冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【TIPS:イツカワ=タクマ】
(#ー#)<≪紅露御刃亜≫の四人の幹部。その一人。

(#ー#)<実は四天王で最弱って奴。

(・▽・)<そうなんですか?

(#ー#)<キャパシティとスロットを隠密系でほとんど埋めているからな。

(#ー#)<実はもう一人、同じ斥候系の幹部がいるんだが

(#ー#)<そいつは隠密系と戦闘系で半々にしているから。

(#ー#)<直接戦闘は一番弱い。……まあ戦いは戦闘力だけじゃねえけどな。


百二十八

 それは大規模な爆発。

 咄嗟に何かしらの防御スキルや耐性スキルを展開するも、爆発の衝撃を完全に抑えきれず、吹っ飛ぶ教師とプレイヤー。

 木や岩に叩きつけられるはずだったが……

 

「うぐぅ」

「ぐえ!?」

 

 何かが自分達を掴んで、引き留めた。

 それは……

 

「大丈夫ですか?」

「マリアさん!」

 

 マリアだった。

 彼女はそこまでの怪我を負っていない。

 

(そう言えば……)

 

 そして、彼女が尋問を止めていたのを思い出す。

 なので聞いてみる。

 

「……これを予想していたんですか?」

「……薄々は」

 

 マリアがいた所は爆弾を使う外道が結構いた。

 首輪爆弾を使って人を強盗させる奴だの、人間に機雷を取り付けてテロをさせる奴だの、幼い子供の目の前で親を爆殺するだの、そんなのばっかり。

 

 だからこそ、勘が働いたのだ。

 

「でも、装備に爆発物なんて……」

「手術で体内に仕込んでいたのでしょう。もしくはスキルとか魔法とかでは?」

 

 スキルや魔法は封じていたので、おそらく体内に仕込んでいたのだろう。

 

「だから私は言ったんですよ……」

「すいません……」

「いえ、ワタクシも何をするか読み切れなかったのでお互い様です」

 

 謝る教師にマリアは気にした風もなく問いかける。

 

「ところで気になったのですが……」

「な、なんでしょう?」

「今回の参加者で、コロシの経験者はどれくらい?」

「え……」

 

 いきなり何を聞いているんだと思ったが、先程のように意味のない事ではないと思い、答える。

 

「プレイヤー数人くらいです」

 

 コロシを嫌う人は少なくない。

 

「生徒は?」

「流石にほぼいないかと……」

 

 ……実はいる。それでも恐らく片手の指で数えきれる程度だろう。

 それにマリアの顔が曇る。

 

「……不味いですね」

「……何がでしょう?」

 

 教師の疑問にマリアは答える。

 

「今回は不殺だと、今みたいになりますよ」

「……」

 

 何も言えなくなる教師だった。

 とは言え、これ以上は人員を割けない。

 どうするかと思いを巡らしていると。

 

「祈りましょう。今はそれだけです」

 

 マリアが、シスターがこう言う。

 そして、手を合わせて祈り始める。

 やはり様になっている。

 

「……」

 

 なのでこの場の一同真似をして祈り始めた。

 

 そうしていると、どうにか避難した生徒達がやって来たので、それの対応に当たり始めた。

 

 

 ******

 

 

 時間は戻る。

 ザンカは救出要請があった所へ向かっていた。

 

「やっぱり足何か必要っすかね……」

 

 未だに自分の足で移動なので、そう思った次第であった。

 候補としてはやはり移動用モンスター、召喚獣・式神、特殊機械だろうか?

 

(まあ、金はあるっすしね)

 

 そこまで金使いは荒くないので、結構溜まっている。

 なので、買う分には問題ないが、問題はその後。

 

(色々大変なんすよね~)

 

 モンスター然り、機械然り購入して終わりではない。

 世話なり、メンテナンスがいるのである。

 

(そうだ。イムロンに相談してみるっすか)

 

 最近出会った鬼の鍛冶師。

 彼なら何か良い方法を知っているかもしれない。

 因みに彼、金属を扱う鍛冶師なのだが、それ以外も色々応用が効くとの事。

 

 考え事をしている内に目的地に到着。

 そこには半円の結界を壊そうとしている熊型のモンスターがいる。

 結界の中には四人の生徒。

 

(色々持たせて置いて良かったっすね)

 

 生徒達が使っているのは簡易結界。

 発動すれば、生半可な攻撃は寄せ付けない。

 前回の反省を踏まえ、各班こういった│使い捨て《インスタント》を持たせている。

 

「何か嫌な予感するっすから、一気に決めるっす」

 

 ザンカは自らのパワーで一気に踏み込む。

 それと同時、愛刀を引き抜き……

 

「ハア!」

 

 モンスターへ叩きつけた。

 結果、斬られ、吹っ飛び、絶命するモンスター。

 

「ふぅ」

 

 そして、生徒達に微笑む。

 

「もう大丈夫っすよ」

 

 その雰囲気に生徒達が安心し、結界を解除しようとしたが……

 

「待つっす」

 

 止めるザンカ。

 そして、斜め後ろを見て声を掛ける。

 

「誰っすか?」

 

 反応はない。

 なので……

 

「それなら意地でも出てきて貰うっす」

 

 大剣を掲げ振り下ろす。

 そこから斬撃と衝撃波が放たれる。

 巨岩すら真っ二つにするであろう一撃。

 だがそれは、そこにいた人物の拳で弾かれる。

 

「危ないな……」

 

 拳法家のような姿の男。ただ顔にはサングラスを付けている。

 それにザンカが問い掛ける。

 

「誰っすか? 実習関係者……じゃなさそうっすね」

 

 男は答える。

 

「我はミナミダ。≪紅露御刃亜≫の幹部」

 

 それに眉を吊り上げるザンカ。

 

(なんでここにいるかは聞くまでもないっす)

 

 大剣を構える。

 

(ろくでもない用事に決まってるっすね)

 

 ならばやる事は簡単。

 

「じゃあ死んでくれっす」

 

 問答無用でザンカは襲い掛かった。

 最初から全力全開。

 ザンカは摩擦操作で一気に間合いを詰め、大剣を振るう。

 生半可な相手なら真っ二つになる一撃。

 その一撃をミナミダは――避けた。

 

「(受け止めてたら終わってたっすのに)……」

 

 ザンカは避けられたことに動じた様子もない。

 そのまま返す刀でもう一撃見舞う。

 

「ふむ……」

 

 またしても避けられる。

 それどころかカウンターで拳をねじ込んで来た。

 それはザンカの顔面に直撃……したが、滑る。

 

「!」

 

 少し驚いたような表情を見せたミナミダ。

 その隙にザンカは大剣を繰り出す。

 

(これなら避けるのは無理っす)

 

 完璧なタイミング。

 だったのだが……。

 

「!」

 

 突如不自然なタイミング――相手に当たる前に減速し、大剣は止まってしまった。

 それに一旦下がり、間合いを開けるザンカ。

 

「……」

「……」

「「……」」

 

 両者間合いを開けたまま、無言で睨み合う。

 そして――先に口を開いたのはミナミダ。

 

「なるほど。冥刀か」

「……」

 

 沈黙で返すザンカ。

 それに気にした様子もなく、彼は続ける。

 

「今の感触からすると……摩擦を操作できるのか」

「そっすよ」

 

 今度は素直に答えるザンカ。

 補足までする。

 

「アタシの【ウルナッハ】は摩擦を操れるっす」

「そうか」

 

 納得したようなミナミダにザンカは聞く。

 

「こっちも聞かせて貰って良いっすか?」

「何だ?」

「そっちはクロスっすか?」

 

 その問いかけにミナミダは頷く。

 

「そうだ」

 

 ご丁寧に掛けているサングラスを外す。

 その眼は黒白反転している。十字の色は――赤。

 

「今の感覚からすると……運動エネルギーっすか?」

 

 自身の一撃が不自然に弱くなり、止まった。

 そこからの推測。

 ザンカは馬鹿ではない。戦闘での思考や知能は優れている。

 

 その問いにミナミダは答える。

 

「《レッドクロス〔運動エネルギー〕》。それが我が手に入れたチカラだ」

 

 何かしらの操作を能力とした、レッドクロスは実に幅広い。

 炎、氷、雷のような自然物から、振動、時間、磁力などの物理現象まで対象内。

 物質になるとホワイトクロスの領分に入るが、微妙な物もある。

 

 閑話休題。

 

 素直に明かした事にザンカは意外そうな顔になる。

 とりあえず礼を言っておく。

 

「……ご丁寧にどうもっす」

「そちらは答えたからな。その礼だ」

 

 会話を終える。

 そして――再び激突した!

 

 ザンカが先程と同じように。間合いを潰しにかかる。

 それにミナミダは拳を突き出し対抗。腕の距離では届かないはずなのだが……。

 

(衝撃波でも飛ばすっすかね)

 

 答えは違った。

 腕が伸びた。

 手首、肘、肩の関節を外して、腕のリーチを伸ばしたのだ。

 

「!」

 

 想定外だが、何かしらやってくる事はわかっていた。

 なので、その拳を避ける。

 そこへもう片方の腕が伸びて飛んで来る。

 

「――ル〇ィっすか!?」

「小〇蝋斎だ」

「バ〇リスク読んでるっすか!」

 

 言葉の応酬を繰り広げながら、技も応酬する二人。

 伸縮自在に襲い掛かる手足を、ザンカは摩擦操作と自身の身体能力で防いでいく。

 だが……

 

(近づけねーっす……)

 

 ミナミダの伸びる手足。その速さと密度の連撃せいで、ザンカは自身の距離に持ち込めない。

 

(こっちの遠距離技は溜めが必要っすのに……)

 

 ザンカは完全接近戦主体である。中距離・遠距離技もあるにはあるが、今は出せる状況ではない。

 ダメージはないが、一方的に攻撃される状況。

 

(……このままじゃ不味いっすね……)

 

 このままなのは性に合わない。

 それに相手は一流の拳士。

 摩擦防御に何かしら対策を打って来る可能性がある。

 

 ならば……

 

「ゴリ押すっす」

 

 ザンカはクロスを発動。

 眼の白黒が反転し、十字の紋章が現れる。色は青紫(ヴァイオレット)

 自身のクロス――《ヴァイオレットクロス〔ステロイド〕》でパワーを引き上げ、片手で伸びる腕を弾き、そのまま地面を踏み砕きながら、間合いを詰める。

 

「!」

「っす!」

 

 そして全力の一撃を繰り出す。

 その一撃に――ナミダは大きく飛び退いた。

 

「……」

「……」

「「……」」

 

 双方再び沈黙する。

 今までの攻防について思考する。

 

(今の攻撃を飛び退いた……という事は許容限界があるっすね)

(クロスのチカラは人工物のパワー強化。ドーピング系か……。だったら長時間は持たないな)

 

 奇しくも両者同じ事を考えている。

 

(つまり大技で一気に叩き潰せばいいっす)

(長期戦に持ち込めば、こちらが有利)

(アレなら運動エネルギー吸収だろうが、なんだろうが無視できるっす)

(十分溜まったから、そろそろ使うか……)

 

 それは勝利への道筋。

 なのだが、考える事は真逆。

 ザンカは超短期決戦、ミナミダは長時間戦闘だった。

 

 お互い睨み合う中、動いたのは――ミナミダ。

 衝撃波が砲弾のように連打される。

 

「……!」

 

 ザンカはそれを走りながら避ける。

 居た場所に着弾したそれが爆発を起こす。

 

「何でもありっすか!?」

 

 叫びながら思考する。

 

(アレは運動エネルギーを吸収して色々使えるっすね)

 

 今までは推進力を奪う事しかしてこなかった。

 では、奪った物はどうしていたのか?

 蓄積して、衝撃波を撃つのに使っている。

 

(アタシの勘が正しければ……引き出しがまだあるっす)

 

 そんな事を思っていると、ミナミダが衝撃波を撃ちながら、こちらに間合いを詰めて来た。

 運動エネルギーを移動に回したそれは、先程よりも速い。

 

「!」

「憤!」

 

 放たれた掌底。

 それをザンカは――避けた。

 

(嫌な予感がするっす)

 

 それでも完全には避けられず、掠る。

 そして、勘が正しい事が証明される。

 

「グフ!?」

 

 ザンカの体内に衝撃が走る。

 どうにか、思いっきり飛び退き、自身の状況を確認する。

 動きに支障はないが、ダメージは結構ある。

 

(直撃したら、不味かったっす)

 

 ミナミダは遂にダメージを通る打撃を見つけたのだ。

 

(このまま押されたら負けるっす……)

 

 ザンカはそれに決意する。

 

「【ウルナッハ】。迷惑かけるっす」

 

 大剣が震えた。

 

 そして、ザンカは地面を踏みしめ、大剣を何もない空間に突き刺す。

 

「!」

 

 それにミナミダは悟る。

 アレは不味い。かなり不味い。

 

「させるか!」

 

 攻撃連打。

 衝撃波と、伸びる手足の打撃を叩き込む。

 それをザンカは無視。

 ダメージを意に介さず、大剣を押し切るような動作をしていく。

 刃先の空間が歪み始める。

 

「いい加減止めろ!」

 

 ミナミダは距離を詰め、直接殴りに行く。

 だが、それすらもザンカは意に介さない。

 そして。

 

「アアアアアア!」

「っ!」

 

 ザンカが絶叫する。

 それと同時に大規模空間破壊が発生。

 間近にいたミナミダはそれに巻き込まれた。

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 そして、空間が戻る。

 辺り一面ズタボロな中、ザンカだけがそこにいた。

 彼女は勝利したのだ。

 だが……。

 

「ここまでっすか」

 

 限界を迎え倒れた。

 かなりのダメージを貰っていたうえ、今の攻撃の反動で遂に限界を迎えたのだ。

 

(アタシ、死ぬっすかね)

 

 そんな事を思っていると。

 

「おい! いたぞ!」

「嫌な予感がして戻って良かったな……」

「ポーションありったけ出せ!」

 

 人が来た。

 それは自分が助けた生徒達。

 戦いが過激化する際に逃がしていたのが戻って来たのだ。

 抱き起こされながら、ザンカは少しだけ笑った。




【TIPS:ミナミダ】
(#ー#)<≪紅露御刃亜≫の四人の幹部。その一人。

(#ー#)<四天王でのツートップ。力の方。

(㈩*㈩)<じゃあもう一人は技?

(#ー#)<まあな。そいつについては追々。今はコイツ。

(#ー#)<クルセイダーで運動エネルギーの収奪が可能。

(#ー#)<推進力を奪ったり、自分の攻撃の威力を上げたりなど、

(#ー#)<応用も滅茶苦茶効く。実はかなり紙一重の勝利だった。
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