フィールに呑まれた遊星? 作:フィールを感じろ
俺の意識が覚醒した時・・・フィールを感じていた。
Dホイールに乗って、名も知らないザコと
不動遊星…それが俺の名前だ。前世と言えばいいのか、その記憶を思い出すと同時に主人公であると自覚していた。意味がわからないが、何故かそんな気がした。
ザコとのデュエル中に覚醒した事で、少々Dホイールの操作が危うくなったが、体が覚えていた為デュエルに支障はでなかった。改めて自分のフィールドを見ると…丁度良くレベル8のシンクロモンスターを出せる場が整っていた。ならば俺のエースモンスターを呼ぶしかないとEXデッキを確認する。
そうか…俺は…くくく
そこで知った。自分は主人公であるが、記憶にある…赤き竜が絆を繋ぐ世界とは違う
決闘竜…『閃珖竜 スターダスト』
別世界の自分とは違う相棒。絆の力がデュエルに直結する世界から別れた世界での、自分を支えたモンスター。この相棒を所持しているという事は、俺は天錠覇王にならねばならないという事だ。そして究極神を倒し、どんな願いでも叶える権利を貰うのだ。その過程で世界の危機が訪れたりしたが、
…俺は主人公だ。世界は違えど、仲間の為に戦い、結果的にだが絆を繋ぎ世界を救う。それが俺だ・・・だが、しかし、まるで全然!この俺のフィールには程遠いんだよねぇ!
セクト?知らん!ジャック、アキ、クロウ、ルア、ルカ、お前ら全員敵でしかないんだよ!今の俺にとって絆なんてありはしないただの敵だ!
フィールだ!!仮装立体触感こそ俺の全てなんだ!Dホイールの速度と仮装立体映像が現実化することで感じるこの力!これこそが俺の、この世界の王である力なのだ!
熱く語ってしまったが、フィールこそが俺にとって全て。この世界で覚醒したが故に感じた力、別世界の俺は絆によって得た力に対し、この世界の俺はフィールによって得た。ただそれだけの違いに過ぎない…ああ、ザコは俺のフィールを受けてクラッシュしてしまってデュエルは中断だ。まあ、あのまま続けていても勝利は俺だったがな。
それと覚醒した特典と言えばいいのか…前世で使用していたシンクロサポートカードがサイドデッキに入っていた。まあ、これに関してはどうでもいい。俺がフィールの高みを目指す足がかりと言うだけの話だ。
「最高に高めた俺のフィールで最強の力を手に入れてやるぜ!!」
倒れたザコなんて知らぬ。俺のDホイールを走らせ、サテライトを爆走する。
目的は決闘竜を保持している奴らとのライディングデュエル。最強の力を手に入れる為、如何なる手段でもデュエルさせると意気込みながらDホイールを走らせる…しかし、問題があった。
どこにいやがる!俺とデュエルしろォォォ!
相手がどこにいるか、そもそも自分がサテライトのどこにいるかもわからなかったのだ。前世の記憶に覚醒すると同時に、前の自分が保持していた記憶が抜け落ちていた。今の彼は絆を知らず、フィールに憑りつかれた亡霊でしかなかった。
ダークシグナーとの戦いから半年後、シティとサテライトは一つになり街は復旧と発展を遂げた。ネオ童実野シティで開催されるワールド・ライディングデュエル・グランプリ(WRGP)に向けてDホイールの整備をしている者がいた。
「なあ、遊星。お前サテライトで暴れたりしてないよな?」
「何のことだ、牛尾」
その者の名は…不動遊星。赤き龍のシグナ―として、仲間達とダークシグナーと戦い抜いたデュエリスト。そんな彼に質問を投げかけるセキュリティの男。違うとわかっているのだろう、冗談交じりに返答した。
「お前によく似た男が、相手をクラッシュさせるまでライディングデュエルを強行するとか何とか意味わからねえ通信が来たんだよ。それと、ジャックの奴によく似たのも見たらしいぜ」
内心で息を吐きながら作業に戻る。まるで話にならない内容に呆れすら覚えた。
「最近はDホイールの調整で動いていない。ジャックはサテライトには行くが、無暗に襲うような事はしない」
「だろうな、何か進展があればまた来るぜ」
出ていく知り合いに背を向けながら整備を続ける。少し興味は湧いたが、手を動かしていくと些細な考えは自然と失せて行った。
思いで深いサテライトの変化を感じながら、白いDホイールを走らせる者がいた。噂であるが、知り合いによく似た人物がサテライトで暴れているというのだ。その正体を探ろうと、デュエルレーン周辺を駆け巡る。
「ええい!どこにもいないではないか!ジャック・アトラスが成敗に来てやったぞ!」
彼はとあるセキュリティの伝手からその存在を知り、ライバルであり仲間の評判を落とす存在を許せずこの場に来ていた。
ジャック・アトラス。過去にネオ童実野シティのライディングデュエルで頂点に君臨していたデュエリスト。王者の栄光は未だに残り、キング・アトラスとして根強いファンを獲得している。今は仲間と一体になって自分を磨く男、職に就かず、口うるさい仲間から逃げる様にDホイールを走らせる。
愚痴を出して束の間、デュエルレーンが交差する地点を通過した時…ありえない人物を見て驚愕した。
「な!遊星!?」
交差する一瞬の出来事。しかし、見えた人物の顔を見て見間違えるはずがなかった。あれは間違いなく、デュエルを通して絆を繋いだ仲間、不動遊星その人だった。だが不可能だと瞬時に思う、遊星はWRGPに向けてDホイールの調整をしていた。サテライトにいるはずがない。
「今のが偽者か!」
すぐさまDホイールを操作し、デュエルレーンに割り込む。ライディングデュエルが開始されれば、強制的にデュエルレーンが整備される。その仕様を利用して、交差した地点と繋げた。
ジャックはDホイールを加速させ追いかける。相当な速度を出しているが、未だに偽者の後姿が見えない。どれ程のスピードを出しているのかと考え、口が歪む。
遊星を騙るならそれぐらいできなければ!…ライバルと比較するからこそ、その存在に期待が膨らむ。ダークシグナーとの戦いの後、全力でデュエルした事は無かった。だからこそ、鬱憤晴らしも兼ねて熱が入る。
更に加速した世界。それを体験しながらDホイールを走らせ見えて来た。仲間と同じような形の赤いDホイール。
「ば、バカな!俺がいる!?」
わかってはいたが、偽者はライディングデュエル中であった。交差した時は一瞬で見えなかったが、今ではハッキリと瞳に映る。自らが扱うDホイールと瓜二つ、そしてフィールドに…
「レッド・デーモンズ・ドラゴン」
紅蓮の竜。我が魂とすら呼べる存在が、確かに目前に現れていた。それだけではない、我が魂を扱うデュエリストもまた…まるで過去の自分の生き写しのようだった。
『キングは一人、この俺だ!』
混乱する思考、まるで過去のデュエルが再現されているようなフィールド。漠然とその様子に心を奪われ、偽者の…いや、最早ジャックはその人物を偽者と呼べなかった。
『星海を切り裂く一筋の閃光よ!』
『魂を震わし世界に轟け!』
カードを呼ぶ声が違う。その振る舞い、その雰囲気、そのデュエルへの熱意…熱き絆を感じるデュエルと違う、まるで力の押し付け合いのような強い圧を感じるデュエル。それに自分が飲まれている。
『シンクロ召喚!閃珖竜スターダスト!!』
「…閃珖竜…スターダスト…」
仲間が使用するエースに似ている。つい声に出して、呟いた名は聞いたことの無いモンスター。しかし、ジャックの中に何かが疼く。
「ッこれは!シグナ―の痣が」
ダークシグナーとの戦いの後、輝くことの無かったシグナ―の証。それが今、赤い光となって猛然と輝いていた。
『俺の最大のフィール!!受けてみろジャック!!』
名を呼ばれ心臓が、魂が高鳴る。己ではない、もう一人の自分、過去の自分に呼びかけられたような衝撃。
『キングは孤高でなくてはならない!遊星!お前を倒すのはこの俺だ!』
過去の自分が言っている。今の自分とは違う、孤高であり、キング…キング・アトラスが
何故…俺ではないのだ!…
偽者を見つける為に来た。軽い気持ちでDホイールを走らせ、軽い気持ちで事件を解決しようと思っていた。
…ジャックは考えないようにした。だが思ってしまう、これでは自分が…偽者ではないかと…
仲間達と過ごした日々が無駄なんて言わないし、思わない。しかし、過去の自分ならどう思った?孤高のキング…ライディングデュエルで頂点に君臨していた頃の自分なら、今の自分を否定していたのではないか?
思考の海に呑まれ、視界がおぼつかなくなった時、デュエルは動いていた。
『閃珖竜スターダストにアサルト・シンクロンをチューニング!』
「更にシンクロ召喚だと!?」
『勝利を我が手に!シンクロ召喚!』
ジャックは息を飲んだ。エースモンスターを素材に出す新たなシンクロモンスター…合計レベルは10。新たなるスピードの極致、その姿が現れる…
『シンクロ召喚!フルール・ド・バロネス!』
ペガサスに跨る花の騎士がフィールドに舞い降りた。
なんなのだこれは!
ジャックは場違いと知りながらも、叫ばずにいられなかった。
偽ジャックVS偽遊星。そして翻弄される元キング
この遊星擬きはフィールの為ならどんなカードでも使用する。レボリューション・シンクロンとか、ボウテンコウとか、次元が違うけどクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンとかも使用する。
イリアステル?この遊星擬きはフィールに呑まれているから知らない。