(㈩*㈩)<話す機会がこれからあるかわからないから、今述べる。
(・▽・)<何を?
(㈩*㈩)<サクの新たな冥刀。あの変態の問題作について。
(㈩*㈩)<冥刀は確率が低い。どんな能力が付与されるかもガチャ。
(・▽・)<本当に酷いもんですね。
(㈩*㈩)<でも上手くいった場合、多少のズレを修正してくれる。
(・▽・)<ズレ?
(㈩*㈩)<重心とか、傷とか、そういうのを直してくれる。
(㈩*㈩)<それに可変機能も中々高いから、重量を操れる。
(㈩*㈩)<だからあの鎌が結構使いやすくなっている。
(・▽・)<これなら器用な人でも使えますね。
「サク!」
「負けるかぁー!」
マユの瞬間極高バフを利用して押し返す。
それに【サーベライガー】はすぐさま飛び退いた。
地面に着地すると、足に違和感を感じ、下を見る。
『GRU?』
そこにあったのは氷晶のトラバサミ。
足を挟んでいるのだが、傷一つ付いていない。
「駄目か……」
実はオウカが力比べしている間、罠を設置していたミユ。
「ならこれは?」
トラバサミと氷の鎖が飛び【サーベライガー】を挟み込み、雁字搦めに縛り付ける。
だが……
『GRU……』
うっとおしそうに暴れる。
その度にトラバサミと鎖は砕けて行く。
長くは持たない。
「とりあえず作戦会議をしましょう」
「わかった」
オウカとミユは手短にどうするか話し合う。
「……どうしましょう?」
「正直に答えてくれ。一人で倒せる?」
「……倒せますが、奥の手を切らないとなりません」
「やりたくないと?」
「……」
沈黙の肯定。
それにオウカは
「なら俺が行く。試し切りしたかったから。ネラ」
「……渋々、了承」
こう言った。
ネラがミユのところへ移動。
「マユ。サポート頼む」
「任せて。新技も試す良い機会」
「おう楽しみにしておく」
オウカはロングナイフ二本を左手の指で挟み込むように持ち、右手に新たな武器を出す。
それは大鎌、斧、槍、金砕棒、鉄球などが合体した凶器の塊。
作成者である鬼が付けた銘は『バイオレンス』。
鉄球にびっしり生えた棘の一つがチェスのナイトになっている。つまりは【グウェンゾライ・アプ・カイディオ】の影響下にある武器。
【バイオレンス・ナイト】とでも言うべきだろうか?
ソレを右手で担ぎ、獣へゆっくりと向かう。
そのタイミングで【サーベライガー】が、身を縛っていた枷全てを破壊した。
そして、自身に近づく人に気づき、毛を逆立てる。
この獣は一目見た時から分かっていた。この男が要注意であると。
……実は最初の攻撃はオウカ目がけて撃っていた。
「……」
歩みを止め、オウカは【バイオレンス・ナイト】を両手で器用(ロングナイフは左手の指で挟んでいるのでどうにか握れる)に握り、振りかぶる。
『……』
身を屈め、【サーベライガー】はすぐにでも、飛びかかれる体勢になる。
空気が緊張していく。
「「……」」
ネラとミユも固唾を飲んで見守る中。
一人と一匹が同時に地を蹴って飛び出した!
そうして始まったのは刃と爪牙のぶつかり合い。
オウカは凶器をバトントワリングのように回し、攻めたてる。
【サーベライガー】は前足の爪を振るい、牙を突き立てる。
完全互角の戦いとなっていた。
「凄い……」
感嘆の声を漏らすミユ。
それど当時に疑問が湧く。
「でも、さっきは力比べで負けていたような……?」
「装備、変更」
それに答えたのはネラ。
オウカが現在使っている凶器の塊こと、【バイオレンス・ナイト】。これはステータスバフが凄まじい。
そこへマユがバフを掛ける事で、現状彼のステータスは凄まじい事になっている。
ただそれでも【サーベライガー】には勝てない。
しかし、戦いはステータスだけで決まるものではない。
力、速度、耐久以外にも――もちろんこれらも重要だが――大事なものはある。
技量、経験、戦法などなど。そして幸運。
今回の一人と一頭の場合、力、速度、耐久は【サーベライガー】が上だが、技量、経験、戦法はオウカが上。
【サーベライガー】の一打で致命傷を負いかねない攻撃を、オウカは受け流してカウンターを入れる。
だがその一斬は毛皮を多少切り裂くだけ。
拮抗状態ではあるが……
(このままだと先に潰れるのは先輩の方)
(不味)
ミユとネラはわかっていた。不利なのはどちらかが。
あちらの攻撃は致命打になるのに、こちらの攻撃は通らない。
スタミナや集中力が切れた瞬間、オウカの敗北は確定する。
そして、
「ハッ!!」
『GR!!』
お互いの一撃が交差。
オウカの攻撃は毛皮と薄皮を切り裂き、【サーベライガー】の攻撃は彼と服と皮膚を切り裂く。
「ありゃ」
血が出た場所を軽く触る。
(傷は浅い。毒とかも無さそう)
そうしてオウカはこう言う。
「さて、体は暖まったし、試し切りも出来た。お前死んでいいぞ」
その言葉にネラとミユは絶句。
【サーベライガー】は……
『GRRRRRR!!』
毛並みを逆立て、凄まじい圧を発せられる。
誰が見てもわかる。完全にブチ切れている。
馬鹿にされているとわかったからだ。
だがそれにオウカは涼しい顔。
凶器の塊を仕舞い、指に挟んでいたロングナイフ二本を、長ドス一本に変える。
そして、両手で握り構える。
「さあ来い」
その言葉に【サーベライガー】は後ろ足を踏みしめ、いつでも飛び出せる体制を取った。
そのまま両者動かない。
そして。
「ッ」
『!』
同時に動いた!
一瞬後、お互いの位置が入れ替わっていた。
一流の戦闘者であるネラとミユですら、どっちが勝ったかわからない。
「どっちでしょう?」
「……不明」
少しして――【サーベライガー】の頭が地面に落ち、体が崩れ落ちた。
「ふぃ~」
オウカは残心してから。二人の所に近づいて行く。
「勝ったぞ」
その言葉に二人は少し沈黙してから、口を開く。
「……よく、勝てましたね」
「攻撃、不通」
その言葉にオウカは種明かしする。
「ああ、それ? 空間ごと斬った」
「……は?」
絶句したのはミユ。
一方、ネラは驚きより疑問が湧く。
(空間、能力、喪失)
オウカは空間系の能力を持っていた。とは言え、斬撃に空間切断を纏わせる事と、空間攻撃に耐性が付く位の残滓。
それがあるアーティファクトに移り、色々な要素が合わさり特殊な冥刀――【アロンダイト】として再誕した。その結果、空間に関する事は大抵可能になっていて、彼も結構便利に使っていた。
だが、能力強奪事件で、冥刀はオウカの足を引っ張らないため、自死を選び砕け散った。
だからこそ、今のオウカにはそのチカラはないはずなのだが……
「!」
その時、ある事を思い出した。
それは最近別行動での作業。そして、オウカの髪に付いた
「
「ご明察。【アロンダイト】を取り込んだ」
実は休眠状態から覚めたマユは新しいチカラを手に入れるため試行錯誤をしていた。
その結果がこれだった。
「流石にあそこまでは出来ない。でも前のサクよりは色々出来る」
「ありがたい事だよ」
しみじみ言うオウカに、ミユはジト目になる。
「……何?」
「もしかして、遊んでました?」
「いや、武器の試しもあったし、調整に少し手間取った」
少し遊んでいたのは内緒である。
「……まあいいです。代わりにやってくれたので」
「そうかい」
「少し休んだら出発しましょう」
「了解」
そして、オウカはチョコバーを出して齧り始める。
黒腕の刀剣作成はカロリーを使うのである。
……
…………
………………
休憩を取って四人は進む。
道中、モンスターが出て来るも、鎧袖一触。
それに首を捻るオウカ。
「雑魚しかいない。もう少し強いのはどうしたんだか……」
「多分、ボスモンスターに始末されたんだと思います」
情報でも雑魚かボスしか出ないとあった。
「特に積極的に倒して回ってるのがいるようなので」
ボスまでは楽に行けるようだが、ボスは手こずりそうである。
ダンジョン化したせいで、拡張された地下室をしばらく進むと、二手に分かれた通路に到達。
「何か左から覇気を感じる」
オウカの言葉にミユは頷く。
「左側は突き当たりで、ボスの一体が居ます」
情報によれば、そこをねぐらにしていて、あまり動かないとの事。
「先程のアレと似たタイプですけど、更に厄介らしいです」
「どう厄介なんだ?」
「それは……」
その説明にオウカは顔を顰める。
「ま、やるだけやるか」
「はい」
そうして左側へ進む。
そこにいたのは――巨大な蛇。
とぐろを巻いて横たわっているのだが、頭が二つある。どうやら尻尾部分まで頭になっている奇妙な蛇。
付けられた名前は――【ソウオロチ】
『『SYUUU』』
唸る双頭。
だがまだ動かず、こちらを伺っている。
情報によれば、攻撃を仕掛けたり、一定距離まで近づかない限りは、威嚇だけで済ませるらしい。
「で? どうする?」
「どっちが挑むか……ですか?」
「それもあるけど、挑むか引くかも」
他の二体を優先するという選択肢もある。
それにミユは間髪入れずに答える。
「倒しておきましょう」
「その心は?」
「後々面倒なのは嫌ですし……」
(夏休みの宿題はさっさと終わらせるタイプだな)
戦いとはあまり関係ない事を、オウカは考えた。
「……別の事考えてますね? まあ、いいですけど」
「それで?」
「さっきは先輩が戦ったので、私がやります」
その言葉に少し驚くオウカ。
「大丈夫か?」
【ソウオロチ】は特性上、ミユと相性が悪い。
だがそれに彼女は笑う。
「│無問題《モーマンタイ》です。相性悪い敵なら何度も戦ってますので」
そして、敵に視線を向け、そのまま進む。
普段なら牽制で氷晶で作った武器を飛ばすのだが、今回はしない。無駄だからだ。
(厄介だよな……、一定範囲の攻撃無効か)
【ソウオロチ】は防御型のモンスター。特定の攻撃を無効化する。
ソレが遠距離、魔法、熱変化、状態異常。
距離が離れた攻撃は効かず、魔法は意味無く、炎と氷は通じず、状態異常は効き目零。
倒すには近距離で仕留めるしかないのだが……
オウカは心配そうに後ろ姿を見つめる。
(大丈夫かな?)
ミユは氷や凍結を使い戦う。だからこそ相性が悪そう。
だが、ミユは構うことなく大蛇に近づく。
近づきながら彼女は、巨大な氷の結晶を二つ作り出した。
それがゆっくりと回転し始める。
それは、大蛇の有効範囲内に踏み込む時には凄まじい回転をしていた。
それに【ソウオロチ】は特に反応を示さず、様子を伺うだけ。
どうやら効かない攻撃だと、思っているらしい。
それにミユは……
「ハッ!!」
右手側の氷の結晶を飛ばす。凄まじい回転で大蛇に襲い掛かる。
そして、ソレは――大蛇の鱗と肉を切り裂き骨で止まる。
「『!!』」
漏れたのは双方の驚愕。
氷の結晶はミユは手札の一つ。氷晶で武器や生物を作り出す〈
それの最奥。極限まで圧縮して作り出した氷の結晶により、凍気と冷気、回転運動で相手を切り裂く。
幾つかの制限を付ける事で、凄まじい攻撃力を持ち、耐性や無効すら突破する。
(想定以上の防御力。そして、再生力)
だからこそ、ミユはこれでトドメを刺せると思っていた。
内心しかめっ面をするミユ。
無効化を突破しても、【ソウオロチ】には防御の手札が幾つもある。
それが単純な防御力、ダメージ軽減と減算。
この大蛇の鱗は凄まじく硬く、固く、堅い、
それに加え、ダメージは割合で軽減され、数値で減算される。
だからこそ、この威力に大蛇は驚愕したのだ。
『『SHYUUUUUU!!』』
余裕を見せていた【ソウオロチ】は、とぐろを解いて、威嚇する。
骨にまで達した傷は回復・再生を始めている。
元々の生命力も高いのである。
双方が警戒を引き上げ、空気が緊張していく。
相手の出方を伺う中。
『!』
先に動いたのは【ソウオロチ】。
片方の頭がミユ目がけ襲い掛かる。
巨体に似合わず、凄まじいスピード。
それをミユは飛び上がり避ける。
そこへ間髪入れずに、もう一方が襲い掛かる。
空中で身動きが取れず、なすすべもなく喰らう……訳はない。
ミユは氷の結晶を足場にして、それを動かす事で避ける。
『SHYUUUUUU』
『SHYAAAAAAA』
それに【ソウオロチ】は噛みつきの連続攻撃。
二つの頭部を使う事で、隙を潰し合っている。
「フッ、ハッ」
それをミユは氷の結晶を足場、攻撃、防御に使いながら対応。
どうにか凌ぎ切れている。
だが……
(長くは持たないぞ……)
オウカは心配そうにその戦いを見つめる。
加勢しようかとも思ったが……
(アイツの目、まだ死んでない。何か策があるな)
黙って見守る事にしたオウカだった。
【TIPS:サーベライガー】
(#ー#)<ダンジョンにいる中ボスの一体。
(#ー#)<簡単に言えば、ライオン+サーベルタイガー。
(#ー#)<特殊能力はないが、高いステータスが武器。
(#ー#)<力強く、固く、速い。
(㈩*㈩)<そういう純粋な性能だけって言うのも厄介だよね。