という訳で長かった第二章もようやく終わりが見えてきました。
この後は数回戦後処理やら各国の動向やら閑話やらを挟んでとても平和な第三章に入ります。なお第三章の後半と第四章冒頭は作中世界にて同時進行する模様。
それでは批准に向けた動きからです。
今回は短めです。
中央歴1639年8月5日、クワ・トイネ公はクワ・トイネ公國議会を招集してクワ・トイネ=ロウリア戰爭講和條約の批准手続きに入った。
カナタ首相はこれ以上の長期戦が農繁期の人手不足を招き、クワ・トイネ公國史上類を見ない大凶作を引き起こして飼料の質や量を制限しなければならない事態を招き、かつ戦時国債の償還額が大きくなり過ぎることを議員らに説明して継戦を叫ぶ議員を説得する。そうして中央歴1639年8月10日、クワ・トイネ公國議会は過半数の賛成を以てクワ・トイネ=ロウリア戰爭講和條約を批准することに決定した。
一方ロウリア王国では中央歴1639年8月3日に
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下が評議会を招集なされた。そして敗戦とはいえ寛大な条件であったこともありその日のうちに批准することになった。
かくして両国は中央歴1639年8月6日より批准書交換に向けて事務レベルの話し合いが持たれて批准書を交換する日をいつにするか話し合う。そして中央歴1639年8月10日、8月31日にジン・ハーク城にて批准書を交換することが決定された。
クワ・トイネ=ロウリア戰爭講和條約の批准書を交換する日取りを調整している最中、仁淀がピカイア市の牢に拘束されていた男と面会する。彼はパーパルディア皇国国家戦略局から派遣された者であったのだが、ピカイア市からパーパルディア皇国に帰国しようと船を待っていたところ突然ピカイア市が降伏したことで同市の治安当局にロウリア王国方と見做されて投獄されていたのだった。そしてその日の深夜、パーパルディア皇国国家戦略局から派遣された男は脱獄してピカイア市を抜け出すと闇に紛れて姿を消し、ジン・ハークへと向かっていった。
翌朝、脱獄に気付いたピカイア市の看守が警報を発して数日の間捜索したものの、男の行方は杳として知れなかった。ピカイア市長は仁淀に平謝りしたものの、仁淀は大したことでは無いとみて無関心な様子を見せた。
そしてピカイア市長との面会を終えると、仁淀は一言呟く。
「計画通り。」
一方ピカイア市は周辺地域に指名手配の人相書きを緊急で配達した。
中央歴1639年8月31日、クワ・トイネ=ロウリア戰爭講和條約の批准書が、無事交換されてクワ・トイネ=ロウリア戰爭は正式に終結した。
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下は、講和條約の結果先祖代々の悲願が成就し得なくなったことを
ロウリア王国の祖霊に御報告申し上げるため、祖廟に参拝なされることにした。そしてあまり似合っていない二角帽子を被り礼装を着用して批准式に出席していた北條提督は、予てからの内示通り祖廟参拝への随行が命じられた。訳あって勅という形ではなかったものの、北條提督は
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下の命に従い礼装姿のまま祖廟を参拝する
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下に
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下の剣を持って随行する。
ロウリア王国の祖廟はジン・ハーク城の宮殿から少し離れたところにある。祖廟を囲む囲壁が聖なる空間と俗世間とを隔てるかのように聳え立ち、その中で唯一両者を繋ぐ中門をくぐると正面に石段があり、その石段を真ん中まで上ると両側に大木が生えている。中門を背に祖廟を向くと左側にある大木は銀杏にとてもよく似ている。その大木はさながら平成22年3月10日
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下一行はジン・ハーク城の宮殿を出ると祖廟の中門に向かった。そこにはランド近衛騎士長が待機していた。
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下一行が祖廟の中門で例年では行われていなかった小休止をとる。
「いや~、困りますよ~。何故なら祖廟は部外者立ち入り禁止ですから。」ランド近衛騎士長は北條提督に某警部のような口調で声をかけた。
「そうはいわれても、
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下の命で随行しておりますから。」北條提督は
「確かに随行を命じたのは余であるが、ランドの言にも一理あるな。」
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下はそう宣うと
「北條提督よ。貴殿は中門に留まられたい。」とて
「委細承知。」北條提督は
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下の命を受けると持っていた
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下の剣をランド近衛騎士長に渡して中門に待機し始める。
そうしてランド近衛騎士長は北條提督の二角帽子を被ると北條提督に代わって
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下一行に加わり、石段を上って祖廟を参拝した。
北條提督が
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下を待っていると、「おやおや、外されちゃいましたか。」などと北條提督をからかう者が居た。播磨である。「流石にTPOくらい弁えてくれんか。」所構わずいちゃつこうとする播磨に北條提督は苦笑する。
そうして夜になって参拝を終えた
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下一行が石段を下り、石段の真ん中まで下りた時のことである。
「この裏切者が!」ピカイア市から送られてきた人相書き通りの容姿をした男らが平成22年3月10日
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下一行に突っ込むと隠し持っていた魔導ライフルドカービンを
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下に向けてゼロ距離で発砲する。そして魔導ハンドガンを抜き、「薄汚い蛮族め!成敗!」と言って二角帽子のすぐ下目掛けて放った。撃たれた両者、ともに即死であった。
銃声を聞いた北條提督は中門から数歩踏み入ると「ひっ捕らえよ!」と麾下の艦娘たちや妖精たちに命じた。艦娘形態で艤装保護靴を履いた駆逐艦娘たちや陸戦妖精たちが石段を駆け上がり、ピカイア市から送られてきた人相書き通りの容姿をした男たちに突っ込んでいき、ピカイア市から送られてきた人相書き通りの容姿をした男の手下と思しき男たちを生け捕りにしていったのだが、ピカイア市から送られてきた人相書き通りの容姿をした男だけは逃走を許してしまった。
ピカイア市から送られてきた人相書き通りの容姿をした男は今回のテロを手助けした女が確保したセーフハウスに逃げ込むと、嬉しげに手柄顔で夜食をかき込む。しかしながら彼の望みが果たされることは無かった。何故なら彼のテロを手助けした女が彼にスタンガンを押し当てたからだ。そして彼女はピカイア市から送られてきた人相書き通りの容姿をした男を拘束すると、
セーフハウス内で隠れていた男に出るように伝える。そして
彼は彼女に手書きの判決と命令書を手渡されると、彼女が手配した飛行機で紀伊に送られ、無事横須賀鎮守府に亡命なされていった。命令書には
王太子ハーク・ロウリア殿下の御署名にてテロリストを公開にて処刑すべしという命令が書かれていた。彼女はその日のうちにテロリストを引き摺り判決と命令書を添えてロウリア王国官憲に引き渡す。かくして翌中央歴1639年9月1日、テロリストは広場にて車裂にて公開処刑された。罪状は
ロウリア王弑逆であった。テロリストはパーパルディア皇国国籍を
中央歴1639年8月2日、
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下はロウリア王国首脳や諸侯たちを召すと、諸侯に人質を返して独立するならば承認する旨を告げて別れさせる。そして諸侯が全員退出して離れたことを確認すると、ロウリア王国首脳に北條提督が立てた策に合わせて行動するように命じる。まずピカイア市には捕らえたパーパルディア人を脱獄させ、ジン・ハークの祖廟に囲壁を越えさせて招き入れてランド近衛騎士長を祖廟の中門に待機させる。そして
ロウリア王ハーク・ロウリアXXXIV世陛下は批准書を交換するとその日のうちに北條提督を随行させて祖廟の中門まで進む。そこで北條提督とランド近衛騎士長を交代させた後に祖廟を参拝なされた。その帰路でパーパルディア人のテロにより崩御された。
中央歴1639年8月中旬、クワ・トイネ公國とロウリア王国とが批准書を交換する日取りを話し合っているさなか、横須賀鎮守府に出撃した艦艇の殆どが帰投する。ピカイアに仁淀、播磨、紀伊、わかば、橘、柿を残し、クワ・トイネ=ロウリア國境沖に信濃、能代、夏風及び冬風を展開させてC-130輸送機による空輸の中継拠点とした。そして先に横須賀鎮守府に帰投していた沖風、晴風、天津風、時津風、USSギアリング、USSユージン・A・グリーン、USSウィリアム・M・ウッド及びUSSセオドア・E・チャンドラーを艦娘形態とし、艤装保護靴を履いた状態で
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下が祖廟より戻られる。そして
ハーク・ロウリアXXXIV世がテロにより崩御され、ランド近衛騎士長がテロに斃れる中北條提督から命が下った。「引っ捕らえよ!」彼女たちは艤装の砲から訓練弾を放ちつつ吶喊する。だが、彼女たちは地理不案内故にテロリストを取り逃がしてしまった。そして紀伊から捕縛したと報告が入ると、テロリストはロウリア王国官憲に引き渡され、翌日公開処刑された。
ロウリア王を弑逆したテロリストが処刑されると、ロウリア王国首脳はジン・ハーク城に集まった。
王太子ハーク・ロウリア殿下が横須賀鎮守府に亡命され、諸侯たちの軛となる人質は既に解放されていた。つまり彼等にはもはや
ハーク・ロウリアXXXIV世陛下の頃の領域を維持する能力を喪っていた。その状況から、彼等は多くの諸侯を独立させることで彼等の維持出来る範囲までロウリア王国を縮小することになる。だが、
ハーク・ロウリアXXXIV世の偉業は未だ忘れ去られてはいなかった。クワ・トイネ軍がロウリア王国領から撤退すると、旧ロウリア諸侯の多くはマオス摂政率いるロウリア王国政府を正当なロウリア王国政府とは認めずにロウリア王を僭称して真のロウリア王の座を巡って争いを始める。
そんな中、東部諸侯達はジューンフィルア辺境伯を中心に東ロウリア公國聯邦を建国する。そして同國はロウリアとクワ・トイネ公國の緩衝地帯として比較的平穏を取り戻すのであった。
一方クワ・トイネ公國で議会は紛糾する。何故なら、まさかロウリア王国が瞬時に崩壊するなど誰も予想だにしなかったからだ。カナタ首相は北條提督の忠告を無視したことを後悔していた。請求先が居なくなったことが彼を政治的苦境に追い込んでいた。
ロウリア王国に請求するはずだった賠償金は横須賀鎮守府がクワ・トイネ=ロウリア戦争前の貿易で貯め込んだパソで建て替えたことでどうにか苦境を脱したものの、戦前のような対パーパルディア貿易は難しいだろうと予想されていた。
しかしながらそれは横須賀鎮守府が間に入ることでそれも解決された。横須賀鎮守府が或る目的を以てより多くの食糧を輸入するようになったからである。無論、横須賀鎮守府が合意よりも多く輸入した分の代金はパソで支払われたのだが、横須賀鎮守府は"生産者が余りパーパルディアに売りたがらないために買取価格が高騰したので滅茶苦茶値上げしました"と言ってパーパルディア皇国にとんでもない高値でクワ・トイネ公國産の農作物を売りつけたのである。そして横須賀鎮守府はパーパルディア皇国から莫大なパソを巻き上げた。
農務局長はクワ・トイネ公國産の農作物の価格高騰にブチギレたが、
加えてロウリア王国への債権も、北條提督の立てた策により
そしてやったことが完全に裏目に出た国家戦略局の幹部はなんか余り具合が良くなさそうだった。しかも聡明な
ルディアス陛下もカイオス閣下もあることに全く気付いていなかった。そしてそれはパーパルディア皇国を崩壊へと導いていくことになる。
かくしてクワ・トイネ=ロウリア戦争は、関わった当事者の殆どに余り利益をもたらさぬ有様で終わった。唯一この戦争から利益を得ることに成功したのは横須賀鎮守府だけであった。だが、横須賀鎮守府は横須賀鎮守府で軍拡が必要という結論が出たことや
然れども、今のところは(旧ロウリア王国領域以外)平和であった。
第二章 クワ・トイネ=ロウリア戦争 終
という訳でクワ・トイネ=ロウリア戦争が終わりました。
まあここまで誰も幸せにしない結末は近代では割とありますし、クワ・トイネ公國の面々にとっては割と貴重な経験となることでしょう。
そして本作ですが、しばらく休載します。
というのも某戦記の兵器群が中々魅力的でしてね。しかもその某戦記は魔法が存在する世界なんですよ。なので少なくとも
という訳で、今回次回予告はありません。
それではお楽しみに。
紹介コーナー
肩書紹介
監察官
艦これで界隈で言うところの憲兵=サンみたいなことをする役職で、提督たちの艦娘への扱いが酷くないかとか提督たちや艦娘たちが違法行為をしていないかなどを監査する。
艦娘も相手にするためか1〜2名の艦娘が配属される。
因みに仁淀は北條監察官付として配属されてからの腐れ縁だったり。
以上の紹介文から提督たちによる過度なおさわりを取り締まるイメージを持たれている。なお実態は艦娘によるわいせつ行為を取り締まる方が圧倒的に多い模様。まあ人数(母数)が違うからね。
因みに監察官時代の北條提督は艦娘たちから「話せば分かってくれる」と評されている。
登場兵器紹介
横須賀鎮守府
艤装保護靴
艦娘が艦娘形態のまま陸上で行動出来るように設計された靴のようなもの。
艤装を着けた時の歩きやすさが有るのと無いのとでは大違いである。
因みに北條提督はこれを使って艦娘で空挺作戦を行ったことが有る。
パーパルディア皇国
魔導ライフルドカービン
パーパルディア皇国で用いられている魔導ライフルドマスケットの種類で、主に龍騎兵やリンドヴルム騎兵が使用している他、小型軽量であることから国家戦略局や情報局でも用いられる。
なおその散布界はAKと同等な模様。その上有効射程も機関短銃と同じかやや長い程度でしかない。
魔導ハンドガン
携行性に優れた前装魔導銃。パーパルディア皇国将校が自衛用などで持っている他、自衛用短銃として国外で活動するパーパルディア皇国公務員に支給されたりもする。
オリジナル国家紹介
東ロウリア公國聯邦
ジューンフィルア将軍戦死に伴い後を襲った若きジューンフィルア辺境伯を国家元首とする聯邦國家。
ロウリア王国東部諸侯たちがロウリア王国の戦乱を生き残るために結成した國家である。
クワ・トイネ公國から独立保障がかけられている。
横須賀鎮守府の軽戦車は今後もハ号のままで良いか。
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強化して欲しい。
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ハ号のままで良い。
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日本の軽戦車は弱過ぎるから海外のが良い。
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軽戦車は重過ぎるからもっと軽いのが良い。
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そんな予算有ったら航空機強化して。
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陳腐化した中戦車で代用出来ないの?
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ハフトラに砲載せれば良いじゃない。
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軽駆逐戦車にすべき。
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海軍としては陸軍の意見に反対である。