(㈩*㈩)<能力系等の一つ。対象の能力・術技を模倣可能。
(㈩*㈩)<同じに見えるけど、何かしらの差異が存在する。
(・▽・)<今までの系統から察すると……
(・▽・)<方法、度合、回数、数量――と言った所ですかね。
(㈩*㈩)<その認識で間違えない。
(㈩*㈩)<まあ中には畢竟で生えたり、副産物で出来るモノも……。
(#ー#)<全部ひっくるめたら沢山ありそうだな。
△▲△
時間は強奪と改竄の黒幕をこの世から抹消してまもなくまで戻る。
オウカの姿はマユが持つ異空間にあった。
オウカとマユだけでなく、ネラの姿もあり、マユの頭に乗っている。
ネラがオウカに訊ねる
「所何?」
「言っていなかったけ?」
首を捻るオウカ。
そういえば、空間を開けてくれとしか言っていない。
「聞いていない」
「首肯」
マユとネラの言葉にオウカは説明を始める。
「あのゴミ野郎のせいでチカラがごっそり消えたのは知っているだろう?」
二人が頷く。
休眠している間の事は全部聞いている。
気になったのかマユが問いかける。
「何が残ったの?」
「〈
その言葉に二人は沈痛そうな顔をする。
大半が無くなっている。
「しかもあの野郎、ヴィーの武器まで奪いやがった」
【オートクレール】の置き土産である匣どころかその中身まで奪った。しかもほぼ全部熔かしてインゴットにしてしまったとの事。
……それを吐いたところ、ワクイの生き地獄が加速したのだが、それは余談だろう。
「だけど、あのお馬鹿が遺していたモノが開化したんだよ」
罵倒しているように思えるが、言い方が少し柔らかい事に二人は気づいた。
「出来、事何?」
ネラの問いにオウカは少し笑みを浮かべる。
「これから色々試してみる」
そうしてオウカは着ていた上着を脱ぐ。その下には袖なしのシャツを着ている。
目立つのは左腕。肩付近まで包帯が巻かれ、手袋を付けている。
「……でんでーんむーしむしかーたつむりー」
歌を歌いながら、手袋を外し、包帯を外す。
すると、現れたのは漆黒の腕。
一見すれば義手のようにも見えるが、機械や絡繰のように関節の部分がなく、のっぺりとしている。とは言え爪や皴もないので少し不気味な腕。
「この感じ……」
マユが気づく。
「【レッソワニー】? でもそれだけじゃない……?」
「流石叢雅気づくか」
そう言ってから説明する。
「コジュウロウの事は知っているだろう?」
「「馬鹿」」
失礼だが、間違っていない。
「アイツが使っていた冥刀は、他の冥刀のチカラを模倣出来る」
「紅糸、同系?」
「まあね」
ただし違いはある。
【レッソワニー】の場合、奥義の複数同時使用が可能。
「納刀状態だと憑依するのを応用して俺の体にくっつけてたんだと。しかも
「理解」
因みに、コジュウロウはエモノやチカラが無い状態で、目覚めるようにしていたらしい。
「さてと……」
オウカは左手を翳す。すると、その手にレイピアが現れる。
「【レッソワニー】の色」
「ああ」
【レッソワニー】の形は刀剣。変形機能が高いため、刀剣ならば形状・硬軟も自在。数メートルの大太刀、複数の刃を持つウルミ、数十センチ程の短剣にまで変わる。ただし色は漆黒のまま。
「次は……と」
レイピアの刀身が伸び、歪曲し、太刀になる。
そこから枝刃が突き出て、七支刀になる。
枝刃が引っ込み、刀身が鞭のように伸び、ウルミになる。
刀身が縮み太くなり、巨大な大剣になる。
大剣が節に分かれ、ワイヤーで繋がり、蛇腹剣になる。
ワイヤーが無くなり、分離した節が十二のドスになる。
その十二のドスを十二種類の刀剣に変えた。
それは――レイピア、エストック、タルワール、フランベルジュ、マインゴーシュ、カットラス、ククリ、ケペシュ、エクセキューショナーズソード、ボアスピアソード、ショーテル、ジャンビーヤとなる。
「……っ」
そこまでしてオウカは疲労を感じる。
ふらりと倒れそうになるオウカに、マユとネラが駆け寄る。
「大丈夫!?」
「平気?」
心配そうな二人にオウカは――
「血が足りない、腹減った……」
「はい?」
「空腹?」
そういう訳で、ネラが持って来た手軽にカロリーが取れる食べ物――チョコバー、飲料ゼリーなど――を食べるオウカ。
持って来たそれらを腹に収め、一息つくオウカ。
「ふう……。落ち着いた」
「武器、材料、
ネラの疑問にオウカは頷く。
「正確には血肉骨だな。タンパク質とかカルシウムとか体を構成している物」
【ミストルテイン】はそれらから刃を作る。
それにマユが首を捻る。
「アレ? あのお馬鹿は色々自在にやっていたよね?」
コジュウロウは戦闘の度に武器を形成し、状況に応じて様々な刀剣を使っていた。場合によっては投擲もしていた。
それにオウカは少し考え……
「あ~……多分アレだ」
理由を思い出す。
「アイツのスキルじゃないスキル……秘咒ってあるだろう?」
「アレ?」
秘咒。
スキルではないスキル。
今年から公式に名前が付いた。
因みに、プレイヤーの基本分類にシャーマンが追加されたりもした。
「カナタだったら強さを視れるし、マリアだったら超低燃費、
どちらの世界にも存在しているが、その能力は様々。
そもそも持っていない人も多く、隠している人や気づいていない人もいる。そもそもステータスで見れないので、自覚するまでわからないのだ。
「馬鹿、能力?」
ネラの言葉にオウカは口を開く。
「分身? 分裂? なんだろう?」
疑問形が付いている。どうやら良い表現が見つからないらしい。
暫く考え……
「う~ん……。あ、増殖だ」
良い表現が見つかった。
「……」
「あのね――」
沈黙するネラに、マユが説明する。
コジュウロウの秘咒は、己と寸分違わぬ個体を作り出す。
分身や分裂と言っても良いかもしれないが、どれもが本体なうえ、自分と全く同じ力量、思考、成長速度を持っている。
しかも厄介な事に……
「数上限ないんだよ」
「嘘言」
「いやマジで」
最初の戦い――四巴の際には、九体に増殖していたが、最終決戦時には百を超え、一万近くに数が膨れ上がった。
「強力、過力。欠点?」
「ああ、勿論ある」
オウカは説明する。
「まず、アイツは制御出来ていない……というか自覚していない」
「……」
この秘咒は条件が整わないと発動しないタイプ。
コレの場合、興奮と高揚がトリガーになっている。そのため、妹弟子であるカスミは存在すら知らなかった。なので、オウカ、ソルドアット、コジュウロウ、カスミの四つ巴の際に発動。阿鼻叫喚の地獄絵図にした。……約一名楽しそうだったが。
そして、発動したとしても、自分では知覚しておらず、一人で戦っているとしか思っていない。そのため、数の利点が全く生かせず、バトルロワイヤルが勃発するので、相手はそれに巻き込まれる事になる。
……大迷惑にも程がある。
「ねえオウカ」
「うん?」
「その増殖がどう関わるの?」
「これは仮説なんだけど……、刃を作る度に増殖した分を消費してたと思うんだよ」
消費する血肉骨を増殖分で補っていたのだろう。
「実質ノーリスクでアイツ使っていたんだな……」
しみじみというオウカにネラがボソリと呟く。
「馬鹿、畏怖」
「「同意」」
オウカとマユが頷いた。
………………
…………
……
会話が終わり、改めてオウカは色々試してみる、
その結果、四つの事がわかった。
・黒腕で生成できるのは刀剣のみ。銃器などの射撃武器は無理だが、微妙なラインなのは生成可能だが、負担が倍増する。
・一、二本程度なら消費は少ないが、三本目以降は段違いに疲労する。生成した物を変形させる場合、消耗を抑えられる。
・コジュウロウのストックしたチカラも使える。ディアンのストックもこっちに遺っている可能性あり。
・常時発動していたモノは常に発動する。ステータスバフや無手での切断能力など。
それにマユとネラが総括する。
「【クリドゥノ・アイディン】の下位互換って訳じゃなさそう」
「状況、有利、場合、不利」
そういう訳で今回の模擬戦が初使用である。
★☆★☆★
カナタは刀鍛冶としても中々だが、戦闘者としても高い実力を持っている。
呪符を使い様々な術を発動させ、自分も様々なチカラを持つ刀で切り込みに行く。それぞれの特化者には負けてしまうが、合一させれば勝てる。ある意味オウカと似たようなスタイル。
更に、自身に改良を加える。アップデートをしていく。
呪符は魔法発動の媒介としてしか使っていないかったが、今では式神としても使うようになった。
魔法発動の手段として、詠唱と掌印を使うようになった。
攻撃と防御にしか使ってなかった魔法も、強化や補助など多彩に組み合わせるようになった。
装備は色々試行錯誤をして様々な物を試す。名刀、霊刀、妖刀、特殊な匣など。
だからこそ、今の彼女は強い。
並の戦闘者では呆気なくやられてしまうだろう。
だが、対する相手は並ではなかった。
異世界で数多の死闘、激闘、熱闘を繰り広げた猛者であるサクヅキ=オウカ。
チカラの大部分を失ってなお、その脅威は健在。
……というか、向こうでも似たような事態に陥った状況で、戦っている。
曰く。
『全快・全力な状況で戦えるなんて思っていない。だからこそ心構えしておくんだ』
との事。
だからこそ、この状況は必然だった。
◇◆◇◆
オウカとカナタのオリエンテーションの模擬戦は最高潮に達していた。
「凄いね……」
「……ん」
「「……!」」
新入生達は無言で見入るか、僅かな言葉を漏らす事しか出来ない。
それほどの戦いだった。
二振りの刀で猛攻を仕掛けていたカナタだったが、突如攻撃を止め、だらりと両手を下げる。
「?」
首を捻るオウカにカナタは告げる。
「サク君。今から本気で攻めるけど……死なないでね」
その言葉にオウカが見せたのは――
「「ッ!」」
新入生大半が怯える程の狂気的な笑み。
それに対しカナタは笑い……
「フッ」
【大蛇丸】が撓り伸びて神速の斬撃を放つ。今までの攻撃はトップスピードではなかったらしく、凄まじく速い。
それをオウカは身を屈め避けて、間合いを潰しにかかるが、それをカナタは三次元的機動による高速歩法で間合いを離す。
距離を一定放したまま、小鳥の式神を多数展開。それをオウカ目がけて飛ばす。
「ヤバ!?」
それがオウカの近くで大爆発を起こす。
少しして煙の中からオウカが転がるように現れる。どうにかダメージを減らせたらしいが、カナタは攻撃の手を緩めない。
距離を離して駆けながら、呪符を辺りにばら撒いていた。
パチリと指を弾くと、雷の嵐が吹き荒れた。
どう見ても殺す気としか思えない攻撃。
だが、あの程度でオウカを倒せるとは、カタナは欠片も思っていない。
(百万回殺して死ぬかどうかだものね……)
そのまま彼女は次の手を打つ。
雷の破壊から逃れたオウカ目がけて、炎を纏った呪符を放ち、遠隔誘導させる。
「実体があるならこれだ」
それにオウカは手に持っていた長ドスを鎖鎌――無貌が使う分銅部分すらも鎌になった二丁鎖鎌とでも言うべき物――に変え、鎖を操り、二つの鎌で呪符を撃ち落としていく。
(そう来たなら!)
武器を中距離状態にしたタイミングで、カナタが隠形状態でオウカに迫る。様々な術を使い、制限を掛け、かなり強力になっている。通常の五感では捉えられない。
「フッ」
オウカの背後に周り、斬撃を放つ刀と入れ替わりに出した小太刀――軌道隠蔽と隠形補助の効果持ち――を突き立てる。
だが……。
「姿を消した奴が現れるのは大抵背後!」
「え!?」
その一撃をオウカはくるりと周り、左腕の黒腕による中段受けで弾く。
(いつの間に!?)
オウカの手から鎖鎌が消えていた。
「戦闘は楽しいな!」
オウカは床を蹴りぬく。中国拳法の震脚。
そして次の瞬間。
「二の打ち要らず。ドカァアアン!」
「くは!?」
カナタの鳩尾に凄まじい右手の掌底が突き刺さった。
そのまま室内の端まで吹き飛ぶ。
「クフ……」
黒腕を遺したコジュウロウは、剣聖と呼ばれた事もある生粋の剣士であるが、実は素手でもかなり強い。強くなるために、剣以外の戦闘技術も取り込んでいる。
それがオウカに反映されている。
その戦いを見ていたレイリも思わず声が漏れる。
「押されていたのに……ひっくり返した」
勝負ありかと見ていた者の大半は思う。だが……。
「ん。まだ」
「え?」
クインは気づく。
まだカナタの眼が死んでいない事を。
「女の事に何するの……コフ。素手でも強かったわね」
「カウンターしといて何言っているんだ……」
オウカが右腕をプラプラと揺らす。その腕はグシャグシャになっていた。
カナタが咄嗟に攻撃反射の障壁を張ったのだ。とは言え、完全には張れなかったうえ、無理矢理突破して来たので、ダメージは負ってしまった。
「まだ行けるわよね?」
「そっちもでしょう?」
カナタは、得物を小太刀から身の丈以上の大太刀に変えて構える。
オウカは、右腕を無理矢理整形し直し、ペンダントを指輪と腕輪にする。
「あら、やっと使ってくれるの?」
「ええ」
そして、ギアを上げた二人はぶつかり合おうとしたが……
「そ、そこまで! そこまで!」
審判が止めてしまった。
勝負は引き分けと相成った。
【TIPS:秘咒】
(・▽・)<ようやっと名前が決まった、スキルじゃないスキルです。
(#ー#)<隠しコマンドみたいなものだから、見れないんだよな。
(・▽・)<ええ。だから気づいていない人もいる。
(㈩*㈩)<もしかして……能力だけじゃなくて、発動も色々?
(・▽・)<その通り! 任意もあれば、常時発動しているモノ、
(・▽・)<条件が整うと発動するモノもあります。
(#ー#)<複合タイプもある。更に回数性まで存在する。
(・▽・)<因みに先天的に持っている人もいれば、
(・▽・)<後天的に覚醒する人もいる。なぜか冥刀使いが多いですけど。
(㈩*㈩)<だから、あの世界の強者は持っている事が多いのか……。