今回はスマール将軍による助攻とその顛末です。この回を呼んでクイラ王國陸軍の山岳地帯における強さを感じて頂ければ幸いです。それではスマール軍の戦場の続きをお楽しみください。
注:今回は短めです。
山岳という複雑な地形で陣形を組み楯を並べて前進する重装歩兵にクイラ王國軍の将兵は目を見張る、が、構わず指揮官と思しき人物を狙撃する。狙撃により将校や下士官が次々と斃れるなかスマール軍は前進を続ける。これによりクイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍はじりじりと後退する。しかしながら将校や下士官を中心に犠牲を出しながらクイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍を捉えることが出来ずに前進を続けるスマール軍は指揮統制に少しずつ支障を来し始める。それでもなおスマール軍は友軍の突破を信じて前進し続ける。スマール将軍は焦りを感じ始めた。今はまだ麾下の全軍が前進しているからどうにか前進し続けられているが、裏崩れが起きたら一気に崩壊しかねない。その上クイラの猟兵が地点の保持に余り頓着していないことはスマール将軍にとって大誤算であった。それでも、スマール軍は前に進み続けた。勝つために進み続けなければならなかった。
スマール将軍はクイラ猟兵が少なくともエジェイの壁の側面で止まるだろうと予想していた。そうなればクイラ猟兵を捕捉して撃破することも叶うことだろう。しかしながらその予想とは裏腹に、クイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍は後退を躊躇すべき事由が無くなっていた。
壁の防禦を担当する志願兵軍団のうち一個軍団を壁の側面に展開し始めることをクイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍に通知したからだ。彼等はここでスマール軍を包囲撃滅することを決心し、そのために戦線がエジェイ側面まで伸びることを許容した。
おまけに予備の志願兵軍団から一個師団を派遣してスマール軍の更なる前進に備えた。ここまでお膳立てされればクイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍は自軍より兵力で勝るスマール軍を包囲してみせることだろう。少なくともノウ将軍麾下の参謀や壁の側面に展開し始めた志願兵軍団の軍団司令部はそう確信していた。
壁の防備は大丈夫なのかと思われるのだが、そこはクイラ傭兵の一人が距離をおいて挑発するジューンフィルア軍を狙撃することで距離を遠ざけた。ジューンフィルア軍の歩兵が退けば壁の上の歩兵は暇になる道理である。結果一個軍団丸ごと抽出することに成功した。
これらの動きはノウ将軍にとって嬉しい誤算で合った。何故なら、クワ・トイネ公國軍とクイラ王國軍は余り共同訓練を行っていなかったからである。当然万全を期したい指揮官としては国籍毎に担当正面を区切ってその範囲内で全力を尽くすことが最適解だと考えた。だが、国籍を越えて協力出来るのであれば別の解も発生する。そしてそれはスマール軍を苦境に追い込んだ上殲滅へと自ら進ませることに繋がった。とはいえクイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍の猟兵の一部がスマール軍の突撃を止められるかと言えば厳しいと言わざるを得ないのだが、そこは射程差や戦意で強引に止めるつもりであった。
そして
僅か一瞬の麻痺。しかしそれは致命的だった。だが、その時それに気付いた者は殆どいなかった。それどころかクイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍の一部部隊は立て直しの早さのために士気を落としたほどであった。だが、クイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍の将校は各々麾下の将兵を叱咤しつつ一瞬でも麻痺させたことをネタに使って鼓舞し更なる攻撃を命じる。そして一瞬の麻痺の影響でスマール将軍の対応は後手後手に回り始める。スマール将軍やスマール軍将兵にとって不幸なことに、80名前後の猟兵を率いるクイラ軍中尉がそれに気づいた。中尉は猛攻を命じると上級司令部に総攻撃を意見具申する。流石に総攻撃の意見具申は却下されたものの、中尉の中隊による猛攻に感化された僚友が猛攻を始める。こうなると戦局は一気にクイラ軍側に傾いていき、そしてそれを覆す力は最早将校下士官の大半が戦死したスマール軍には殆ど残っていなかった。
そして
「なんだ?あいつ今迄で一番豪華じゃありませんか?」一人のクイラ猟兵が少尉に尋ねる。「多分敵軍の総大将だろう。」少尉は応える。すると猟兵たちは一斉に
スマール将軍は後ろに弾き飛ばされて落馬する。「将軍!」周囲の兵が慌てて駆け寄り声を掛けるが、スマール将軍はその声に応えることは無かった。そこへ
ロウリア軍の崩壊を目にしたクイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍司令部とクワ・トイネ公國志願兵軍団司令部はそれぞれ麾下の部隊に総攻撃を命じた。クイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍の将兵は余り音を立てずに、クワ・トイネ公國志願兵軍団は山々に響き渡りジューンフィルア軍を動揺させる程の程の大音声の鬨の声を上げて、崩壊したロウリア軍に突撃していった。そして崩壊した軍にそれを止めることなど出来よう筈も無く、一方的な蹂躙劇が幕を開けた。仕切る者のいない烏合の衆は次々と背を突かれて戦死するか道から落ちて行方不明となる。*2
かくしてクイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍は大勝利を収めた。だが、自身の損害の多さと軍自体が平原に不向きであること、そして夜が来ることから僅かに会戦前の位置から前進した位置まで進むとそこで進軍を停止した。
変わって最左翼を務めたのはクイラ王國陸軍クワ・トイネ派遣軍と協同してスマール軍を包囲撃滅したクワ・トイネ公國志願兵軍団であった。しかしながら、彼等はその練度不足故に殆ど戦果を拡張出来なかった。
だが、その追撃らしきナニカはジューンフィルア将軍に対処を強制することで戦局を大きく動かし、エジェイ会戦を劇的な終局へと導くことになる。
エジェイ城壁の両翼でロウリア軍を破ったクワ・トイネ公國軍は追撃を始める。
という訳で今回はかなり短い一話となりましたが、その短い一話の中でロウリア王国三大将軍の一人がモブ蔵に討たれてピチュることになりました。
とはいえまだエジェイ会戦は終わっていません。前回の感想に対する返信にも書きましたが一方が退却すればもう一方は追撃するのが道理。その上まだ特別な訓練を受けた特別な陸戦部隊が登場していませんからね。因みにそのような部隊は陸自にも居ますが、ネタバレ防止のためその駐屯地名は書きません。
それでは次回予告です。
次回予告
ロウリア王国東方討伐軍の攻勢を退けたノウ将軍はエジェイの壁後方に展開する戦車部隊にジューンフィルア軍への突撃と爾後の追撃を命じた。
戦車部隊にに蹂躙されたジューンフィルア軍は崩壊し敗走する。
だが、敗走するロウリア王国東方討伐軍の前に予想しなかった部隊が立ちはだかる。
次回、外道鎮守府召喚第十六回 クワ・トイネ=ロウリア戦争 〜ロウリア王国東方討伐軍の最期〜
歩兵は攻撃し、戦車は蹂躙する。
そして毎度恒例の紹介コーナーです。
紹介コーナー
ネタバレの恐れがあるため今回予定されていた小火器の紹介は次回と致します。
という訳で今回はロデニウス大陸各国陸軍の紹介です。
え?戦い振りを知ってるって?まあまあそんな事言わずに。だって皆さんの中で大日本帝國陸軍の戦闘教義を正しく理解しているのってどれだけ居ます?
それに各国陸軍の戦闘教義を知っているのと知らないのとでは結構印象変わってくると思いますよ。
という訳で改めて紹介です。
クワ・トイネ公國陸軍
嘗ての魔王軍との戦いで援軍として駆けつけた
そのため本来はかなり攻撃的で、しかも小部隊で積極的に側面攻撃や迂回及び包囲を仕掛ける軍隊である。
実際パンドール将軍はそのような事態を想定して重装歩兵による大方陣を組んだのだが、ノウ将軍のキャパを若干超える程度の(味方の)大軍により盛大に肩透かしを喰らう羽目となった。
因みに大日本帝國陸軍から受け継いだもう一つの癖が極端な火力重視と突撃時の声量である。彼等は本来兵科を問わず全員が弓または鉄炮を持って横殴りの矢弾の豪雨を降らせて攻撃し、敵の方陣を大音声のみで崩さんとばかりに大声を上げて突撃する。
銃兵の携行弾数がパーパルディア皇国皇軍ですら40〜50発程度なのに対しクワ・トイネ公國陸軍は120発が標準である。
加えて矢の携行本数も60本とロデニウス大陸最多で、弓兵の弓は結構強い上本来白兵戦担当兵ですら他国弓兵の標準的な弓と同等の強さの弓を携行する。
その上バリスタを野戦運用する数少ない軍でもある。
荷馬車が数多く運用されており、やろうと思えばロウリア王国東部諸侯領へ
本作のノウ将軍、実は本来かなり狂犬タイプの将軍である。
クイラ王國陸軍
山岳に囲まれた不毛の地に住まうクイラの民はその食い扶持や食糧を求めて積極的に傭兵として戦争に参加し、生き残った傭兵から戦訓を吸い上げることで自国に適した戦闘教義を発達させていった。
そんな彼等は戦時中に食糧を確保するため、敵国への掠奪行の可能性を保持すべく国境地帯を必死で守る軍となる。
そのため国境地帯を構成する山岳での戦い方を積極的に伸ばした。
加えて少ない戦力で敵の大軍を無力化すべく狙撃にも力を入れている。それ故にロデニウス大陸で初めにライフルを導入した正規軍でもある。
戦闘教義をざっくり紹介すると、ライフルで指揮官狙撃してから騎兵で逆落しかけるというもの。同等の技術力を持つ相手ならばこれだけで軍が崩壊して敗走するという兇悪な戦術である。これに加えて爆撃まで喰らっていながら何度も立て直してみせたスマール将軍の有能さがよくわかりますね。
実はクイラ王國がエジェイ会戦でクワ・トイネ公國に援軍を派遣したはクワ・トイネ公國の食糧で軍を養うためだったり。
まあ、"家畜ですら美味い飯を食う"と云われるクワ・トイネ公國からすれば笑って許せる上にほぼデメリット無しで強い陸軍が参戦してくれるというとても美味しい話なのですが。
実際クイラ王國陸軍は裏でロウリア王国に対して騎行を仕掛けている。
ロウリア王国軍
今までに占領した国々の優れたところを導入したり封建制だったりしているため、統一された戦闘教義は存在しない。
とはいえ基本的には騎兵や軽歩兵といった機動戦力を側面に展開し、中央に重装歩兵を配置するという割と古代から中世にかけて一般的な兵力配置が原則となっている。
今回は敢えて
一応各々の兵がある程度糧秣を自弁するという制度はあるが、勃興期を除いてほぼ