幼馴染みが聖女になったので、勇者に寝取られる可能性大です   作:東郷しのぶ

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 勇者側のお話です。


勇者として召喚された僕に『寝取り』スキルが付いていました①

 高校2年生の春、通学途中で僕は異世界へ召喚された。

 

「よくぞお越しくださいました。勇者様」

 気が付くと、殺風景な部屋の中、僕は床に描かれた怪しげな文様の中央に立っていた。

 豪奢な白いドレスを着た子と黒いマントを無造作に羽織った子、目の前に2人の女の子が居る。

 どっちの子も、僕と同じくらいの年齢に見える。

 

 白いドレスの女の子が、跪きながら僕に語り掛けてきた。

「私は勇者様を召喚した王女です」

「王女様!?」

 僕は慌てて彼女に手を差し伸ばした。

「この度は召喚の儀式に応じてくださり、ありがとうございました。勇者様が来てくださって本当に嬉しいです」

 王女様がニッコリ笑う。腰まで届くストレートの金髪に青い瞳、僕が今まで見たことがない美少女だ。

 

「僕は勇者として呼ばれたんですか?」

「その通りです」

 僕の質問に、王女様の隣の黒マントを着た女の子が答える。この子は黒いおかっぱの髪に黒い瞳で、王女様ほどじゃ無いにしろ、やっぱり可愛い。

 

 2人の美少女を前にして、僕の心は浮き立つ。

 僕の両親は、既に亡くなっている。天涯孤独となってから、僕は自分の存在意義を求めてきた。お世話になった方々と別れるのは辛いけど、必要とされているこの世界で僕は頑張りたい!

 

 新たな決意を胸に秘め、僕は王女様に尋ねることにした。

「何のために僕を勇者として召喚したのですか? 魔王の脅威から世界を救って欲しいとか?」

 勇者による魔王退治は異世界召喚のテンプレだよね。

「いいえ、魔王なんて居ませんよ」

 王女様がキョトンとしながら答える。魔王は存在しないのか‥‥。魔王との戦いが避けられてホッとしたような、ガッカリしたような。

「それじゃ、魔獣が暴れて人々が困っているとか?」

「魔獣が森から出てくることはありますけど、魔獣と言っても普通の獣よりチョット強いくらいです。もし人里まで下りてきても、村の猟師さんたちが退治してくれます」

 魔獣も関係無しか‥‥。そうなると、僕に何をさせるつもりなんだ?

 ひょっとして人間相手に戦わせるつもりか!?  僕は、僕は勇者として戦乱を鎮めるために人間同士の争乱の渦に飛び込まなければならないのか!

 

「王女様の国は隣国と戦争状態にあるのですか?」

 僕の息せき切った問い掛けに、王女様は少し困惑したようだ。

「いいえ、我が王国は土下座外交をモットーとしています。隣の国に何を言われてもすぐに謝っちゃいますので平和なものですよ」

 

 それで良いのか、王国。

 

 僕の王国への不信に気付いたのか、黒マントの少女がフォローを入れる。

「大丈夫です。王国は土下座はしても、補償や値引きは一切しませんので」

 

 それはそれで問題だと思うが‥‥。まぁ、それはともかく、それならどんな理由で彼女たちは僕を召喚したんだ? 聞いてみよう。

 

「勇者召喚というものを1度してみたかったんですの」

 王女様が無邪気に眼をパチクリさせる。まるで僕が勇者召喚の理由を問い掛けるのが不思議と言わんばかりだ。

 

「それだけ?」

「それだけですの」

 

 何なんだ、いったい! 僕の勇者としての意味は!? 存在意義は!? 誰か教えてくれ!

 

 僕が落ち込んでいると、王女様、いやもう様づけは止めよう。王女と黒マントの子がワイワイ言い合っている。

「王女様、だから勇者召喚なんて止めようってアタシが言ったのに!」

「貴方もノリノリだったじゃない!」

「王女様が『魔術師なのに召喚魔法に自信が無いの?』なんて焚きつけるから! まさか成功するなんて思わなかったんですよ!」

 

 黒マントの子は魔術師なのか。イヤ、そんなことはどうでも良い!

 

 僕が王女と魔術師を睨んでいると、魔術師はビクッと怯えて申し訳無さそうな顔をするのに、何故か王女は眼をキラキラさせて僕を見つめ返してきた。

「勇者様。勇者様は戦う必要はありません。けれど勇者様には、代わりに果たすべき重大な使命があります」

 王女の言葉に、僕のテンションは少し回復する。ちゃんと“この世界で果たすべき使命”が、僕に用意されていたのだ。

 存在意義を見付けられるかもしれない。

 

「王女様、勇者として果たすべき僕の使命とは?」

「私と結婚して」

 

 なに言ってんだ、王女(こいつ)

 

「私と結婚するのが、勇者様の使命です」

「ちょっと待ってくれ。言ってる意味が分からないんだが」

「一目惚れなんです。すぐに結婚しましょう。結婚式は中央教会で、披露宴は王城で、新婚旅行先は‥‥」

「落ち着け」

 僕は王女の頭にチョップを食らわす。この際、不敬だのなんだの言ってられない。

 

「何で結婚なんて話になるんだ。一目惚れは分かるとしても、結婚はあり得ないだろう!?」

「どうしてですか?」

「僕たちは、さっき会ったばかりじゃないか!」

「愛に時間は関係ありません!」

 ヤバい、王女(このこ)、話が通じない。魔術師の子がペコペコ頭を下げる。

「スイマセン。国王様も2人の兄君様も王女様には甘くって、言い出したら聞かない子になってしまったんです」

 

 この国、ホントに大丈夫なの!?

 

「とにかく、話が通じる人に会わせてくれ」

 僕が部屋の外へ出ようとドアに向かうと、魔術師の子が慌てて押しとどめる。

 

「待ってください。部屋から出る前にスキルチェックだけはさせてください」

「スキルチェック?」

「ハイ、この世界には“スキル”と呼ばれる能力を持った特別な人が存在します。おそらく勇者様にもスキルが備わっているはずです」

「ちなみに私のスキルは【料理天国】です。どんな料理も自在に作れます。お嫁さんにはもってこいのスキルですよね」

 王女が自慢げに言う。王女(こいつ)のスキルはどうでも良いが、自分のスキルは確かめてみたい。

 

「では、この羊皮紙に手を翳してください」

 魔術師の言葉に従って羊皮紙に掌を向けると、紙の上に幾つもの文字が浮かび上がる。文字は読めないが、4つの単語が書かれているようだ。

「すごい。スキルは1つしかないのが当たり前なのに4つもあるなんて‥‥」

 魔術師が呆然としている。

「さすが勇者様です。“さすゆう”ですね」

 王女がはしゃぐ。鬱陶しくもあるが、ここまで喜んでくれると、(ほだ)されてしまうな。

 4つのスキルの正体を早く知りたい。

 

「僕はこの世界の文字が読めない。頼むからスキルを教えてくれ」

 

 僕の頼みに応えて、魔術師がスキル名を読み上げる。

 

「1つ目のスキルは【剣術】です。このスキルを使用すると、あらゆる剣を上手に扱うことが出来るようになります」

 なるほど、勇者に剣は必須だからな。

「2つ目のスキルは【魔術】です。このスキルを使用すると、あらゆる魔法を操れるようになります」

 魔術師の子がちょっと悔しそうに言う。努力無しで魔法が使えるなんて、ズルいかな? でも剣と魔法、どちらの達人にもなれるなんて、まさにチート。

 召喚されたことを後悔してたけど、気持ちが上向いてきたよ。僕の未来は明るいかもしれない。

 

「3つ目のスキルは【勇気】です。このスキルを使用すれば、どんなに困難な状況に陥っても心が折れることはありません」

 “勇気”とは、まさに勇者に相応しいスキルだね。もう正直お腹いっぱいだけど、こうなると4つ目のスキルへの期待が高まるばかりだ。

「4つ目のスキルは【寝取り】です。このスキルを使用すれば、どんな熱々カップルを相手にしても、その仲を裂いて恋人をゲットできます」

 

 ん? なんだって? 何か変な単語が聞こえたな。聞き間違えかな?

 

「もう1度スキル名を言ってくれない?」

「聞こえませんでした? スキルの名前は【寝取り】。その効果は」

「ああ~、それ以上は言わなくても良いよ」

 

 何だよ、そのスキル! 何でそんな物騒なスキルがあるんだよ! そんなの要らないよ!

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