俺は一通り、痩騎士以外の、学園を襲撃して来たディアボロス教団全員に、『単語殺し』と『言霊操り人形』を使った。
一度に全員やろうとするとかなりの魔力制御が必要、しかも『強欲の瞳』が起動している最中である。
が、こういう魔力阻害の対策は俺自身で沢山してきている、吸収の方は別に俺の魔力で良ければだがいくらでもくれてやる。
後でどうなっても知らない、と思いながらだ。
さて、少し時間がかかってしまったが俺も行動を開始しよう。
レベリオ「………他力本願になるが、ヤツとの会話を聞けば、もしかしたら、俺のやりたい事が決まるかもしれない。
となれば……まずはシドと合流しないとな、あいつの場合『命』を感知する方が早い」
俺はシドの命を感知し、今いる屋上からひとっ飛びしていく。
『命』や『負の感情』自慢ではないが、感知能力だけなら現状、最強かもしれない。
無論これよりも強い感知術はあるだろうが…これより強い感知能力が何なのか、教えてほしいくらいである。
この2つの感知術技を完全に素通りするには、
そんなもん、人間は勿論だが、エルフや獣人等の亜人種でも捨てるのは不可能だ、負の感情とかはともかく、命を捨てるなんてほぼ無理な話だからね。
この感知術を素通り出来る可能性がワンチャンありそうのは、欲望や負の感情とかが他の者と比べて極めて低い、吸血姫のエリザベートくらいか。
吸血鬼の命の鼓動とかわからないからなぁ、赤の塔辺りを感知してるけど、クリムゾンって奴が行動起こしてないから、まだ仮死状態のまま棺の中に眠ってるだろうし。
アウロラも可能性は……どうだろう、彼女が人として生きている時代にいたら理解していただろうか。
あとは、この感知術はまだそこまで遠い場所にいる者を感知出来ないから、それらの弱点を補えたら、本当に最強と言えるかもしれない。
……やれやれ、最強に興味はないって言っておいて、内心では何が最強か?を考えてやがる。
学園入学前に幾度かシドと戦った故か、あるいはやりたい事がまだ定まってないのか、どちらにしても、全く俺らしくねぇ。
色々と思考しながら学園の屋上をぴょんぴょん飛んでいると、シドを発見した。
……はぁ、俺がこの世界に介入してもやってるなぁ、モブムーブ。
見事に肩から腰にかけて深々と痛々しい一本傷が入っており、制服も身体もバッサリと斬られて、かなり出血したと見える。
無論、傷は既に塞いでいるようだが。
………そろそろ教えてやるか、お前のやった事はモブじゃないって。
シド「あ、レベリオ」
レベリオ「・・・」
シド「どうしたのそんな顔して」
レベリオ「……シド、正直に言おう」
シド「?」
レベリオ「スゥ~〜〜〜〜〜〜
お前のモブ式奥義、ただの目立ち奥義だからっ!!!」
俺はシドの耳元まで近づいて、超がつくほどの大声で言ってやった。
こいつは急性音響外傷なんてならんから遠慮なく言ってやればいい、自分が核になればいいなんてほざいてるから、心臓や脳が塵も残らない、みたいな状態にでもならん限り死なん死なん。
ていうか、寧ろこれで死んだり障害が残るようなら、所詮その程度だわ、シャドウガーデンの盟主交代だわ。
シドはこういうのはあんまり経験ないのか、めっちゃキーンとしていた。
シド「〜〜〜〜〜〜〜!?
ちょ、こんな耳元で叫ばなくても」
レベリオ「いいや!叫ぶ、マジで叫ぶ!
お前折角アレクシア王女ラブコメルートから外れたのに、お前のそのモブ式奥義ならぬ目立ち奥義で、今度はローズ王女ラブコメルートに突入してしまった事を理解していないな!?」
シド「え?いやいやそんなこと無いでしょ。
だって選抜大会の時も僕見事に――――」
レベリオ「あのなシド?端から見たら10回以上も致命傷レベルのダメージ負って、立ち上がるモブがいるわけねーだろ!?
あれじゃあ、実力の差が判っても、絶対に諦めない主人公ムーブだぞ!?」
シド「それは困るなぁ、僕がなりたいのは主人公じゃないから」
レベリオ「そのなりたくない主人公のムーブをお前、選抜大会と今日で2回もやったの!
……どうやらお前はモブというのが何たるか判っていないな、いいか?モブと言うのは……」
余りにもシド流モブムーブが絶対に諦めない系主人公ムーブになってしまってるので、俺はモブの何たるかを軽く説明する事にした。
こんな奴でも一応原作主人公なんだけどなぁ、でもたまにモブムーブが主人公ムーブになってしまってるから「※主人公です」って一生つけてやろうか?
シド「そんなんでいいの?それじゃあただのモブじゃん」
レベリオ「ただのモブでいいんだってば。
まあいい、これ以上この話を続けると長くなりそうだからな……」
シド「レベリオから話題持ってきたのに」
レベリオ「お前が全然モブになれてないからだろっ!?」
シド「判った、判ったからそんな耳元で大声出さないでよ」
レベリオ「……まあいい、それより状況は?」
シド「えっ?レベリオが一番理解している癖に」
レベリオ「……は?」
シドに状況を聞こうとすると、何故か俺の方が判っているかのような物言いをしてくる。
ちょっと待て、まさかこいつ……。
シド「あのやられ役のエキストラ雇ったの、レベリオでしょ?」
レベリオ(oh……なんてこった。
こいつ、襲撃してきた奴らをエキストラか何かと勘違いしてやがる。
……しまった、こいつの頭も大概パッパラッパーだったのすっかり忘れてた……)
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜」
シド「なんでため息?」
レベリオ「なんで俺がいちいちエキストラ雇わなきゃいけないんだ」
シド「だってあの盗賊達《ディアボロス教団》って名乗ったんだよ?
その組織名は僕とレベリオ、シャドウガーデンの皆くらいしか知らないのに」
レベリオ「俺が言わせたんだよ『言霊操り人形』を使ってな。
今の状況でも問題なく使えた」
シド「あー、成る程、突然襲撃してきた盗賊達にディアボロス教団って名乗らせて、でっち上げたって訳だ」
※レベリオが何かやった、くらいしか理解してない
レベリオ「そういうこった。
と言うわけで、
シド「そして、やりたい事、というかなりたいものを決める、と」
レベリオ「……ああ」
シド(ついに、レベリオの『陰の実力者』ムーブが見れるかな?
そして敵の大将をレベリオが殺ろうとしている内に、僕はそれ以外の奴らを片っ端やれる!うん、僕もそこそこいい感じの『陰の実力者』ムーブ出来るし、レベリオのも見れる!
どんな風に行くんだろ?)
「んー…ま、いっか、たまには露払いに徹するのも」
レベリオ「……すまんな」
シド「いいっていいって、こっちも初心に戻る、みたいな感じで行くから」
レベリオ「……初心???ああ……」
(そうか、『陰の実力者』って言っても、一応それになりたかった頃……つまり、始まりはあったか)
シド「まぁ、魔力を細かく加工して練ればササッと終わるんだけどね。
でも、この状況ならレベリオが決める方がいいかな」
レベリオ「そうとなればさっさと行動するか。
……グレンさんとマルコさんが賊の中では割と強い奴らと交戦してる。
あと……なんだこれ?」
シド「どうしたの?」
俺が学園各所を感知していると、痩騎士一派とは魔力の性質が全く異なる反応が3つあった。
……何だこれは?この魔力…俺の『黒』の魔力と少し、性質が似てる……?
レベリオ「……どうやら、魔力の質だけなら、少しは歯応えのある奴がいるみたいだ。
それも3n…いや、3体か」
シド「どんな奴?」
レベリオ「その目で見ればわかるさ、じゃあ俺は先に行って、魔力を阻害してるアーティファクトを何とかしてくる」
シド「ん、りょーかい」
こうして俺とシドは屋上から飛び降りて校舎内に入った後、それぞれ行動を開始するべく別れる。
俺は速攻で研究室へ向かって行った。
side ???
グレン「ふんっ!」
レックス「ちぃぃぃぃい!」
学園の研究室にて、紅の騎士団の副団長グレンと、その団員のマルコが、ディアボロス教団の『1st』『叛逆遊戯』のレックスと交戦していた。
グレンの斬撃によってレックスの身体が袈裟に斬られる。
原作だとグレンは死に、マルコは瀕死の重症を負うのだが、レベリオの『赤』の魔力を与えられ、さらに当の本人によってその魔力で肉体を強化改造された事により、なんと、魔力が使えないにも関わらず善戦していたのであった。
魔力が使えないとはいえ、既に魔力で強化改造された肉体はそのままだからである。
グレン(レベリオ殿の魔力による肉体の強化改造……これ程とは)
「マルコ、このまま連携して倒すぞ」
マルコ「はいっ!」
(これ…レベリオ殿から魔力を貰ってなかったら死んでたな……)
レックス「おいおい…魔力使えねえってのに…随分強えじゃねえか……?」
(結構ガッツリいかれたぜ……。
しかもどういうわけか、『我らはシャドウガーデン』も何故か言えねえ……!これじゃ死んだ『3rd』の連中笑えねぇなぁ……)
グレン「魔力が全てではないからな。
このまま押し切らせてもらう」
レックス「押し切らせてもらう……?
まさかてめぇ、俺が本気でやってたと思ってるのか?」
マルコ「なっ…!今までは本気じゃなかったとでも言うのか!?」
レックス「当たり前だろ?俺が本気出せば2人まとめてあの世行きだぜ?
……まあ、この状況でよく戦ったとだけ言っとこう、その実力を評して名前だけは聞いておくぜ」
グレン「紅の騎士団副団長、獅子髭のグレンだ」
マルコ「同じく団員のマルコだ……!」
グレン「シェリー殿、ここは我らに任せてお逃げ下さい」
シェリー「で、でも……」
マルコ「早く!」
???「逃げる必要はないですよ、死ぬのはそいつですから」
3人「「「!?」」」
レックス「あん……?」
2人の名前を聞いた後、さっさと本気出してぶっ倒そうと思ったら、学生服着てる奴が来やがった。
ん?ちょっと待て、ありゃ確か……前回のブシン祭で優勝した……レベリオっつたか?
痩騎士さんが警戒していた奴らしいが……この状況だ、俺が負けるわけない!
マルコ「れ、レベリオ殿……!」
レベリオ「よくぞ持ち堪えてくれましたね、グレンさん、マルコさん」
グレン「いえ、レベリオ殿の魔力による肉体の強化改造あってのものです」
レベリオ「ですがそれを活かしたのはお二方です。
……後は私に任せて結構」
レックス「へ、へへ……ブシン祭の優勝者だかなんだか知らねえが、大して強くなさそうじゃねえか」
レベリオ「大して強くない、それは俺のセリフなんだけど?
『叛逆遊戯』の『レックス』さんや?」
ヤツは俺の言葉を言い返すと、なんの変哲もないミスリルの剣を少し抜きやがった。
俺の名前……二つ名まで知ってるとはな。
やる気みてえだ、剣を完全に抜いて、真っ向からゆっくり近づいてきやがる。
レックス「へぇ〜これはこれは、ブシン祭の優勝者に俺の名前を知っていただけてるとは、光栄なこって」
レベリオ「調子に乗るなよ、小物」
レックス「……あ?今何つった……テメェ?」
レベリオ「小物と言ったんだ。
その程度の二つ名で満足してる奴など、小物で事足りる、今から貴様がその小物だと言うことを教えてやろう」
俺を小物と言った、レベリオってガキは剣を持ったまま、俺の横を通っていった。
そして振り向いて来やがった、来る……!
レックス「言ってくれるじゃねーか!その強気が何時までもつ――――か――――?」
俺が剣を取ろうとした矢先、何故か視界が傾いて上を、天井を向いていた。
そして、後頭部を打ったような衝撃が走る。
何故か、痛みを感じることもなく、俺の視界に、俺の身体が、俺を見下ろすようにあった。
その俺の身体には、俺の首から先が――――ない。
――――は?ちょっと待て?アイツ、いつ俺を斬った!?
……まさか!?すれ違った時に、既に―――――
言い切ろうとすると、それを遮るように、ヤツの言葉が聞こえた。
レベリオ「俺の刃を見た時から、既にお前の運命は決まっていたんだよ。
叛逆……いや『未熟遊戯のレックス』さんや」
――――――ああ。
――――――こりゃ、確かに未熟と言われても仕方ねぇか。
――――――でも、まっ……こんな強えヤツにやられて、名前まで覚えて貰えるたぁ、悪くねぇ……か………。
レックスは碌でもない己の人生を振り返りながら、強敵にやられた事、そしてその強敵から名前を覚えて貰えた事に、唯一満足しながら息絶えたのであった。
side レベリオ
レックスの首をそっと斬った俺は、既に収めかけの剣を鞘に収めた。
直後、首から頭を失ったレックスの身体がフラフラし始め、彼の頭を隠すようにうつ伏せに倒れる。
レベリオ「ふむ…」
(……決まったな、『神速・麻酔剣』
1度やってみたかった、すれ違った時には既に相手の首を斬ってるヤツ!
すぐに落ちないように首を斬るの大変だった…どれだけ裏で練習したか)
グレン(こうして彼の剣を見るのは初めてだが……たったの一撃とは……。
いや、私やマルコ、他の騎士団員にもこれ程魔力を使って身体を強化改造していた。
故に納得せざるを得ないが……)
マルコ(み……見えなかった…剣筋だけじゃない、腕の動きすら……!)
シェリー(す、凄い……!)
レベリオ「シェリー先輩」
シェリー「は、はいっ!?」
レベリオ「すぐに道具を集めてください。
この研究室にあるのでしょう?」
シェリー「え?あ……はいっ!すぐに集めますっ!」
俺からの指示を聞くとシェリーが『強欲の瞳』の制御に必要な道具をかき集め始める。
元々選抜大会の後にアーティファクトの話もしていたのでそこまで不思議ではないだろう。
彼女が疑問に思っていたのは、制御装置の道具が何故ここにあるのか、ということだ。
が、状況を理解したのか直ぐ様行動に移した。
続いて俺はグレンとマルコに指示を出す。
レベリオ「グレンさんとマルコさんは、一旦学園を出てアイリス王女と合流して、魔力が使えるようになるまで待機してください」
グレン「いや…それでは彼女の護衛は…」
レベリオ「私が引き受けます」
マルコ「な、何を言ってるんですかっ!副団長や自分も――――」
レベリオ「こいつ1人に手こずっているようでは、この先どうなるか判りません。
もし、こいつと同じ奴が3人以上現れたら、お二方は……死にますよ?」
これは決して嘘ではない。
事実、レックスなんて比にならん魔力を持った奴が3人……いや、3体いるのは確かなのだ。
もしそいつ等と遭遇したら、今のこの2人でも……無理!
となれば、一旦学園を出てもらってアイリスと合流し、こちらでアーティファクトを止めてから再度突撃して、『2nd』以下の教団員を殲滅、というのがいいのだ。
正体不明の3体というイレギュラーがいるが、それ以外は原作通りの筈だ、学生達は大講堂、無事だろう。
マルコ「しかし、それではこの状況で戦えるのがレベリオ殿1人に……」
レベリオ「安心してください、シェリー先輩のアーティファクトの制御装置が起動するまでですよ。
そこから先は、アイリス王女を含めた紅の騎士団の仕事です」
グレン「……承知した、マルコ、行くぞ」
マルコ「は、はい……」
グレン「レベリオ殿、どうかご無事で」
レベリオ「お二方も」
俺の指示を聞き、了承した2人が研究室を後にする。
これであとはシェリーを護衛しつつ、『強欲の瞳』を止めるだけだが……。
………やけに静かだな、露払いではあるものの、既にシドがじゃんじゃか教団員を殺りまくったからか。
なんて考えている間に、彼女が駆けつける。
どうやら解析が完了したようだ。
シェリー「お待たせいたしました!解析完了です!
レベリオ君が守ってくれたお陰です」
レベリオ「グレンさんとマルコさんを忘れてますよ」
シェリー「そ、そうでした!
と、とにかく、これで捕まった皆やお義父様を助けられます!」
レベリオ「………」
(お義父様、か……利用されてるとも知らずに……。)
「……あとは、そいつを『強欲の瞳』がある部屋に投げ込むんでしたね」
シェリー「!?知ってるんですか!?」
レベリオ「チョコ、渡しましたよね。
あの時チラッと見た本で、なんの研究をしているか察しました。
あとはこちらで調べた、それだけの事です」
(まっ、前世で知ってたなんて言えるわけ無いしね)
シェリー「凄いです……!剣の腕だけでなく、アーティファクトの研究まで!?」
レベリオ「俺はあくまでも調べただけですよ。
『強欲の瞳』の機能を、なのでこの事態に陥った時、真っ先にこちらに来たのです。
……さて、あとは行動あるのみですが、どうしたものか……」
ここも知ってはいるが、あえて知らなさそうにものを言う俺。
流石に地下通路の場所まで知っていたらシェリーも驚きを通り越して絶句するかもしれない。
シェリー「大丈夫です、副学園長室に秘密の隠し通路がありますので、そこから地下へ行って接近しましょう」
レベリオ「そんな所があるんですか?」
シェリー「学園にはこういった有事の為に、地下通路がいくつか隠されているんです。
逃げて来た時に皆が大講堂へ連れ込まれているのを見ました」
レベリオ「『強欲の瞳』もこの先にある、と?」
シェリー「はい!ここから副学園長室まで少し距離はありますが、地下通路へ行けば最短で大講堂に行けます」
レベリオ「よし……そうとなれば行きますか」
俺とシェリーは一旦副学園長室へ向かう事になった。
そして到着してからすぐにシェリーが本棚の本の1つの上に手を触れる。
するとその本棚が動いて隠し通路が開かれ、2人はその先へと進む。
道中、彼女が自分の父親代わりとなったルスランの事について俺に沢山話してきた。
それも相当嬉しそうに。
嗚呼、見ろよルスラン、お前はこんないい子を自らの私利私欲の為に利用して、挙げ句殺そうとしてるんだぞ?
シェリーに罪はない、シェリーが死ぬんじゃない、死ぬのはお前だ。
彼女も彼女で、もし真実を知ったらどうなるのか?
どうしてお母様を、とルスランに尋ねるのか?
それとも自分の母親を殺したルスランに怒りを感じるのか?
どちらにしても、こればっかりはまず俺が行動しないといけない。
そして地下通路を通って、大講堂までもうすぐたどり着こうとした途端……。
???「ガルルァァァァァア!!!」
シェリー「ひっ!?」
レベリオ「……?この咆哮は……」
(……デルタ!?ちょっと待てっ!?まだシェリーの作った『強欲の瞳』の制御装置使っていないぞっ!?
いや、確かにデルタなら、魔力使えなくてもある程度は戦えるが……)
大講堂の方角から、デルタの咆哮が聞こえたのだ。
デルタだけじゃない、魔力感知してみると、大講堂の方にアルファとガンマの魔力を感じる。
大講堂だけではないと思い、校舎内にも感知すると、ベータもシドの近くにいる。
しかも、各々ちょいちょいと動いてるからおそらく交戦しているのだろう。
彼女達だけじゃない、他にも多数魔力の反応があるが、おそらくシャドウガーデンの構成員だ。
魔力感知をしてみると、何故かデルタを除いて彼女達の魔力があんまり吸われていない。
シェリー「だ、大講堂から……!?」
レベリオ(……あ〜………そうか、数ヶ月前に魔力制御を中心に訓練するように言ったのが効いたか)
「急いた方が、よさそうですね……」
シェリーと一緒に急いで行き、大講堂の内部が見える通気口まで辿り着くと、そこにはニューを筆頭としたシャドウガーデンの構成員が生徒達を守るように教団員相手に防戦、アルファとガンマがメインで教団員と交戦、痩騎士の状態から見て、デルタは雑魚を何人か仕留めた後、痩騎士と交戦したばかりのようだ。
教団員の死体の数からして100人近くいたようだが、もう10数人程度しかいない、この状況でも雑魚相手なら簡単に倒せる感じのようだ。
このまま行けばアルファ達だけでも問題ないが、1つ気になる事がある。
(大講堂の中に俺が感じた、俺に近い魔力を持つ奴がいない……?
ルスランとは別の勢力なのか……?
………いや、大講堂の近くにはいる、いつ、そのイレギュラーが出てくるか判らん。
実際のスペックは不明だが、もし今の状況で現れたら、アルファ達なら負けることはないだろうが、少し厄介になるかもしれない。
だって傷ついてほしくないもん。
となれば……)
「シェリー先輩、早くそれを」
シェリー「はいっ!」
シェリーが大講堂の通気口から制御装置を投げ込む。
すると魔力の阻害、吸われた感覚が無くなり、SG構成員達に守られていた学生達も一斉に立ち上がる。
ローズが反撃の好機と言わんばかりに剣を抜いて、シャドウガーデンの皆に加勢した。
構成員達も防戦をやめて攻勢に向かい、その後を任せるかのようにアルファとガンマが、デルタに加勢する。
これにより、痩騎士(ルスラン)以外の教団員が全滅、痩騎士側はさらに劣勢になった、シェリーが投げ込んだ制御装置がなければ、『強欲の瞳』で吸収した魔力は使えない。
レベリオ「よし、前門にシャドウガーデン、後門にローズ先輩を筆頭とした魔剣士学園の学生と、後から来るが騎士団……」
シェリー「このまま行けば、学園に攻めてきたディアボロス教団も鎮圧ですね。
あとはお義父様を探さないと……」
レベリオ(俺もそろそろ動くとするか)
「………シェリー先輩、副学園長は俺が探します。
先輩はほとぼりが冷めるまで、別の場所に避難してください」
シェリー「えっ?でも……」
レベリオ「反撃が始まったとは言え、まだ校舎内にも教団の手の者がいるかもしれません。
途中まで一緒にいますので」
シェリー「………………。
わかりました、レベリオ君、お義父様をお願いします」
シェリーは少し考えた後、俺の提案を飲んだ。
出来れば自分も行きたい、しかし戦えない以上、俺の足を引っ張るわけにはいかないのだろう。
レベリオ「では場所を移しましょう」
さてと、取り敢えずここを出て、近くの部屋に隠れてもらおう。
もう少しだ、もう少しで俺のやりたい事、なりたいものが見つけられる。
さあ、蹂躙と、自身の探求の時間だ。
side シャドウ
一方、魔力が開放される数分前、シドはシャドウの姿となり、校舎内にいる教団員を次々と殲滅しつつ、大講堂を目指していた。
相当魔力を練り、ようやく学園全体の魔力感知が出来るようになった彼は、大講堂に強い魔力を3つ感知した。
おそらくはレベリオが言っていたのと同じだろう。
そしてあるものを試すべく、スライムコートから少しスライムを分離するが……。
シャドウ(うーん、やっぱり使えないか、レベリオの『ラーニング殺し』だな。
まあいいや、これでも充分殺せる……よっと)
レベリオの『スライムドラグーン』をコピーして真似ようとしたが、分離したスライムからスライム弾を放つ事が出来ずに、やむを得ずシャドウはそのスライムを弾に変えて、遠くの教団員を撃ち抜いた。
(あっ、3枚抜きしちゃった。
近くに他の盗賊もいない……剣ばっか使うんじゃなかったな、残念だ。
……ん?誰かくる……?)
校舎内の教団員を殲滅していると、2つの足音が聞こえ、こちらに向かってきている。
そしてスライムスーツを着ているベータと遭遇した。
ベータ「シャドウ様……!」
シャドウ「あれ、ベータ?
なんでスライムスーツ纏えるの?」
ベータ「魔力制御の訓練の賜物です。
ウルティオ様が旅から帰ってきた頃に、来たるべき時が来るまでに魔力制御を中心とした訓練をするようにと……。
現在、大講堂にてアルファ様とガンマ、デルタやニューとその他、魔力制御に優れた構成員数名程で教団と交戦中です」
シャドウ(……あれ?これアルファ達が活躍して終わりじゃないかな?
レベリオの言ってた3つの魔力の持ち主がどれくらい強いかかわからないけど、場合によってはアルファ達が倒して終わっちゃう!
まずいな、そうなったら颯爽と現れる『陰の実力者』ムーブが出来ない!そうなる前に僕も早くいかないと)
「……そうか。
だが気をつけろ、敵は隠し玉を用意している」
ベータ「そのようですね、私達『七陰』に匹敵する魔力の反応が3つも……。
この状況で現れれば、流石に分が悪いかと」
シャドウ「ウルティオがそろそろ、魔力を阻害しているアーティファクトの解析を終える頃だろう、そうなれば、我らの敵ではない」
(まあ、僕は当然として、多分アルファとガンマ、デルタならこの状況でも問題ないだろうけどね)
ベータ(なっ……!?既に原因を解明して対処法まで準備を……!?
アーティファクトの解析となれば、国家最高峰の知識が必要な筈……!
そして、わざわざこの事件が起こるまで泳がせていたのも、主犯を炙り出し、教団の存在を公表するため……!
流石ウルティオ様…!シャドウ様がこの件を任せるのも当然という事ですか……!)
「そうなれば、我々も本領を発揮出来ますし、魔剣士学園の学生達も少しは戦力になりますね」
シャドウ「学生達の力の程度は知れてるがな。
とはいえ、アルファ達に先を越されるわけにはいかん。
行くぞベータ」
ベータ「はいっ……!」
ベータと合流した僕は大講堂に向かって、現れる黒ずくめの盗賊達を次々倒しまくった。
そしと大講堂に辿り着き、扉を開こうとしたときだった。
突如として、大講堂が眩い光に照らされた。
扉は開いてはいないが、隙間からでもその光が漏れ出している。
向こう側から数多くの声が聞こえる。
痩騎士「む……?これは……!」
生徒達「なんだ……!?」
ローズ「魔力が使える…!」
シャドウ「どうやら、ウルティオがやってくれたようだな」
ベータ「そのようですね、流石ウルティオ様」
デルタ「魔力が使えるのです!このままお前を狩るのですっ!」
痩騎士「レックスも戻らぬか……やむを得まい、奴らを呼ぶしか無いか。
アレの回収にも丁度いい」
アルファ「!デルタッ!」
雑魚教団員の最後の1人を倒したアルファが呼びかけると同時、痩騎士に飛びかかろうとしたデルタがその場で踏み止まる。
痩騎士の前に、2m以上はある黒い異形の怪物が現れた。
直後、痩騎士が何かを拾ってその場から去っていく。
アルファとガンマが駆けつけようとすると、もう一体、大講堂の屋根を突き破って黒い異形の怪物が現れた。
デルタ「新しい得物なのです!さっきの鎧のやつより強そうなのです!」
ガンマ「魔力の色が……黒に近い灰色……?」
アルファ「色だけはウルティオの魔力に近いようだけど……性質は別物ね。
……彼と同じ『黒』い魔力なら、この場にいる大半が恐怖に震える筈だから」
ローズ「な、なんですの…あの怪物は……!?」
学生A「……!危ない!」
ローズが見知らぬ2体の怪物の出現に驚いていると、彼女の後ろにさらにもう1体の怪物が、彼女の背後を取り襲いかかろうとしていた。
学生の1人が声を掛けるも間に合わない、と、魔剣士学園の学生達はそう思っていた。
しかし、襲いかかる怪物の腕にシャドウの剣が迫る。
ローズに振りかかる腕が彼の剣に止められた
ローズ「あ、あなたは……?」
シャドウ「ふむ……強度はそこそこ、か……」
(へぇ……ほんの少しの力で振ったけど、斬れないかぁ、しかも傷もついてない、少しは手応えありそうだね)
アルファ「シャドウ……!」
ガンマ「主様!」
デルタ「ボス!」
ニュー「!?シャドウ様の剣でも斬れない……!?」
(おそらくシャドウ様は試し斬りのつもりだったのでしょう、それでもあの怪物の腕が斬れないとなると、私では……)
学生B「うわぁあぁ!?火がっ!?火がぁっ!?」
学生C「何者かが学園に火を放ったぞ!」
学生D「ローズ会長!一旦逃げましょう!」
ローズ「先に行ってください。
……答えて、あなた達は一体何者なの…!?」
シャドウ「我らはシャドウガーデン、陰に潜み、陰を狩る者。
……早く逃げろ、奴らは我らが狩る」
アルファ「シャドウ、2体は私達が引き受けるわ」
シャドウ「うむ、抜かるなよ」
ローズ先輩の質問に答え、アルファ達が黒い怪物を2体相手すると、僕は残った1体を相手する。
さて、少し遊んでやるとするかな、ただ頑丈なだけじゃないといいね。
黒い怪物「Guoooooo!!!」
黒い怪物からスタートを切り、その剛腕を振るう。
成る程、頑丈なだけじゃなく、動きも速い。
後は威力かな、避けてどれくらいのものかチェックだ。
シャドウ「……ほう、単純な攻撃でこの威力か」
大講堂の床が陥没した。
推定15〜20人が円陣を組んだ時の広さと言ったところかな。
だが知性はどうかな?
知性がないのなら、さしづめ1/2デルタってところか。
「!!」
なんて考えていたら、怪物の腕がすぐ左にまで来ていた。
回避は間に合わない、僕はその一撃をまともに喰らう。
吹き飛ばされたが、受け身を取って壁に激突するのを防ぐ。
「……右頬が少し腫れたか…。
まさか……我にこれだけの傷を負わせるとはな……!!!」
※言ってみたかっただけ
言ってみたい事を呟いて正面に向き直ると、先程の怪物が視界にいない。
僕の足場の影が大きくなった。
ということは、頭上にいるということ。
よって避けるのは簡単だった。
うーん、正面から突っ込まないという所は評価出来るけど、それはあくまでも陽や光が当たらない場所で効果があるからなぁ。
しかも気配とか殺してないから意味がない。
デルタよりほんの少し知性がマシ……いや、もしくはそれ以下、かな?どっちにしても大差ないね、うん。
「惜しいな、光ある場所でなければ、避けられなかったかも知れぬ」
(単純に突っ込むだけだし……もう倒しちゃおっか)
黒い怪物「Guooooooooooo!!!」
シャドウ「遊びは終わりだ」
僕は剣に魔力を込め、襲い来る獣を迎撃しようとする。
流石にいつものアトミックを使ったら学園が吹き飛んじゃうから……刀身を伸ばさないアトミック・ソードでいこう。
そもそも1体だけなら今のスライムソードの長さで充分だ、後は手心を加えたこれを目の前の怪物が耐えられるか実験あるのみ。
怪物がもう目の前に迫ってくる。
その怪物に、魔力を凝縮した剣を――――――――
「『ミニ・アトミック・ソード』」
縦に振った。
すると怪物はその光の剣を受けて真っ二つ、刀身も伸ばしてないので大講堂の被害は床が1m程斬れただけ。
残ったのは怪物の……左右の手の中指がほんの少し残っただけだった。
「…ほんの少し力を出しただけでこれか」
(まあ、指が残ってるだけ耐えた方……かな?
さて……アルファ達の方は……もう終わりそうだね)
残りの2体の怪物の方に視線を向けると、1体はアルファのスライムソードによって一刀両断され手と足だけしかない状態になる。
もう1体はデルタによって身体をめっちゃくっちゃに引き裂かれていた。
そしてその残骸の処理をニューを筆頭とした数名のシャドウガーデンの皆が実行している。
なんか呆気ないなぁ、まあ、手心加えたアトミックの実験にはなったからいいか。
これでこっちは終わったと思った矢先、処理を終えたニューが話しかけてくる。
ニュー「…ご報告です、シャドウ様。
首謀者と思われる者は既に逃亡し、学園に火を放っている模様です」
シャドウ「そうか。
……愚かだな、逃げた先にヤツがいることを知らずに……」
ニュー(人斬りの主犯を誘き出し、彼らに『ディアボロス教団』の名を出させて、世界に届くか否か、少なくともミドガル王国にその組織の存在を公表……。
シャドウ様とウルティオ様……2人の底は果てしない……)
教団員「うぅ……くそっ……!」
ローズ「あ…危ない!まだ敵が…!!」
まだ生きていた教団員の1人がシャドウに襲いかかる。
が、振り向くまでもなく左手に持った剣でグサリと、その教団員の首を突き刺した。
シャドウ「首謀者はウルティオに任せればいい、ここは任せるぞ」
ニュー「はっ」
シャドウ(後はレベリオがどう決めるか……残った奴らを殺りつつ、高みの見物といこうかな)
そうしてその場をニューに任せたシャドウは七陰のアルファ、ベータ、ガンマ、デルタとともに出口にいる教団員達を殲滅すべく向かった。
レベリオ・ヴェンデッタ
自分のやりたい事、なりたいものが何なのか、学園襲撃事件で答えを見つけるべく行動する黒紫の髪と目を持つ転生者オリ主。
シドと別れた後はグレンとマルコ、シェリーを助けるべく登場、剣をゆっくり抜いてレックスとすれ違った直後、『神速・麻酔剣』で4人に腕の動きすら見えない速さでレックスの首を斬った。
その後『強欲の瞳』の制御装置の解析が完了したシェリーの護衛をし、制御装置が起動した後はシェリーを空き部屋に移して、副学園長室ではなく何故か明後日の方向へ向かった。
シド・カゲノー
シャドウ
レベリオの『陰の実力者』ムーブ(本人はなる気はない)を見届けるべく、学園襲撃の主犯を倒すのを譲って露払いを実行する原作主人公。
ただの雑魚散らしだけで終わると思いきや、大講堂に現れた黒い怪物が、手心ありとはいえ自分の剣を受けても傷1つつかない事に興味を持ち、少し遊んだ後、手心を加えた『アトミック・ソード』の耐久実験を実行するも、一撃で倒してしまう。
その後は大講堂の方をニューに任せて、教団員達を殲滅し、最後はレベリオの『陰の実力者』ムーブを見るべく高みの見物をしようとする。
シェリー・バーネット
アーティファクトの解析中、レックスに襲われた所をグレンとマルコ共々、レベリオに救われた、なんかヒロインフラグが立ちそうなキャラ
制御装置の起動後、レベリオにルスラン探しを任せたものの、心配になって少しそわそわしている。
黒い怪物
マーオウによってこの世界に顕現した魔人の細胞を、悪魔憑きの実験体に加えて改造された、『ディアボロス教団』の新たな実験体。
身体能力は実験体にされたミリアよりも高く、手加減したもののシャドウの剣ですら無傷で受け止める程。
尚、1体はシャドウの『アトミック・ソード』で左右の手の指以外の身体全てが蒸発、残る2体もそれぞれアルファとガンマ、ベータとデルタの連携により、アルファのスライムソード、デルタの魔力を目一杯込めた爪でそれぞれ無惨にやられた。
とはいえ所詮は戦闘データを取るための試作実験体に過ぎず、今後の教団の研究次第ではさらに強くなると思われる。
ミニ・アトミック・ソード
シド=シャドウの『アイ・アム・アトミックソード』の、スライムソードの刀身を全く伸ばさない、魔力を凝縮した剣で敵を斬る技。
流石に学園を破壊するわけにはいかない為の措置である。
黒い怪物が、手加減とはいえアトミックに耐えられるかの実験をする為に使用された。
神速・麻酔剣
レベリオが使用した『神速の剣』の技の1つ
対象に痛みを感じさせることなく、剣を振る腕の動きすら見えない程の速さで瞬時に斬る技。
技の開発当初、レベリオは首を斬った後すぐに落ちないようにする為散々練習していたが、いつしかすぐに落ちなくなるだけでなく、相手に斬られた痛みすら感じさせることなく斬れるようになった。
これによって技名を、開発中の当時『神速の剣・首刎』にするつもりが相手が痛みを感じずに斬られた事を知った後『神速・麻酔剣』になった。