フィールに呑まれた遊星?   作:フィールを感じろ

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遅くなりました。フィール好きが沢山いて嬉しいです。


フィールの道も一歩から

 

 俺はサテライトを爆走する。情報収集もあるが、フィールを感じる為でもある。だが決闘疾走でないスピードを感じるだけでは、更なるフィールを感じる事はできない。ならばどうするか?簡単だ、デュエルレーンを走る存在は全てデュエリスト。

 

 俺とデュエルしろォォォ!

 

 この世界で目が合ったら即デュエル…にはならなかったが、そこは(主人子)だ。Dホイールに内蔵されたデュエルモードシステムにハック…アクセスすれば挑戦者も快くデュエルしてくれた。何故かスピードワールド仕様になっていたが、まあ些細な事だろう。

 

『な、なんだ!?勝手にデュエルモードに』

『おい、デュエルしろよ』

『何なんだよお前!』

『俺とデュエルしろォォォ!!』

『うわァァァ!?』

 

 どいつもこいつも、フィールを感じた事もないザコばかり…デュエルをしても俺のフィールを受けてクラッシュしてしまう。実に軟弱なデュエリストたちだった。これでは情報収集もできない。

 

 ザコを相手ではダブルチューニングをする必要もなく勝利でき、ましてやアクセルシンクロも必要ない。フィールも弱く、己の高ぶるフィールを表現することもできない状況で徐々にテンションが下がって来る。

 

「…今の俺はどこまで物語を進めているんだ?」

 

 フィールで高ぶり、我を忘れて決闘疾走に精を出していた俺はあることに気が付いた。もっと早く気づくべきだったが仕方ない、フィールが俺を呼んでいたのだから、コラテラルダメージという奴だ。

 

『真閃珖竜 スターダスト・クロニクル』

 

 通称ドM竜…別世界の相棒含む…黄金に染まった俺の相棒が既にサイドデッキに入っていた。ザコ相手ではシンクロせずに勝利も容易かったのだ、気づかないのも仕方ないだろう。

 

 これが新たなる絆の形…閃珖竜スターダストとの絆が形となったカードだ。今の俺にとっては絆も何も感じないが、前の俺は感じていたようだ。まあそれはいい、問題なのはこのカードも所持しているという事は…本編終わってないか? 

 

 ・・・そんなバカなァァァ!俺の最高に高めたフィールで世界を手に入れる夢が最初から砕けているだと!?

 

 Dホイールを加速させる…認めない、断じて認めない!究極神との戦いが既に終わっている、だからこそ廃墟のはずのサテライトが妙に小奇麗になってたとか…何かの間違いに決まっている!

 

 セクト、ルカ、ルア、あのガキどもはサテライトから出ていないはずだ!ルカ、ルアは別世界でネオ童実野シティのボンボンだったが(セクトは存在自体がなかったが)、俺の世界ではサテライトの孤児のはずだ。適当に探せばいるはず!そして兄妹ぐあいを見れば進行度がわかりやすい。

 別の世界ではルアが能天気なクソガキで、世話を焼くのがルカという構図だった。俺の世界ではルカが独占欲の塊で、ブラコン?のはずだ。ルアに関しては能天気が抜けて、感情も抜けてるかもしれないが、別人と言ってもいいぐらいには見分けがつきやすい。セクト?知らんな。

 

 とにかくだ!決闘竜を…その先も持ってしまっている俺は、少なからず別世界の仲間同様に絆を持ってしまっているという事だ。これはマズい、フィールを感じるには、闇のフィールにこの身を堕とすのが一番なのだが、絆とはミミズのようにはい出てくる柵だ。俺にとって最も不要な物でしかない。ならばどうするか、そんなの簡単だ。

 

「フィールに絆は不要だ!」

 

 全部壊すんだ!別世界でチーム5d'sを掲げたメンバー全員との絆を破壊する!そうすれば、俺に残るのはフィールのみとなる。

 

 Dホイールでサテライトの市街地に突っ込む。

 

 

ルカヵヵヵ!ルアァァァ!あとセクトォォォ!俺とデュエルしろォォォ!!

 

 

 市街地に住んでいる住民が叫び声をあげながら避けていく。耳障りであるが、騒ぎが大きくなればなるほど俺にとって特だ。

 

 あ、やっぱり遊星だ!マーサにも伝えなきゃ

 

 自分の名を呼ぶ声を聞き急ブレーキをかける。スライディングのようにDホイールを傾かせながら火花が散らつかせ止まる。

 

 マーサだと?なぜこの世界に…次元が混ざってるのか?

 

 別世界ならいた人物。そして、スピードワールド仕様の決闘疾走…だが自分の相棒は閃珖竜である。真相を確かめるべく、裏道を通ってガキを追った。

 

「あ、遊星兄ちゃん!そんなにスピード出してたら危ないよ」

「…急いでいたんだ、それより」

「ねぇねぇ!後ろに乗っていい?いいでしょ、ねぇ!マーサのところまででいいから!」

「…好きにしろ」

「わーい!…あれ?そういえば、ヘルメットはどうしたの?」

 

 クソガキにイラつきながら無視して走らせる。ナビゲーターとして案内させ、疑問を持たれながらもマーサハウスまで到着した。

 マーサは丁度玄関でゴミを掃いており、こちらに気が付くと笑顔で近づいて来た。

 

「おやおや、遊星じゃないか。どうしたんだい、アンタWRGPに出場するとかでしばらく来れないんじゃなかったかい?」

 

 WRGP…その言葉を聞いて、別世界のチーム5d'sを思い出していると、訝げにマーサが顔を近づけて来た。こっちとしては初対面のようなもの、居心地が悪い。

 

「…なんかアンタ、昔のヤンチャしてた頃に戻ってないかい?」

「…そんなことより、ルカやルアはいないか?」

「はぁ?ルカちゃんやルアちゃんはネオ童実野シティにいるだろ?何言ってんだい」

「そうだったな…セクトを知っているか?」

「セクト?いや、知らないね。孤児の子かい、復旧してるとはいえ、まだまだウチは現役さ。一緒に探して」

「知らないならいいんだ…じゃあな」

「待ちな!やっぱりアンタ変だよ、送ってくれた子も疑問を持ってたし、聞いたよ?ウチの場所がわからなかったんだって…どうしたんだい遊星…」

 

 肩を掴まれ、無理やり止められる。無視して動こうとするが、謎の圧を感じ動けなかった。

 

「…少し疲れているだけだ」

「その喋り方もだよ。まるで他人みたいじゃないか…よし!中に入りな、ちょっと早いが食事の時間にするよ!」

「いや、俺は」

「入りな?」

「…ハイ」

 

 実際他人なのだがと思いながら、笑顔で催促するマーサに連れられ中に入る。中に入ると孤児の子ども達が群がり、俺はもみくちゃにされた。

 …俺は孤児だった記憶はない。そもそもこの世界の記憶もない、フィールだけが俺を包んでいる。

 

 遊星兄ちゃん!

 遊星!

 遊星さん!

 

 まるで親しい人物が来たように子供たちは笑顔で迎えてくれる。傍から見たら微笑ましい光景として捉えられるだろう、実際マーサは笑顔で料理を開始した。

 

(見るな…!そんな目で俺を見るな!!)

 

 子供たちの眼差しが、フィールに全てを捧げた俺を突き刺していく。純粋な絆を前に、精神的苦痛を感じながら時間を過ごした。

 

「遊星さん、私のデッキ見て」

「ああ!」

 

 ガキの一人がデッキ調整を申し出たのは、まさに彼にとって蜘蛛の糸だった。しかし、デッキを確認していくと…表情が曇っていく。

 

「何だこれは?」

「どう?魔轟神って言うの」

 

 どうやら魔轟神デッキだったようだ。まともな魔轟神はケルベラルやソルキウスなどあれど、他のカードは関係のないノーマルカード。孤児故にカードが手に入らないというのもありそうだが、モンスターが多すぎてバランスが悪い。攻撃力が比較的高いモンスターを中心にデッキに入れているようだ。つまり腹筋デッキ。

 

(デーモンの斧でも入れとけ)

 

 そんな感想が出るほど重症デッキ。フィールを感じる事もできない、スピードに置いて行かれるデッキ…もう少しまとまカードを…と思った時…

 

 ッなんだ…

 

 腰に付けていたサイドデッキ用のショルダーに突然重みを感じた。中を確認すると…魔轟神デッキフルセットが入っていた。

 

 

 

 

 

「なんだい、もう行くのかい?」

「ああ…美味しかった」

「いつでも来な、アンタも家族さ。でもいいのかい?あの子にデッキの一つを渡して」

「…余っていただけだ」

「そうかい。あの子はここに遊びに来てるだけでね、姉がネオ童実野シティの方にいるから、会ったらよろしく頼むよ」

「ああ」

 

 マーサは遊星の後姿を見守りながら、少し変だったと感じながらも変わらない優しさを確かに感じた。

 

 あ!ヘルメットを付けてない!

 

 走り去った後に思い出し、職質を受けないか心配になったマーサだった。

 

 

 

 

 

 

 腹を満たされ、この世界が自分の知る世界と違うと確認できた遊星。

 

「そうか…この世界は別世界要素が混じった世界。つまり究極神は健在!俺のフィールは無限大だ!」

 

 別世界、アニメ世界と呼称するが、終始赤き龍はシグナ―云々で味方サイドで終わった。それに対し、彼の世界では敵サイドである意味ラスボス、アルティマヤ・ツィオルキンとして降臨する。

 

 だがそんな違いなんてどうでもいい。この遊星にとって大事なのはフィールだ。フィールの高みを目指す、それ以外の要素はどうでもいいのだ。

 

 アニメ要素が追加されようと、チーム5d'sが結成されていようと関係ない。奴らを倒し、赤き龍の力、究極神の力を我が手に掴む過程は変わらないのだから。

 

 マーサから聞いた事を思い出し、ルカ、ルア達がいるネオ童実野シティまで突っ走る。なぜこの二人に拘るのか…絆を壊しやすいからだ!

 

 子供の涙は下手な大人の涙より効く。少なからずこの遊星は効いた。よって、一番最初に絆を破壊し、それが伝染するが如くデュエルの連鎖が起こればと考えたのだ。

 

 フィールで染まった顔を歪めながら、ネオ童実野シティへと繋がるネオダイダロスブリッジ近くまで来た…その時…

 

『デュエルモード、スタンバイ』

「なに!」

 

 強制的に決闘疾走モードに移行した。デュエルレーンが地面から突起しだし、決闘疾走の場が整えられていく。

 舌打ちをしつつ、コース上にDホイールを乗せて数秒後…後方から同じくDホイールの甲高いエンジン音が聞こえてくる。

 

 フィールの王になる俺になんて狼藉だ!と考えながら、自らのDホイールに並んだ存在に顔を向ける。

 

「ククク、遊星…俺とデュエルしろ!」

 

 その男は知っている顔だった。やや記憶より、浅黒い肌であるが見間違えるはずがない。

 

「ジャック!?」

 

 唐突に倒す相手が登場し動揺する。その様子を見て、ジャック?は喋り出す。

 

「驚いているようだな、無理もない。だがこれが現実だ!俺は気づいたんだ…遊星、絆なんて幻に過ぎない。真なるキングとは、孤高でなくてはならないと!」

 

 高笑いを始めたジャック?を見ながら遊星は考えた。

 

(わかる)

 

 ジャック・アトラスが輝いていた時と言えば?と聞かれれば、キング時代だったとすぐに返答できるのがこの遊星なのだ。

 そして、このジャックの言動を見て確信する。このジャックは自分同様の絶対王者(キング)のジャックであると。肌が浅黒いのはフィールの導きに過ぎないと思考を捨てる。

 

「言葉は不要か…ジャック」

「こい遊星!お前を倒し、俺はキングに返り咲く!」

 

 キングに固執する男を見て、遊星は嘲笑う。

 

 一つだけ言っておく…キングは一人 この(遊星)だ!

 

「「ライディングデュエル! アクセラレーション!!」」

 

 

 

 

 

 

 光り輝く球体が無限の輪を描くように回り続ける。その中心には、映像を映し出す球体上の物が浮かんでおり、それを囲む様に三人の影があった。

 

「どういうことだ!なぜ、この時代に不動遊星が二人いる!」

 

 囲む者の一人が座っていた台座を叩きながら、理解できない現実に怒りを露にする。その様子を見て、面白そうに笑う者もいれば、沈黙を保つ者もいた。

 

「このイレギュラーは排除しなければならない!」

「ヒヒ、どうしようっての?」

「待て…この原因を探るまで手出しは止めろ」

 

 煽るように催促した者の言葉を遮るように、落ち着いた老声で語りかける物が待ったをかける。 

 

「歴史とは繊細な物だと知っておろう…修正した歴史のぶり返しが、今回の結果を招いたとすれば」

「だから見ていろだと?現れた片方を排除すれば終わる事だ!なぜ手をこまねく必要がある!」

 

 収まらない怒りのまま、声を挙げた者は腰に下げた剣を取り出し振り下げた。すると…まるで次元に穴が開いたように黒い空間が現れる。

 

「オレはオレのやり方であの不動遊星を排除する!」

 

 そう言い残し、その者は黒い空間に入って消えた。

 

「どうすんの?」

「…様子を見る」

  

 子供の笑い声が残された場に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

「キングのデュエルはエンターテインメントでなければならない!先行は譲ってやる、さあ!カードを引け遊星!」

 

 始まった決闘疾走。開幕にキングアピールをするジャックと裏腹に…遊星は焦っていた。

 

(バカな!カードが応えないだと!)

 

 所謂、手札事故。ザコとのデュエルにおいて一度もなかった事柄が襲っていた。

 

 この世界でカードとデュエリストは絆で結ばれているのは、周知の事実。思いが募り、相棒を引きやすくなったり、必要なカードを必要な時にドローできるようになる等、デッキとの絆とは切っても切れない大事な要素なのだ。 

 

(そんなバカな…マーサハウスでデッキ調整も兼ねて使えないカード(・・・・・・・)は抜いたはずなのに)

 

 この遊星は、デュエリストであると同時にリアリストであった。意識を覚醒し、フィールに魂を売った時にカードとの絆を感じられなくなり、辛うじてカードの方から主を思い続けていた。それを無意識とはいえ、自らが完全に断ち切ってしまっていたのだ。

 

「クっ俺のターン!…モンスターをセット…ターンエンド」

「どうした遊星!お得意の連続シンクロ召喚を行わないのか!」

 

 遊星のフィールドにはモンスターが一体のみ。本人もマズいと感じているが…特殊召喚できるモンスターがいないので仕方ないのだ。ついでに言うと、ライディングデュエルをすることで強制発動する『スピード・ワールド』のルールも邪魔をしている。

 

『スピード・ワールド』が発動している場においてSp(スピードスペル)と名のついた魔法カード以外の魔法を使用すると、効果で2000ダメージを強制でくらう。初期ライフが4000の世界において致命傷になりかねない為、基本どのデュエリストも罠を主体にデッキに入れるほどである。

 この遊星は別世界の戦略を獲得している為、効果ダメージを利用できないか思考していた時もあるが…効果ダメージと記載されているが、ペナルティーに近い裁定らしく、効果ダメージギミック戦略ができなかったのをやや残念に感じている。

 

 話を戻す。この遊星は現代思想に毒されている部分がある。分かりやすく言うなら、カードパワーを信頼する。愛着?そんな事より、カードの力だ!を第一に考えてしまうのだ。主にコンボを繋げられる、スピード感を感じる(フィールを感じる)カードを中心としてデッキを再構築していた。サイドデッキにあったカード枚数の問題もあり、完璧には程遠いがそれでも満足いくできだったのだ。その結果…初期手札はこうなった。

 

『アサルト・シンクロン』

『アサルト・シンクロン』

『ジェット・シンクロン』

『シンクロ・マグネーター』

『アンノウン・シンクロン』

『ジャンク・シンクロン』←ドローしたカード。

 

(なぜチューナーしかこない!これではシンクロができない!)

 

 勿論この遊星は、補助カードも大量に投入している。現代でお馴染みの『ジャンク・コンバーター』『ドッペル・ウォリアー』などバランスよく入れている為、40枚デッキで計算すれば7割~8割で何かしらのシンクロモンスターが出せる計算で作られた通称≪ジャンクドッペル≫に近いデッキである。魔法の補助が実質ない為、フルモンに近いデッキとなり、妨害を一切考えていない、フィールを感じる事を第一にしたデッキに仕上がった…はずだった。

 

「キングのデュエルをみせて見ろ!」

 

 ヤケクソ気味に口に出すが…現実は非情である。

 

「手を抜いているなら後悔するがいい! 相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、このモンスターは特殊召喚できる!」

 

 口頭で説明され、召喚される前から大体何が来るか察した。そして思った…何もできずに終わらないかと…

 

(嫌だ、俺は…負けたくないぃぃぃ!)

 

「バイス・ドラゴンを特殊召喚!そして、フレア・リゾネーターを通常召喚!」

 

 そして始まる。召喚セリフ(お祈りタイム)に全神経を集中させた。

 

「王者の鼓動、今ここに列を成す」

「ヨッシャァァァ!」

「ええい、邪魔をするな遊星!」

 

 遊星は思わずガッツポーズをしてしまう。別世界の250円の方だった事に心より感謝を送った…ふと思い出したが…記憶の中で、あのカードは環境の激化に伴い【1円】で売ってるの見たなと…

 

「我が魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」

 

 紅蓮の竜がフィールドに現れる。フィール越しに熱風まで感じ、今までのザコとのデュエルと違うと改めて思った。そして笑う、この力を打ち破り、俺のフィールは更なる高みに到達するのだと!

 

「シンクロ召喚に成功した時、このモンスターを特殊召喚できる!」

「バカな!」

「シンクロ・マグネーターを攻撃表示!」

 

 相手のフィールドに二体のモンスター…何より、コンボ前提のシンクロ・マグネーターを出され、遊星の心が絶望の淵に沈む。しかし、そのままバトルフェイズに入った事で意識が高ぶり返す。

 

「シンクロ・マグネーターで攻撃!」

「ウィィィ!」

「さっきからどうした!」

 

 伏せたジェット・シンクロンを破壊され、レッド・デーモンズ・ドラゴンの攻撃が自分に迫る!相手のフレア・リゾネーターの効果で攻撃力3300まで上昇した攻撃は、まるで山の如く肥大化して見えた。

 

 アブソリュート・パワーフォース! 紅蓮の炎を纏った拳から、大火球が放たれた。目前まで迫る火球の熱気に冷や汗を感じながらも受け入れ、フィール越しに感じる痛みが今…遊星を襲った。

 

 

いわぁぁぁぁぁく!!! 

 

 

 あまりの衝撃、痛みに耐えきれず叫び声をあげてしまう。フィールに染まった遊星と言えど、火球に当たった衝撃は耐え切れなかった。・・・そもそもの話だが、ソリットビジョンで衝撃を受ける現象をフィールと思っているこの遊星であるが、この世界線でフィールについて思考を割いているのはこの遊星のみだという事を先に述べておく。

 

 ダメージを受け、失速する遊星に嘲笑う様に問いかける。

 

「ククク、どうだ?我が魂の業火をその身に受けた感想は?カードを一枚伏せターンエンドだ!さあ、最後のターンだ!」

 

 遊星の残りライフは…700。フィールドには何も存在しない。

 

 ジャックのライフは以前として4000。そして、攻撃力3300のレッド・デーモンズ・ドラゴン、攻撃力1000のシンクロ・マグネーター、最後に伏せカードが一枚。

 

 この圧倒的アドバンテージの差を見て、ジャックは高らかに宣言する。

 

「キングは一人 この俺だ!」

 

 Dホイールも、自分自身も傷つき、今にも崩れてしまいそうな肉体…自分の手札に起死回生のカードもない。

 

 

「燃えてきたぜ!」

 

 

 だからこそ燃える!このドローに全てをかけるのだ、フィールを感じろ!デッキを感じろ!スピードの先を感じろ!

 

 ドロォォォーー!・・・来た…!

 

「相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる!来い、アンノウン・シンクロン!」

「そして俺は墓地に送られたジェット・シンクロンの効果発動!手札を一枚墓地に送り、ジェット・シンクロンを特殊召喚する!」

「今更、チューナーを出したところでどうなる!」

 

 レベル1のチューナーが二体。なるほど、確かにこれだけ見れば何もできないだろうな。

 

「それはどうかな」

「なに!」

「俺はコストで送ったモンスター!D-HERO ディアボリックガイの効果発動!墓地のこのカードを除外することで、デッキからD-HERO ディアボリックガイを特殊召喚できる!」

「レベル6のモンスターを、こうも簡単に!」

 

 さあ、場は整った!

 

「D-HERO ディアボリックガイに、アンノウン・シンクロンをチューニング!シンクロ召喚!スクラップ・デスデーモン!」

 

 機械仕掛けのような悪魔がフィールドに現れ、紅蓮の竜に威嚇の咆哮をぶつける。

 

「ほう、だが攻撃力2700!我がレッド・デーモンズには及ばん!」

「いいや、まだだ!そしてジェット・シンクロンをチューニング!」

 

 待たせたな相棒…心なしかグォォォと嬉しそうな唸り声が聞こえた。対して、デスデーモンは信じられないと言いたげに光の中に消えて行った…見なかった事にした。

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!」

「魂を震わし世界に轟け!」

「シンクロ召喚!閃珖竜スターダスト!!」

 

 星屑と違う輝きを放つ龍。ある意味、初の対面なのに信頼している自分がいる。感傷に浸りたい気持ちを抑え、デュエルを続行する。

 

「そしてジャック!お前と同じ、シンクロ・マグネーターを攻撃表示で特殊召喚する!」

「だからどうした!お前のシンクロモンスターの攻撃力は2500に過ぎん!」

「俺の最大のフィール!!受けてみろジャック!!」

「キングは孤高でなくてはならない!遊星!お前を倒すのはこの俺だ!」

 

 

 …遊星は今更思った。気分で出したが、相棒じゃ勝てないじゃんと…

 

(…どうする、ジャンク・シンクロンを出して、いやせっかく出したのに活躍の場が…でも伏せカードの処理が…)

 

 数秒の葛藤の末…妥協を取った。

 

「俺はアサルト・シンクロン通常召喚!」

 

 心の中で相棒に謝る。

 

『閃珖竜スターダストにアサルト・シンクロンをチューニング!』

 

 一瞬、スターダストがこちらを驚愕の顔を向けたように感じたが…気のせいだろう。

 

『勝利を我が手に!シンクロ召喚!フルール・ド・バロネス!』

 

 ペガサスに跨る花の騎士がフィールドに舞い降りた。

 

 

 なんなのだこれは!

 

 

 うん?ジャックが何か言った気がするが、まだ俺のターンは続くぞ!

 

「D-HERO ディアボリックガイの効果を再度使用して、現れろD-HERO ディアボリックガイ!」

「まだ続けるのか!」

「D-HERO ディアボリックガイにシンクロ・マグネーターをチューニング!シンクロ召喚!灼銀の機竜!」

 

 

【遊星】フィールド (ライフ 700 )

 灼銀の機竜 攻撃力2700

 フルール・ド・バロネス 攻撃力3000

 

【ジャック】フィールド (ライフ 4000 )

 レッド・デーモンズ・ドラゴン 攻撃力3300

 シンクロ・マグネーター 攻撃力1000

 伏せカード1枚

 

 

「灼銀の機竜の効果発動!1ターンに1度、チューナー1体を除外し、フィールのカード一枚を破壊する!」

「破壊効果だと!」

 

 灼銀の機竜が墓地にいるアンノウン・シンクロンを砲弾にし、レッド・デーモンズ・ドラゴンを貫く!大きな爆発と共にレッド・デーモンズ・ドラゴンは爆散。

 

「さあ、俺のフィールを受け取れ!灼銀の機竜で攻撃!」

「甘いぞ遊星!俺は伏せていたトラップを発動」

「フルール・ド・バロネスはフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、魔法・罠・モンスターの効果が発動した時にその発動を無効にし破壊できる!」

「なに!」

 

 伏せられていたカードは聖なるバリア-ミラーフォース(底知れぬ絶望の淵へ沈め!)、まるで未来を暗示しているかのようなカードだった。

 

 

 これがぁぁ俺のぉぉ全力だァァァ!

 

 遊星から溢れ出すフィールの激動が、ソリットビジョンを仮想立体触感に変え、衝撃を高めた攻撃がモンスターの攻撃に合わせてジャックを襲った。

 

 

 

 

 

 

 …この木偶で倒せるならその程度…クク、例え倒せても… 

 

 

 

 

 ピピーーガガーー…自爆モードに移行します…

 

 ライフをゼロにしたジャックは、フィールの影響もあり、火花を散りながら突撃する。

 

 え…

 

 咄嗟に反応できず、突撃してくるジャックを避けられなかった。そして、デュエルレーンの一部が倒壊した。

 

 

 うわぁぁぁ!

 

 

 遊星ぇぇ! 

 

 衝撃で吹き飛び、海に落下していくなかで、襲ってきたはずのジャックが腕を伸ばそうとしていたのを霞がかかる意識の中で見たのが最後だった。

 

 グォォォォ!

 

 暗闇の中で黄金色に輝く、龍が俺を導くような声を発したのを聞きながら…俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 荒野の風が泣いている。水色髪をなびかせ、死神の赴くままサテライト郊外まで足を運ぶ男がいた。

 ロクな装備もせず、死に場所を求める様に歩く様は、彼自身が死神を求めているように映るだろう。

 

 あの光は…

 

 そんな彼の瞳に映ったのは、黄金色に輝く飛翔体。まるで竜のようなシルエットで、大事そうに何かを抱えていた。

 その黄金の存在も限界がきたのか…徐々に地面に向かって降下しだした。男は興味本位で足を進める、例え失ってもいい命故に…そこで出会う。運命という悪戯に…

 

 なんでッお前が!

 

 男は驚愕した。二度と会わないと思っていた、かつての仲間…いや、既に仲間ではない。しかし、彼にとってこのまま見捨てられるほど軽い存在ではなかった。

 

「遊星!」

 

 男は傷らだけの遊星を担いで、近くにある町まで急いだ。知り合いなんていない、だが例え自分がどうなろうと、こいつだけは助けると…過去の栄光すらも口にして助けを求める。

 

 その男は昔、チームサティスファクションのリーダーだった男だ。

 

 

 





 やっと、馬が出せる。長かった!
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