仮面ライダー ハーメルンジェンレーションズ HEROEZ MISSION 作:志村琴音
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いします。
「まず初めに、私達の世界はショッカーという組織によって支配されていました」
「え? ショッカーって……」
「あのショッカーですか……⁉︎」
章太郎と優司が反応を示す。
何せ優司が戦っていた敵の名前も同じなのであるから。
「いえ。梶本さんが思っていらっしゃるショッカーとは別物です。強いて言えば、章太郎君が今見ているこれに近いですね」
レナにそう言われたので、章太郎は「これ?」と言って自身が見ていた大図鑑のページを見せる。
そこには『仮面ライダーが戦う敵 ショッカー』の文字と共に様々な怪人達の写真が掲載されている。
「世界征服を企む彼等は、私達の世界を占領したんです。けど海来さんがディクリードになって、私達の世界をショッカーの手から取り戻してくれたんです」
この柄の悪い男がそんな実績を持っていたのか、とその場の全員が海来の方を向く。況してや権兵衛に至っては「人は見かけによらないなぁ」と呟いてしまう。
寧ろプラスに捉えているのか、海来はドヤ顔を見せている。こういうプラス思考だからこそ、一つの世界を救えたのかと尊敬の念すら浮かんできた。
「で、本題はここからです。後でショッカーの本拠地を調べてみたら、1人だけ遺体も何も発見されていないことが判ったんです。名前はディー博士。ショッカーに科学者を務めていました」
レナはジャケットのポケットから1枚の写真を取り出して全員に見せる。
それはかなり昔のインスタントカメラで撮られたらしいもので、白髪を伸ばした老人が映し出されている。
「ドーンって爆発したからいないみたいに思ったんじゃなくて?」
章太郎の質問にレナは首を横に振る。
「いえ。実は基地の中には別の並行世界に逃走するための装置があったみたいで、そこに使ったと思われる形跡があったんです」
「ということは……」
「それで何処か別の並行世界に逃げた、ってことだろうな」
「まぁあのいざこざの中で生き残っていることが奇跡的ですけど、それしか考え用が無いんですよね……」
海来の言葉に優司こそピンと来なかったが、それ以外の全員には最早当たり前のことのようだった。
何せ章太郎と権兵衛は何度も並行世界からの使者と関わっているし、春樹と碧も嘗て異世界からやって来た戦士と共闘したことがあるのだから。
「そこで私達はディー博士の捜索を始めて、この世界に潜んでいることを突き止めたんです。ただ、彼は優司さんが戦っていた方のショッカーからユーザーズドライバーとヘキサゴンガジェットを貰っていたようで、どうしても海来さんだけでは勝ち目は無いと睨むことは容易いことでした。そこで、御三方を別の世界から此方に呼び寄せたというわけです」
「ちょっと待ってください。ヘキサゴンガジェットは全て回収した筈です。それに、別の世界ってどういうことですか……⁉︎」
まずはそこからか。
だが初めてのことなのであれば無理は無い。
なのでレナが一つ一つ解説してくれる。
「まず、あのユーザー達が使っていたヘキサゴンガジェットは、野宮コーポレーション改めショッカーが極秘裏に開発をしていた新型のものとされています」
「新型⁉︎」
「詳しいことまでは調べられませんでしたが、どうやらライドボットと共に渡していたみたいですね」
まさかのことに優司は驚きを隠せない。
全てはもう終わったと思っていたのに、まさかまだ続きがあったのか。
「それで、別の先程申し上げた『別の世界』っていうことなんですけど、この世界は貴方がいた世界とは別の世界なんです」
「……? 何ですか、その、え……?」
混乱するのも無理は無い。
けれどもここで立ち止まっては先に進まないと、一先ず飲み込むことにした。
「ここは仮面ライダーが存在しない、正確に言えば、『仮面ライダーがテレビ番組として放送をされている』世界なんです。邪魔をする仮面ライダーがいないこの世界を、ディー博士は征服しようとしていると思われます。けれども何せ相手にはユーザーが3体もいます。そこで、梶本さん達のいる世界から御三方を呼び寄せたわけですが……」
「が、何? 何か問題でもあったの?」
碧の問い掛けに、レナは若干申し訳無さそうに答え始めた。
「実は、2022年から春樹さんと碧さんを2026年に連れ出した際、お二人共満身創痍だったことに気が付きまして……。なのでお二人にブートレグとゴリラユーザーの戦闘を見せて終わりになってしまったんです……」
「だから夢の中にコイツが出て来たと思ったのか……」
それは碧が最後のフォルクローであるクロトを倒した直後のこと。何故か夢の中に見たことの無い怪人達と仮面ライダーが現れたのだ。
やけにリアリティのある夢だと思っていたら、そういうことだったのかと合点がいき、胸の中でモヤモヤとしていた疑問が全て洗い流される。
「それで、2022年時点のお二人をご自宅のベッドに戻して、代わりに2024年のお二人と2027年の梶本さんをお連れしたわけです」
「え、何で去年の僕を連れて来なかったんですか?」
「そんなメンタルの状態じゃなかっただろ?」
確かにそうだ。あの時は別の戦いに赴けるくらいの余裕なんて無かった。
今は今で受験があるのだが、それとこれとは訳が違う。
「結果、海来お兄ちゃんに優司お兄ちゃん、春樹兄ちゃんに碧姉ちゃんが来たってこと?」
「そういうことです。一刻も早くディー博士の思惑はどうにかしたいので、明日には彼等が潜んでいる場所を急襲します。今日はこのお店に泊まっていってください」
「本当はお店手伝って帰って欲しいんだけどねぇ。けどこれ貰っちゃったから、仕方無いか」
そう言って権兵衛が見せたのはコーヒー豆が入っていると思われる大きな麻袋だ。
碧が表面を見てみると、そこには1キログラムが相当な高値で取引される銘柄であったため、思わず血の気を引いてしまう。
確かに喫茶店の店主を言いくるめるには打って付けのものであろう。
「では、そういうことで。今日はもうお休みしましょう」
────────────
権兵衛が作ってくれた夕食を食べた全員は風呂に入ることにした。
広さは1坪程。3人いる男性陣は1人ずつ入った後、碧が「折角だし春樹と入りたいなぁ」と言ったのだが、「もう30なんだから自分で入りなさい」と言われてしまったために、仕方無くレナと二人で狭い中を共有することとなった。
二人で浴槽に身を預けていると、突如として碧がぶっ込んで来た。
「レナちゃんってさ」
「はい?」
「海来君のこと好きなの?」
「⁉︎ は、はい⁉︎ え、いや、あの、えぇ⁉︎」
今までに無い慌てぶりに、碧はニヤつきが止まらない。
娘はもう既に嫁いでしまったことから、発展途上ですらまだない彼女が愛おしくて仕方が無いのだ。
「正直に言っちゃいなよ」
「えぇ……」
「ほらほら〜」
揶揄う碧に押され、レナは顔を赤くしながら薄らとした声で答えた。
「そうかどうかは判らないですけど……良い人だなぁとは思います……」
「ふぅ〜ん」
益々顔が赤くなってきた。
別に長風呂をしているわけではないのだが、茹で上がってしまいそうだ。
「そ、そういう碧さんはどうなんですか⁉︎ もう出逢って10年くらい経ちましたけど、流石にもう──」
「何言ってるの? 寧ろ年々大好きになってくるんだけど」
反撃するどころかカウンターを喰らってノックアウトされてしまったレナ。
すると、
「それはそれは羨ましいですねっ!」
突如としてレナが片手で碧の胸を揉んできた。
思っていた以上に弾力のある大きなもののせいで、更に力が入ってしまう。
「痛い痛い痛い痛い! 止めてレナちゃん!」
「どうせ私にはこんなに無いですよーだ!」
「あるから! レナちゃんにもあるからっ!」
────────────
「あーさっぱりしたー!」
風呂に入り終えた全員が店内でまったりとしている。
春樹はスマートフォンでネットサーフィンをし、碧と優司は章太郎が持っている仮面ライダー関連の本を読んでいる。そして海来は自前のプロテインを飲み、レナは拳銃の手入れをしていた。
何とも言えないカオスな光景に権兵衛は慣れたつもりでいたが、やはり改めて見てみるとかなりおかしなものであると思う。
そして邪魔にならないように翌日以降の仕込みを始めた。
すると、
「あの、ちょっと気になることがあったんですけど……」
突然優司が読書を中断して話し出した。
そこに全員が注目をする。
「さっき怪人と戦った時に、『着いて来てもらいたい場所がある』って言われたんです。……妙だと思いませんか……?」
「確かに、『死ね』っていうのの遠回しな言い方ならまだしも、邪魔である私達をただ排除したいだけなら、何処に連れて行く必要があったのかな……?」
どうやら碧は優司が疑問に思ったことを的確に捉えたらしく、優司は首を微かに縦に振る。
「多分これかな?」
章太郎が見せてきたのは雑誌に載っている映画のワンシーンの画像だ。
2人のヒーローが台の上に拘束をされ、覆面を被った白衣を纏う科学者に何かをされようとしている様子である。
「こんな風に洗脳されるとかじゃない? こうやって仮面ライダーをショッカーの戦士として操っていたから」
「「「へぇ……」」」
他人事とは思えないことに、優司と椎名夫妻は顔を引き攣る。
何故そんな風にしているのかは分からなかったが、一先ず訊かないでおこうと思った。
「じゃ、明日早いから私寝るね」
「おやすみなさい」
そう言って碧とレナは2階の倉庫へと上がって行く。
章太郎と権兵衛も自室へと戻る。
これで店内に残ったのは、海来、優司、春樹の三人だけとなった。
「本当にディー博士はこの世界を征服したいだけなのか……?」と春樹が突然呟いた。
「もっと他に理由があるってことですか?」
優司の問いに春樹が頷く。
何か裏があるのではないかと考える二人に海来が言う。
「難しいことは俺には解んねぇけどさ、要はアイツら止めりゃ良い話だろ? だったら話は早ぇじゃなぇか。これ以上、レナの時みたいに、世界を誰かに独り占めさせるなんてことはさせねぇ……!」
「……同感だ」
「そうですね」
やることはただ一つ。
男三人衆の気持ちが改めて統一をされた瞬間であった。
「まさかまた戦いに巻き込まれるだなんてね〜」
「ホントすみません……」
「ううん、大丈夫だよ。困った時は助け合いだからね」
倉庫の中に用意された簡易ベッドの上でレナと碧が会話をしている。
イベント事の前にこうやって眠れないのは、幾つになっても同じようだ。
「……すぐに終わらせようね」
「はい。そのために全力でサポートさせていただきます」
二人共そこから特に何も言うことは無くすぐに眠りについた。
全員の中で沸っていた高揚感がすっかり薄くなり、彼等を安眠へと導いてくれる。
そのため例え多少粗い環境であったとしても、殆どの疲れを取ることが出来た。
全ては明日のため。
明日に全てを終わらせるため。
それにまるで応えてくれるかのように、この日はとても静かな夜であった。
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そして、陽が登った。
10月の肌寒い中で四人の戦士達と、使われていない優司の身体を負ぶうレナの計五人は、街の外れにある廃墟の前に赴いた。
敷地内がフェンスで囲まれ、錆び付いた白い表面に大量の植物が蔓を伸ばしている建物の前では、三人のユーザーがショッカーの戦闘員を従えて待ち構えている。
「お前ら、人の所に何しに来たんだよ?」
プロトヘルハウンドユーザーが訊いてきたので、優司が答える。
「決まっているじゃないですか。貴方方を倒しに来たんですよ」
「それは無理じゃないですか?」
「そうね。だって私達が勝つんだから」
「そうとは限らないだろ?」
「うん。ていうか、確実に私達が勝つね」
プロトミノタウロスユーザーとプロトマーメイドユーザーの言葉に、春樹と碧が対抗をする。
言葉だけでどうこう出来る相手ではないと悟った全員は、各々の方法で腹部にドライバーを出現させる。
「よっしゃ、行くぜー!」
海来の掛け声と同時に、優司は変形させたガジェットをユーザーズドライバーに装填し、春樹と碧はトランスフォンにメモリアルカードを挿し込んで電源ボタンを押す。
海来はカードを取り出して構え、戦闘には参加しないレナは優司の身体を背負いながら銃口を前に向けて端に寄る。
そして全員が特有のポーズを決め、同じ言葉を一斉に叫んだ。
「「「「変身!」」」」
『カメンライド! ディクリード!』
『変身シークエンスを開始します』
『Here we go!』
様々な姿形に変化をしていく四人。
黄金の戦士に全身が焦茶色の偽物の身体。青色と緑色にそれぞれがなった夫婦。
変身の原理や方法こそ違うが、その目的は同じ。ただ目の前の相手を倒し、この世界から脅威を除くことだ。
「「READY……GO!」」
そして、アクトとリベードが自身の手元に出現させた剣で地面を叩いたのをきっかけに、戦いは始まった。