シンジ「僕は……なんてことを……」
彼は、自分の手で取り返しのつかない何かを引き起こしたという感覚だけを抱えたまま、目を覚ました。
この碇シンジは、いわゆるTV版の彼自身だった。
シンジ「……ここは?」
無機質な天井と白い照明。
身体は固定され、逃げ場はない。
研究員「君が知る必要はない。
君はヴンダー艦から回収され、この第3新東京市地下で発見された装置の中に閉じ込められていた」
シンジ「聞きたいことがあります!」
研究員「なんだ」
シンジ「ミサトさんって……」
研究員「君に教えることはない」
シンジ「何があったんですか。
みんな、無事なんですか?」
研究員「全員無事だ」
その言葉に、わずかに胸の奥が緩む。
だが、同時に得体の知れない違和感が残った。
イズモ「初めまして、宿主さん」
シンジ「……宿主?」
イズモ「あ、違う世界のシンジくんかな?」
聞き覚えのない声。
それなのに、どこか懐かしい。
シンジ「君は……!」
イズモ「改めて自己紹介をしよう。
自分は最上イズモ。
異世界旅行者、とでも名乗っておくよ」
シンジ「なぜ、僕がシンジだと分かったんですか?」
イズモ「かつて、別の世界で君だったからさ。
正確には、魂の入れ替わりってやつだね」
シンジは言葉を失う。
理解が追いつかない。
シンジ「……この世界の僕は、何をしたんですか?」
イズモ「君と、この世界の君は違う。
まあ細かい話は置いておこう」
イズモ「君がやったことは、その首輪と周囲の反応を見れば分かる。
ニアサードインパクトを起こしたんだ」
シンジ「そんな……」
喉の奥が締め付けられる。
否定したいのに、否定する材料がない。
イズモ「信じなくてもいい。
ただ、ゆっくり飲み込むといい」
シンジ「そんな悠長なこと、言っていられません!」
イズモ「君が引いたのは引き金だ。
だが、引かせたのは碇ゲンドウ。
それとゼーレだ」
シンジ「……お父さんが……!」
心の奥に、怒りと絶望が混ざり合う。
イズモ「そういうことになるね」
イズモ「そろそろミサトさんに呼ばれる頃だ。
出頭しておいで」
イズモ「じゃあ、俺は帰るよ」
シンジ「待ってください!
もう少し教えてください。
今まで、僕に何が起きたのか……」
イズモ「詳しいことは、ミサトさんかアスカかリツコさんに聞くといい」
そう言い残し、イズモは去っていった。
自分が世界を壊す引き金になった事実を、他人の口から知らされる。
それはあまりにも皮肉だった。
シンジ「……アスカやリツコさんに会って、僕は何をすればいいんだ……」
そして、やはり予定通りに、ゼーレとNERVによる襲撃が始まった。
イズモ「ミサトさん、とりあえずアリスで迎撃するね」
ミサト「任せたわ」
コード4C。
ネーメズィスシリーズのコアを探知。
即座にレールガンを叩き込む。
一撃で敵は沈黙した。
使用されたレールガンはN2弾仕様だった。
イズモ「やっぱり、真正面からなら怖くないね」
シンジは、その光景を呆然と見つめていた。
ここまで、あっさりと。
だが、破壊された艦の内部に、まだコア反応が残っている。
硬すぎる船体を補うための改造だと判断し、イズモは追撃を指示する。
次の反応は、先ほどよりもはるかに大きかった。
それでも、一撃で沈黙する。
作戦は速度を落とすことなく進行していった。
しばらくして、Mark.9が予定通り奇襲を仕掛けてくる。
イズモ「シンジくん、判断は君に任せる」
イズモ「NERVにつくか、ヴィレにつくか」
イズモ「綾波レイのクローンに会いたいなら、NERVへ行けばいい」
シンジ「……どうして、そんな重要な選択を僕に?」
イズモ「前者は、君の意思に関係なく決められる」
イズモ「後者を選べば、辛い戦いに巻き込まれるだろう」
イズモ「だから、君自身に決めさせたい」
イズモ「目覚める前、仲の良かった仲間と戦うことになるかもしれないからね」
イズモ「どうする?」
シンジは、深く息を吸った。
シンジ「……NERV本部に乗り込みます」
それでいい。
イズモは内心でそう判断した。
碇ゲンドウに気取られないためにも。
イズモ「分かった」
Mark.9に連れ去られたシンジは、第3新東京市へ向かった。
イズモはそう確信していた。
イズモ「ミサトさん、シンジを追いますか?」
ミサト「ええ。
その方が効率的ね」
イズモ「了解。
今からヴンダーで向かいます」
イズモ「碇シンジを取り戻すため、力を貸してくれますか?」
五人「……無論だ。
です……!」
イズモ「全システム、ヴンダーと並列化」
ヴンダーは浮上し、アリス級三隻がそれを囲うようにドッキングする。
Mark.9を追い、空へと飛び立った。
三十分後、ヴィレのカタパルトと合流し、さらに加速する。
その直後、通信が入った。
アスカ「ファーストチルドレンから連絡よ」
アスカ「助けてほしいって」
アスカ「それも……母さんから!」
すべて計画通りだ。
イズモは冷静に状況を受け止める。
後は仕込んだ通りに演じるだけだった。