過去の追憶   作:最上 イズモ

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02:共闘

イズモ「良かったって言いたいところだけど……第3新東京支部、壊滅してないか?」

カエデ「ほんと、最悪ね」

 

眼下には、かつて都市だった痕跡が広がっているだけだった。

地表は抉れ、建造物は原型を失い、生命の気配はほとんど感じられない。

 

イズモ「仕方ない。

とりあえず対ショック体制を解除しよう」

アリス艦船員「了解。

対ショック体制を解除します!」

 

艦内の緊張がわずかに緩む。

だが、誰一人として安心はしていなかった。

 

カエデ「まずは生き残りがいるか、支部に向かうわ」

イズモ「第3支部の状況はどうなってる?」

 

カエデは航法モニターを睨み、眉をひそめる。

 

カエデ「……待って。

この世界線座標、ヴィレがクデュックになる前よ」

イズモ「え?

なにそれ」

カエデ「ニアサードインパクトの後に、サードインパクトが起きた後の世界線ね」

 

イズモは短く息を吐いた。

最悪の歴史を辿った世界だと、即座に理解する。

 

イズモ「……なら、とりあえずヴィレ側にコンタクトを取ろう」

 

南極。

極寒の大地を進む反NERV組織ヴィレの旗艦ヴンダー。

 

ミサト「未知の艦が三隻、接近中よ」

リツコ「艦影照合不能。

不明艦ね」

アスカ「はぁ!?

なにそれ、意味わかんない!」

日向「三隻だと……?」

 

モニターには、異様な速度で迫る三つの光点が映し出されていた。

 

リツコ「NERVの艦と比べて、速度が数百倍。

このままだと接触まで三十分もないわ」

アスカ「じゃあ逃げればいいじゃない!」

日向「無理だ。

向こうの方が圧倒的に速い」

リツコ「ええ。

逃走は現実的じゃないわね」

 

ヴンダークルー「艦長!」

ミサト「なに?」

ヴンダークルー「通信です。

葛城ミサト艦長を名指ししています」

 

ミサトは一瞬だけ目を細めた。

敵意があるなら、警告なしで撃ってくる。

それがないということは。

 

ミサト「……わかったわ。

私が出る」

 

イズモ通信「初めまして。

パラレルワールド管理組織ピースギア所属。

アリス級ポータル艦アリス艦長、最上イズモです」

 

ミサト「……イズモ君?」

イズモ通信「ええ。

ミサトさん」

 

ブリッジの空気が一瞬、凍りつく。

 

イズモ通信「早速ですが、こちらはポータル艦の不具合で、この世界線に戻ってきました」

ミサト「ポータル艦?

どういうこと?」

イズモ通信「端的に言えば、自分はこの世界の人間じゃありません」

イズモ通信「ポータル修復までの間、共同戦線を組めませんか。

第3新東京支部のNERVも壊滅しているようなので」

 

ミサトは一拍置いて、頷いた。

 

ミサト「……わかったわ」

イズモ通信「ありがとうございます。

合流地点はヴンダー右舷艦尾でよろしいですか?」

ミサト「ええ、構わないわ」

イズモ通信「では、後ほど」

 

巨大なアリスがヴンダーに接近し、VTOLで静かに着艦する。

 

イズモ「アリス艦艦長、最上イズモです」

カエデ「同じく艦長のカエデよ」

ミサト「反NERV組織ヴィレ艦長、葛城ミサトよ」

アスカ「同じくヴィレ所属、式波・アスカ・ラングレー」

日向「同じくヴィレ所属、日向マコトだ」

 

イズモ「早速ですが、共同戦線について話をさせてください」

ミサト「ええ、いいわ」

 

イズモ「こちらの艦は、我々の世界の宇宙戦艦です」

イズモ「そして、自分たちの世界線と、この世界線の関係について説明します」

 

ミサト「聞かせて」

 

イズモ「我々の世界とこの世界は、同一であり、異なる」

イズモ「つまりパラレルワールドです」

 

アスカ「パラレルワールド?」

カエデ「そう。

地球の存在する宇宙には無数の世界線があって、その一つがこの世界よ」

 

イズモ「自分は別の世界線の地球から来ました」

シンジ「……パラレルワールド……」

 

イズモ「こうした世界線を管理しているのが、ピースギアです」

ミサト「それで、私たちヴィレは何をすればいいの?」

イズモ「共同戦線です。

NERVを壊滅させるもよし、講和条約を結ぶもよし」

 

ミサト「……了解」

 

イズモ「最終的には、ポータルを修復して本部へ報告。

この世界は調査の後、管理対象になります」

アスカ「それって、あたしたちが管理されるってこと?」

イズモ「いいえ。

世界規模の崩壊が起きない限り、我々はただの傍観者です」

アスカ「……なら、いいわ」

 

イズモ「では、我々の世界のNERVについて話します」

カエデ「私たちの世界でも、NERVはサードインパクトを起こして壊滅したわ」

カエデ「ただし、こちらと違って加持さんは生存している」

 

イズモ「その後、自分が帰還し、能力を得てヴィレはクデュックへ改名」

イズモ「銀河規模の組織に成長しましたが、ゼーレの介入で管理AIが暴走」

イズモ「AIを破壊、追放し、新体制としてピースギアが誕生しました」

 

アスカ「……分かったわ」

アスカ「ヴィレとして、あんたたちに協力する」

 

イズモ「よろしくお願いします」

 

ヴィレの面々は困惑していた。

だが、ヴンダーの数十倍はある巨大艦と、異質な二隻の随伴艦を前に、疑う余地はなかった。

 

この世界の技術体系では説明できない装備。

紛れもないオーパーツ。

 

やがて、US作戦で回収したシンジのサルベージが完了し、覚醒したとの報告が入る。

 

イズモが戻った後のシンジは、以前とはまるで別人のように落ち着いていた。

だが、イズモが残した告白メッセージが、彼の変化の理由を語っていた。

 

それを知った誰もが、もう驚かなかった。

そして静かに、その事実を受け入れた。

 

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