転生したら陰実の世界にいた件   作:リベリオンβ

16 / 44
標的を揺さぶってから陰の世界へ行こう

 

 

 

 

アイリスからアレクシア誘拐の一件を受け、彼女と共にアレクシア救出の手助けをすること数日。

 

とある一室にて、騎士団の1人が彼女に資料を渡す所を、俺と、部屋の入口に立っているゼノンは見ていた。

 

ちなみに、俺はアイリスが座っている席のすぐ側で立っている。

 

 

 

アイリス「報告は以上ですか」

 

騎士団員「い、以上ですアイリス様。

引き続き捜査を行います」

 

アイリス「下がって構いません」

 

騎士団員「はっ」

 

 

 

彼女に資料を渡した騎士団員が踵を返すと、アイリスはゼノンに声を掛ける。

 

 

 

アイリス「お待たせしました、ゼノン侯爵。

協力に感謝します」

 

ゼノン「いえ、アイリス王女。

恐らく学園の敷地内で起きた事件ですから、私にも責任はあります」

 

レベリオ「いいや、ゼノン先生……いや、ここではゼノン侯爵と呼びましょうか。

貴方1人で学園の敷地内全部見れるわけではありませんから、致し方ないでしょう」

(……こいつ、自分でアレクシアを攫わせておいてよくもまあ堂々と言えたもんだ。

仮面を付けてるのはお互い様だが……こいつよりはマシと言える、絶対に)

 

ゼノン「そう言ってもらえると救われます、レベリオ君……いや、レベリオ殿と呼ぶべきでしょうか」

 

レベリオ「そう畏まらなくてもいいですよ、私がアイリス王女の婚約者で、尚且つ同じ侯爵とはいえ、学園では生徒と教師なんですから。

普段通りでどうぞ」

(……コイツが平然としてるのはムカつくが、後で少し揺さぶって、陰の世界で蹂躙すればいい。

だが惜しいな、『教団』の人間じゃなければ、同じ《侯爵》同士というだけでなく、少しは剣の腕も立つから仲良くなれただろうに……)

 

ゼノン「では、お言葉に甘えて……」

 

アイリス「オホンッ!お2人共、今はアレクシアを救うことを最優先としましょうか。」

 

ゼノン「おっと、そうですね、まずは妹君を」

 

レベリオ「ん、その為にまずは状況確認ですね」

 

 

 

アイリスが話題を戻すべく咳払いをして話を振り出しに戻す。

 

そして3人のアレクシア救出、並びに彼女の誘拐犯についての話が始まる。

 

 

 

アイリス「それで…『シド・カゲノー』という生徒が犯人である可能性が高いそうですが…」

 

ゼノン「状況的に彼が怪しいのは事実です。

しかし彼の実力では、アレクシア様を襲った所でどうにか出来るとは思えない。

だとすると協力者がいたか、薬物を使ったか」

 

 

 

ゼノンは言葉を選びながら、1度俺を一瞥しつつ言う。

 

アイリスもその視線に気づいたか、彼に話しかける。

 

 

 

アイリス「言っておきますが、レベリオ君は昨日、私と共に訓練をしていました」

 

ゼノン「ええ、それは存じていますよ。

学園帰りにアイリス王女と共に過ごしていたとか。

まあレベリオ君の立場を考えるなら当然でしょうね」

 

レベリオ(……やはり、アイリスの傍にいて正解だったな。

そうしなければ、シドの協力者として扱われて俺も連行されていた)

 

ゼノン「しかし、シド・カゲノーは騎士団の尋問にも口を割らなかった。

本当に彼が怪しいと?」

 

レベリオ「私はそうは思えませんがね」

 

アイリス「何故ですか?レベリオ君?

……やはり、シド・カゲノーとは幼馴染だから……?」

 

レベリオ「いいや、幼馴染だの云々だのは関係ない。

何故なら、もし本当に奴が誘拐したのなら、堂々と学園に来るのはおかしな事だ。

アレクシアと深く関わっている以上、本当に誘拐したのなら真っ先に疑われる筈、それを考えない程俺の知ってるアイツは頭の悪い奴ではない」

 

アイリス&ゼノン「「!」」

 

 

 

レベリオのその言葉に、アイリスもゼノンも驚く。

 

確かに、もし本当にシドが誘拐したのであれば、堂々と学園に登校すること自体おかしい。

 

現にこうして、アイリスやゼノンにアレクシア誘拐の疑いをかけられている。

 

もしシドが誘拐を実行するのならその可能性を考慮するはずだからだ。

 

それを聞いて2人も納得する。

 

 

 

アイリス「成る程、確かにその通りですね」

 

ゼノン「…確かに、レベリオ君の言う事も一理ある。

協力者や薬物の使用の可能性があるにしても、もし誘拐したのなら堂々と学園に来るのはおかしい」

 

レベリオ「とはいえ、現段階で怪しいという点は変わりない。

……が、かと言ってこのまま尋問を続けても何も得られないでしょう。

となれば、シドに監視をつけつつ、他に少しでも可能性のある人物……極めて安直ではありますが、アレクシア王女の全ての婚約者候補を調査するのが無難かと。

この場合は……ゼノン先生も入ってしまいますが、可能性が無いとは言えませんので」

 

ゼノン「………!」

 

アイリス「……そうですね、シド・カゲノーを釈放後、彼の監視は続けさせて……後は、アレクシアの婚約者候補も調べないといけませんね。

ゼノン侯爵も、構いませんか?」

 

ゼノン「…構いませんよ、アレクシア様の婚約者候補となると、私も含まれますから。

少しでも可能性がある以上、そうするべきでしょう。

それに、私もシド君を信じたいですから」

 

 

 

レベリオとアイリス、互いに頷いて目を細める。

 

 

 

アイリス「私も妹の学友を疑いたくはない」

レベリオ「俺も幼馴染を疑いたくはないのでな」

(ここは敢えて合わせておく、分身と入れ替わればいいとはいえ、下手にシドを庇うような事を言うとかえって動きづらいからな)

 

アイリス「彼と……そして、妹の婚約者候補の調査については、報告を待ちましょう。

それにしても……」

 

ゼノン「?」

 

アイリス「妹が誘拐されているというのに、私に動かせる人員が少なすぎる……」

 

ゼノン「アイリス様が並の騎士よりお強いことは皆が知るところです。

しかし王女である以上、狙われる身でもありますから」

 

アイリス「上層部としては扱いづらいのでしょうね、私は」

 

レベリオ「まあ、そこは私も何とかする。

……未来の義妹が攫われて黙ってらないのでね」

 

ゼノン「レベリオ君の言う通りです。

私にも出来ることがあれば、何なりと」

 

アイリス「ならば是非、学園の秩序維持にも力添え、そして調査の協力を。

……レベリオ君もいいですね?」

 

レベリオ「構わない」

 

ゼノン「生徒は全員外出禁止、授業以外の時間は寮で待機させています」

 

アイリス「………」

 

レベリオ「クレアさん荒れてるな…。

まあ、弟が疑われていれば、無理もないが……」

 

 

 

俺とアイリスが窓の方に視線を送ると、そこには多数の女子生徒によって抑えられている、シドの姉、『クレア・カゲノー』がいた。

 

恐らく彼女はこちらに抗議するつもりなのだろう、相変わらずのブラコンっぷりである。

 

 

 

「私が……いや、ローズ先輩がいれば問題ないか」

(いかんな……原作通りになるべく行くつもりが、どんどん自分の本能で動く事に染まっていってる……)

 

 

 

暴れているクレアをどうにかしようとしたが、視線を少し変えるとそこには学園の生徒会長にして、オリアナ王国の王女『ローズ・オリアナ』がそこにいた。

 

彼女とはクレアを通してそれなりに関わりもあるためにその実力はレベリオも知っている、自分が行くのは不要と判断した。

 

が、後に内心、なるべく原作通りに行くつもりだったのが、徐々に自分の本能で動こうとしている自分に気づいていた。

 

 

 

ゼノン「どうやら、多少の例外はあるみたいですが……」

 

アイリス「生徒の安全については、引き続きゼノン侯爵に任せます」

 

ゼノン「仰せのままに」

 

 

 

ゼノンは礼をして退出する。

 

これで残ったのは、俺とアイリスだけとなった。

 

クレアが取り押さえられている所を、俺とアイリスは見つめる。

 

 

 

アイリス「弟の為に、か……。

家族を思う気持ちは同じ……」

 

レベリオ「アイリス……」

 

アイリス「レベリオ君がいない時……その…アレクシアとは、2人きりで話したことがあまりないのです。

こちらに気を使っているのか、それとも……」

 

レベリオ「アイリス。

何にしても、まずはアレクシアを助けるのが先だ。

感傷に浸るのはその後にしよう。

助けた後、いくらでも会話をすればいい」

 

アイリス「…そうですね、まずはアレクシアを助けましょう。

レベリオ君、協力してくれますね?」

 

レベリオ「勿論だ」

(……アレクシアを助けるのは、俺を含めた《シャドウガーデン》何だけどなぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ゼノン

 

 

 

 

部屋を退室した後、ゼノンは歩きながら、1人考え事をしていた。

 

それはアレクシア誘拐の一件、ではなく、アイリスと一緒にいたレベリオの事であった。

 

 

 

ゼノン「………」

(…やはり、侮れないな……『レベリオ・ヴェンデッタ』……。

アレクシアの誘拐の一件とてそうだ、シド・カゲノーが犯人である可能性の低さを論じ、その疑いをアレクシアの…僕を含めた婚約者候補に移している。

しかも、彼は下校後即アイリス王女と過ごしている、シド・カゲノーがアレクシアと付き合っている前からだ。

元々アイリス王女の婚約者だからどのタイミングで過ごそうとも何ら不思議ではない。

そもそもアレクシアを誘拐するならアイリス王女でも彼にとっては充分誘拐が可能だ。

これではシド・カゲノーの幼馴染ということで協力者として行動したのではないか、という理由で彼も連行し、密かに消すことが出来ない。

頭も切れる上に、『ブシン祭』で魔力を使わずにアイリス王女を倒しただけではない、それで天狗になることなく研鑽を重ねている。

更に問題なのはどういう訳か彼が現れてから僕の他にミドガル王国内に潜んでいる『教団』の手が次々と減っている……やはり、シド・カゲノーを釈放後、多少強引な手を使ってでも早めに消すよう手を打たねば……)

 

聞き覚えのある声「――――ゼノン先生」

 

ゼノン「――――ッ!?」

 

 

 

レベリオへの対処法を考えていると突然背後から声を掛けられ、ゼノンは驚いて素早く背後を向く。

 

そこには、先程自分とアイリスと一緒にアレクシア誘拐事件について話をしていたレベリオがいた。

 

単純に後ろから声を掛けられるだけなら別に驚くことは無いのだが、ゼノンは先程レベリオについて考えていたのと、当の彼の気配が微塵も感じられなかったからだ。

 

 

 

「や、やあレベリオ君、どうしたのかな?」

(け、気配が全くわからなかった!?)

 

レベリオ「ゼノン先生…余程アレクシア王女が攫われたのがショックのようですね、気が動転していますよ?

それに……」

 

ゼノン「――――!?」

 

 

 

レベリオがポケットからハンカチを取り出して、ゼノンの顔に流れていた汗を拭き取る。

 

それだけならまだいいのだが、ゼノンから見てレベリオはこちらを見透かしているような目をしていたのだった。

 

ゼノンは彼のその目を見て動揺を隠しきれない。

 

 

 

レベリオ「汗、かいていますよ。

汗は不安の証とも言いますから、ゼノン先生がそれを見せてはいけません」

 

ゼノン「あ、ああ、すまない。

……流石に、僕も彼女が攫われたことのショックが隠せなくてね…。

ましてや学園の生徒が犯人と疑いがかかれば尚更……ね」

(一聞、不安の証と言ってはいるが…まさか、見抜かれたのか!?)

 

 

 

ゼノンが彼の発言に驚くのも無理は無かった。

 

通常、汗をかくのは基本的に今自分がいる場所が熱い所か、自身が激しく動いた時に出る現象だ。

 

だが、その時とは別に緊張、焦り、不安、驚きといった自身の精神面で汗をかくこともある。

 

レベリオは不安の証とは言ったが、それは捉え方を変えればゼノンの汗を前述の精神面で汗をかく『精神性発汗』だということを確信している。

 

それは即ち……レベリオが声を掛けた途端驚いていたゼノンが、アレクシア誘拐に何か関係しているのかと思っているということになる。

 

流石にゼノンが『教団』の人間で、尚且つアレクシアを攫わせたということはバレてはいないだろうが、彼はレベリオのその言葉を聞いて内心、驚きと動揺を隠せなかった。

 

 

 

レベリオ「まあ、ゼノン先生はアレクシア王女の候補者候補の最有力ですからね。

そして、あの状況ではシドが疑われるのも無理はありません。

まあ、折角ですから、ちょっと気分転換も兼ねて歩きませんか?

勿論周辺の警備も兼ねてですよ?まだ明るい時間帯とはいえ何が起きるかわかりませんから」

 

ゼノン「…そうだね、ではそうしようか。

それに、レベリオ君がいてくれれば僕としても心強い」

(……気のせいだったか……?いや、まだだ、まだ彼の目は同じまま、僕を見透かすかのような目をしている…!

だが、これは彼の監視も出来るから丁度いい、か。

元々僕かアイリス王女、どちらかと行動しないと現在彼の外出は認められない、彼が家に帰るのを見送れる)

 

レベリオ「何を言ってるんですか、確かに私は自分でもそれなりの強さはあると思ってはいますが……私はゼノン先生と戦った事はないですよ。

いざ戦ってみたら実は先生の方が強いかもしれませんよ?」

 

ゼノン「ははは、謙遜しなくて結構だよ。

魔力なしでアイリス王女に勝つレベリオ君に僕が勝てる筈はないからね」

 

レベリオ「ゼノン先生こそ謙遜なさらずとも……おっと、この話を長く続けても平行線になりそうですからね、そろそろ行きましょうか」

 

 

 

レベリオのその言葉に頷いて、ゼノンは彼と共に授業以外の時間、汎ゆる場所を会話をしながら歩くことになった。

 

それからもうそろそろ夕方くらいになると、レベリオから声が掛かる。

 

 

 

「そうだ、ゼノン先生。

釈放されるシドを迎えに行ってもよろしいでしょうか?」

 

ゼノン「それくらいなら構わないよ」

(どの道、騎士団の監視はついているから……これは、好機か……?いや、迎えに行っただけで協力者と断定させるのは早計か、駅まで直行しなかったら、それを理由に連行させれば……)

 

レベリオ「ありがとうございます。

それとゼノン先生、これは事件とは関係のない話ですが……」

 

ゼノン「何かな…?」

(な、何だ……?何を話してくるんだ……?)

 

 

 

 

何を話してくるか判らないレベリオの質問にゼノンは困惑する。

 

というのも、レベリオは『王都ブシン流』の授業を受けていない為、学園内でゼノンと関わることが極めて少ない。

 

その為ゼノンからしたら何を話してくるか判らない未知の相手と会話をしているようなものだ。

 

そんなゼノンの心中など知らずにレベリオは質問する。

 

 

 

レベリオ「何、単純な、仮の話ですよ。

もし別の組織に入る時、入る前に手柄を立てて最高幹部の末席に着くか、その組織の最高幹部全員を即刻蹴落として自分が組織のトップになるか……ゼノン先生なら、どちらを選びますか?」

 

ゼノン「ッッッッッ!?」

 

 

 

その質問は、遠回しに物を言ったとはいえ完全にゼノンの目的を突いていた。

 

というのも、ゼノンはアレクシアを誘拐して王族の血を狙い、それを手土産に『教団』の最高幹部『ラウンズ』の第十二席目に着くつもりなのだ。

 

そしてゆくゆくは他のラウンズを蹴落として、自分が組織のトップに立とうとしている。

 

ちなみに、彼の様にラウンズの地位を求めて派閥争いをしている者は教団内で多数いる。

 

ゼノンはレベリオの質問に、遠回しにこちらの意図を読まれたと思い激しく動揺していた。

 

 

 

(バカな……!?かなり遠回しだが、その質問はどちらも僕の目的と合致している!

まさか、本当に気づいたのか……!?いや、落ち着くんだ、彼はあくまでも質問しているだけなんだ、そうだ、そうに決まってる…!

落ち着け、落ち着くんだ……ここで冷静に答えられないようでは、『ラウンズ』になれても上手くはやれない……!)

「そ、そうだね……僕なら、ちゃんとした功績を得てから、その別の組織の最高幹部になるかな。

そしてしっかりと努力して、ゆくゆくはその組織のトップに立つ、かな」

 

レベリオ「成る程……手柄を得てから最高幹部となり、その後も精進して組織のトップに立つ、らしい答えですね。

ですが……私は違うんですよ」

 

ゼノン「えっ……?」

 

レベリオ「私なら、他の最高幹部全員蹴落として、自分がトップになりますね」

 

 

 

レベリオ自身の、彼の質問の答えを聞いたゼノンはまるで豆鉄砲を喰らった後のように目を丸くしていた。

 

仮の話とはいえ、やはり自分の強さに溺れて天狗となっているのか、それともそれが出来ると確信しているのか、はたまた彼のプライドか何かがそうさせるのか。

 

いずれにしてもゼノンには判らずじまいだった。

 

 

 

ゼノン(…ただの仮の話だったか……?それにしては僕の目的を遠回しに、かつ的確に突いた……。

やはり僕の勘違いか……?いや、どちらにしても油断できないのは確かだ、注意しなければ)

「……意外だね、レベリオ君。

君は謙虚な方だから、てっきり僕と同じ答えを言うものだと思っていたけど」

 

レベリオ「意外でしたか?ですが、私にも私なりの信念というものがありましてね。

自分より強い人、自分が認めた人、どちらかの条件を達成してる人の下にしか着く気はないんですよ。

例え私がまだ子供の身であったとしても」

 

ゼノン「成る程、それが君の強さの元、か。」

(消さなければならないのが本当に残念だ……『教団』さえなければ割と仲良くなれていたかもしれない…)

 

レベリオ「……何か言いましたか?」

 

ゼノン「いや、何でもないよ。

おっと、そろそろ見えてきた、シド君を釈放するから君は待っているといい」

 

レベリオ「はい」

 

 

 

そうして騎士団の本拠地まで辿り着くと、ゼノンはその中へと入り、レベリオは入口より少し離れた所で待つこととなった。

 

 

 

ゼノン(…問題は、どうやって消すかだ…万が一戦うことになった場合は、即アレを飲まなければ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side レベリオ

 

 

 

 

ゼノンが入ってから、レベリオは塀の壁にもたれ掛かってシドを待つ。

 

そして、重々しい鋼鉄製の扉がゆっくりと音を立てて開き、シドが騎士団員の2人に投げ出される。

 

………その姿は下着一丁、着替えが入っているらしい荷物と剣も後から放り出された。

 

 

 

騎士団員A「オラよっ!」

 

騎士団員B「へへっ、さっさと行けっ!!」

 

レベリオ(…何が騎士団だ、あれではならず者傭◯部隊の隊員みたいじゃないか。

しかし……一見端から見たら、派手にやられたようには見えるが、こいつには傷1つない。

やられた後、バレないように即座に魔力で回復したのだろう、見た目だけはズタボロに見せかけて…な。

さぞ捕まったモブ気分を味わえ楽しんだだろう、俺には絶対楽しめんが)

 

 

 

内心、シドと同じ様に楽しめないと思いながら、ゆっくりと彼の元へと歩く。

 

 

 

「……見た目だけ派手にやられたな……」

 

シド「うん、これぞまさに王道のモブ」

 

レベリオ「何処の世界に散々拷問されて全く傷のないモブがいるんだよ。

ほれ、さっさと着替えた着替えた、目立つからな」

 

 

 

シドの荷物から服を取り出してさっさと着替えるように言いつつ、指を鳴らして2人が見えないようにするレベリオ。

 

実際問題ここはかなり人通りがいい、その為何時までも下着一丁の格好では悪い意味で非常に目立つ。

 

そのため彼は魔力を扱った幻覚技を使って一時2人が見えないようにする。

 

シドは特に問題は無いのだが、レベリオは不審者扱いされるのはまっぴらだった。

 

そしてシドが着替え終わったのを確認すると幻覚技を解く。

 

 

 

シド「んっ…しょっと…着替えたよレベリオ、帰ろっか」

 

レベリオ「ああ、駅まで送る。

(ここから小声)……それと、後でBS(分身)をそっちに寄越す、話はその後でな」

 

シド「おっけー」

(流石相棒、言わなくても判ってる。

今のレベリオは即座に分身と本体を入れ替えられる、つまり、用があればすぐに入れ替われる。

分身でも本体には伝わるけど、そこはレベリオなりの拘りを感じる、そこがイイ!

旅から帰ってきた時にはもう出来てたけど、ここまで『魔力分身』を使いこなし、強く出来るなんて凄いよね。

しかも、僕との戦いで『黒紫』の魔力が覚醒してからさらに強くなってる。

ちなみに僕も『魔力分身』やってみたけど3人に分身が限界だ、しかも3人に分身すると『アレ』が使えなくなるから、それの耐久実験をする時は分身は1人だけにしないといけない。

4人以上に出来なくはないけど、それはあくまで1度の戦闘の時くらいだ、レベリオの様に24時間中保つのは無理無理)

 

 

 

レベリオの『魔力分身』を内心高く評価しているシドを駅まで送り、レベリオはさっさと家へと戻ったのであった。

 

アイリスと同棲している家につくと、レベリオは『分身入替』でシドに送った分身とは別の分身と入れ替わる。

 

ちなみに服装も入れ替われるがほぼやる必要はない。

 

そして『ウルティオ』となっている分身体と入れ替わった後、ミドガル王都に作った隠れ家へと向かいその扉を開けると、彼の目の前にはベッドの上で足を抱えて座っている金髪エルフの美女、《シャドウガーデン》の『七陰』第一席である学園の制服姿のアルファがいた。

 

 

 

ウルティオ(原作だとシドの部屋にいたんだけど、これも俺が介入した結果か、しかも彼女の悪魔憑き治したの俺だしな)

「久しぶりだなアルファ、何ヶ月ぶりだ?」

 

アルファ「本体のあなたと会うのは2ヶ月ぶりよ、はい」

 

ウルティオ「ありがと」

 

 

 

アルファから『まぐろなるど』のバーガーを受け取ったウルティオは早速その包み紙を開いて食べ始める。

 

そして食べながら、ベッドの上でほぼ四つん這い状態の格好となっている彼女と話を始めた。

 

 

 

ウルティオ「はむはむ…既に連絡は来ているとは思ったが、こうも早いとはな」

 

アルファ「普通なら厄介な事だけど、これも全てシャドウと貴方の読み通りというわけね」

 

ウルティオ「ああ、いずれ陰から奴らが来ることは読んでいた。

ラウンズ第五席、フェンリルの派閥の奴らがな。

シャドウと俺はいち早く気づき、俺はガンマを通じてガーデンに連絡を、奴はアレクシアと恋仲のフリをするために敢えて告白した。

……彼女の婚約者候補の中から『教団』の奴らをおびき寄せるために」

(まあ、罰ゲームでの告白なんだけどな)

 

アルファ「そして『教団』の幹部であるゼノン・グリフィは濃度の濃い『英雄の血』を狙ってアレクシア王女を誘拐させた…。

誘拐の疑いをシャドウに向けることで」

 

ウルティオ「そして騎士団はシャドウを捕え拷問でズタボロにした挙げ句、釈放した後も監視している。

今夜消すためにな。

最も付けられた傷の全てはバレないように魔力で回復したようだが」

(まあ、本人は拷問されるモブとして内心喜んでたけどね)

 

アルファ「つまり、動くなら今夜…」

 

ウルティオ「はむはむ…だな。

……さて、少し話を変えようか、ガーデンの方はどうなってる?」

 

アルファ「『教団』の調査は更に勧めているわ。

当然、私達の組織力の強化も、まだ『教団』には及ばないけど、着々と成長しているのよ」

 

ウルティオ「はむはむ…俺が追加させた『極限訓練コース』をクリア出来た奴はいる?」

 

アルファ「それは残念だけど、両手で数えるくらいしか……。

貴方の言った通り、下手をすれば命懸けだもの、クリア以前に、まずラムダは勿論、私を含め他の『七陰』も簡単に許可は出せないわ」

(デルタと……研究と睡眠で手が空いてないとはいえイータは簡単に了承しそうだから、彼が[ラムダと『七陰』3人以上の許可。

またはシャドウかウルティオどちらかの許可が必要]を条件にするように言ったのもあるけど。

3人以上にすれば、デルタとイータが了承してもあと1人……ゼータもちょっと了承しやすそうだけど彼女の普段の仕事からして許可する以前に会いにくい。

シャドウも了承しやすそうだけど、そう頻繁にアレクサンドリアには来ない。

となれば残りは私とベータ、ガンマとイプシロンからの許可が必要…。

流石、よく考えてるわねウルティオ)

 

ウルティオ「まあ、そりゃそうだ。

全員が全員、ラムダじゃないからな」

 

アルファ「一方、貴方が追加させた『スライムインコム』を扱う訓練のお陰で『ナンバーズ』以下の構成員の殆どの魔力制御力が上がっているわ。

変幻自在に動かしたスライムソードの先端からスライム弾を発射する……中々面白い発想ね」

 

ウルティオ「まあ、威力は使う奴の魔力の質次第になるけどな、はむはむ…ごちそうさん、と」

 

 

 

アルファと今後の話、そして現在の《シャドウガーデン》の状況を聞いたウルティオは食べ終えたバーガーの包み紙を放り投げる。

 

原作でシドがゴミ箱へ入れられなかったのと違い、こちらはしっかりと入った。

 

 

 

アルファ「ちなみに、その『まぐろなるど』私のだから、この事件が解決したらごちそうして」

 

ウルティオ「ん?ごちそうするだけでいいのか?」

 

アルファ「あら、もしかしてその日ずっと付き合ってくれるの?」

 

ウルティオ「アルファが忙しくなかったら」

 

アルファ「私は構わないわ」

 

ウルティオ「決まりだな、さて、準備が出来たら…」

 

アルファ「ええ、もう1人の貴方の分身に知らせを寄越すわ」

 

ウルティオ「ん」

 

 

 

デートの約束をとりつけると、アルファは隠れ家の窓へと向かっていく。

 

彼女もウルティオが分身と本体を入れ替えられる事を知っている故か、分身に知らせると伝えて窓から出ようとする。

 

そして出ようとした途端に、彼女が止まって話す。

 

 

 

アルファ「ところで、シャドウを尋問していたあの2人だけど…」

 

ウルティオ「手出しは無用だ、アイツの後始末はアイツがする。

……まあ、皆の怒りは最もだがな」

 

アルファ「彼らのしたことは、特にベータが怒ってると思うわ。

貴方もそうだろうけど」

(フリとはいえシャドウがアレクシア王女に告白したことに)

 

ウルティオ「だろうなぁ」

(とはいえ、シャドウが手を下すから、ベータの『シャドウ様戦記』が進むんだよねぇ)

「さて、俺もそろそろシャドウのところへ行かないとな」

(どうやら『陰の実力者』コレクションを出し終えたようだな)

 

アルファ「ええ、それじゃ、また夜に会いましょう」

 

 

 

アルファが窓から飛び降りて隠れ家を後にする。

 

その後ウルティオはシドに会っているだろう分身と入れ替わるのであった。

 

 

 

一足先にシドの元へ向かっている分身と入れ替わったウルティオ。

 

するとそこには『陰の実力者』にして《シャドウガーデン》のトップ『シャドウ』の姿となっていたシドがいたのである。

 

彼の部屋は、彼とウルティオの分身が出したシド=シャドウの『陰の実力者』コレクションでいっぱいだった。

 

そしてウルティオはシャドウと共にそのコレクションを次々と配置しながら会話をする。

 

 

 

ウルティオ「懐かしいな、2人だけで最後に盗賊狩りをしたのはいつだったか…?」

 

シャドウ「確か姉さんが攫われる何ヶ月か前だったっけ?丁度その頃、進化したばっかりのウルティオの『魔力分身・第三段階』も見てみたかったし」

 

ウルティオ「ああ……あの頃か……」

 

シャドウ「その前のウルティオ……イータを治してから1ヶ月後くらいだっけ?暫く元気無かったよね、分身使ってアルファ達を訓練させることなく、1人で訓練してたし」

 

ウルティオ「ふっ、いざ思い返してみると、力不足は感じてはいても、どうやって進化させればいいか悩んでいたが、まさか魔力量、魔力回路、魔力制御力、魔力に関する全てが不足していた事を理解したからな……灯台下暗し、というやつか」

 

シャドウ「そしてようやく進化した所をイプシロンに見られてウルティオが怒ったって聞いたけど?」

 

ウルティオ「……その頃のイプシロンはまだガーデンに入ってそんなに経っていないっていうのに、彼女の魔力の扱いの良さがあれ程で、『魔力感知』が使えるとは思わなんだ。

まさか、ああも簡単に見つかるとは」

(ホント、やっと進化した所をはしゃいでた所まで見られた時はマジで恥ずかった。

当時の俺は余程自分を追い詰めていたからな…それで進化に成功すれば気が緩むものだ)

 

シャドウ「でもそんな彼女でも、ウルティオにさらなる魔力の扱いの教えを請いた、でしょ?」

 

ウルティオ「てっきりシャドウかアルファに請うものだと思っていたからな、イプシロンが教えを請いた時は目玉が飛び出そうになった」

 

シャドウ「いやぁ、僕は姉さんに呼ばれてたし、アルファも用事があったから、それは仕方ないよ」

 

ウルティオ「…まあ、そうだが……」

(いかんいかん、危うくベータに教わるという選択肢もって言いそうだった。

イプシロンのあの秘密も、元はと言えば、天然パイのベータを超えるためにやってることだから、そりゃベータの胸こそ触れど教えを請うわけにはいかない、と思うからなぁ)

「……ところで、この絵画はこっちでいいのか?」

 

 

 

シャドウと懐かしくも昔の話をしながら、ウルティオは彼の『陰の実力者』コレクションを配置していく。

 

それらの大半はウルティオも、シャドウと共に盗賊狩りをした後に見たことあるものばかりであった。

 

 

 

シャドウ「うんうん、その右に『モンクの叫び』も飾っておいて欲しいかな」

 

ウルティオ「『モンクの叫び』か、当時『悪魔憑き』だったアルファを連れて行ったのを思い出すなぁ」

 

シャドウ「僕が見つけた時にはもうウルティオはまだ悪魔憑きだったアルファを見つけたもんね。

しかも、『これは俺のものだからな』って珍しく強調して」

 

ウルティオ「そう言えば言ってたな」

 

シャドウ「余っ程僕より先に悪魔憑きを見つけて色々試せるのが嬉しかったんだなって思ったよ」

 

ウルティオ(普通の男だったらもっと違う言葉を言ってただろうなぁ)

「……お前が今も昔も変わらなくて良かったよ」

 

シャドウ「ん?」

 

ウルティオ「いやなんでも。

……ところで、お前酒の味とか判るのか……?」

 

 

 

ウルティオが設置したアンティークランプを付けた後、シャドウの持っているフレンチ南西部ボルトーのヴィンテージワインの瓶と、それの半分の値段がするフレンチ製のグラスを指摘して物を言う。

 

彼が見る限りではシャドウは飲酒をした記憶がない、ましてや未成年だから尚更なのだが。

 

 

 

シャドウ「ううん、ウルティオは判らないの?」

 

ウルティオ「ないな、チューハイやらウイスキーやら飲んだことはあるが結局は判らなかった」

 

シャドウ「そっかー、もし味が判れば他にどの酒がいいかとか聞けたんだけど……」

 

ウルティオ「今度ラムダかオメガ辺りにでも聞いたらどうだ?あの2人ならそこそこ飲んでそうだが」

 

シャドウ「あぁ、そだねー、あの2人も大人だから酒飲んでそう。

さてさて、最後にこれをセェェェツ」

 

 

 

シャドウはワインのボトルに騎士団から届いたであろう手紙を挟んでセットする。

 

それの内容は転生前の知識を持ってるウルティオですら詳しくは判らないが、何となく察しているため中身を見るまでもなかった。

 

 

 

ウルティオ「……騎士団からの、か」

 

シャドウ「え、中身見てないのに何でわかったの?」

 

ウルティオ「我が目は全てを見通している」

 

シャドウ「そこまで知ってるのって言えばいいのか、言いたかっただけでしょって言えばいいのか」

 

ウルティオ「後者に決まっているだろ」

 

シャドウ「はは、やっぱり?

でもそれ、よくわかるよ。

僕にも言いたかっただけってのよくあるし」

 

ウルティオ「まあそうだろうな」

 

シャドウ「いや〜我ながらいい相棒持って良かったよ、僕の『陰の実力者』像はまだこれだって決まってないから色々とフォローも助かるし」

 

ウルティオ「……最近は、俺も何になりたいかで悩んでいるが」

 

シャドウ「え?ウルティオ『陰の実力者』にならないの?」

 

ウルティオ「それとは少し違う何かだな。

……だが、俺は本当にそれになりたいのか、悩むことがある。

だがそれになりたいと決まった時、俺は更に強くなるかもしれない。

あの日お前と戦って1つ判ったが、目的がある奴とない奴では強さが違うからな」

 

シャドウ「……そっか、ウルティオも探してるんだね、自分のなりたいものを」

(うーん、こりゃ僕もうかうかしてられないかな?それに何時までもレベリオにフォローされてばっかりなのも良くないし。

ただでさえ僕とレベリオの実力差は―――――――)

「まあ、まだ時間があるから気長に行こうよ。

……それよりも、時は近い」

 

ウルティオ「……ああ、そうだな」

 

 

 

シャドウの『陰の実力者』像、ウルティオの『なりたいもの』互いにそれらを話した後、シャドウが『陰の実力者』ムーブを開始し、ウルティオもそれに乗っかる。

 

時は近い、と言うだけでウルティオは理解しているのでシャドウもそれ以上言う必要がないのだ。

 

そしてシャドウは椅子に座り、ウルティオは窓を開けて窓際近くの、扉を開けた者から見て左の壁へと持たれかかり腕を組む。

 

そしてかなりの時間が経過し・・・

 

部屋の扉が静かに開き、銀髪のエルフ…《シャドウガーデン》『七陰』第二席、ベータが入室してくる。

 

 

 

ベータ「……わぁぁ……」

 

 

 

シャドウとウルティオによって、多数飾られ設置されたシャドウの『陰の実力者』コレクションがある部屋を見てベータは感動していた。

 

彼女からすればそんじょそこらの人間がそう簡単には手に入らない逸品、それをシャドウが持ってるのは当然とはいえそれらをその目で見れるのは感動……という言葉だけでは表せないだろう。

 

そして一通り見渡した後彼女はシャドウとウルティオの傍まで歩いてきた。

 

一方、シャドウはワイングラスを回しながら口を開いた。

 

 

 

シャドウ「……時は満ちた……今宵は陰の世界」

 

ウルティオ「如何なる者が抗おうと、陰の世では我らに狩られる定め」

 

 

 

ウルティオはそう言いながらベータを見つめる。

 

すると彼女も彼の言う事を当然だと理解しているのか深く頷いた。

 

 

 

ベータ「陰の世界、月の隠れた今宵は、まさに我らに相応しい舞台ですね」

 

シャドウ「………」

 

ウルティオ「……うむ」

 

ベータ「準備が整いました、シャドウ様、ウルティオ様」

 

シャドウ「……そうか」

 

ウルティオ「ならば確認の為にベータ、報告を」

 

 

 

一応ウルティオは前世の知識、そして定期的にガーデンの構成員と話をしている為、作戦はあらかた覚えてはいるが、シャドウがそんなもん知る由もない。

 

その為、彼はベータに改めて作戦の確認の為に説明と報告をさせる。

 

まあ、運と勢いと実力で行くシャドウがそれらを聞いても全部理解出来る筈もなしだが。

 

 

 

ベータ「アルファ様の命により、近場の動かせる人員は全て王都に集結させました。

その数114人」

 

シャドウ「……114人?」

ウルティオ「……ほう」

(うーん、偶に構成員の面倒とか見てるけど、近場だとやっぱりそんなものか……)

 

ベータ「…!

も、申し訳ありません!今動員出来るのはこれが最大で…」

 

ウルティオ「いやいや、謝ることはないよベータ。

寧ろ、それだけの人数を集められてシャドウも驚いてるくらいさ。

故に気にすることはない、報告の続きをしてくれ」

 

 

 

ベータは少ないと思ったのだろう、ウルティオがフォローを入れる。

 

ちなみに前世の知識で知ってはいるものの、ウルティオは《シャドウガーデン》が現在何人いるかは把握している。

 

 

 

ベータ「あ、ありがたき幸せです!では報告の続きを――――」

 

シャドウ(ねえレベリオ)

 

ウルティオ「…ん?ベータ、すまないがちょっと待ってくれ」

 

ベータ「え?は、はい…」

(ウルティオ様はフォローしてくれましたがやはりシャドウ様は……?)

 

 

 

ベータが報告の続きをするとシャドウがこちらを見て口の動きだけでウルティオに話しかけてくる。

 

ウルティオをそれを聞いたのかベータを少し待たせ、シャドウの側に寄って会話に入る。

 

ウルティオはフォローしてくれたが、ベータから見たらやはりシャドウには何か不服があるのかと思い始めていた。

 

 

 

シャドウ(114人って凄いよね、エキストラでも雇ったのかな?)

 

ウルティオ(シドも偶にアレクサンドリアに来てるから判るだろ?割と結構キャラの濃い人がいることを。

『七陰』は勿論ラムダもいればそりゃ彼女達についてくる人は沢山いるさ。

お前だって、何ヶ月か前にウィクトーリアだったか?彼女の悪魔憑き治してガーデンに入れたじゃないか)

 

シャドウ(ああ、そっかそっか、確かにあれだけキャラの濃い女性いたらそりゃ沢山増えるか)

 

ウルティオ(そういう事だ。

理解したならベータの報告の続きを聞くぞ)

「…すまないなベータ、報告の続きを」

 

 

 

シャドウに現在のガーデンの構成員の数を伝えず、敢えて彼の『陰の実力者』ムーブに付き合っている人が多いと伝えるウルティオ。

 

無論、いざ組織の構成員が600人を越えたと知った時の反応を楽しむ為である。

 

そうしてシャドウとの話を終えたウルティオはベータに報告の続きをするように指示する。

 

 

 

ベータ「は、はいっ。

……作戦は点在する『ディアボロス教団』フェンリル派アジトへの同時襲撃です。

それと並行してアレクシア王女の魔力痕跡を探知、発見次第確保します。

全体指揮をガンマが、現場指揮をアルファ様が取り、私がその補佐を。

イプシロンは後方支援、デルタが先陣を切り、作戦開始の合図とします」

 

シャドウ(へー、そうなんだ)

 

ウルティオ「ふむ…」

(どうせシドは「へー、そうなんだ」としか思ってないからなぁ、やはりいつも通り分身を使ってこいつとデルタを見張りつつ、他の皆の成長を見届けますかねぇ。

ウルティオとしての俺でアイリスにも会いたいし、何より普通にこのまま行くとアルファが『教団』によって実験体にされた悪魔憑きの、オルバ子爵の娘のミリアを倒しちゃうからな……)

 

ベータ「部隊構成は―――」

 

シャドウ「ウルティオ」

 

ウルティオ「ん」

 

 

 

シャドウがベータの言葉を遮って、ワインの下敷きとなっている手紙をウルティオに差し出す。

 

そしてウルティオは受け取った直後素早く片手でその手紙を取り出して、ニヤニヤしているシャドウを睨んだ後普通の表情に戻ってベータに見せる。

 

 

 

(『スタイリッシュ開封』………か、相変わらずネーミングセンスのない……。

スタイリッシュ付ければいいと思ってるんじゃねぇぞこいつ………。

まあ、この手際良いカッコ良き開封は認めるが、俺も好んで練習したし)

 

ベータ「……これは」

 

ウルティオ「どうにも奴らは、自分達が誰を敵に回したのか理解してないようでな……」

 

シャドウ「デルタには悪いが、[[rb:前奏曲 > プレリュード]]は僕が奏でよう」

 

ウルティオ「本体の俺はアルファと、3人の分身の内1人はデルタ、もう1人は遊撃兼各構成員の伝令役、最後の1人はシャドウと行動する」

 

シャドウ&ベータ「「えっ!?」」

 

 

 

ウルティオのその発言に、ベータと、立ち上がったシャドウが驚く。

 

レベリオ=ウルティオは王都に現在4人しかおらず、内1人はアイリスと会って行動する手筈となっているがそこは彼が新たに1体分身を出すため問題はない。

※現在のウルティオは8人以上に分身出来るようになっている。

 

が、2人からすればデルタについたり遊撃兼伝令役を勤めたりするのは判るが、シャドウとアルファ、それぞれの側にいると言うとは思わなかったようである。

※シャドウは自分の、ベータはアルファの側にいると言ったことに驚いてる

 

 

 

「何を驚いてるのかある程度想像はつくが安心しろ、イレギュラーでも起こらん限り基本俺は手は出さん。

ベータ、これはガーデンに所属する全員の訓練の成果を確認する為。

デルタに1人つけるのは損害を大きくしないため。

そしてシャドウに1人をつけるのは、万が一『アレ』をシャドウが使う場合、すぐに避難させる為の保険だ」

(絶対使うから近くにいて見張っておかないとやばいんだよね)

 

シャドウ(そういう事ね。

デルタは建造物壊しまくるし、僕が『アレ』を使ったらとんでもない事になるからなぁ。

勢いでやっちゃうから、その時近くにいたら巻き添え喰らっちゃう。

まあウルティオは僕の『アレ』を完全に防げるから問題ないけど)

 

ベータ「成る程、確かに……」

 

ウルティオ「そういう事でベータ、先にアルファの所へ行っててくれ。

俺も少ししたらアルファの側にいる分身と入れ替わる」

 

ベータ「わ、分かりました!失礼します!」

 

 

 

ベータは礼儀正しく頭を下げた後夜の闇に姿を消し、部屋は再び、シャドウとウルティオの2人のみとなった。

 

その後ウルティオは新たに1人分身を産み出してベータの後を追うように寮を出る。

 

グラスに注いだワインをゆっくりと飲んでいるシャドウにウルティオが話しかける。

 

 

 

ウルティオ「さて、俺もそろそろ分身と入れ替わる」

 

シャドウ「ああ、我らも行くぞ……」

 

 

 

こうして、『陰の世界』に《シャドウガーデン》という強者集団が出撃することになった。

 

 

 

ウルティオ(…あ、アレクシアの場所知ってるってベータに言うの忘れてた。

まいっか、あんまり問題ないし)

 

 

 

 

 

 







レベリオ・ヴェンデッタ
ウルティオ



未だに目的や何になりたいか決まってないが、アレクシアを誘拐したゼノンを揺さぶりつつ『陰実』の世界を謳歌する黒紫色の髪と目の転生者オリ主

原作通りのまま事を運ぼうとすると面白味がないので『魔力分身』を使っての自作自演をこれから起こそうとしている。

ウルティオ「アイリスに見せてやらないとな」

………何を?



シド・カゲノー
シャドウ



『教団』の息のかかった騎士団の拷問を拷問を受けるモブとして楽しんだマジでイカれた原作主人公。

その後はバレないように魔力を使って傷を治し、レベリオに駅まで送られ寮に帰って暫くした後、分身のウルティオと会って『陰の実力者』コレクションを多数部屋に飾り設置する。
※途中でウルティオは本体と入れ替わった。

その後『陰の実力者』ムーブをするべく、まずは手紙を送ってきたならず者騎士団を原作通り抹殺しようとする。



アルファ



作戦時にウルティオ本体と行動することになって顔にはあまり出てないが内心喜んでいるこのシリーズのオリ主ヒロイン候補No.1キャラ

シャドウとウルティオ、どちらも彼女や他の《シャドウガーデン》にとっては先を見据えているものの、1人で突っ込むシャドウと異なり、慎重派のウルティオからはちょいちょい頼られて嬉しく感じている。

作戦終了後にウルティオとデートの約束を取り付けた。



ベータ



『七陰』第二席にしてこのシリーズでもシャドウに対して尊敬と同時に恋愛感情を抱いているシド=シャドウヒロイン候補キャラ

ウルティオに対しては幼少時代の訓練で厳しくされながらもシャドウと同様の先を見据える目、そしてデルタから主に『デルタの方が強いから、デルタの言う事を聞け!』等と言われた所を彼に庇われた事が何度もあった為にシャドウ以上に尊敬の念を抱いおり、彼といると年は変わらないけど年上の兄や父親といるような感じがする模様。
※これに関しては他の《シャドウガーデン》のメンバーも大体同じ模様、ラムダ等の20歳以上の者はウルティオとは同じ年、もしくは年の近い人と接している気分になるらしい。
※ちなみに、その後のデルタはウルティオにこっ酷く叱られました、似たような案件で何度も。

果たして彼女はシド=シャドウのヒロイン候補No.1キャラになれるのか……?


ゼノン・グリフィ



表向き魔剣士学園の剣術指南として数多くの生徒を指南しているが、その正体はラウンズ第十二席目の座を狙う『ディアボロス教団』フェンリル派の幹部という、『教団』さえなければかなり剣の腕の立つ優男という惜しいキャラ

王族兼英雄の血を狙ってアレクシアを攫わせたその翌日にシド・カゲノーをその犯人としてでっち上げさせた数日後、アイリスへの報告を済ませた後気配なく接近し声を掛けてきたレベリオに驚いた……だけならまだよかったが、その後彼からまるでこちらの目的を全て見抜いているかのような質問やら発言やら行動等を見て完全に動揺している。

レベリオに関しては消そうにも一筋縄では行かないため、どうしようか思考中とのこと。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。