(・▽・)<さて、皆さんは『イムロン』さんを覚えていますか?
(・▽・)<3.5章に登場したキャラクターです。
(・▽・)<思い出せない人はまあ読んでください。
(#ー#)(㈩*㈩)<宣伝!?
その提案にオウカは思い至る。
「もしかしてジンナの用事って……」
オウカの問いかけに頷くジンナ。
「イムロンさん……鍛冶師の様子を見に行こうと思って」
結構親しい仲であり、装備のメンテナンスをやって貰っているとの事。
冥刀のメンテナンスまで出来る凄腕だからこそである。
「なるほど。ん?」
納得しかけてふと疑問が湧く。
「何でさっきは隠そうとしたんだ?」
さっきは言葉を濁していた。
それが妙に気になった。
なので聞いてみる事にする。
「あ~、うん。会えばわかるけど……どうする?」
ここでは話せないらしい。
(気になるし、どうせ暇だからな)
頷くオウカだった。
★☆★☆★
プレイヤーの仕事はモンスターやプレイヤー相手に戦い、ダンジョンに挑む。
それには自身のスキルやテクニックだけでなく、様々なアーティファクトを使う。
武器、防具、装身具、薬毒などであり、それらを一部の例外――企業勤め、後ろ盾を持つ者、独立独行している者――を除き、自分で用意しなければならない。
だからこそ、それを扱う人達が存在し、企業と呼ばれるものもある
個人でやって行く人もいるが生半可な腕ではやっていけず、大企業に負けてしまう。
なのだが、ここ最近評判の良い個人があった。
それが、“一目連”と名乗る職人。
個人経営で、金属系の装備品を取り扱う。
程々の素材と安い賃金でかなり強い武器を作る事から、初心者に好評なだけでなく、貴重な素材――幻想金属やユニークモンスターの素材――であっても、一切無駄にせず、凄まじい性能の武器を作る事から玄人にも人気。
なのだが、持ち主に会おうとはせず、依頼をすると、物体を転送する箱だけが送られてきて、そこに素材と賃金を入れる方式。
どうにか突き止めようとした人もいるが、結局断念した。
場所の情報はなく、依頼はネットか電話。
送られてくる転送装置である箱は、回数制限があり、指定回数を超えると跡形も無く消滅する仕組みになっている。
ならば逆探知すれば良いと思うかもしれないが、箱と電話の両方共、逆探知防止の仕組みが山の様にあるので無理だった。
そして、やる過ぎると仕事を受けて貰えなくなってしまう。
だからこそ、現状はそんな輩はほぼいなくなっていた。
◇◆◇◆
(そういえばクラスでも話題になっていたな……)
何人かが依頼して、その仕事っぷりに感心していた。
(まさかジンナの知り合いだったとは……)
そんな事を思っていると、目的の場所に到着。
「廃ビル……?」
「見られると色々不味いから」
それは廃屋。
そこに入っていくジンナの後ろに付いていくオウカ。
中ほどまで進んでジンナは床を軽く足で鳴らす。
すると……
「!」
床の一部が開く。
そこには階段。
それを降って行く二人。
音が響いて来る。
「ああ、懐かしい」
思わず零すオウカ。
彼にとっては聞き覚えがある音。よく聞いていた音。
金属同士のぶつかり合う音。
だが、それは剣戟の音ではない。
それは槌音。熱された金属を叩き、強度を高める鍛冶の音。
オウカが友達であるヴィーのところに行くといつも聞いていた音。
「そういえばヴィーさんって人が鍛冶師だったね」
「ああ」
階段を降り終え、目の前には扉。
開けようとして、ジンナは行動を止め、振り返ってオウカを見る。
「お願いがあるんだけど」
「何?」
首をこてんと傾けるオウカ。
それに真面目な顔してジンナは続ける。
「襲わないでね?」
「??」
疑問符を多数浮かべるオウカ。
なのでジンナは続ける。
「中にいる人がどんな人でも襲い掛からないでね」
その言葉に憮然とした顔を作るオウカ。
「俺が誰彼構わず殺すような奴に見えるか?」
それはコジュウロウの担当(?)である。
そんな彼にジンナは苦笑して続ける。
「知ってるよ。でも念のため」
「……」
無言のまま思考する。
(つまり何かしら襲うような要因があるって事か)
なのでこう言う。
「俺は基本、相手が襲い掛かって来なきゃ、対応しないぞ?」
「……言われてみれば確かに」
通っている高校の在校生や大半の教師からは物騒な人、と思われているが、彼と親しい面々は知っている。相手をボコボコにする際も、相手からやって来た場合がほとんどである。
それを思い返すジンナは最後の確認を取る。
「じゃあ開けるね」
「おう」
そして、扉を開けた。
そこは鍛冶場だった。炉、金床、槌がある。
しかし、問題があった。
槌を振っているのは人型で、着流しの着物を着ている。
だが、それは人間ではなかった。
それは鬼だった。
外見特徴からゴブリンだと分かるが、小鬼と言うには大きかった。
二メートル半はある。
「♪~」
何か歌を歌いながら、一心不乱に熱した金属を槌で叩いている。
暫くして、作業が終わったのか、こちらを振り向く。
「すまんな、作業をしてた。思ったより時間が掛かってしまった」
「ううん、気にしないで」
「それで彼は?」
鬼の視線がオウカの方を向く。
それに彼は自己紹介する。
「初めまして。俺はサクヅキ=オウカです」
スムーズな言葉に鬼は少し驚いたような顔をするが、すぐに表情を戻し。
「こちらこそ初めまして。オレはイムロン。【ゴブリン・キング・スミス】だ」
自己紹介した。
そんな二人にジンナはツッコミを入れた。
「待って!? 何でサク君冷静なの!?」
「ん? 別に驚く事じゃないだろう。こういう存在がいるのは周知されているし」
人に友好的なモンスターは結構存在する。
そして、そもそも。
「俺の最初の友達だってモンスターだったし」
「あ、そういえば……」
オウカの過去をある程度聞いていたので、思い出したジンナ。
(ボクの杞憂だったか……)
心の中で呟いた。
そこへイムロンが問いかけて来る。
「それで今日は武器のメンテナンスか?」
「うん。それとちょっとお願いが……」
「何だ?」
「余ってて、廃棄しても大丈夫な武器とかある?」
その問いにイムロンは眉を上げる。
「あるにはあるが……。何をする気だ?」
「それは……」
「ジンナ」
説明しようとした所をオウカは遮った。
「流石に頼る訳には……」
「良いの。だって今困ってるでしょう?」
「それはまあ……」
「それに……」
一拍置いて続ける。
「サク君絶対何かしらに巻き込まれるし、飛び込んで行くでしょう?」
「……」
否定できないので無言になるオウカ。
「チカラが足りないんでしょう? だったら頼って」
「……」
無言のオウカ。
頷きたいが、頼りきりなのは嫌なのであろう。
それにイムロンが助け舟を出した。
「失敗作は結構あるからな。結構倉庫を圧迫している」
「売ったり出来ないんですか?」
「何かしらの欠陥があるからな」
オウカの問いに、肩をすくめて続ける。
「とは言えただ捨てたり、融かすのはもったいない。使えるなら使ってくれ」
その問いに――ややあって頷いたオウカだった。
******
イムロンがいる地下室は複数の部屋がある。
扉を開けた所にある鍛冶場、理科で使うような実験室、生活用品が置いてある居住部屋、幾つかの倉庫。
倉庫は四つあり、様々なオブジェクトが置いてある部屋、 依頼品や販売品を置く部屋、試作品や実験品を置く部屋、失敗作を置く部屋。
今向かっているのは失敗作の部屋だった。
「融かして再利用はしないのですか?」
オウカの素朴な疑問にイムロンは答える。
「勿論する。だが、あくまでそれはどうしようもないものだ」
「……どうしようもない?」
「失敗作は範囲が広い」
「範囲?」
イムロンが説明する。
何でも、構想している通りにならず、おかしな事になった物、使うにはコスパがあまりに悪すぎる物、様々な問題から使いづらい物、ただ単純に気に入らない物なども失敗作になる。
「例え失敗作だとしても、オレが苦労して作った物だ。愛着がある」
頑張れば使えなくもないので、融かすには惜しい物は倉庫に仕舞い、融かして再利用するのは、何をしても使い物にならない物だけとの事。
「もう一杯一杯どころか、他の倉庫にも浸食し始めている」
「イムロン、外にも出歩けないから、ずっと何かしら作っているよね」
「なるほど」
ジンナの捕捉に納得するオウカ。
確かにずっと作っていれば色々出来るだろう。
それと同時、もう一つ疑問が湧く。
「でもそんな愛着がある物を本当に良いんですか?」
恐らく大半……否、九割は跡形もなく消えるだろう。
それにイムロンは形容しづらい顔をする。
笑っているような、哀しんでいるような、喜んでいるような、寂しそうな顔。
ややあって答える。
「……ああ。倉庫で朽ちるより、マシだ」
((躊躇いはあるよな……))
オウカとジンナの心の声が一致した。
そして、倉庫の扉を開ける。
そこは……
「……おお」
「ええ……」
思わずオウカとジンナは声を漏らした。
なぜならそこは思った光景とは違ったからだ。
二人の想像では武器屋みたくあちらこちらに見やすい様置かれていると思った。
だが実際はかなり無造作に置かれていたり、束に纏められていたり、壁にくっつけられていたり、天井から吊るされていたりと様々。
ギリギリ足の踏み場はあるが、もう他の物を入れる事は無理だろう。
そんな二人にイムロンは声を掛ける。
「この中にあるのは好きにしろ。他の部屋にあるのを持ってくる」
そう言って倉庫から退出した。
扉の開閉音で我に返る二人。
「どうする?」
「……お言葉に甘えさせて貰う」
オウカは普段は服の中に隠したペンダントを出して指輪と腕輪にする。
「やるか」
そう言ってオウカは辺りを見渡す。
そうして目に入ったのは、台座に置かれた大振りナイフ。
(これからっと)
ナイフを手に取る。だが……
(重!?)
持ち上がらない。それどころか引きずる事すら不可能。オウカの力(結構パワーはある)ピクリとも動かない。信じられない程重い。
これは何だと思っていると、ふと気づく。傍らには小さな紙がタグのようになっている。
(えーと、何々)
そこにはこうあった。
『超重大刃』
使い手の意思で、どこまでも大きくなる剣。
本来であれば、大きさと重さが比例するはずだった。
質量保存の法則からは逃れられなかった。
説明書きだった。
ご丁寧に特性だけでなく、本来どうなるはずだったのかも書かれている。
説明を見て納得するオウカ。同時に疑問が湧く。
(どうやってここまで持って来たんだ?)
そんな事を思った。
「とりあえず……〈チェック〉」
手で触れ冥刀化する。
すると、ナイフは光ってから消滅する。
「やっぱり駄目か……」
呟く彼にジンナが声を掛けて来る。
「サク君。これは?」
彼女が持って来たのはレイピア。鞘に入ったそれを受け取り説明を見る。
『F.E.S』
相手の武器や防具を擦り抜ける刀身を持つ。
本来であれば、ONOFF切り替えが可能なはずだった。
刀身は常時擦り抜け状態。魂と命を持つ者しか触れられない。
先程のナイフより遥かにマシだった。
なのでそれを受け取り、冥刀化してみるが……
「「はあ……」」
やっぱり駄目だった。
そのまま暫く周りにある武器を冥刀化していくが、ドンドン消えて行く。
「「……」」
黙り込んでしまう二人。
ジンナがオウカに聞いてみる。
「……えっとさ」
「……何?」
「一%くらいはあるんだよね?」
「基本はな」
「地道にやってくしかないか……」
「まとめてとか出来ないの?」
「出来るけど……」
「けど?」
「それは何か失礼な気がする」
「だから一つずつやってく。疲れたなら休んでも良いよ?」
「大丈夫。付き合うよ」
ジンナが笑って言う。
それにオウカは軽く微笑んだ。
【後書】
(#ー#)<幾ら強力なクロスを手に入れて、無事に高校を卒業出来たとしても、
(#ー#)<それだけでやって行くのは難しい。
(・▽・)<それはそうでしょうよ。
(㈩*㈩)<でも、懐事情によっては最初の方はそれだけでやって行かなくちゃならないんじゃない?
(#ー#)<まあな。でもいつかは躓く。武器、防具。装身具が必要になる。
(#ー#)<それらはショップで手に入れる。
(#ー#)<デパートとかでも扱ってるが、小規模だからな。行くなら専門店だな。
(・▽・)<まあデパートって何でもありなんですね……。
(#ー#)<収入が上がってきたら、オーダーメイドを頼んだりもする。
(#ー#)<なんだが、詐欺もある。金と素材をだまし取られる例も結構ある。
(㈩*㈩)<サクも騙されていたね。
(#ー#)<アレは……アイツのフォローする訳じゃないが、しょうがない。
(・▽・)<紹介した教師もグルでしたしね。
(#ー#)<それもあるが、それまでは結構真面目にやって来てたんだ。
(#ー#)<アイツが預けた素材が希少品ばっかりだから魔が差した。
(㈩*㈩)<……しょうがないとは言わないけど、許そう。もう報いは受けたから。
(・▽・)<拷問で壮絶死して、遺体は魚の餌になりましたし。
(#ー#)<惨すぎる!?
(・▽・)<師匠(メイドヤクザ)の影響で、サクは舐めた奴は容赦しませんから。