冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【TIPS:ソウオロチ】
(・▽・)<ボスモンスターの一体ですね。防御と再生が武器です。

(#ー#)<見た限り、それ以外のステータスも低くはないな。

(・▽・)<はい。実は回復能力も高いので、大抵相手から力尽きます。

(・▽・)<……まあ今回はちょっと相手が悪かった。


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 ………………

 …………

 ……

 

 

 ミユと【ソウオロチ】の戦いは膠着していた。

 彼女は攻撃は、当たるもす再生されてしまう。

 大蛇の攻撃は、躱され防がれる。

 そうして戦い続ける中、ある変化にオウカは気づく。

 

「ん?」

 

 眼を擦るオウカ。そして目を細めて戦う両者を見て。

 

「ああ……、狙いはそれか」

 

 笑うオウカ。

 その様子にマユとネラが訊ねる。

 

「どうしたの?」

「気付?」

 

 それにオウカはこう答える。

 

「あの蛇の鱗をよく見てみろ」

「「?」」

 

 首を捻った二人は鱗を見てみる。

 そして。

 

「「!」」

 

 気づいた。

 

「凍始!」

 

 鱗に霜が降りている。

 だが。

 

「あの蛇って、熱変化無効じゃないの?」

 

 マユの素朴な疑問にオウカは答える。

 

「元々、アイツの氷は耐性や防御を突破出来る」

 

 生半可なモノなら無視して、氷漬けに出来るが、そこはボスクラスのモンスター。

 

「まあ自身の防御力と再生力で耐えていただろうけど、完全に防げている訳じゃない」

 

 塵も積もれば山となる。積み重なったものが効果を発揮し始めたのだ。

 

「それに氷の結晶があるだろう?」

「うん」

「縮んでいるだろう?」

「……本当」

 

 ミユが操る二つの氷の結晶。

 生成時より縮んでいた。

 

「蛇を切り裂きながら、内部に冷気を残していたんだ」

 

 外部と内部の攻撃。

 これがミユの策だった。

 

 とは言え……

 

「時間掛け過ぎたな。どっちが力尽きるか……」

 

 心配そうなオウカだった。

 

 その結果は少しして明らかになった。

 

『SHU……』

『SHYA……A』

 

 【ソウオロチ】の動きが一気に鈍くなった。

 そうして、霜が全身に降りるかのように氷漬けになっていく。

 

 その隙をミユは見逃さない。

 

「これで、終わり!」

 

 足場に使っていた氷の結晶も飛ばし、二つの結晶が大蛇目がけて飛ぶ。

 狙うは……頭部!

 

『『!!??』』

 

 六角形の結晶が二つの頭部に同時に突き刺さる。

 更にそこから凍結していく。

 声もなく、【ソウオロチ】は完全に氷漬けになった。

 

 地面に着地したミユはそのまま大蛇に近づく。

 そして。

 

「ハア!」

 

 回し蹴りを叩き込む。

 実は能力なしでもかなりやれる。

 その足は芯で氷漬けになった大蛇を粉々に砕いた。

 

「終わった……」

 

 戦いはミユの勝利。

 だが、体力と気力を使い果たした彼女は倒れそうになる。

 そこへ。

 

「よっと」

 

 オウカが近づき、ミユを支えた。

 

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

 

 そのまま器用にお姫様抱っこをする。

 

「あ……」

「良いからじっとしとけ」

 

 そのままオウカはこの場から離れる。

 冷凍庫並みの温度になっているので、体力を消耗する。

 そして、曲がり角へ戻り、ミユを降ろす。

 

「今日はここまでにしよう」

「え……、ですけど」

「時間はあるし、今日は二体も片付けた。まだ日にちはあるだろう?」

 

 その言葉にミユは考える。

 

(ここまで順調に行っている。幸い消耗は体力や気力だけだから、少し休めば回復する程度)

 

 出来る事なら進みたいが……

 

(残りのモンスターは“鳥”と“蟹”。後、まだ見ぬダンジョンボス)

 

 どちらも“獣”と“蛇”にも勝るとも劣らない強敵。

 ならば致し方ない。

 

「わかりました」

「じゃあ一旦出るか」

「はい」

 

 そう言う訳で、四人はダンジョンを出てリビングで休む事にする。

 屋敷外や結界外に出る事も考えたが、

 

「出来る事なら、屋敷内は傷付けないで欲しいそうです」

「だったら、出て来るモンスターを排除しないとならないか……」

「それに転移も回数性なので」

「じゃあここに泊まるか」

 

 そういう訳で、食事や寝床の準備をする事になったのだが。

 

「わたしがやる。休んでいて」

当機(わたし)、手伝」

 

 人間形態になったネラとマユが準備をしてくれる事になり、オウカとミユは休む事になる。

 

「キッチン使って大丈夫?」

「後片付けするなら良いそうです」

「人手、必要。使用」

 

 マユは材料を持ってキッチンへ行き、ネラは機械蟻を使役して色々し始めた。

 

 そんな様子を見ながらオウカとネラはクッションを出して座る。

 リビングにソファはあるが、モンスターの影響かボロボロであるうえ、人の家の物なので使うのは躊躇われる。

 そこへ機械蟻が背中にティーセットを乗せてやって来る。

 紅茶とポットとカップ、そして山盛りのチョコレート。

 

「どうぞ」

「「ありがとう」」

 

 マユの言葉に二人は食べる事にする。

 

「沁みる……」

「甘い……」

 

 暫く無言のまま食べて、飲む。

 チョコレートが半分程減り、ポットが空になったタイミングで二人は人心地付く。

 

「ふぃ~」

「はぁ~」

 

 マユとネラの様子を伺うと、まだ色々作業をしている。

 時間がもう少しかかりそう。

 

 なので。

 

「なあシワスさん」

「……ミユでいいです。自分の事だと思えないので」

「わかった。じゃあ俺も名前でいい」

「わかりました。オウカ先輩」

 

 呼び方を変えて、

 

「さて何か話そうぜ」

「……良いですけど、何を話すんですか?」

 

 雑談をする事にした。

 

「趣味とか? 因みに俺は色々」

「色々……ですか」

「うん。これと言ったものはないから」

 

 時間が空いたら、何をするかは決めていない。気分によって――鍛錬、読書、漫画を読む、散歩、昼寝、料理、ネットサーフィンなどなど。

 

「今の時代は娯楽が多いから」

 

 何もしないでゴロゴロする時もある。

 

「……昔々の人みたいな言い方ですね」

「うるせえ」

 

 オウカの反応にクスクス笑ったミユは自分の事を語る。

 

「わたしは……読書でしょうか?」

「一緒だな」

「一緒と言えるかわかりませんけど……。先輩は何を読むんですか?」

「武器やモンスターの図鑑とかだな。後、料理本」

 

 意外と見ていて楽しいのだ。

 その答えにへえという顔になるミユ。

 

「だから色々詳しいのですね」

「そうかも。そっちは?」

「物語ですね。賞を取った物とかよく読んでいます」

 

 彼女が挙げた小説はどれも聞いた事がある物ばかり。

 そんな中でふと気になった。

 

(アレ?)

 

 なので聞いてみる事にする。

 

「一つ気になったんだけど」

「何でしょうか?」

「続きがあるのとか、シリーズものは読まないの?」

 

 ミユが挙げた小説は、どれも一冊で完結する物ばかり。

 それに彼女は苦笑してから答える。

 

「敢えて読まないんです」

「その心は?」

「ヒトって、何時死ぬか分からないじゃないですか」

 

 特に自分は何時命を落としても分からない職場にいた。

 今ここで生きているのは、実力のおかげであるが、奇跡みたいなもの。

 

「だから、何時死んでも悔いが無いようにしているんです」

 

 その言葉にオウカは

 

「そうか。そう言う考えもあるな」

 

 彼女の意見を肯定する。

 それに少し驚いたような顔をするミユ。

 

「どーした?」

「てっきり何か言われるかと……」

 

 彼女はオウカを何か反対意見を言うなり、説教して来ると思っていた。

 それにオウカは苦笑して返答する。

 

「人の数だけ意見があるからな。否定する気はない」

 

 オウカは他者の意見や主義を基本否定しない。

 ただし意見がぶつかり合ったり、その主義が自分に害を及ぼす場合は話が別。

 容赦をせずに叩き潰す。

 

(その辺は大馬鹿野郎(コジュウロウ)と変わらないのかも)

 

 口元を歪めたオウカだった。

 

(おっと、話がズレた。軌道修正っと)

 

 オウカは続ける。

 

「義姉さんとは逆だな、とは思うけど」

「お姉さんがいらっしゃるのですか?」

 

 バイカから聞いた話では、天涯孤独に近いと聞いていたが。

 それにオウカは説明する。

 

「義理だけどな。盃交わした義兄弟って奴」

 

 今思えば随分奇妙な関係だった。

 

「義姉さんは殺し屋だったんだけど……」

「え!?(私と同じ!?)」

「驚きもあるだろうけど、質問は後で」

「は、はい」

 

 一応頷いた。

 

「趣味が読書なんだけど、シリーズものばかり読んでいた」

「(私と真逆……。)どうしてですか? いつ死ぬかもわからないのに……」

「未練があれば生き残れるからだってさ」

 

 あの人には死ねない理由があった。

 だからこそ、未練を残すようにしていた。

 

「死ぬ気でやるってのも大事だけど、生きようとする意志も大事なんだってさ」

「生きようとする意志……」

「ああ。まだ死ねない、生きるんだって。そうすれば生き残れる」

 

 こうして彼女は生き延びて来た。

 

「その組織が無くなるまでちゃんと生きて、任務に成功したよ」

「……殺し屋組織は無くなったんですか?」

「色々あってね」

 

 まあアレは完全な自業自得である。

 人の思いを踏みにじったのだから。

 

「その後、ひょんな事から仲良くなって……」

「なって?」

「俺が世話になっていた人と三人で義兄弟の盃を交わした、……義姉妹かもだけど」

「もしかして、二人共女性?」

「うん」

 

 そんな訳でオウカには義理だが姉と妹が出来た。

 思い返して懐かしそうな顔をしているオウカにミユは訊ねる。

 

「そのお姉さんは殺し屋……だったんですか?」

「ああ。お前と同じ」

「!?」

 

 気づかれていた。

 顔に出した彼女にオウカは少しだけ笑って告げる。

 

「血の匂いが濃かったからね。何かしら裏の業種をしていたというのは気づいていた。傭兵や軍人の可能性もあったけど……」

「……カマを掛けたんですか?」

「まあな」

 

 しくじったとミユはしかめっ面をする。

 そんな彼女にオウカは告げる。

 

「過去ってさ、逃げても逃げても追って来る。だから立ち向かわないとならないんだ」

「だから今立ち向かってます」

「……そういう訳か」

 

 色々察したオウカ。

 だからこそ、彼は決めた。

 

「ちょっと昔話に付き合ってくれるか?」

 

 

 ●○

 

 

「あの人の殺し屋を始めたきっかけは……弟を守るため」

 

「え? どういう事かって?」

 

「その組織に弟と一緒に所属していたんだ」

 

「DV糞親から逃げ出した時に、拾われたそうだ」

 

「……俺も師匠に拾われなきゃ、そうなっていたのかな?」

 

「……話がズレた。戻す」

 

「姉はトップクラスの優秀さだったんだけど、弟はそこまででもなかった」

 

「それに加え、病気が見つかってな。戦闘稼業は無理だった」

 

「このままだと弟は殺される。だから彼女はトップに直談判した」

 

「自分がその分働くから、弟を助けて欲しいと」

 

「それをトップは――了承してくれたそうだ」

 

「その分、義姉さんは碌な報酬もなく、死んで来いという任務ばかり与えられた」

 

「でも……あの人はそれを達成した」

 

「幾度も死に掛け、幾度も死線を彷徨い、幾度も失敗し掛けた」

 

「それでも達成し続けた。そのおかげが“ダイハード”だの“二百%”とか異名が付いた」

 

「全ては弟のためだった」

 

「ん? どうしたミユ?」

 

「え? さっき、その組織は無くなったって言ってたなかったか?」

 

「うん。そうだよ。無くなった。というか義姉さんが潰した」

 

「構成員を皆殺しにしてね。その組織の雇い主の一族すら一人も残さず殺した」

 

「女子供も容赦なく」

 

「どうしてそうなった? とは聞かないのか?」

 

「え? 予想は付く? ……それもそうか。まあでも一応話すか」

 

「ある時、彼女は弟に一目会いたくなった」

 

「それはそうだろうな。何かを守る人は誰かを思い浮かばないとならない」

 

「だから、弟が暮らしている所にこっそり行ったそうだ」

 

「ところがそこに弟はいなかった。狂乱して錯乱したそうだ」

 

「でもずっとそのままじゃいけないから、どうにか落ち着いてから調べたそうだ」

 

「その結果、わかったのは……。え? 言わなくてもいい? 想像付く?」

 

「わかった。じゃあ……時期は言って置こう。どれくらいだと思う?」

 

「数年? 病気で急死して黙っていた。……そっか、そう思うよな」

 

「正解は――彼女がトップと取引してまもなく。約束なんて守る気なかったんだな」

 

「それに義姉さんは怒り狂った。そして、組織を滅ぼし、トップは半殺しにしてから」

 

「俺の親友に預けた。アイツは人を苦しめて殺すプロだから」

 

「そして、組織の雇い主……弟が死んだ原因を殺して、彼女は旅に出た」

 

「暫くは死んだように暮らしてたらしい。その後、俺と会ったんだ」




【コソコソ話】
(㈩*㈩)<遂に登場。サクの義兄弟。義姉。通称姉なる者。

(#ー#)<ホラーかよ……。

(㈩*㈩)<まあ、似ているかも。いきなり義姉になりましょうって言って来たんだって。

(#ー#)<ホラーだな。

(㈩*㈩)<因みにもう一人義妹がいるけど、それはいずれ。……実はちょっと語られてる。

(#ー#)<どこで?

(㈩*㈩)<序盤。お人よしで取りこぼした人。

(#ー#)<あ!?
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