがネプテューヌが踏み込むより先に、アルテューヌは反撃。エクスブレイドを打ち込み、自身もその後を追う。ネプテューヌがエクスブレイドを斬り裂いた直後にその真後ろから現れ、コンパクトな振りで大太刀をネプテューヌの大太刀へぶつける。

 

「……っ、貴女…」

「ふん、やっぱりその力はちゃんと、『刃先』を当てて『斬る』事をしなきゃ機能しないようね…!全く、どこの焱熱系最強よ…!」

 

 アルテューヌが得物を打ち付けたのは、ネプテューヌの大太刀の側面。その一撃でネプテューヌの刃を押し除けられた事で、アルテューヌは確信する。どれだけ理解不能な力だろうと、切断能力を有していようと、あくまで『斬っている』のなら、打つ手はあると。触れてはいけないのは、あくまで振るわれた、斬撃となったものだけで、であればまだやりようはあると。

 

「けど、だんだん読めてきたわ。差し詰め今の貴女は、消し去る力を刀身に、斬撃という形に集約して、威力特化にしたってところでしょう?そしてさっきまでは回避に徹していたのも、集約する為に意識を集中していたから…違うかしら…ッ!」

「…腹立たしいわね、自分に自分の考えを読まれるっていうのは…!」

 

 大太刀を下へと押し付けながら、敢えてアルテューヌは言う。わざと推測を明かし…ネプテューヌの反応で、確かめる。言葉だけなら嘘の可能性もあるが、聞いた瞬間の表情と合わさる事で、間違いないと確証を得る。

 押し除けられた状態から、逆側にネプテューヌは得物を回す。回転させる事でアルテューヌの大太刀を躱すと共に、逆袈裟の軌道で斬り上げる。だがアルテューヌにとってそれは予想の範疇。故に、横に逸れる形で落ち着いて回避し、今一度エクスブレイドを打ち込む。付かず離れずの距離で揺さ振りを掛けながら、常に位置取りを変えながらエクスブレイドを射出する。

 

「安直ね、こうすればいつかは隙を晒すとでも?」

「無駄よ、もう貴女の余裕ぶった態度なんて…ッ!」

 

 放ったエクスブレイドは、やはり全て斬り払われる。豆腐か何かのように、何の抵抗もなくただ斬られる。だが、アルテューヌからすればそれで良かった。斬るというアクションをさせている、迎撃の為にそのアクションを費やさせている時点でアルテューヌの狙い通りであり、絶対に隙を晒さない者など存在しない。そしてその為のエクスブレイドと揺さ振りであり……また一つ、今度は完全に偶発的な形で、アルテューヌはある事に気が付く。

 

(…さっきから、やけに振りが単純ね…ひょっとして……)

 

 横薙ぎ、切り上げ、振り下ろし。軽い斬撃でも、あっさりとエクスブレイドは切断される。ネプテューヌの動きは最小限で、確かに攻め入る隙は中々生まれない。

 しかしそれはそれとして、その振りは妙に単純で、その太刀筋は妙に素直。あくまでエクスブレイドの迎撃であり、それ自体に駆け引きの必要性など大してないのは事実だが、それにしても動きが単調で、複雑さがない。無論それが、何の意味もない偶々である筈がなく…浮かぶのは可能性と、小さな笑み。

 

「…あぁ、そういう事。貴女もその力を制御するのに、随分と苦労しているようね…!」

 

 ここだ、とアルテューヌは一気に踏み込む。踏み込み、大太刀を振り上げ…一瞬止まって、タイミングをずらした上で側面に回りつつネプテューヌへ横薙ぎ。対するネプテューヌは、アルテューヌの引っ掛けに気付いた事で迎撃の袈裟懸けを辛うじて止める…が、その大太刀はアルテューヌを追う事なく、そのまま身を翻して回避を選ぶ。身を捻る事が出来るなら、避けるよりも身体を回転させて側面へ回ったアルテューヌを追う、追って今度こそ斬撃をぶつける方が確実という状況ながら、選んだのは不確実な回避。

 それによって、アルテューヌは自分の見立てが合っていた事を知る。元から今の攻撃は、確かめる為のものだった。そしてその結果、ネプテューヌは複雑な、細やかな制御を必要とする斬撃は放てない…やらないのではなく、出来ないのだと確信を得る。

 

(こんな不安定な力で、もう通用しないだなんて大口を叩くとはね。…いや…違うわね。こんな不安定な力しかもう使えないから、それを力以外の部分で補おうとしている。隠そうとしている。つまり…彼女にはもう、後がない…!)

 

 状態を落ち着いて把握すれば、自分は決して追い詰められていないと分かる。むしろ、終わるか否かの分水嶺に置かれているのはネプテューヌの方だと断言出来る。そんな思いが、アルテューヌの中で活力を生み出す。一度は手から零れ落ちかけた勝利が、未来が、気付けば目前なのだと興奮で震える。

 しかし、守りに入る気などアルテューヌにはない。たとえ相手に後がなかろうと…否、だからこそ攻める。勝ちは拾うのではなく、自ら掴むもの。それこそが女神なのだと、手にした得物を握り直す。

 

「もう、関係ない…何もかも、関係ない……ッ!」

「何が…ッ!」

「わたしは貴女に勝つ、女神として勝つ!ただ、それだけよッ!」

 

 まともに打ち合えば、打ち合ってしまえば、全て両断されて終わり。それだけは変わらないからこそ、アルテューヌはエクスブレイドと斬撃を飛ばしながら、ネプテューヌの周囲を飛び回る。より動的に、より激しく動き、仕掛けるチャンスを見据える。

 ここまでアルテューヌは、自分を、あるべき未来を取り戻す為に戦ってきた。それこそが唯一にして絶対の目標だった。だがそれも、今だけは脇に置く。頭の隅へと全て押しやる。ただ、勝つ為に。女神としての、パープルハートとしての、ネプテューヌとしての勝利をその手に掴む為に。

 

(あぁ、そう、そうよ…!これこそが、女神の戦い。これこそが、女神のあるべき姿。たとえ全てを奪われたわたしでも…この心は、誇りは、今も確かにここにある…ッ!)

 

 更に速度を上げていく。更に遠隔攻撃を打ち込んでいく。ギリギリなのは、アルテューヌも同じ事。極度の集中と瀬戸際の緊張でひっきりなしに脂汗は滲み、嘔吐感も込み上げる。勝敗に関わらず、戦闘の後は暫く立ち上がれない…それ程までに、アルテューヌ自身も追い込まれている。それでも手は抜かない、手は抜けない。偏に勝つ為、ただそれだけの為に、力も思いも全てを注ぐ。

 

「…………」

 

 怒りではなく勝利への渇望で心が燃え上がるアルテューヌとは対照的に、ネプテューヌは静か。研ぎ澄ましていくかのように、無駄なものを全て削ぎ落とすかの如く、常にアルテューヌを視界に捉えながら、飛来する攻撃を斬り裂き躱す。アルテューヌがどれだけ縦横無尽に空を駆け巡ろうと、ネプテューヌが隙を晒す気配は微塵もない。だが、アルテューヌが狙うのはたった一瞬。ただ一度のチャンスの為に、アルテューヌは飛ぶ。そして……

 

(──来た…ッ!)

 

 エクスブレイドを射出すると共に、ネプテューヌの側面へ斜めに切り込んだアルテューヌ。次の瞬間、アルテューヌはネプテューヌの視界から外れる。それまでは常に感じていた視線を、この瞬間感じなくなる。…偶然などではない。単なるミスでもない。それは、アルテューヌが積み重ねた結果。絶えず飛び回り、幾度も仕掛け、その度に対応されながら…それでも少しずつ、少しずつ負担を与えていく事で、アルテューヌ自身が生み出した隙。

 それに気付いた時、アルテューヌはもう動いていた。視界から外れたと、隙が生まれたと意識するよりも先に、身体は全力で踏み込んでいた。もう、そこに思考はない。何も考える必要はない。ただ全力を、全身全霊を、大太刀に乗せて放つだけ。己が刃を、振り抜くだけ。

 

「これで、終わりよ…ッ!そして、わたしは…これで……ッ!」

 

 当然、ネプテューヌも振り向いてくる。ネプテューヌもまた、大太刀を振ろうとする。だが、アルテューヌの方が早い。仮に間に合ったとしても、確実にアルテューヌの一太刀はネプテューヌの姿勢を崩し、次こそどうにもならない程の隙が生まれる。そしてアルテューヌの見立て通りであれば…今の体勢、そこからの振りでは、ネプテューヌは力を発揮出来ない。

 終わらせる。終わらせ、始める。アルテューヌの心にある思いは、ただそれだけ。勝利と共に、無くす事のなかった心と共に、今度こそ進むのだと、アルテューヌは踏み込み、ネプテューヌをその間合いに捉え……大太刀を、振り抜く。振り抜き、刃は煌めき…その時、勝敗は決定的なものとなった。

 

 

 

 

 

 

──ただ一つの、見誤りと共に。唯一の、失念と共に。ハッタリの気配など欠片もなく…確かに、自然に、ネプテューヌは『通用しない』と言っていたその事実を、正しく理解しないままに。

 

「……え?」

 

 振り抜かれた刃は二つ。アルテューヌの刃と…ネプテューヌの刃。アルテューヌの上段斬りと、ネプテューヌの横薙ぎは、共に振り抜かれ…しかしアルテューヌの得物が描いた軌道上に、ネプテューヌはいなかった。アルテューヌの手に、ネプテューヌを捉えた感覚はなかった。

 

「──ぁ…」

 

 そして、気付く。自らの身体に走る、横一閃の熱に。痛みに。──斬られた、事実に。

 

「ぅ、ぐ……ッ!」

 

 気付いた事で燃えるような痛みが押し寄せる中、その痛みを意思の力で押さえ付けてアルテューヌは退く。ネプテューヌの、大太刀の間合いから離れ、ネプテューヌへ向けエクスブレイドを真っ直ぐ放つ。対するネプテューヌは、振り抜いた状態から刃を返すようにしてもう一度振り…斬り裂かれる。放ったエクスブレイドが。エクスブレイドと共に…大太刀が届かない筈の距離にいる、アルテューヌの首筋が。

 

「…やっぱり、エクスブレイド越しじゃまともに狙いなんて付けられないわね」

(遠隔攻撃…ッ!?いや、でも…これは……)

 

 じわりと首にも痛みが走る。どうやら掠めただけらしく、軽い切り傷で済んでいるとすぐにアルテューヌは理解するも、それ以上の疑問と動揺が押し寄せる。

 斬撃を飛ばしたのかと思った。斬撃によりエクスブレイドを斬り、そのまま自分の下まで届いたのかと、アルテューヌは初めは思った。しかし、ネプテューヌは何も放っていない。見えなかった、見逃したのではなく、確かに大太刀を振っただけ。何故かそう確信出来るからこそ、自らの身に起きた事との辻褄が合わず、動揺は混乱に変貌していく。

 

「何を、したの…貴女は、何を……ッ!」

 

 更にアルテューヌはエクスブレイドを放つ。続けて斬撃も、旋回しながら続けて飛ばす。まるで余裕を見せつけるかのようにその場から動かないネプテューヌへ向け、別々の方向から複数のエクスブレイドと斬撃が迫り…全て、両断される。──されど、ネプテューヌは大太刀を振っていない。何もしていないネプテューヌの側で、全てのエクスブレイドと斬撃が、真っ二つに斬られて散る。

 

「な……っ!?」

 

 唖然とする。愕然とする。斬ったのならまだ解る。いや、本来歪みは…歪みを纏った攻撃は斬る事すら出来ない筈だが、それでも斬ったというならまだアルテューヌは解る。だが、ネプテューヌは大太刀を振ってすらいない。振る事なく、微動だにせず、ただ斬られた結果だけがそこに残っていた。…そんなものを、理解出来る訳がない。理解出来る道理がない。

…そう思ったアルテューヌだが、一方で、こう気付いてもしまっていた。理解出来ないというのに、それがネプテューヌによるものだという点については、微塵も疑わない自分がいる事に。直感が、或いは心が、それを確信している事に。

 

「言ったでしょう?もう、通用しないって」

「それは、貴女の駆け引きの……」

「この力を手にした時以来、ここまで引き出すのは初めてだったから、すぐにはフルスロットルに出来なかったし、するのにも不安があっただけよ。それとも…他に何か、納得出来る理由がある?」

 

 アルテューヌは否定しようとした。したかった。しかし出来ない。起こった事が、目の前の事実が、何よりの裏付けとなって、否定する事を許さない。

 

「…認めない…そんな事…認められる訳がないでしょう…ッ!?」

 

 されどもアルテューヌは食い下がる。否定出来ない事を理解しつつも、認めないと言って再びネプテューヌの周囲を飛び回る。

 それは決して、愚かな判断ではない。通用しない事を否定出来ないばかりか、認める事すらしてしまえば、それ即ち敗北を受け入れる事とほぼ同義なのだから、認めないという形で抗わんとするのは(それが出来るのであれば)当然の事。ネプテューヌもそれを分かっているからか、微かな嘆息を漏らすのみで何も返さず、ただ静かに大太刀で青眼の構えを取る。

 

(そうよ、わたしは認めない…!だってまだ、ただ仕掛けた攻撃が斬られただけじゃない…!これまでと何も変わらない、わたしがまだ見抜けていないだけの穴が、弱点がある可能性だってゼロじゃない…!だから……)

 

 飛びながら放つ攻撃は、やはり全て届く前に両断される。まるでネプテューヌの周囲に、そうなる事が定まっている領域があるかのように、全て虚しく斬られて終わる。

 それでもアルテューヌは攻撃を続ける。心の中でそれでも、と言い続け、自らを奮い立たせる。歯を食い縛り、何度も何度も斬撃を、エクスブレイドを打ち込む。

 その中で、アルテューヌは感じてもいた。ネプテューヌの集中が、更に研ぎ澄まされていく事を。また何か仕掛けてくる事を。しかし当然、何をしてくるかどうかなど分からない。だがそんな事は問題ではないと、戦いとはそういうものだと、むしろそれを見極め、切り返してみせると心を燃やす。そしてネプテューヌは、大太刀を振り上げる。その瞬間に、アルテューヌは急旋回からの突進を仕掛ける。アルテューヌが迫る中、ネプテューヌは真っ直ぐに刃を振り抜

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