フィールに呑まれた遊星?   作:フィールを感じろ

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少し短いけど、時間の合間に書いた。


馬とペンギン

 

 全身の痛みに耐えつつ、重い瞼を開けた時…森だった。草木の匂いが鼻を通り、土の感触が全身を包んでいた。

 

「どこだ…ここは」

「ここは精霊世界だよ」

「誰だ!」

「そうだ!僕はベンギン勇者だ!」

 

 痛む肉体で動けず、首だけ勇者を名乗るペンギンに向ける。全体像を把握すると、見たことあるモンスターに似ていた。言葉にしていたが、『ペンギン勇者』というモンスターに。

 

「何の冗談だ…」

「君は爆発に巻き込まれて意識不明の重体さ。治療が終わるまで意識をこっちに呼ばせてもらったよ」

 

 爆発と聞いて、ジャックを思いだす。まさかジャックが自爆するなんて考えなかった。

 

(もう一人のジャックがいたな…双子なんていたか?)

 

 この遊星は大まかなアニメ時空の話は知っているが、社会人だった前世の人は全話を見ている訳ではなかった。それを込みでも、フィールによるフィルターが認識阻害を起こしているので無駄である。

 

「君の仲間達が嘆いていたのを聞いてね。絆を戻す為に君を」

「フィールに絆は不要だ!」

「…これは重症だね。この世界なら強く願えば痛みも感じなくなるよ」

 

 聞いた否や遊星は元気よく立ち上がる。

 

「凄いな!こんなすぐ思い込めるなんて」

「フィールの力は無限だ!」

「…さっきから聞いてたけどフィールってなに?まあいいや…」

 

 ペンギン勇者が剣を掲げると…ペンギン用にカスタムされたデュエルディスクを装着していた。そして自分にも見慣れたと言えばいいのか、Dホイールにセッティングされていた赤いデュエルディスクが装着されていた。

 

「さあ、ワクワクを思い出すんだ!」

 

 それはイルカのセリフとツッコミを入れながら、意味も分からぬままデュエルが始まった。

 

 

 

 

 

「う…うァ…きっこうはや…め…」

 

 包帯を巻かれ、絶対安静と診断された者を見る。どうして傷だらけになったのか、そしてあの黄金色の…竜のようなシルエットは見覚えがあった。対峙した瞬間も、今も己の中で走馬灯のように流れている。

 

「…戦っているのか…遊星」

 

 思い出すのは己の後悔。人々の魂を生贄にした、許されざる罪の形。決して許される事ではない消えない悪夢。

 

 何を今更…俺自身の手でやった事じゃないか

 

 かつては仲間だった。サテライトという閉じられた世界において俺達は喜びを分かち合っていた。今でも無意識に思いを寄せたくなる、傷ついた彼を見て仲間達と繋いだ絆を…そして瞳を閉じる。

 

 壊したのは俺自身だ

 

「鬼柳兄ちゃん、水を汲んできたよ!」

「…すまない、ウエスト」

 

 遊星を近くの町、クラッシュタウンまで運び偶然出会った少年、ウエスト。誰でもいいから声をかけたのを切っ掛けに、彼の、正確には姉弟の家に転がり込んだ。

 後で聞いた事だったが、今のクラッシュタウンは覇権争いで混沌状態だったらしく、住民達は怯える日々を過ごしていると聞かされた。住民の助けが無ければ、医者にも見放されていたと考えるとウエストには感謝しきれない恩ができた。

 

「遊星さんは大丈夫?」

「ああ…まだ安静にしてる必要があるがな」

 

 そう言葉にしつつ、鬼柳は席を立つ。

 

「薪を割ってくる」

 

 無意識に己の贖罪も込めて動き出す。かつての仲間がまた戦いに巻き込まれている可能性を思いつつ、無力で、罪人の自分に何ができると自虐する。

 

「ボクも行くよ!」

 

 ウエストの声に合わせる様に食堂の方から、ウエストの姉、二コが来た。

 

「こら!あんたは勉強があるでしょ!」

「うげ姉ちゃん…行こう!鬼柳兄ちゃん」

「あ、ちょっと!もう…」

 

 腕を掴まれ、連れて行かれた客人と速足で連れて行く弟を見て呆れ気味に息を吐く。だがその顔は、明るい気持ちで満たされていた。弟に親しい兄ができたように、笑顔が見れたのが嬉しいのだ。この町で起こる覇権争いは日に日に激化している…それに伴う、住民に対する住民税と評したカツアゲ行為から始まる嫌がらせ…弟の顔に笑顔が戻ったのは何時だったかと思いを乗せる。

 

「遊星さん…私はサティスファクションについて詳しくありません。でも、どうか…この町の希望になってくれませんか…」

 

 意識の無い遊星の手を握り、祈るように願う一人の少女がそこにいた。

 

 

 

 

 

「遊星!無事、か…やはりあの遊星は…」

「ジャック?どうした、そんなに慌てて」

「遊星、お前は双子だったりしないか」

「本当にどうしたんだ」

 

 もう一人の遊星が爆発に巻き込まれ落下していた時、黄金色の光に包まれ忽然と消えた…まるで最初からいなかったかのように。だが、破壊跡が現実だと物語っていた。それを目撃したジャックは居ても立っても居られず、Dホイールをすぐさまネオ童実野シティにいるはずの遊星の下まで走らせた。

 

 ジャックから事の経由を聞いていくにつれ、遊星の顔が険しくなっていく。

 

「…もう一人の俺か。牛尾が言っていた噂は本当だったようだな」

「ああ、何よりシグナ―の痣が光り出した!俺から見ても使うカードは違えど、遊星だと心で感じた」

 

 遊星は懐から一枚のカードを取り出す。

 

『スターダスト・ドラゴン』

 

 数々の絆を繋いでくれた自分にとって大切なモンスター。今も確かに繋がりを感じている。

 

「もう一人の遊星もまた、違うスターダストを持っていた。その名は『閃光竜スターダスト』…僅かではあったが、スターダストをフィールドに出してからシグナ―の痣が光ったのだ」

 

 自分と同じ容姿、ライディングデュエルの技術、そしてエースモンスター…仲間でも違いが見抜けない程のもう一人の自分。

 

 過去にダークシグナーと戦ってから光を発しなかった赤き竜…その大いなる存在がまた、何かを案じているのか?

 

「もう一人の俺に、ジャックの偽者か」

「ええい!遊星、あれは俺ではない!キング時代の俺を再現してはいたが、あんな汚い真似をするとは!」

 

 怒り心頭にさせながら声を荒げるジャックを落ち着かせ、遊星は冷静に物事を処理していく。

 

 倒壊した場所から偽ジャックの部品を回収しよう…互いに納得した上で、事件が起こったデュエルレーンまでDホイールを走らせた。

 彼らが到着した時には、治安維持局(セキュリティ)が規制線を張っていた。多くのセキュリティが現場を捜索している中で、牛尾を見つけ声をかけた時…それと同時に牛尾が声を挙げた。

 

「容疑者を確保しろ!」

「なにぃ!?ええい、離せ!いったい何の真似だ!」

 

 周りのセキュリティ達は知っていたのだろう、逃げ道が無くなるように周りを囲んでいた。

 

「待ってくれ、ジャックは犯人じゃない!」

 

 連行される仲間を見ながら、牛尾に弁明するが…困ったように答えた。

 

「だがな遊星、監視カメラにハッキリとお前の偽者とデュエルする様子が映ってたんだ。お前に関しては俺と会ってるという証言もできるし、近くの連中もお前がDホイールのエンジンを鳴らしてるのを知ってる」

「偽者が爆発した部品があるはずだ!それを解析すれば」

 

 熱くなる遊星に近づき、二人にしか聞こえない音量で伝えられた。

 

「いいか、ここからはトップシークレットだ…爆発した部品は確かに見つかっている。だが、俺達の上の管轄が持っていきやがった。何が目的かは知らないが、今回の爆破事件の犯人をジャックにしたいみたいだ」

「何だと!」

「…今回の件といい、最近の上層部は様変わりしちまってな。きな臭い事に手を突っ込んでる」

 

 そう言葉にしつつ、肩を掴まれる。

 

「まあ、そういうこった…俺の方でもできる限り動いてみる。遊星、お前も気を付けろよ」

 

 ジャックが輸送車に入れられ、声を荒げながら連行されるのを遊星は何もできない状況を味わうしかなかった。

 

(ジャック、必ず助ける)

 

 胸ポケットからデータ端末を取り出し、力強く握りしめて仲間の救助を誓った。肩を掴まれたあの瞬間…牛尾は内部情報の入った端末を渡していたのだ。

 

 すぐさまガレージに戻り、解析に入る。膨大なデータを読み取りながら必要な情報を探っていく…

 

「遊星!ジャックが捕まったって」

「クロウ…ああ、知ってる」

「たくっあいつ、新聞にも載っちまって…」

「なにッ貸してくれ!」 

 

 仲間のクロウが仕事帰りに来て早々、とんでもない事を知ることになった。

 

『栄光のターンエンド 元キング ジャックアトラス容疑者逮捕!』

 

 いくら何でも早すぎると遊星は怒りを覚えた。数時間も経っていない事件にも関わらず、もう記事になっている。何より、容疑者の情報がこんなすぐさま洩れるはずがない。

 

 思っている以上に厄介な事になりそうだと思いながら、データの解析を終わらせる。そして勢いのまま怪しい場所にDホイールを走らせようとすると…クロウもまたDホイールに乗り、追従する形になった。

 

「待てよ遊星、何処へ行くんだ!」

「…ジャックの無実を勝ち取る証拠集めだ。だが…」

 

 情報源の問題、セキュリティの不信感など含め、巻き込みたくない思いが口を重くする。

 

「水臭いぜ、だったら俺もついて行く!」

「クロウ!しかしっ」

「理由は知らねえがな、仲間を見捨てるなんて真似、この鉄砲玉のクロウ様がするわけねえだろ!俺達は仲間だろ遊星!」

「クロウ…ああ!一緒にジャックを助けよう」

 

 互いに仲間を思いながらDホイールを走らせ、怪しいと睨んだセキュリティの資金を注いでいた施設へ二人は向かった。

 

「来るか、不動遊星。もう一人と同様に俺が終わらせてやる!」

 

 ビルの屋上から白いマントをなびかせ、Dホイールを走らせる二人を眺める者がいた。天に持っていた剣を掲げ、宣言する。

 

「調整中のゴースト部隊でもお前の相手は十分だ!いけ、ゴースト部隊!」

 

 その者は偽ジャックともう一人の遊星のデュエルを見て確信していた。あの程度の木偶で手こずる輩、更に劣化した部隊でも十分だと。そしてデュエルに敗北し、歴史の闇へと消え去り、我々の計画は完璧なものになると考えた。

 

 剣を掲げたと同時刻、セキュリティが秘密裏に開発していた保安用デュエルロイドが一斉に稼働した。本来であれば、治安を含む安全を目的とされ製作されたアンドロイドであったが…謎の勢力によって欲望のままデュエルする駒へと作り替えられていた。

 

 

「あのバカ!まだ情報を広げたばっかりなのに、これじゃあ意味がないじゃん!」

「…」

 

 丸い球体に映るセキュリティの工場を破壊しながら続々とDホイールを走らせる部隊を睨みながら、噛み合わない行動をする存在に悪態を吐いた。

 その者達と同様に、事態の流れを把握する存在が対処に動こうとしていた。

 

「…どうやら、歴史の歪みが激しいようですね」

 

 白い空間の中に浮かぶ、卵のような造形から声が発せられる。機械音の混じった合成声を出しながら、虚ろな瞳で眠っているような男性を起こそうとしていた。

 

「少々早いですが、我々の計画を進めるとしましょう」

 

 

 

 

 

 

『クリクリィ!』

 

 浅い眠りに入って、精霊の声が聞こえた時…仲間の傷ついたビジョンが見えだした。

 

 あれは!遊星…なの…

 

 傷ついた体で誰かと戦っている。何度も打ち負かされ、膝をついては立ち上がり、また戦う…その繰り返し。

 

 遊星は見えていないの?

 

 何度も倒れる遊星の背中…強大な雷が落とされモンスターが全滅、侍同士が放つ衝撃波で全てが吹き飛んだフィールド、見たことないモンスターが跋扈するフィールド…倒れる度に彼の周りに集う精霊たち。だが当の本人は戦う事以外に興味が無いように立ち上がる。

 

 あれじゃあまるで!

 

 いつもの遊星を見ていた彼女は顔を覆いたくなった。絆を繋いだ仲間が、遠い闇の中へ向かおうとしている。戦う度にビジョンに映る遊星の顔は険しく…そして、かつて戦った者達に似てきていた。

 

 …ダークシグナ―…

 

 心の闇に支配された者達。その存在を思い浮かべた時、ビジョンが遠ざかるように消えていく。咄嗟に手を伸ばし、彼の名を口にした。

 

「遊星!」

「うわ!?ビックリした…何だよルカ、驚かすなよ」

「ルア…夢だったの…でも」

「大丈夫かルカ?」

「…うん、ごめんね」

 

 目が覚めた時、リビングのソファー上だった…不安を覚えながら仲間の無事を祈った。

 

 

 

 

 

 ペンギン如きガァァァ!

 

「きゃあ!ゆ、遊星さん!起きられ」

 

 二コの祈りが通じたように重体の人物が突然奇声を上げながら駆けだした。慌てて止めようとすると、遊星が外に出るのに合わせて何処から来たのか、野生の馬が主人を待っていたかのように遊星を乗せて走り出してしまった。

 

 もっと早く疾走(はし)れーー!!

 

 暴走するように馬を走らせ、何処かに走っていく背中を眺めるしかなかった二コは言う。

 

「何なのこの人・・・」

 

 奇声を上げながら馬を走らせれば、町の者達は嫌でも気づく。覇権争いをしていた、ラモングループとマルコムファミリー達は互いにカチコミか何かだと思い、表に出て来る。

 

「なんだぁ!ラモンの連中か!」

「マルコムの奴らが来たのか!」

 

 

 俺とデュエルしろォォォ!!

 

 

「「何だあいつは!?」

 

 互いの派閥が出そろった時、馬に跨り、デュエルを強行する者が現れた。

 

(遊星どうしたって言うんだ!)

 

 二コに事情を聞き、すぐさま遊星の下に走り出した鬼柳の瞳に映ったのは…昔の忌まわしい自分であった。闇の力を全身から噴出させ、その力で敵を蹂躙していた。

 

あいつの仲間なんだろ?なあぁぁ許さねぇ!ダイレクトアタックゥゥ!

 

 ぎゃぁぁぁ…クラッシュタウンに蔓延るギャング達が蹂躙されていく。見える範囲で蹂躙が終わってなお、遊星は敵を探していた…まるで死神を求めているかのように。

 

 己のデッキを見る。罪深い己の過ちが、仲間の姿で現れた…ならば、その罪を祓うのも己の役目だと足を前に出す。こちらに気づかせる為に懐からハーモニカを奏でながら、変わり果てた遊星の前まで向かう。地獄に向かう、鎮魂歌のように響く音色を聞いた遊星は、かつての己のように顔を歪め、戦いの言葉を口にした。

 

 ヒャッハァー!デュエルだ!

 

「遊星…俺はまだ闇の中にいる。だが、光の場所にいるお前が闇に堕ちるのを見過ごすほど…死神は黙っちゃいない!」

 

 鬼柳もまた近くにいた馬に跨り、デュエル場に立った。

 

「「デュエル!」」

 

 デュエルが始まった直後、鬼柳は周りを巻き込まない為に馬を走らせる。その先に仲間の思いを乗せて、今一度サティスファクションのリーダーがこの場に復活した。

 

 

 





ペンギン勇者が使用するデッキ。

【挿絵表示】
 

何でペンギン勇者を出したか?作者の相棒だから。このデッキで先月のランクマをキングまで行けたんだぞ!…調整しまくったけどね。画像のはまだ調整前のデッキです。とにかく地獄の環境だった、そして今月も地獄じゃないか(超重神童ワカ利用が、ダイヤ帯に蔓延ってる)…全くMDは地獄だぜ!

当然だけど、上に行けば環境デッキだらけでマイフレンドデッキで戦う確立なんてほぼ無い。何度もくじけたけど…ゾンビアタック戦法、ドロー運で乗り切れた。つまり、デッキの絆は大事。


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