幼馴染みが聖女になったので、勇者に寝取られる可能性大です   作:東郷しのぶ

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勇者として召喚された僕に『寝取り』スキルが付いていました②

「【寝取り】は、ここ最近、多くの勇者様のもとに現れるスキルなのです」

 魔術師の女の子が重々しげに語り出す。

 

「ちょっと待ってくれ。この世界には、たくさんの勇者が居るの?」

 勇者は僕だけじゃないのか。

「ハイ。それぞれの国にだいたい1人、勇者様は居ますよ。血筋だったり、身分を飛び越えての抜擢だったり、別の世界からの召喚だったり、選び方は様々ですけど」と王女。

「この世界に国は幾つあるんだ、王女様」

「120ヶ国です」

 

 あぁ、そうなんですか。勇者の人数は3ケタなんですね。

 一点物の貴重品だと思っていたのに、大量生産された規格品だと知ったときのガッカリ感は半端ない。

 

「【寝取り】は本来、数百年に1度現れる激レアスキルと言われていたんですが、ここ10年で5人の勇者様が【寝取り】スキルを所有するという異常事態が発生しているのです」と魔術師。

「貴方で6人目ですね!」と王女。王女は少し、黙っていようか。

「なんで勇者のもとに【寝取り】スキルが現れるんだ?」

 僕は魔術師に尋ねる。

 

「本来勇者とは、人々を苦しめる巨大な悪を打ち倒し、世界に希望の光を灯す者のことを指しました」

「確かに、それこそ“勇者”だな」

「しかし近年では、魔王は現れず、魔族と人間の関係は良好です。魔獣もスッカリ弱くなり、人間の国同士が争うことも無くなりました。つまり‥‥」

 魔術師が口籠もる。

「つまり?」

「勇者は暇でやることが無くなってしまったのです。なのに100人を超える勇者様が居る。ハッキリ言って、何でこの世界に勇者様が存在しているのか誰も分からない状態になってしまったんです」

 

「あんた達は、そんな世界に僕を勇者として召喚したのか!」

 僕の抗議に魔術師が必死に言い訳する。

「ですが、神は勇者様を見捨ててはいなかったのです。そんな穀潰(ごくつぶ)しの勇者様に新たな使命を与えられました。それが“寝取り”です」

「訳が分からない」

 

 それにいくら何でも、勇者を穀潰し扱いするのは止めてくれ。

 僕が勇者なのを忘れてない?

 

「【寝取り】スキルは、彼氏持ちの女性や人妻を魅了する力を持っています。【寝取り】スキルを所有している勇者様は、仲の良いカップルを見付けては割って入り、恋人を強奪してから、寝取られたことを悔しがる男性に向かって『ゲヘヘヘ、この女はもう俺のものだ。俺は勇者だから、どんな女も手に入れられるんだ。悔しかったら掛かってこい』と挑発するのです」

「うん、それもう、ただの下衆(げす)だよね。そんな勇者のどこに存在する意味があるの?」

「勇者に恋人を奪われた男性が、悔しさをバネに奮起してパワーアップします。そして悪戦苦闘の末に、ついに勇者を打ち倒すのです。いわゆる“ざまぁ”ですね。そのストーリーを酒場に流れる吟遊詩人の歌で聞いた庶民は拍手喝采、“勇者ざまぁ”を合い言葉にスッキリした気持ちで家路につきます。勇者様による“寝取り”が巡り巡って、民衆の明日への活力となるのです」

「勇者の立場が無いじゃんよ」

「でも、“ざまぁ”されるまでは、さんざん良い思いが出来るんですよ、それはそれで、お得かと」

 

 冗談じゃない。だいたい、何を好きこのんで彼氏持ちの子に手を出さなくちゃならないんだ。どうせ彼女にするならフリーの子が良いに決まっている。

 別に僕は潔癖症じゃないから、交際相手の女の子に過去につきあった相手が居たとしても、チャンと別れてるなら気にしない。でも現在進行系で別の男性とつきあっている女の子と交際するのはイヤだ。地雷物件に手を出してどうすんだ。トラブってから後悔しても遅いんだぞ。

 

「【寝取り】スキルについては、良く分かった。でも、どうせ僕がこのスキルを使用することはあり得ないから、聞く必要の無い情報だったね」

 僕がそう言うと、魔術師が恐る恐る口を開く。

「勇者様、そうはいきません。何故なら【寝取り】スキルは1日1回強制発動するからです」

「なんでだよ!」

 僕は、絶叫した。




 勇者とは‥‥(涙)
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