冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

125 / 182
【TIPS:プレイヤー高校の行事】
(#ー#)<ぶっちゃけ一般高校と変わらねえな。

(#ー#)<学園祭とか、学外実習とか、修学旅行とか。

(㈩*㈩)<あるんだ……。

(・▽・)<体育祭とかないのですか?

(#ー#)<あ、それはねえな。……まあ対校戦ともう一つがそれだな。

(・▽・)<もう一つって?

(#ー#)<これについてはいずれ。というかある章で本格的にやる。


百二十五

 ◇◆◇◆

 

 

 そして翌日。

 

「今日で連休は終わりか……」

 

 リビングに、愛用のビーズクッションを置いて、その上で寝そべる、オウカが呟いた。

 

「戦って終わった」

 

 テーブルに様々な道具を並べ、手入れをしている、マユがそう言った。

 

「来年、休暇。休憩、取得」

 

 機械アリ複数体に、お菓子とお茶を乗せてやって来た、ネラが言った。

 

「だと良いですね」

 

 適当にチャンネルを回しながら、テレビを見ていた、ミユが呟く。

 

 連休最終日のこの日、四人はダラダラと過ごしていた。

 因みに……

 

『暫くお世話になります』

『お世話します』

『急に決まった!?』

『唐突!?』

 

 ミユは暫くの間、オウカの家で居候となった。

 近くの方が守りやすいからだ。

 

 そんな感じで過ごしていたのだが……

 

「ん?」

 

 何か音がする。

 連続して響く、何かを叩く音。

 

「ネラ」

「了解」

 

 機械アリが索敵すると。

 

「窓側、何居」

 

 そう言うので、窓へ向かうオウカ。

 そこには折り鶴が嘴で窓をノックしていた。

 

「アシヤ先生の式神だ」

 

 窓を開け、折り鶴を掴む。中は手紙になっており、それを読んでいく。

 読み終えると、オウカは身支度を始める。

 ミユが訊ねる。

 

「どうしました?」

「学外実習で問題があったらしい」

 

 それにネラが反応して問いかけて来る。

 

「問題?」

「そういえば今日って、一年の実習最終日だった」

 

 マユが思い出したように言う。

 

「私の方は特に何もなく終わりましたけど……」

 

 ミユがそう言う。

 プレイヤー養成高校は全校おこなう学外実習。場所は様々で、時期もバラバラ。

 昴咲高校の実習はもう終わっており、平和に終わったそうだ。

 因みに、ミユの班はちゃんとクリアした。

 

「此方、去年、大変」

 

 ネラの言葉にミユが興味を示す。

 

「何があったんですか?」

「緘口、令出」

「ちょっと! そこまで言って言わないの無しですよ!」

 

 そんなネラとミユの会話を聞きながら、オウカは身支度終え、玄関に向かう。

 その前に、振り向く。

 

「ネラ!」

「言悩。……! 了解」

 

 機械アリを一匹、オウカに渡す。

 通信妨害の中でも電話をしたり、映像や音声をリアルで送る事が可能。因みに発信機付き。

 アリを懐に入れるオウカへマユが問う。

 

「わたしはどうする?」

「ここに居てくれ。ミユの事もあるし」

「わかった」

 

 そして、オウカは家を出た。

 

 彼の家から通う高校は結構近い。

 歩きながら考える。

 

(何が起こった?)

 

 手紙には――実習で問題が発生したから、その解決のために来て欲しい――とだけあった。

 詳しい事は現地で説明するとの事。

 

(またモンスターでも出て来たか?)

 

 これは余談だが、前回の反省――転移封鎖したせいで、逃げられなくなった――を踏まえ、一部に転移可能ポイントを作ったり、特殊な転移の道具を用意したらしい。

 

「でも、今回は手練れもいるだろうし……」

 

 ザンカやベニバナだけでなく、マリアまでいる。

 生半可なモンスターなら倒せると思うのだが。

 

 そんな事を考えている内に学校に到着。

 中に入り、校庭へと行くと、そこは……

 

「は?」

 

 思わず声が漏れた。

 そこは野戦病院のように怪我人が溢れていた。

 それは生徒、教師、引率者問わずに。

 

「何が起こった?」

 

 その呟きに答える声があった。

 

「襲撃があった」

「クイン」

 

 振り向くとそこには、いつものヘッドホンをしたクインがいた。

 彼女が着ている服には特大の大穴が空いており、臍が丸見えだった。

 ……何かで腹部をぶち抜かれたとした思えない。

 

「お、お前、それ……」

「ん?」

「腹、お腹、腹部」

「……もう治ったから平気」

 

 どこからどう見ても、致命傷だったようにしか見えないが、綺麗サッパリ治っている。

 つまり……

 

「……使ったのか?」

 

 オウカはクインの秘咒について知っている。だからこその問い。

 それにクインはコクリと頷く。

 

「大丈夫なのか?」

 

 それでも心配そうなオウカに、クインは軽く微笑む。

 

 そこへ……

 

「サクヅキクン〜、見っけ〜」

 

 間延び口調が響く。振り向くと、そこにはアシヤ=キョウコがいた。

 

「先生! 一体何が? 襲撃があったと聞きましたけど」

 

 オウカの問いかけに、キョウコは無表情になる。

 そして答える。

 

「マフィアが襲撃してきた」

 

 いつもの間延び口調はない。

 

「目的は?」

「人身売買」

 

 流石に絶句するオウカ。

 少しして問いかける。

 

「何考えてるんですか、そいつら」

「学外実習中ならやりやすいって思ったみたい」

 

 何でも山かけで罠を張っていたらしい。

 そして、見事に天ノ角高校が引っかかったという訳である。

 

「そして、目撃者は異常発生したモンスターに殺されたって言う体にするはずだったけど」

「手練れがいた」

 

 コクリと頷いたキョウコ。

 

「ベニバナさんとザンカさん。そしてマリアさん」

 

 三本の指を立てる。

 

「誰か欠けていたら、もっと酷かっただろうさ」

 

 

 

 ★☆★☆★

 

 

 プレイヤー養成高校の実習は毎回違う場所が選ばれる。

 昨年度の実習は、傭兵団の襲撃を受け、大惨事一歩手前となってしまった。

 死者や重傷者が出なかったのは、本当に奇跡としか言いようがない。

 

 そういう訳で前回の反省を踏まえ、策を取った。

 

 

 一つ目が転移。

 転移事故を防ぐためとは言え、全域に転移封鎖をするのはやり過ぎという事で、一部だけにして、更に転移が用意なポイントも作った。

 これで何かあっても、生徒をすぐに逃がす事が出来る。

 

 二つ目が引率。

 今回はキョウコとイオリのツートップは別件で引率出来ない。

 その代わり、腕利きを何人も雇った。特に結構高名なプレイヤーであるクロガネ=ザンカ、卒業してすぐさま頭角を出したハナヤマ=ベニバナ、アシヤ=キョウコが推薦したシスター・マリア。

 この三人がトップレベル。

 

 三つ目が事前準備。

 場所は念入りに見て周り、危険そうなモンスターは間引き、罠は潰した。

 

 

 これだけやれば安全だろう。

 そう思っていた。

 なのだが……

 

 

 ▼▽▼

 

 

 実習当日の早朝。

 誰も通らないような路地裏で、二人の人間が何かしらの取引をしていた。

 

「こ、これで借金は帳消しなんだよな……」

 

 彼が渡したのはUSBメモリ。

 それを受け取った男は、それには答えず端末にメモリを刺し、中身を見て行く。

 暫くしてから口を開く。

 

「これだけわかれば十分だ」

「じゃ、じゃあ……」

 

 顔が明るくなる男に、端末の男はにっこりと笑う。

 

「ああ。ほら」

 

 何かを投げる。

 それは……

 

「小銭?」

 

 昔の小銭だった。

 彼は知らなかったが、知っている人ならこう言った。

 六文銭と。

 

「あの世に行った時に使え」

 

 男は流れるようにナイフを出して、呆けた表情の男を始末した。

 

「さ、始めるか」

 

 そうして作業を始める。

 

 

 ………………

 …………

 ……

 

 

 暫くして……、そこには先程死んだ男が立っていた。

 足元には、服と皮を失い、筋組織むき出しの死体があった。

 

「さて、行きますか」

 

 そう言ってから、燃やした紙を死体に落とす。

 その火は死体に燃え移り、跡形もなく死体を燃やし、残ったのは僅かな燃えカスのみ。

 それを確認すると、男はその場を何食わぬ顔で立ち去った。

 

 

 ★☆★☆★ 

 

 

 幾ら対策をしようとも、情報が漏れていたり、内部に協力者がいる場合は意味がない。

 こういう時は想定外を起こさねばならない。

 オウカの友人であるメイドならこう言っただろう。

 

 

 ▼▽▼

 

 

 そうして実習は始まった。

 今回の場所は、都内にあるダンジョン。

 かなり広いうえ、危険度の高いモンスターも出ないので、実習には持ってこいという訳で選ばれた。

 

 その入り口には、生徒、教師、プレイヤーなど大勢がいる。

 そんな生徒の中に、一際目立つ存在がいた。

 背には折り畳まれた巨大斧、腰の左右と後ろには小斧を差した少女――オウジマ=レイリだった。

 

(楽しみだな〜)

 

 実は彼女は、この実習を楽しみにしていた。

 不安な人も多いが、経験者にとっては結構温い物になるからこそ。

 とはいえ……

 

(いけないいけない。油断しないようにしないと)

 

 犬のように首を横に振り、気持ちを引き締める。

 

 かつて、モンスターの転移事故で、生徒の大半が死亡する事があり、去年も大惨事一歩手前になりかけた。

 事前注意で言われ、│幼馴染《イヌコ》にも言われ、│先輩《オウカ》にも言われた。

 

「頑張ろう」

 

 そう呟いた。

 

 

 ******

 

 

 一方、クインの方はと言えば、いつもと変わらない表情と服装。

 ヘッドホンと制服姿。

 彼女の得物である、大剣二刀と鉤爪大籠手はブレスレット状の匣に入れている。一つ二つしか物を入れられない代わり、出し入れのスピードはかなり早いモノ。

 

 そんな彼女は緊張したり、楽しみにしている様子も感じられない。

 ただただいつも通り。

 

(頑張ろう)

 

 物静かにそう思っていた。

 

 

 ******

 

 

 そして、引率するプレイヤーの中に一際目立つ存在がいた。

 しかも二人。

 

 改造して胸元や太腿が剥き出しになった修道服を着た女性。

 着物袴の、大正ロマンを表したような格好をした女性。

 

 マリアとベニバナだった。

 周りの視線に気にした様子も無くおしゃべりしていた。

 

「そうですの。だから様付けで呼んでいるのですわね」

「はい。あの人がワタクシの生きる意味なので」

 

 共通の友人(オウカ)がいるので交流しようという訳だった。

 

「……ところで聞いて良いですの?」

「何ですか?」

「マリアさんはサクの事をどう思ってますの?」

 

 実はベニバナはオウカの女友達全員にそれを聞いている。

 カナタやジンナだけでなく、なんとソルドアットにも聞いた。

 そんな彼女の答えは……

 

『好きだよ。LOVEじゃなくてLIKEだけど』

 

 とのこと。

 そして、マリアの答えはと言えば。

 

「ワタクシはサク様を愛しています」

 

 ド直球な答えだった。

 更に……。

 

「請われれば、全てを差し上げます。チカラも体も」

 

 一拍置いて続ける。

 

「しかし、サク様は体は求めて来ませんけどね。これでも名器だと自負しているのですが……」

 

 この答えには流石のベニバナも驚き、思わず顔を赤らめてしまう。

 

 それにマリアは少し呆れる。

 

「……自分で言って置いて、何で赤くなっているのでしょう?」

「そこまで言うとは思ってなかったですわ!」

 

 小さく咆えるベニバナ。

 そして、コホンを咳払いして気を取り直す。

 

「それに……流石にぼかして言ったり、LIKEの方だと言うと思ったのですわ」

 

 前者はカナタ、後者はソルドアットである。

 

「まさか普通に答えるとは、思いませんでしたわ」

「そういうものですか?」

「そうですわ」

 

 ベニバナの言葉に、マリアは訊ねて来る。

 

「そう言えば、ベニバナさんはあの世界についてどれだけ知っていますか?」

「サクやソルドアットさんからある程度は聞きましたけど……」

 

 積極的に話したい事ではないのか、偶に出て来る程度。

 

「あの世界の住人は大なり小なり狂ってますから」

 

 ワタクシ含め、とマリアは微笑する。

 それにベニバナは思う。

 

(そうは思えませんですわ……)

 

 ソルドアットやマリアはそこまでではないと思う。

 前者は戦闘では止まらなくなるが、後者はそこまで狂っているようには見えない。

 それに彼女は静かに続ける。

 

「まともな人は自死するか、狂うか、堕ちるかして、災厄をまき散らすようになりますから」

 

 少し間を開けてマリアは言う。

 

「ワタクシもそうでしたし」

「……何をしたんですの?」

「沢山沢山殺しました」

 

 事もなげも答える。

 

「色々あり過ぎて、この世には救いがないと思いまして」

「そ、それは正当防衛とか、相手が外道だったのですわよね?」

 

 ベニバナの言葉に静かに首を横に振るマリア。

 

「最初はそうでした。でも……」

 

 目を伏せる。暫くしてポツリと呟く。

 

「……まあ実際コジュウロウさん? と言う方と変わりありません」

「!」

 

 大問題児であるコジュウロウの事は、オウカと交友ある面々なら全員知っている。

 全知的生命体抹殺を掲げたイカレ野郎。……野郎?

 

「衝動が止められないのです。理性より本能を優先するようになる」

 

 そう言って悲しく笑う。

 

「まあワタクシはサク様が優先事項なので、普通に見えるだけですよ」

 

 そして、マリアは黙り込んだ。

 それにベニバナも声を掛けられなくなった。




【コソコソ話】
(・▽・)<レイリさんはサクの助言で、巨大斧だけじゃなく、

(・▽・)<コンパクトな接近戦用の小斧二つと、

(・▽・)<投擲用の斧を携帯するようになりました。

(㈩*㈩)<クインは特に変わらない。

(㈩*㈩)<戦闘では、気配を消して、巨大鉤爪籠手を使うか、

(㈩*㈩)<重力操作と、大双剣で蹴散らすか、

(㈩*㈩)<■■■■を使うか。

(#ー#)<この三つ目、未だに伏せているな。バレると不味いから隠しいるんだよな。

(㈩*㈩)<うん。実はサクは見せて貰って模擬戦した。

(㈩*㈩)<この章で出るけど、ちょっとヒント出す。

(㈩*㈩)<ベニバナに近い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。