過去の追憶   作:最上 イズモ

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09:似たもの同士

イズモ「早速行くか。座標は把握してる」

 

ポータル室でデータを入力し、例の世界線へ跳躍した。

転移した瞬間、前回とは明らかに違う重苦しさが全身を包む。

時間の流れそのものが歪んでいるような感覚だった。

バタフライエフェクトにより、既に別の世界線へ分岐している。

 

出現と同時に、叩きつけるような豪雨と横殴りの旋風が襲った。

雨は本来あり得ない角度で流れ、風は渦を巻きながら地表を削っている。

 

イズモ「異常気象か……?」

イズモ「レーダー反応、消失してるな」

 

視線の先、約五キロ前方。

山のように盛り上がった雨と風の壁が、不自然な方向へ引きずられていた。

一瞬で理解する。

原因は、トレーシーの存在だ。

 

進んだ先に、巨大なクレーターが現れた。

半径およそ五十メートル。

地面は規則正しい六角形の隆起で覆われ、人工物のような秩序を保っている。

無意味に積み上げたくなるほど、異様に整った形だった。

 

さらに奥。

エッフェル塔を思わせる高塔が、赤く染まった空の下にそびえ立っていた。

周囲は異常なL結界濃度。

空気そのものが重く、呼吸がわずかに鈍る。

 

イズモ「……やばいな、これ」

 

近づいた瞬間だった。

 

トレーシー「やっぱり来たようね」

 

外壁に備え付けられたタレットが一斉に展開し、包囲される。

だがイズモは迷わず爆破。

火花と破片を突き抜け、内部への侵入に成功した。

 

イズモ「さて、普通に戦えば」

イズモ「また、あんたに記憶を消される」

 

不敵な笑みを浮かべ、真正面から言い放つ。

 

トレーシー「逃げずについてきたことは褒めるよ」

トレーシー「さあ、ついてきなさい」

 

案内されたのは巡洋艦の最上部。

艦内で唯一、普段は立ち入れない特別区画。

決戦時には大統領が直々に指示を出す、司令塔でもある空間だった。

最上階の巨大なタワーは、威厳そのものだった。

 

その下層ドームには、スペースコロニーやスーパーコンピュータを連想させる装置群。

重力制御、演算核、空間歪曲装置。

その中心に、アルカディアと呼ばれるワープ装置が静かに浮かんでいた。

宇宙艦というより、巨大な建築物の内部に近い。

 

イズモ「この世界の技術水準にしては、完全にオーバーテクノロジーだな」

イズモ「ヴンダーが限界だった世界のはずだろ」

イズモ「……まあいい」

イズモ「目的は一つだ」

イズモ「あんたとの決着をつけに来た」

 

トレーシー「君と話したくて、ここへ呼んだんだよ」

トレーシー「そんなに構えるな」

トレーシー「アハハ」

トレーシー「創造使いかと思ったけど、少し違うみたいだね」

トレーシー「僕は僕の能力を使う」

トレーシー「あんたは自由にして構わない」

トレーシー「好きなタイミングで、この戦いを始めようじゃないか」

トレーシー「ハハハッ!」

トレーシー「さあ、これを聞いたなら記憶を失う準備はできただろ?」

トレーシー「じゃあ、いくよぉ!!」

 

言葉と同時に、空間が軋んだ。

目に見えない力が降り注ぎ、虚空から雷が落ちる。

爆風が連鎖し、床と壁が悲鳴を上げる。

世界そのものが、戦闘開始を告げていた。

 

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