(・▽・)<今回のダンジョンボスって第二形態持ってましたけど、
(・▽・)<よくあるんですか?
(#ー#)<あるにはあるが……、そんなにねえよ。
(㈩*㈩)<会いたくても会えないのか。
(#ー#)<まあな。会いたくても生涯会えない奴だっている。
(#ー#)<因みに、第三とか第四を持つ奴もいるらしい。
(#ー#)<公式だと二回変身までらしいけど。
(・▽・)<目撃例少ないんですか?
(#ー#)<あのよお、考えてもみろ。やっとこさ倒したのに、全快で襲い掛かって来るんだぞ?
(・▽・)<あ……。
(㈩*㈩)<会えたとしても、皆死んじゃうのか……。
………………
…………
……
オウカ達が暮らす家。家主はここ数日留守にしていたため、誰もいない。
するとそこへ、何かを突き破ったような音が響く。
空間に罅が入っていた。
その罅は大きくなり、割れる。
そして、そこから出て来たのは……
「ただいま~。誰もいないけど」
小柄な少年――サクヅキ=オウカ。
「居たら怖い」
喋る櫛――マユ。
「今日、休憩」
漢字二文字で喋る機械アリ――ネラ=D=パラポ
「……もう寝たいです」
髪を三つ編みにして眼鏡を掛けた少女――シワス=ミユ。
この四人はどうにかダンジョン攻略を終えて、暫く休んでからマユの転移で帰って来たのだ。
戦い終わって消耗していたので、休んでいた。
そのまま帰っても良かったが、ネラの転移が使えるようになるまで待つのもあった。
「ふう~」
オウカはリビングにあるソファに寝っ転がる。
そんなオウカに対し、ネラとマユは来客がいるので、動く。
人形態になりキッチンへ向かう。
「御茶、用意」
「じゃあ、わたしはお菓子を。座ってて」
「あ、お構いなく……」
ミユは空いているソファに座る。
そして、キョロキョロと辺りを見渡す。
(普通の部屋……。広さはまあまあ)
聞いた話だと、個室以外にも作業部屋とかがあるらしい。
(突貫工事で建てた割には住み心地良さそう……)
そんな事を思っていると、うつ伏せで寝転んでいたオウカから声がする。
「ミユ」
「! はい!?」
「これで終わりでいいんだよな?」
「え、な、何が……」
「依頼だよ。ダンジョン攻略」
「あ、ああ……」
突然の事に頭から出て来なかった。
言われて思い出す。
「はい。大丈夫です」
そう言ってダンジョン攻略を思い出していく。
(自分一人じゃ無理だった……)
恐らく、
だが、
そして、最後のボス。
(アレは一人じゃ絶対無理……)
今回のメンバーで総攻撃してやっと倒したのに、まさか第二形態を持っているとは……
「……よく予想出来ましたね」
思わず口をついで出てしまう。
「……何が?」
「ほら、あのボスの」
「ああ。ああいうのは稀にいるって師匠から聞いていたから」
それに、と続ける。
「戦いで一番気を抜いちゃいけないのが、終わった直後だっていつも言っていたからな」
懐かしそうな顔をしたオウカだった。
オウカの言葉にミユはこう言う。
「私、そんなボス会った事ないんですけど……」
これでもダンジョン探索は結構している。
だが、あんなRPGのラスボスみたいなのには会った事がない。
それにオウカは苦笑する。
「滅多に出ないらしいからしょうがない。会わない人は生涯会えないって」
一拍置いて続ける。
「それに、会えたとしても……」
「しても……?」
「ミユはさ、もしあのボスと一人で戦っていたとして……第二形態に勝てた?」
「……」
黙り込んだミユは察した。
(そういう事か。疲弊している状態で、第二形態に勝てる訳ない)
会えたとしても殺されてしまう場合が多い。
そして、会えて倒せたとしても……
(そういうモンスターで作った装備は強いから隠匿しておくよね)
手札は隠しておくもの。
だったら、言わない場合が多い。
「因みに、第三形態とか第四形態があるのもいるらしい」
「もうそれどうしようもない!?」
流石にここまでのはほぼ会えない。
「第四形態持ちは師匠と友人が出会ったそうだ。……死に掛けたって」
「……それはそうでしょうよ」
どんなに強者でも無敵ではない。
何かダンジョン探索が怖くなって来た。
そんな風に思っていると……
「まあ恐れすぎるのは良くないよ。全く恐れないのも駄目だけど」
「……じゃあどうすれば良いんですか?」
「ありとあらゆる事態を想定しておけ。何があっても良いように」
「想定……」
ミユの呟きにオウカはコクリと頷く。
「全部は想定しづらいかもしれないけど……」
一拍置いて続ける。
「それだったら、自分がやられたら嫌な事に対する対策はしておくとかな」
「……なるほど」
その言葉にミユは色々考え始める。
そうして会話もない時間が流れる中……
「お待たせ~」
「御茶、菓子」
マユとネラが盆にお茶とお菓子を乗せてやって来た。
「まだ午前中だから緑茶にしてみた」
「菓子、羊羹」
今日は和のお菓子とお茶だった。
良い緑色の緑茶と、水羊羹。
「……こんなのいつ買ったんだ?」
オウカの問いにマユが答える。
「ついこの前。安かったから」
マユは健康のため二、三日に一度は出かけるようにしている。
そのついでに買い物をしたりしている。
「ふうん……」
羊羹をスプーンで掬って口に運ぶ。
口の中に程良い甘さが広がる。
「美味しい……」
そう言ったオウカだった。
ミユも水羊羹を口に運ぶ。
その顔が綻ぶ。
「甘い……、美味しい……」
そのまま黙々と食べていく。
そんな二人の様子にネラとマユも食べ始める。
暫く無言のまま食べて行く四人。
暫くして、お茶とお菓子が無くなったタイミングで、マユがオウカに訊ねる。
「サク」
「ん?」
「今日はどうする?」
「休む」
即答するオウカ。
「何する気も起きないし……」
そう言って再びソファに寝っ転がる。
「食事、後寝、牛成」
「大丈夫」
ネラの注意にそう言って、オウカは首だけ横にしてミユを見る。
「お前はどうする? 泊ってても良いよ? 部屋はあるし」
「……」
その言葉にミユは少し考え……
「お言葉に甘えさせてもらいます」
そう言った。
実は一番疲弊しているのが彼女。もう自宅に帰る気力すらなかった。
……
…………
………………
そうして各自自室(ミユは客室)に引っ込む。
食事は、リビングにカップ麺や缶詰などを置いて、各自お腹が空いたら食べる方式にする。
「ああ……」
部屋に置いたビーズクッションに寝そべるオウカ。
特に何をするでもなくぼーっとする。
(ああ疲れた……)
体力や魔力などは回復しているが、精神的な疲れはまだ取れない。
休みがあったとは言え連戦だったのだから。
「まあ色々試せたから良しとするか……」
仰向けになり、ネックレスを出す。
実は今回のいミユの問題を引き受けたのは、試し切りも兼ねていた。
(まあ一つ使えなくなっちゃったけど……)
その辺はしょうがない。
相手も強敵だったから。
「それに収穫はあったし」
実は今回のボスの素材をちゃんと回収しており、オウカはその内の幾らか貰っていた。
【サーベライガー】の牙
【ソウオロチ】の鱗
【スターキャンサー】の鋏
【コカクチョウ】の鉤爪
【デウス】の核
他の素材はマユとミユが分け合った。
前者は何か武器を作るらしく、後者は装備を作るそうだ。
(こっちはイムロンさんに頼もう)
あの鬼の鍛冶師ならうまく扱ってくれるだろう。
(結果的にプラスになったな……)
そんな事を思った。
そんな風に考え事をしていると、小腹が空いて来た。
「何か食べよう」
立ち上がり、部屋を出る。
そして、カップ麺(味噌味のラーメン)を作り食べ、果物盛り合わせの中にあった林檎を手に取り、齧った。
(食べ終わったら、シャワー浴びよう)
そんな事を思いながら、林檎を芯ごと食べてしまったオウカだった。
★☆★☆★
オウカの家――廃バス、トレーラーハウス、プレハブと移り変わっているが、そこにいつも確実に用意する物がある。
それが風呂。しかも広めの物。
彼のこだわりで、足を余裕で伸ばせるサイズの湯舟を置くため、広いスペースを取る。
廃バスとトレーラーハウスの時は、離れを作ってそこを風呂用のスペースにしていた。
ただ、今回は離れにはせず、外に出ずとも風呂に行けるようにしてある。
そして、今回の風呂は今まで一番広い。
(お湯は張っていたから、のんびり入ろう。そしてもう眠ろう)
自宅にいた事、考え事をしていた事、悪意や殺意が無かった事など、様々な要因が重なり、オウカは先客がいたのに気付かなかった。
それに加え、同居人であるマユとネラは一緒に入る事になっても平然としている。
……というかこの二人の場合、話す時に丁度良いという事で、オウカが入浴してると偶に入ってくる。
それらの要因が重なった結果……
「「あ」」
脱衣所でオウカとミユは出くわしてしまう。
しかもタイミング悪く、ミユは浴室の扉を開けたタイミングだったため、全裸だった。
幸い前は見えなかったが、後ろは丸見え。真っ白な肌の背中と尻が見えてしまった。
「悪い……」
オウカは脱衣所から出ようとしたが、ミユがその背に声を掛けてきた。
「待ってください」
「?」
「丁度良いので、一緒に入りましょう?」
「はい?」
………………
…………
……
そういう訳で、二人は一緒に風呂に入る事になる。
体を洗い……
「背中流しましょうか?」
「遠慮しておく」
湯舟に二人で浸かる。
「何故に背中合わせ?」
「離れていたら、話せないじゃないですか」
「……それもそうか」
まず先に話を振ったのは――ミユ。
「今回は本当にありがとうございました」
「どういたしまして。でも、まだ終わっていないだろう?」
「……思い出させないでください……」
嫌そうな声が聞こえる。
それにオウカは問いかける。
「コロシは嫌なのか?」
「コロシと言うより、殺し屋っていう職業が嫌なんです」
「と言うと?」
「だって命がけじゃないですか」
ターゲットを殺すだけが仕事ではない。
その人物について調べ、行動パターンからどう殺すかを考え、実行に移さなければならない。
「場合によっては戦闘がありますしね」
護衛がいる場合もあるし、ターゲット自体が強い場合もある。
「だから嫌なんです」
「なるほど……」
納得したオウカ。
そして、呟く言葉は……
「でも、大事な仕事ではあると思うよ」
「!?」
流石に驚いたミユ。そのままオウカの方に振り向く。
「えっと……、自分が何言っているかわかってます?」
「わかってる」
一拍置いて続ける。
「まあ人の害にしかならない仕事はあるにはある。ヤクの売買とか」
「殺し屋も同じだと思いますけど……」
ミユの意見に首を横に振るオウカ。
「全然違う。必要とする人がいるからな」
だって、と続ける。
「この世には生きる価値のない外道がいる。人に害しかもたらさない鬼畜がいる」
これはオウカの実体験。
彼がいた世界はそんなのばっかりだった。
「しかも、そういう奴に限って司法の裁きから逃れるからな……」
「実感籠ってますね」
「まあね」
警察などの組織は鼻薬を嗅がされて動かない、裁きを受けるのは身代わり、そんなのばっかりでもあった。
「だから、そういう仕事もいるにはいる。俺はそう思う」
「……」
その言葉にミユは沈黙。
そして、オウカの正面にやって来る。
「……見えているんだけど」
そのせいでその肢体が正面から露わになってしまっている。
お湯に浸かっているので、完全には見えないが。
オウカの言葉に答えず、ミユは続ける。
「同じ事を言った人を知ってます。私の上司……だった人です」
「へえ」
「殺し屋は必要悪だって言ってました」
「うん」
それには同意する。
「だから、対象も生きる価値のない悪人だけでしたし」
「例えば?」
「人身売買している奴とか、ヤクばら撒く人とか」
「それはそうだ」
同意したオウカ。
そんな彼に少しミユは微笑んだ後、表情を暗くする。
「でも、組織で内部抗争があって、方針が変わりそうなんです」
「そうなの?」
「金さえ払えば誰でも殺すようになるかもしれません」
「……」
「そして、抜けた人がどうなるか……」
不安そうなミユにオウカはこう言う。
「だったら守ってやる」
「え」
「これでも結構強いんだ。それに一人組織壊滅はよくやったし」
「何をやっているんですか……」
呆れながらもミユの顔は少し笑っていた。
「だから、三つ目の依頼には関わらせろよ?」
「……わかりました」
「約束だ」
「はい。私の事、守ってくださいね?」
「おう」
そうして二人は指切りをした。
【後書】
(・▽・)<前半戦終了です。次から後半戦突入。
(#ー#)<分ける意味あるか?
(・▽・)<はい。というか後半は半分以上番外編に近いんですよね。
(#ー#)<?? 何で?
(・▽・)<今回の章タイトルを見ればわかるはずです。
(㈩*㈩)<という事はもしかして……?
(・▽・)<はい。サクの出番もあまりありません。主役は新世代です。