幼馴染みが聖女になったので、勇者に寝取られる可能性大です   作:東郷しのぶ

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 勇者のやさぐれ具合が酷い‥‥。


勇者として召喚された僕に『寝取り』スキルが付いていました③

 僕と魔術師の女の子との問答は続く。

「【寝取り】スキルを所有したかつての5人の勇者様の中にも、スキル発動に抵抗された方は居られました。ある勇者様は山に籠もり、別の勇者様は厳重な牢に自らを閉じ込めたそうです」

「その2人の勇者はどうなったの?」

「どちらの勇者様もスキルの強制発動に耐えられませんでした。山籠もりの勇者様は山を下り麓の村へ、牢籠もりの勇者様は牢を破って街に飛び出してしまったのです」

「そして?」

「彼氏持ちの女性や人妻に片っ端から声を掛け‥‥」

「もういい。聞きたくないよ」

 

「残りの3人の勇者様は最初から開き直っていたそうです。【寝取り】スキル持ちの5人の勇者様は、それぞれ別名をお持ちでした。『人妻キラー』『カップル崩し』『見境無き野獣』『世界に絶望せし者』『サル山のサル王』です」

 

 そのネーミング、勇者の面影が片鱗も無いね。でも『世界に絶望せし者』はちょっと格好良い。命名理由はしょーも無いけど。

 最後に挙げられた別名も少し気になるね。『サル山のサル王』ってのは‥‥。イヤ、想像するのは止めよう。未知の領域に踏み込んでしまいそうだ。

 【寝取り】スキル持ちとして、僕も彼らと同じ運命を辿ってしまうのか‥‥。

 

「唯一の救いは、【寝取り】スキルがフリーの女性には反応しないことですね」と魔術師。

 

 なんの慰めにもならねーよ。

 

「残念です。男性とお付き合いしたことの無い私は、勇者様に襲ってもらえません」

 王女(ポンコツ)がションボリしている。フリーの女性には食指が動かないって、【寝取り】スキルってのは、単なる罰スキルでしかないよな。

 

 このまま僕も、5人の勇者と同じ道を進んで愉快な別名持ちの仲間入りをしてしまうのだろうか。

 いいや、僕は最後まで抗うぞ。【勇気】スキルの発動だ!

 

「【寝取り】なんて訳の分からないスキルに僕の人生を台無しにされてたまるか! “寝取り”は絶対阻止だ! とりあえず王様に会わせてくれ」

「勇者様、凜々しいですわ」

 王女(ポンコツ)がウットリしている。王女(むすめ)のしたことの責任を王様(ちちおや)に取ってもらおう。

 

 王様は快く僕に会ってくれた。そして王女のしたことを聞くと、王女に拳骨をくらわす。

 普段は甘い父親だが、叱るべきときはそれなりにキチンと叱るようだ。こんなシッカリした王様の娘なのに、王女は何故ポンコツなのだろう。

 

「勇者殿、申し訳なかった。王女(むすめ)のしたことの償いはさせてもらう」

 

 残念ながら、僕をもとの世界に送り返す方法は無いらしい。むしろホッとする。

 もし【寝取り】スキルを持ったままの状態で日本に送り返されたりしたら、僕の人生列車はそのまま終着駅に直行だ。知り合いが、みんな泣く。

 

 でも、この世界にとどまっていても【寝取り】スキルが強制発動してしまう。

 1日1回、必ず彼氏持ちの女性や人妻にモーションを仕掛けるなんて、耐えられない。

 

「大丈夫です。安心してください」

 王女(ポンコツ)が言う。お(めー)の保証に一文の値打ちでもあるのか。

 

「聖女様ならスキルを封印することが可能です」

 聖女とな?

「それで、聖女様とやらは何処に居るんだ」

 僕の問いに魔術師が答える。

「過去の例からすると、勇者様の出現に合わせて、聖女や聖騎士の職業(ジョブ)を持った若者が必ず現れます。今、王国中の年少者の職業を再調査しているので、お待ちください」

 

「それにしても、何で以前の【寝取り】勇者のスキルを聖女たちは封印しなかったんだ?」

 疑問だ。

「残念ながら【寝取り】勇者様のお供に現れた聖女様は、何れの場合も『性女』兼任『聖女』様だったのです。勇者様の【寝取り】スキルは聖女様に通用しませんでしたが、スキルなんか関係なく『性女』な聖女様は勇者様と(ねんご)ろになってしまい、スキル封印の仕事をうっちゃってしまったのです」

 魔術師が、知りたくも無かった過去の真実を教えてくれた。

 

 何なんだよ『性女』って! この世界の勇者も聖女もメチャクチャだな。

 

「他国の別の勇者付きの聖女を、スキル封印に派遣できなかったのか?」

「この世界の国同士は内政不干渉が原則です。それに他国の勇者様がアホやらかしてるんですから、それを見て高笑いこそすれ、助けようとする親切な国なんてありません」と魔術師。

 

 サイテーだな。こんな世界滅んじまえ。

 

「でも、そしたら僕のところに来る『聖女』も『性女』なんじゃ‥‥」

「多分、大丈夫ですよ」

 魔術師が言う。

「その根拠は?」

「勇者様ご自身の運の強さを信じてください」

 

 王女(ポンコツ)魔術師(やくたたず)に召喚された時点で、自分の運の無さをイヤと言うほど思い知っているんだが。

 頼む、『聖女』よ。『性女』であってくれるな。そして早く王城に来て、僕の【寝取り】スキルを封印してくれ。

 

 

「問題は、聖女様が見付かるまでの間、どうやって勇者様の【寝取り】スキルを抑えこむかですな」

 宰相が考え込んでいる。

 

 王城の第一会議室に、王・王子・宰相・大臣・書記長・騎士団長など王国の主要メンバーが集まっている。ちなみに王女(ポンコツ)魔術師(やくたたず)も居る。

 しかし王国の浮沈を懸けた議題が『勇者による“寝取り”をどう防ぐか』なんて泣けてくるね!

 

「おお、良い案を思い付きましたぞ」

 王国一の知恵者と言われる宰相が、ある案を提出する。

「素晴らしい」「さすが宰相、感服いたしました」「これで一安心」「良かったですな、勇者殿」

 宰相の案は、満場の拍手の中、全会一致で可決された。

 

 その日のうちに宰相の案が実行に移される。

 

 宰相の案の中身は次の通り。

 王国には、仲が冷え切った貴族の夫婦がたくさん居る。いわゆる仮面夫婦というヤツだ。跡継ぎさえキチンと産んでいれば、妻が浮気をしようと夫は何も言わない。妻への関心は無くなっているし、自分には別のパートナーがすでに存在しているからだ。夢も希望も無い話だが、政略結婚が盛んに行われる貴族社会ではありふれたケースらしい。

 

 で、僕の【寝取り】スキル発動の相手になるのは、そんな貴族の奥さんたち。もちろん奥さん自身が望んで、旦那さんも認めた上でコトに及ぶ。

 旦那さん方は精神的には何の痛痒(つうよう)も感じないが形の上では妻を“寝取られた”ことになるので、【寝取り】スキルの発動条件を満たすのだ。

 

 さすが王国一の知恵者である宰相の案だ! 誰も傷つかない素晴らしい解決策だね!

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 ちーがーうーだーろー。この案で、一身に被害を背負い込むのは僕じゃないか!

『次々と人妻を寝取ってるチャラ男』に見えて、実状は『有閑マダムの相手を強制的にさせられている純情ボーイ』だ。

 

 うぅ、召喚前はチェリーボーイだったのに。好きな女の子との初めてを夢見てたのに。

 まさか初体験の相手が、自分の倍の体重と倍以上の年齢のご婦人とは思わなかったよ。

 

 日ごとにやつれていく僕を見て、王女(ポンコツ)が泣く。

「ううう‥‥。お可哀そうな勇者様。いったい誰のせいで、こんなことに‥‥」

 

 9割9分お(めー)のせいだろうが。それより聖女は、まだ見付からないのか。

 

 聖騎士は早々に見付かったが、僕は顔を合わせてはいない。

 凄い美貌の女騎士だそうだけど、彼氏持ちだから、念のために会うのを控えているのだ。彼氏は王国一の剣士だとか。万が一【寝取り】スキルが発動したら、彼氏に斬られてしまいます。

 

「もう暫くの辛抱です」

 魔術師が僕を励ます。彼氏がいない王女や魔術師は、こうして僕に普通に会うことが出来るのだ。

 ほんと厄介なスキルだよ。




 次回、聖女登場で物語の締めです。
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