過去の追憶   作:最上 イズモ

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10:罪と罰

イズモ「ピースギアの空間圧縮技術と、紫から教わった虚数空間技術」

イズモ「舐めてもらったら困る」

 

その瞬間、スキマが展開され、ドーム全体を覆った。

空間そのものが折り畳まれ、外界との干渉が完全に遮断される。

 

イズモ「これで記憶操作はできないし、外部からの物理干渉も遮断される」

イズモ「正々堂々、条件は同じだ」

 

トレーシーが距離を詰める。

イズモは迷いなく銃を構え、引き金を引いた。

乾いた発砲音。

弾丸は確かに命中した。

 

だが、次の瞬間、損傷した肉体は波紋のように揺らぎ、即座に再生した。

撃ち抜いたはずの感触だけが、手に残る。

 

これが世界の終焉条件の一端かもしれない。

 

イズモは無言でさらに三発。

最後の一撃は頭部を正確に貫いた。

しかし、結果は同じだった。

傷はすべてなかったことのように塞がっていく。

 

イズモ「……やはりな」

 

次の瞬間、床と空間に複数の装置が展開される。

スタングレネード。

催眠ガス地雷。

眩い光が炸裂し、空気が一気に変質した。

視界を奪うだけでなく、触れれば切り裂かれそうな圧を伴っている。

 

さらにイズモは、粘着性の高い睡眠麻酔を混合した特殊スタングレネードを二つ投擲した。

効果は凄まじく、十秒以内に複数の対象を強制的に昏倒させる代物だ。

 

爆光と衝撃の後、トレーシーの動きが鈍り、意識が沈む。

 

イズモ「似たもの同士、か」

 

床一面に張り巡らされた罠が作動する。

極細の繊維を束ねたワイヤー編みの敷設物。

摩擦係数と粘性を極限まで計算した構造だ。

引き抜こうとすれば、別の罠が起動し、捕らえた対象に衝撃を叩き込む。

 

攻防は何度も繰り返された。

互いに倒れないまま、時間だけが削られていく。

疲労が、確実に双方を蝕んでいた。

 

イズモ「あんたも創造能力者だ」

イズモ「だが、俺には及ばない」

 

イズモ「あんたは異世界転移ができるかもしれない」

イズモ「だが、決定的に仲間が足りない」

 

一人で創造するしかない。

その限界は、いずれ必ず露呈する。

 

イズモは構えを取った。

幻想郷支部の技術と魔法体系、その集大成。

大出力魔力砲。

 

イズモ「どれだけ創造能力が強くても」

イズモ「仕組みを理解できなければ、創造はできない」

イズモ「終わりだ、トレーシー」

 

二発目のチャージが完了する。

魔力を全開放した一撃が放たれた瞬間、空間が裂けた。

まるでモーゼの奇跡のように、世界が割れ、光の回廊が現れる。

 

トレーシーは抵抗する間もなく吸い込まれ、亜空間へと消えた。

永遠に閉じた牢獄へ。

 

イズモ「……初めて対人戦で使ったが」

イズモ「大丈夫なんだろうな、これ」

 

そう呟き、深く息を吐いた。

 

異空間。

 

トレーシーは、何もない場所に立っていた。

上下左右の概念すら曖昧な空間。

 

トレーシー「なんだ、ここ」

 

通常の次元断層であれば、対惑星兵器すら突破できる。

だが、この異空間は違う。

あらゆる物理攻撃、エネルギー干渉、空間操作を無効化する。

実質的な無限牢獄。

 

トレーシー「なんで僕が、こんな目に……」

トレーシー「あの世って、案外こういう場所なのかもな」

 

イズモ「あいかわらず、テキトーな喋り方だな」

 

トレーシー「イズモなのか」

トレーシー「頼む、ここから出してくれ」

トレーシー「負けを認める」

トレーシー「記憶も全部戻す、だから」

 

不安を隠しきれない声だった。

 

イズモ「君には、ここで相応の罰を受けてもらう」

イズモ「記憶が失われる恐怖、そのものをな」

 

イズモ「もちろん、奪った記憶は返してもらう」

 

用意していたタイマーが起動する。

能力の詳細を解析し、記憶構造を確認。

不要な干渉が残らないよう、その場で解放処理を行った。

 

その後、トレーシーは別の空間へと移送された。

すべての記憶を取り戻した状態で、別世界へ送る準備が進められる。

 

亜空間にて。

 

イズモ「約束通り、君の記憶を預かる」

イズモ「百年後に返してあげよう」

イズモ「現実時間では一瞬だ」

イズモ「刑を執行されたあとも、恨み続けるといい」

 

イズモ「他人の記憶に干渉できる力」

イズモ「厄介な能力には、退場してもらうのがセオリーだ」

 

その後、トレーシーは百年分の記憶を保持したまま元の世界へ戻された。

だが、その百年より前の記憶と能力は、完全に抹消されていた。

 

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