(#ー#)<≪紅露御刃亜≫の四人の幹部。その一人。
(#ー#)<実は四天王で最弱って奴。
(・▽・)<そうなんですか?
(#ー#)<キャパシティとスロットを隠密系でほとんど埋めているからな。
(#ー#)<実はもう一人、同じ斥候系の幹部がいるんだが
(#ー#)<そいつは隠密系と戦闘系で半々にしているから。
(#ー#)<直接戦闘は一番弱い。……まあ戦いは戦闘力だけじゃねえけどな。
それは大規模な爆発。
咄嗟に何かしらの防御スキルや耐性スキルを展開するも、爆発の衝撃を完全に抑えきれず、吹っ飛ぶ教師とプレイヤー。
木や岩に叩きつけられるはずだったが……
「うぐぅ」
「ぐえ!?」
何かが自分達を掴んで、引き留めた。
それは……
「大丈夫ですか?」
「マリアさん!」
マリアだった。
彼女はそこまでの怪我を負っていない。
(そう言えば……)
そして、彼女が尋問を止めていたのを思い出す。
なので聞いてみる。
「……これを予想していたんですか?」
「……薄々は」
マリアがいた所は爆弾を使う外道が結構いた。
首輪爆弾を使って人を強盗させる奴だの、人間に機雷を取り付けてテロをさせる奴だの、幼い子供の目の前で親を爆殺するだの、そんなのばっかり。
だからこそ、勘が働いたのだ。
「でも、装備に爆発物なんて……」
「手術で体内に仕込んでいたのでしょう。もしくはスキルとか魔法とかでは?」
スキルや魔法は封じていたので、おそらく体内に仕込んでいたのだろう。
「だから私は言ったんですよ……」
「すいません……」
「いえ、ワタクシも何をするか読み切れなかったのでお互い様です」
謝る教師にマリアは気にした風もなく問いかける。
「ところで気になったのですが……」
「な、なんでしょう?」
「今回の参加者で、コロシの経験者はどれくらい?」
「え……」
いきなり何を聞いているんだと思ったが、先程のように意味のない事ではないと思い、答える。
「プレイヤー数人くらいです」
コロシを嫌う人は少なくない。
「生徒は?」
「流石にほぼいないかと……」
……実はいる。それでも恐らく片手の指で数えきれる程度だろう。
それにマリアの顔が曇る。
「……不味いですね」
「……何がでしょう?」
教師の疑問にマリアは答える。
「今回は不殺だと、今みたいになりますよ」
「……」
何も言えなくなる教師だった。
とは言え、これ以上は人員を割けない。
どうするかと思いを巡らしていると。
「祈りましょう。今はそれだけです」
マリアが、シスターがこう言う。
そして、手を合わせて祈り始める。
やはり様になっている。
「……」
なのでこの場の一同真似をして祈り始めた。
そうしていると、どうにか避難した生徒達がやって来たので、それの対応に当たり始めた。
******
時間は戻る。
ザンカは救出要請があった所へ向かっていた。
「やっぱり足何か必要っすかね……」
未だに自分の足で移動なので、そう思った次第であった。
候補としてはやはり移動用モンスター、召喚獣・式神、特殊機械だろうか?
(まあ、金はあるっすしね)
そこまで金使いは荒くないので、結構溜まっている。
なので、買う分には問題ないが、問題はその後。
(色々大変なんすよね~)
モンスター然り、機械然り購入して終わりではない。
世話なり、メンテナンスがいるのである。
(そうだ。イムロンに相談してみるっすか)
最近出会った鬼の鍛冶師。
彼なら何か良い方法を知っているかもしれない。
因みに彼、金属を扱う鍛冶師なのだが、それ以外も色々応用が効くとの事。
考え事をしている内に目的地に到着。
そこには半円の結界を壊そうとしている熊型のモンスターがいる。
結界の中には四人の生徒。
(色々持たせて置いて良かったっすね)
生徒達が使っているのは簡易結界。
発動すれば、生半可な攻撃は寄せ付けない。
前回の反省を踏まえ、各班こういった│使い捨て《インスタント》を持たせている。
「何か嫌な予感するっすから、一気に決めるっす」
ザンカは自らのパワーで一気に踏み込む。
それと同時、愛刀を引き抜き……
「ハア!」
モンスターへ叩きつけた。
結果、斬られ、吹っ飛び、絶命するモンスター。
「ふぅ」
そして、生徒達に微笑む。
「もう大丈夫っすよ」
その雰囲気に生徒達が安心し、結界を解除しようとしたが……
「待つっす」
止めるザンカ。
そして、斜め後ろを見て声を掛ける。
「誰っすか?」
反応はない。
なので……
「それなら意地でも出てきて貰うっす」
大剣を掲げ振り下ろす。
そこから斬撃と衝撃波が放たれる。
巨岩すら真っ二つにするであろう一撃。
だがそれは、そこにいた人物の拳で弾かれる。
「危ないな……」
拳法家のような姿の男。ただ顔にはサングラスを付けている。
それにザンカが問い掛ける。
「誰っすか? 実習関係者……じゃなさそうっすね」
男は答える。
「我はミナミダ。≪紅露御刃亜≫の幹部」
それに眉を吊り上げるザンカ。
(なんでここにいるかは聞くまでもないっす)
大剣を構える。
(ろくでもない用事に決まってるっすね)
ならばやる事は簡単。
「じゃあ死んでくれっす」
問答無用でザンカは襲い掛かった。
最初から全力全開。
ザンカは摩擦操作で一気に間合いを詰め、大剣を振るう。
生半可な相手なら真っ二つになる一撃。
その一撃をミナミダは――避けた。
「(受け止めてたら終わってたっすのに)……」
ザンカは避けられたことに動じた様子もない。
そのまま返す刀でもう一撃見舞う。
「ふむ……」
またしても避けられる。
それどころかカウンターで拳をねじ込んで来た。
それはザンカの顔面に直撃……したが、滑る。
「!」
少し驚いたような表情を見せたミナミダ。
その隙にザンカは大剣を繰り出す。
(これなら避けるのは無理っす)
完璧なタイミング。
だったのだが……。
「!」
突如不自然なタイミング――相手に当たる前に減速し、大剣は止まってしまった。
それに一旦下がり、間合いを開けるザンカ。
「……」
「……」
「「……」」
両者間合いを開けたまま、無言で睨み合う。
そして――先に口を開いたのはミナミダ。
「なるほど。冥刀か」
「……」
沈黙で返すザンカ。
それに気にした様子もなく、彼は続ける。
「今の感触からすると……摩擦を操作できるのか」
「そっすよ」
今度は素直に答えるザンカ。
補足までする。
「アタシの【ウルナッハ】は摩擦を操れるっす」
「そうか」
納得したようなミナミダにザンカは聞く。
「こっちも聞かせて貰って良いっすか?」
「何だ?」
「そっちはクロスっすか?」
その問いかけにミナミダは頷く。
「そうだ」
ご丁寧に掛けているサングラスを外す。
その眼は黒白反転している。十字の色は――赤。
「今の感覚からすると……運動エネルギーっすか?」
自身の一撃が不自然に弱くなり、止まった。
そこからの推測。
ザンカは馬鹿ではない。戦闘での思考や知能は優れている。
その問いにミナミダは答える。
「《レッドクロス〔運動エネルギー〕》。それが我が手に入れたチカラだ」
何かしらの操作を能力とした、レッドクロスは実に幅広い。
炎、氷、雷のような自然物から、振動、時間、磁力などの物理現象まで対象内。
物質になるとホワイトクロスの領分に入るが、微妙な物もある。
閑話休題。
素直に明かした事にザンカは意外そうな顔になる。
とりあえず礼を言っておく。
「……ご丁寧にどうもっす」
「そちらは答えたからな。その礼だ」
会話を終える。
そして――再び激突した!
ザンカが先程と同じように。間合いを潰しにかかる。
それにミナミダは拳を突き出し対抗。腕の距離では届かないはずなのだが……。
(衝撃波でも飛ばすっすかね)
答えは違った。
腕が伸びた。
手首、肘、肩の関節を外して、腕のリーチを伸ばしたのだ。
「!」
想定外だが、何かしらやってくる事はわかっていた。
なので、その拳を避ける。
そこへもう片方の腕が伸びて飛んで来る。
「――ル〇ィっすか!?」
「小〇蝋斎だ」
「バ〇リスク読んでるっすか!」
言葉の応酬を繰り広げながら、技も応酬する二人。
伸縮自在に襲い掛かる手足を、ザンカは摩擦操作と自身の身体能力で防いでいく。
だが……
(近づけねーっす……)
ミナミダの伸びる手足。その速さと密度の連撃せいで、ザンカは自身の距離に持ち込めない。
(こっちの遠距離技は溜めが必要っすのに……)
ザンカは完全接近戦主体である。中距離・遠距離技もあるにはあるが、今は出せる状況ではない。
ダメージはないが、一方的に攻撃される状況。
(……このままじゃ不味いっすね……)
このままなのは性に合わない。
それに相手は一流の拳士。
摩擦防御に何かしら対策を打って来る可能性がある。
ならば……
「ゴリ押すっす」
ザンカはクロスを発動。
眼の白黒が反転し、十字の紋章が現れる。色は
自身のクロス――《ヴァイオレットクロス〔ステロイド〕》でパワーを引き上げ、片手で伸びる腕を弾き、そのまま地面を踏み砕きながら、間合いを詰める。
「!」
「っす!」
そして全力の一撃を繰り出す。
その一撃に――ナミダは大きく飛び退いた。
「……」
「……」
「「……」」
双方再び沈黙する。
今までの攻防について思考する。
(今の攻撃を飛び退いた……という事は許容限界があるっすね)
(クロスのチカラは人工物のパワー強化。ドーピング系か……。だったら長時間は持たないな)
奇しくも両者同じ事を考えている。
(つまり大技で一気に叩き潰せばいいっす)
(長期戦に持ち込めば、こちらが有利)
(アレなら運動エネルギー吸収だろうが、なんだろうが無視できるっす)
(十分溜まったから、そろそろ使うか……)
それは勝利への道筋。
なのだが、考える事は真逆。
ザンカは超短期決戦、ミナミダは長時間戦闘だった。
お互い睨み合う中、動いたのは――ミナミダ。
衝撃波が砲弾のように連打される。
「……!」
ザンカはそれを走りながら避ける。
居た場所に着弾したそれが爆発を起こす。
「何でもありっすか!?」
叫びながら思考する。
(アレは運動エネルギーを吸収して色々使えるっすね)
今までは推進力を奪う事しかしてこなかった。
では、奪った物はどうしていたのか?
蓄積して、衝撃波を撃つのに使っている。
(アタシの勘が正しければ……引き出しがまだあるっす)
そんな事を思っていると、ミナミダが衝撃波を撃ちながら、こちらに間合いを詰めて来た。
運動エネルギーを移動に回したそれは、先程よりも速い。
「!」
「憤!」
放たれた掌底。
それをザンカは――避けた。
(嫌な予感がするっす)
それでも完全には避けられず、掠る。
そして、勘が正しい事が証明される。
「グフ!?」
ザンカの体内に衝撃が走る。
どうにか、思いっきり飛び退き、自身の状況を確認する。
動きに支障はないが、ダメージは結構ある。
(直撃したら、不味かったっす)
ミナミダは遂にダメージを通る打撃を見つけたのだ。
(このまま押されたら負けるっす……)
ザンカはそれに決意する。
「【ウルナッハ】。迷惑かけるっす」
大剣が震えた。
そして、ザンカは地面を踏みしめ、大剣を何もない空間に突き刺す。
「!」
それにミナミダは悟る。
アレは不味い。かなり不味い。
「させるか!」
攻撃連打。
衝撃波と、伸びる手足の打撃を叩き込む。
それをザンカは無視。
ダメージを意に介さず、大剣を押し切るような動作をしていく。
刃先の空間が歪み始める。
「いい加減止めろ!」
ミナミダは距離を詰め、直接殴りに行く。
だが、それすらもザンカは意に介さない。
そして。
「アアアアアア!」
「っ!」
ザンカが絶叫する。
それと同時に大規模空間破壊が発生。
間近にいたミナミダはそれに巻き込まれた。
……
…………
………………
そして、空間が戻る。
辺り一面ズタボロな中、ザンカだけがそこにいた。
彼女は勝利したのだ。
だが……。
「ここまでっすか」
限界を迎え倒れた。
かなりのダメージを貰っていたうえ、今の攻撃の反動で遂に限界を迎えたのだ。
(アタシ、死ぬっすかね)
そんな事を思っていると。
「おい! いたぞ!」
「嫌な予感がして戻って良かったな……」
「ポーションありったけ出せ!」
人が来た。
それは自分が助けた生徒達。
戦いが過激化する際に逃がしていたのが戻って来たのだ。
抱き起こされながら、ザンカは少しだけ笑った。
【TIPS:ミナミダ】
(#ー#)<≪紅露御刃亜≫の四人の幹部。その一人。
(#ー#)<四天王でのツートップ。力の方。
(㈩*㈩)<じゃあもう一人は技?
(#ー#)<まあな。そいつについては追々。今はコイツ。
(#ー#)<クルセイダーで運動エネルギーの収奪が可能。
(#ー#)<推進力を奪ったり、自分の攻撃の威力を上げたりなど、
(#ー#)<応用も滅茶苦茶効く。実はかなり紙一重の勝利だった。