しかしながらロウリア王国海軍だってやられっぱなしではありません。無い無い尽くしの中で有効と考えられる目標へ反撃を開始することになります。
果たしてロウリア王国海軍がロデニウス大陸東方沖で見るのは希望か絶望か。それでは、反撃開始です。
「頭、ロウリア王から私掠状が届きやした。」一人の海賊が海賊の長に報告した。「おお!来おったか!これで手下を殺した奴等に、我等を甜めた報いをくれてやれる。」海賊の長は報告を受けると感慨深げに語る。
それはロウリア王国がクワ・トイネ公國に侵攻するより前の中央歴1639年2月半ば頃のことである。2隻の海賊船がアルタラス島よりロデニウス大陸に向かう1隻の商船を発見した。2隻の海賊船は即座に襲撃を決意し、海賊旗を掲げて
その後ロウリア王国海軍にも追われることになり戦力保持にすら事欠く事態となっていたが、クワ・トイネ=ロウリア戦争によって追跡が緩むと再びその勢力を拡大した。そして遂にロウリア王から私掠状が届いたことで大手を振ってクイラ王國竝クワ・トイネ公國の沿岸部で
そして、ロデニウス大陸東海岸沖を目指したのは件の海賊団だけでは無い。他にも地理的な要因により沿岸襲撃ペースが低いロウリア王国南岸部の小港湾に所属する小型帆船や漁船、それにロウリア王国が掌握出来ていないロウリア主力艦隊残党もまた命令や私掠状によりロデニウス大陸東海岸沖を目指したのである。
だが、「おいおい何だあれは、あんな大船団襲ったら返り討ちではないか!」彼等が見たのは第二次世界大戦後期の聯合国もかくやの隻数を誇る大船団であった。*3ロウリア王国が搔き集めた海賊集団も隻数だけなら第二次世界大戦後期に大西洋を横断した護送船団に匹敵する大船団を前に手出しを控えざるを得なかった。*4しかし待てども待てども大船団しか通らない。そこで海賊の長は一つの決心をした、魔信で他の海賊やロウリア王国海軍艦艇及びロウリア王国私掠船を呼び寄せてから大船団を襲撃することを。だが、海賊の長はそれが破滅への第一歩であることを気付く由も無かった。
中央歴1639年6月9日、クワ・トイネ公國海軍海軍本部の一室。その中心には余りにも巨大な、船舶に持ち込むには余りにも巨大過ぎる海図が敷かれており、あるクワ・トイネ公國海軍の海尉がその周りを資料を抱えてパタパタと走り回り、またあるクイラ王國海軍の海尉が先に板がついた長い棒を使って駒を動かす。その奥で、海図の前に一人の艦娘が映画『沈黙の艦隊』の海江田艦長のように仁王立ちしていた。彼女の名は大淀、歴史上最後の大日本帝國海軍聯合艦隊旗艦である。*5彼女は駒が置かれた海図を睨みながら報告を聞き、傍らの海軍士官や別室の通信室を通して輸送船団やハンター・キラー部隊の指揮を執っているのである。*6
中央歴1639年4月27日、クワ・トイネ公國宮殿にてロデニウス大陸沖海戦の勝利を祝う式典が行われた。その席で北條提督や海戦に参加した六名の艦娘に勲章が授与された。
その席において北條提督はクワ・トイネ公國海軍との連携強化を目的として同海軍本部の一部の借用及び改造を願い出た。そして許可が出ると早速海軍本部の大部屋を作戦室に改造し、その部屋に隣接する部屋を建物を拡張する形でそれぞれ無線通信室や魔信傍受室に魔改造した。
この改造によりクワ・トイネ公國海軍の指揮能力は大幅に拡張された。そしてクワ・トイネ=ロウリア戦争戦後にこの一区画はクワ・トイネ公國海軍本部の司令部中枢となり、クワ・トイネ公國滅亡の日までクワ・トイネ公國海軍の指揮はこの一区画から行われることになる。
中央歴1639年6月9日
同時刻、QYK0806163903護送船団司令船。「ふっふっふ。見よ、これだけの大船団。この船団を襲えるものなどこの辺りにはおらん。そこに海賊もおるが、後をつけるばかりで襲おうとする気配も無い。まさかこんな簡単に海賊から身を守れるとは思わなんだ。」QYK0806163903護送船団の船団長は紅茶を飲みながら壮観な風景に酔いしれていた。「ええ。まさかヨコスカとやらがこんな簡単に海賊から身を守れる方法を知っていたとは思いもよりませんでした。どうして今まで彼等がそれをやろうとしなかったのかがわからない。」船団長付が紅茶を飲みながら船団長の話に相槌を打つ。「なに、あいつらは海賊を返り討ちに出来るだけの重武装*9をしておるから独航しておるのだ。どうしてああいうやり方を知っていたのかは気になるが、海賊が襲うのを躊躇うということはそのやり方が上手くいっているということだ。多少海賊が群れたところでこの船団を襲える訳無かろうて。」船団長は船団長付の疑問に答えると紅茶に口を付ける。そこに慌てた様子の通信士が紙を持って駆け込んできた。「船団長!船団運航司令部より緊急通信!我が船団に
「ありえない話です。
中央歴1639年6月9日
同日
そしてQYK0806163903護送船団の右舷方向から接近したロウリア私掠船の1隻が下から風を受けているかのような帆の膨らませ方をさせながら突出して護衛を喪ったQYK0806163903護送船団に切り込んでいく。その私掠船長の名はルーフルと云い、普段はロウリア北方の群島を根拠地として活動していた海賊だった。しかし彼はニュージャージー任務群によるトマホーク攻撃を受けて同任務群の艦砲射撃を受ける前に出帆してロデニウス大陸南方に避難、そこでロウリア王からの私掠状を受け取りロデニウス大陸東方沖に進出したところで今回の襲撃に参加したのである。彼がいつも乗る船はパーパルディア皇国からロウリア支援のために貸し出されたケブリンIV級戦列艦であり、彼はそれを
ルーフルは司令船を爆破した後、何かを感じとったのか散り散りに逃走するQYK0806163903護送船団残存船舶に紛れて逃走を始める。ルーフルの船はその素早い判断が功を奏して、途中晴風に発見されるも同艦が船団救出を優先したことで一切攻撃を受けること無く離脱に成功する。
同日
同日
魚雷戦用意。それから付近の僚艦に、付近に敵潜水艦無しと伝えて。」伊号第二〇一潜水艦は潜望鏡で状況を確認すると襲撃を終えて離脱する私掠船への襲撃に絞ることにして、同時に対潜戦の必要無しとの連絡を行った。そして晴風、時津風、天津風及びアドミラル・グラーフ・シュペーの四隻を発見して慌てて北に離脱しようとする私掠船のうち比較的大型な私掠船を九二式魚雷で雷撃する。
中央歴1639年6月20日、ロウリア王国海軍の壊滅を確信した
聯合艦隊旗艦として広大な作戦領域に展開した海軍部隊の指揮を執った経験やそのための改装が生きているのだ。
因みにこの言い方で米英が多用する方のマイルと混同しないのは「太陽神の使い」の所為だったり(異世界に投入された輸送船の士官(商船学校出身)が広めました)。
今回も想定を上回る難産となりました。
ロウリア王国海軍の反撃ターンは護送船団1つがざっと300隻位のロウリア私掠船に
この後ロウリア王国海軍は
さて、クワ・トイネ=ロウリア戦争の海洋戦争回は今回で中断し、次回からはロデニウス大陸に舞台が戻ります。何しろこのまま突っ走ると戦争の趨勢がわかりにくくなってしまいますのでね。
加えて(第一次世界大戦でもそうでしたが)戦争している二箇国が陸続きの場合基本的に主戦場が陸上になるため海上作戦が戦争の趨勢に与える影響は結構小さいです。
そのためエジェイ攻防戦が終わったら断続的に海洋戦争回となりクワ・トイネ=ロウリア戦争集結まで一気に進んでいきますます。それでは次回予告です。
ロウリア主力艦隊潰滅。その報は程なくロデニウス大陸に広がっていった。だが、クワ・トイネ公國と陸続きのロウリア王国はその侵攻を止めることは無い。そしてジューンフィリア将軍率いるロウリア王国東方討伐軍の先軍に所属するホーク騎士団第15騎馬隊は遂にエジェイ前面に到達した。そして彼等が目にしたものは何か。
次回、「第十一回 クワ・トイネ=ロウリア戦争 〜エジェイへの道〜」
そして両軍はエジェイに向かう。
解説コーナー
用語解説
船団コード
輸送船団を識別するためのコードで、輸送船団の識別を容易にする目的で設定される。
但しクワ・トイネ=ロウリア戦争で用いられたコードシステムは転移前にコンピュータを使って処理する前提で決定されたものであり、そのため異世界転移後は処理するのが面倒という本末転倒な事態となっている。
出発地コード、行き先コード、出港日、出港月、出港年、出港順により構成されている。
地名コードはそれぞれYKが横須賀、Qがクイラ、KTがクワ・トイネ、MHがマイハークとなっている。
また、異世界転移後は年がグレゴリオ暦*1からクワ・トイネ公國及びクイラ王國との聯合作戦の便を目的として中央歴に変更された。
なおクワ・トイネ=ロウリア戦争終結後に即改訂された模様。
潜水艦による襲撃法の一つに
それを利用して船団襲撃の予兆を船団やその周辺の部隊に通知することにより、その船団が大きく迂回したり周辺の部隊が船団襲撃に集まった潜水艦を狩ったりすることが可能となる。
当然ながら似たようなやり方で襲撃を試みる場合にも応用が利き、本作では魔信を傍受してその方位を特定するのを複数個所で行うことで魔信の発信元の位置を割り出して船団襲撃の予兆を知ることが出来た。加えて襲撃に使用する魔信が平文そのままだったためこの後どう行動するかは完全にもろバレだったそう。(つまりQY0806163903護送船団は船団長のクソみたいな驕りと油断により大打撃を被ったことになる訳で。)
但し周辺部隊の行動の齟齬を重く見た結果警報区分の変更が行われることになり、同警報は潜水艦群による船団襲撃にのみ用いられることになった。
因みに列強だったりそれと同等かそれ以上に強い相手なら暗号を使ってくるから解読する分行動を読むのに余計な時間がかかる見込み。ところで大日本帝國の暗号って米海軍にサクサク解読されていたアレが最新なのでしょうか?(もしそうだとするとお互いに暗号使ってるつもりで・・・というコメディ化不可避案件に。)
オリジナルキャラクター紹介
マイハーク商船大学のカモ=アイ教授
本編から半世紀位経過した頃にマイハーク商船大学の教授となった船乗り。
海上におけるテロ対策が専門。
因みに彼の曽祖父は海賊をやっていて、護国丸の機銃掃射によりミンチにされたそう。
オリジナル装備紹介
ケブリン級戦列艦
元ネタはRed October氏のケブリン級80門級戦列艦。
74門2層戦列艦として開発された艦級でパーパルディア皇国皇軍海軍主力艦の数的主力であったのだが、ルディアス即位後はその海軍戦術の急激な変化から急速に陳腐化が進んでいる。
サブタイプは以下の通り
ケブリン級戦列艦
ケブリン級戦列艦の原型であり、パーパルディア皇国皇軍が手にした初の主力艦。
中央歴1639年現在では全艦が下記のケブリンII級に改装されたか解撤されたことから現存艦は存在しない。
ケブリンII級戦列艦
ケブリン級戦列艦の甲板に風神の涙を埋め込んだもの。風神の涙により風向きとは関係無く行動することが可能となった。実は本級の大半がケブリン級戦列艦からの改装艦だったり。
中央歴1639年現在パーパルディア皇国監察軍の主力艦として運用されている。
最近の改装により艦首に小振りな
ケブリンIII級戦列艦
ケブリン級戦列艦を一回り大型化させた80門2層戦列艦。
その戦闘能力はケブリンII級戦列艦よりも強化されたものの、その登場と相前後してルディアスが即位したことから当初からパーパルディア皇国監察軍の主力艦としての運用とされるなど扱いが不遇である。
最近の改装により艦首に小振りな
ケブリンIV級戦列艦
今回登場した、ケブリンIII級戦列艦の図面を流用することで安価な実験艦として開発された戦列艦。そのため本級は全て新造されている。
従来艦に比べて甲板強度が大幅に強化されたことで大型の魔導カロネードの運用が可能となったほか、艦首に構造材と一体化した立派な
実験艦としての役目を終えた後はパーパルディア皇国監察軍で運用されたり国家戦略局を通して他国に貸し出されたりしている。
オリジナル艦娘
播磨
A-150という名目にて計画艦娘枠での登場。モデルはA-150の85,000トン案を基に副砲を2基追加搭載したり副砲塔をあちこち強化したりしたものである。
因みに北條提督の配偶者でもある。
USSインディアナポリス
米海軍の条約型巡洋艦で、第二次世界大戦では第5艦隊の旗艦を務めた。第二次世界大戦集結直前、極秘の原爆輸送任務を終えフィリピン方面に向けて航行中に艦長のクソみたいな驕りと油断から伊号第五十八潜水艦の雷撃により撃沈される。極秘任務での航海であったことから撃沈されてから暫くその事実に気付いて貰えず、その間に乗員がサメの餌となってしまう。
なおクソみたいな驕りと油断をした艦長は軍法会議送りとなった模様。
艦これ未実装装備紹介
九二式魚雷一型
大日本帝國海軍が開発した電池とモーターで動く日本製
艦これに登場する大日本帝國海軍の潜水艦用魚雷は全て九五式魚雷であるため未実装装備としてここで紹介する。
実際のところ安かろう悪かろうな装備品であり、駛走すれば駛走するほど電池がヘタレて速力が落ちるという欠陥があったとか。因みに書類上の雷速は30ノット。
深海棲艦相手の時にはそんな欠陥品使えるかということで
因みに改良型の二型はドイツのG7eをベースにする予定であったがなんやかんやで中止された。
Mark39砲塔に装備された5"/54 Mark 16
米海軍が第二次世界大戦期の主力
しかしながら採用された数はかなり少なく、米海軍で本砲を実際に装備して就役したのはミッドウェー級航空母艦のみである。
Mark39砲塔は5"/54 Mark 16用の単装砲塔である。
因みにMark41連装砲塔も計画上存在していた。しかしながら搭載予定であったモンタナ級が起工すらされずにキャンセルされたため実現しなかった。
28 cm/52 SK C/28
ドイツ國が開発した主力艦用の主砲で、ドイッチュラント級装甲艦に装備された。
そもそも艦これの戦艦主砲装備の最小口径が12インチで巡洋艦主砲の最大口径が8インチという。
因みにシャルンホルスト級戦艦の主砲は本砲の改良型である。