そして今回はエジェイの北での戦いになります。
今回も短いながらもかなりの激戦になりそうです。
それでは暫くの間エジェイ会戦をお楽しみください。
エジェイの北
「なあ、
「なるほど。よろしい、なら今攻め掛かればアデムん野郎に一泡吹かせられるな。聯隊に戻る。急ぐぞ。」若き女騎兵中佐は若干名のパンツァーファウスト騎兵を連れて帰陣する。そして聯隊に出撃準備を命じてから無線通信にて偵察結果を報告する。報告を受けた騎兵旅団長も好機と思ったのか無線通信で軍団長に攻撃開始を提案する。だが、若き女騎兵中佐は彼等の動きよりも速かった。彼女は麾下の聯隊が出撃準備を終えるや否や無断で出撃し道すがら陣形を整える。まもなく偵察した場所に着くと、軍団長から砲兵への命令を傍受したので一旦停止を命じた。
「Marchons!」*4各戦列歩兵大隊長の号令一下、大隊配属の軍楽隊が『La Victoire est à Nous』を演奏する中で戦列歩兵大隊が攻撃前進を始める。彼等はライフルを手に立て直しを図るアデム軍の前線部隊に向かって歩調を揃えて行進する。その揃った歩調が生み出す揃った足音や一切の乱れを見せぬ行進、そして何よりもそれらが作り出した迫りくる壁の如き歩兵の戦列は相対する立て直しを図ろうとするアデム軍前線部隊の戦意を破砕するには十分であった。
そして潰走が始まる。
本来潰走を止めるべき督戦隊は既に騎兵突撃によって蹂躙されて潰滅したため存在せず、そのため潰走を止める存在はどこにも存在しなかった。
しかしながらここでクワ・トイネ=ロウリア戦争中のクワ・トイネ公國軍を悩ませた重大問題が彼等に降りかかり、そして完勝するかに思われた攻勢を破砕することになる。
コーデル騎兵旅団は命令に従い前進を始め、2分後クワ・トイネ公國志願兵軍団の騎兵聯隊に接近する。騎兵聯隊を率いる女騎兵中佐は聯隊を二つに分けることでまともにぶつかるのを避け、コーデル旅団長も突破口への対処を優先したことから接敵すること無くクワ・トイネ公國の騎兵聯隊を抜けていった。女騎兵中佐は再集結を命じる。「敵騎兵が来た方向に敵司令部が有る。我等はこれからこれを蹂躙する。このまま進め!」彼女はアデム軍司令部へ一撃を加えるべくロウリア王国騎兵旅団が来た方向に向けて前進するように命じた。
彼等はそれぞれ地形捜兵に先導された槍騎兵大隊を先頭とし、その後ろから胸甲騎兵大隊が続く陣形を採った。
だが、彼等の前に立ちはだかる部隊がいた。同じ師団に編制として組み込まれた歩兵中隊である。だが、パンツァーファウスト2本と剣しか装備していない彼等に槍騎兵大隊の突撃を止めることは不可能であった。彼等は槍騎兵大隊こそパンツァーファウストの斉射で足を止めたが、その機に乗じ得る装備を持たぬ彼等は後が続かなかった。そして槍騎兵大隊に続いていた胸甲騎兵大隊は先行部隊の足が止まったことに気づき、左右に分かれ地形捜兵を前に出してこれを迂回し二方向から突撃した。歩兵中隊は二方向からの突撃に対処しきれず、壊滅する。歩兵中隊を壊滅させたコーデル騎兵旅団の騎兵聯隊は再集結して陣形を整えると再び前進を開始、今度は戦列歩兵大隊に背後から襲いかかる。戦列歩兵大隊は背後から襲撃を受けて挟撃される形となり、
その後コーデル騎兵旅団隷下の大隊は再集結した後に周囲のロウリア軍将兵を集めて再編成を行い前線を立て直すと
そして
「パンツァーファウスト騎兵第一中隊は斉射用意。他の中隊は総員抜刀。」次の命令を受けてパンツァーファウスト騎兵第一中隊はパンツァーファウストを構え、サーベル騎兵中隊及びパンツァーファウスト騎兵第二中隊はすらりと抜刀する。
「あれは何だ?」アデム軍司令部の見張りは地面の膨らみを越える何かを見つけて目を凝らす。それは横陣で前進するクワ・トイネ公國の騎兵であった。「敵襲!」見張りは叫んで知らせる。それを受けてアデム軍司令部やアデム幕旗団は方陣を組み始める。しかしながら鎚の機能を組み込んだ上刃の錆びている長柄斧(長さ4m程度)の重量*5は機敏な動作を阻害した。その上騎兵突撃に強い密集隊形は爆発物に弱い。
彼我の距離600m、騎兵は足を早めながらアデム軍司令部に向かって進んで行く。アデム軍司令部の司令部要員が一箇所に集まり始める。
距離500m、女騎兵中佐の合図を受けて騎兵は馬を馳せ始めて速度を上げていく。アデム幕旗団は一箇所に集まった軍司令部要員の周りに位置し始める。
距離400m、馬は騎兵を乗せて駈ける。アデム幕旗団は方陣を完成させつつあった。「パンツァーファウスト騎兵第一中隊、カラコール用意!」女騎兵中佐はパンツァーファウスト騎兵第一中隊にカラコール戦術*6を下令する。
距離300m、「パンツァーファウスト騎兵第一中隊、襲歩にて突入。かかれ!」女騎兵中佐は麾下のパンツァーファウスト騎兵第一中隊に突入を指示する。そして距離100m、「パンツァーファウスト騎兵第一中隊右に一斉旋回、単縦陣を為せ。」パンツァーファウスト騎兵第一中隊はほぼ一斉に右旋回して単縦陣に陣形を変更する。直後、「
「突撃!」パンツァーファウスト騎兵第一中隊の離脱を確認した女騎兵中佐が通常よりも短い距離で突撃を下令した。サーベル騎兵第一中隊の最前列は速度を襲歩に上げてサーベルを構える。そしてアデム幕旗団の破砕された方陣に激突してこれを蹂躙した。その後後続の騎兵中隊により次々と蹂躙されたアデム幕旗団及びアデム軍司令部は壊滅した。
「戦果は十分か。それでは前進を続ける!進め!」そしてアデム幕旗団及びアデム軍司令部を蹂躙して壊滅せしめた騎兵聯隊は聯隊長たる女騎兵中佐の号令を受けて前進を再開した。
しばらく前進していた騎兵聯隊は途中で南下し始めて進んで行く。そして彼等はこのあとエジェイ会戦の戦局に大きな影響を与える一撃を与えることになる。だがそれはまだ先の話。
かくしてエジェイの北戦線は双方が兵力を消耗しながら戦線が膠着したことでエジェイ会戦の戦局への影響を喪失した。
短いながらも彼我の騎兵が大暴れした回になりました。実際騎兵は極めて強力な兵科でしたからね。機関銃登場以前ですと歩兵は、プロイセン軍が横陣の射撃で騎兵突撃を破砕したという装備と練度が優れた一部例外を除いて、方陣無しで戦える相手ではありませんでしたし、砲兵に至っては殆ど一方的に蹂躙されるのがオチだったそうで。
そう考えるとガトリング氏(ガトリング砲を発明。同銃は第二次世界大戦後M61バルカンやGAU-8アベンジャー及びGAU-12イコライザーに発展する。)やマクシム氏(マクシム機関砲を発明。同銃は改良を経ながら各国陸軍に採用され、塹壕や有刺鉄線及び鉄条網と組み合わされたことで日魯戦役や第一次世界大戦で大活躍した。)がどれだけ軍事史において偉大な存在だったかが際立ちますね。
エジェイ前面、エジェイ南方、エジェイの北と来ましたが、双方の主力は未だ登場していません。という訳で次回予告に行きましょう。
次回予告
パンドール将軍直率のロウリア王国東方討伐軍主力はノウ将軍直率の西部方面軍集団主力と激突する。
供与された九九式短小銃やパンツァーファウストに加えてクワ・トイネ製マスケットやクイラから輸入したライフルドマスケットがロウリア王国の誇る重装歩兵大隊に火を吹き、ロウリア製マスケットもまたクワ・トイネ公國志願兵軍団の戦列歩兵大隊に放たれる。
ロデニウス大陸で今までに無いほど大量に立ち込める硝煙の中手探りで勝機を手繰り寄せるのはどちらなのか。
次回、「エジェイ戦線異常ナシ」算多キハ勝チ算少ナキハ敗ル。
紹介コーナー
音楽紹介
『La Victoire est à Nous』
フランスの行進曲。映画『ワーテルロー』でもフランス軍戦列歩兵による攻撃前進のシーンで使われたりした。
歌詞?知らん。
『La chanson de l'oignon』
フランスを代表する軍歌。ここで使いたかったのだが楽曲コードが分からないという理由で使用を断念した。そしてその影響でオリキャラ(実家が玉葱農家)が一人登場しなくなった。
騎兵種別紹介
さて、今回は騎兵を軽く紹介していきます。とはいえ騎兵は基本的に三種類に分類されるのでそれぞれ紹介してからどういうのがいるか紹介する形となります。
軽騎兵〜戦場を駆け回る割と何でも屋〜
その名の通り軽装の騎兵であり、本質的に機動戦力である。
そんな彼等の仕事は偵察、小規模部隊への襲撃、攪乱、戦線後方への挺進、騎行(敵方の領土を荒らし回る作戦行動。)など多岐にわたるがどれも機動力が重要になる。
遊牧民の騎兵の多くや弓騎兵の大半に偵察騎兵がこれにあたる。
重騎兵〜敵の戦列と戦意を破砕する決戦部隊〜
重装甲で敵の攻撃を防ぎつつ敵に接近して攻撃することで勝利を決定づける騎兵。
重装備なので当然高いし突撃するため結構ダメージを喰らう。しかしながらその一撃は時に戦争の趨勢をも決定付けるハイリスク・ハイリターンな部隊。大日本帝國陸軍ではコスパが悪いとされて配備されないまま騎兵の時代が終わった(秋山好古式対騎兵用騎兵戦術が兇悪過ぎるから要らない子になったともいう。)。
古代マケドニアのヘタイロイや中世の騎士、戦国時代中期頃までの武士や胸甲騎兵に槍騎兵がこれに当たる。
歩兵にとっては兇悪そのもので、これを防げるというだけで高い知名度と価値を有することになる。
龍騎兵〜高機動銃兵〜
元々は馬に乗ることで素早く機動する乗馬歩兵であり騎兵ではなかった。しかしながら銃の発達などから乗馬戦闘を熟すようになり騎兵の一種となった。
国によって扱いが異なり、重騎兵が十分居るフランスでは軽騎兵として運用され、重騎兵が少ないプロイセンでは重騎兵の一翼を担った。
大日本帝國陸軍の騎兵は例外なくこれに分類される。というのも大日本帝國陸軍の騎兵は予算節約などから歩兵銃(歩兵部隊向けの小銃。騎兵にとって馬上での取り扱いは結構難しい。)が配備されたりした上、一番の檜舞台たる黒溝台会戦(日本側騎兵指揮官が秋山好古)では塹壕に籠もって重機関銃で機銃掃射という方法を採ったため。因みに軽騎兵としての運用もされた。
本作オリジナルキャラ紹介
ハンナ・ヨハンナ・フリーデリーケ・レオポルディーネ・フォン・ゼークト
16歳にして志願騎兵中佐で志願騎兵聯隊長。
クワ・トイネ公國貴族出身ながら理知的で理論家肌な一面を有しているが、騎兵将校らしく積極果断さに秀でる。
以降は横鎮にて搭乗員としての訓練を受け、クワ・トイネ=ロウリア戦争後は空軍に転じた。そしてその後統合参謀総長となる。
なお今回は一貫して女騎兵中佐と表記されている。
原作非登場キャラ紹介
コーデル旅団長
本名をリヴァロ・コーデルといい、Red October氏が考案したキャラ。本作ではロウリア王国の騎兵将校として登場。その後騎兵では突破力に欠けることを痛感したことからクワ・トイネ=ロウリア戦争後横鎮陸戦隊の指導を受けて機甲科に転じる。
オリジナル部隊紹介
アデム幕旗団
アデム軍司令部の警備やアデム将軍の意を汲んでの殺戮が主任務となる部隊。
因みに「旗団」というのはドイツ騎士団の戦術単位"Standarte"の中世史研究における定訳である。
この部隊はアデム将軍の性格その他を反映してか白兵武器の刃をわざわざ錆びさせている。因みに刃は錆びると斬れ味が大変悪くなって危険なので良い子は真似しないように。