(#ー#)<クロスだから人によりけり。
(#ー#)<コイツの場合、創り出したカードに生物を閉じ込められる。
(#ー#)<能力と相性がマジで良かった。
(#ー#)<因みに、アイツが死んだら消滅するんだが……
(#ー#)<特殊な作り方をしたモノは消えない。
(#ー#)<それどころか檻のように使える。
■□■□
天ノ角高校から少し離れた所に喫茶店がある。
その店内のレイアウトは少し変わっており、卓が一人二人用しかない。
そして、大型観葉植物や仕切りで個人スペースが守られている。
だからこそ、一人でティータイムを楽しむ場所として重宝されている。
だからこそ、席はほぼ埋まっている。
その中に、一人の人物がいた。
全身黒づくめの恰好をしており、室内であるのに、帽子と手袋を外していない。……まあ今の時代変わった恰好が多いのだが。
彼は先程来て、コーヒーとシベリアを注文した所だった。
品物が来るのを待つ間、考え事をしていた。
(依頼は順調……)
端末に目を通す。
(死者は……想定内より少ないですね……)
指でこめかみを揉む。
(そんなに生き残りたいのですかね)
そんな事を思っていると、円筒型のロボが注文の品を持って来た。
それを受け取り、シベリアを食べ、コーヒーを飲みながら考える。
(そして、問題は彼女)
自身の同僚だった女性の顔を思い起こす。
(一番面倒で厄介な依頼を押し付けたのに、全部達成するとは……)
報告を受けた時は驚いた。
(こんな事になるんだったら、助っ人禁止にしておくべきでしたか?)
そう思ったが、後の祭り。
それに加え……
(その助っ人のせいで彼女に接触出来ませんし……)
あの依頼から、彼女は自宅に帰らず、その助っ人の家に居候するようになっていた。
しかも、彼女は単独行動を取らなくなり、誰かと一緒にいるようになっている。
更に、あちらこちらに機械アリを設置して、護衛、索敵までおこなっている。
(完全に警戒されてますね)
溜息を吐いてコーヒーを飲む。
「どうしましょうかね」
男は――
「まあ、今は小休止」
そして、残りを食べ終える。
ふと、視線をテレビに移す。
その映像を見て……
「そうだ!」
ある事を思いついた。
そして、それを実行するため、彼は店を出た。
勿論代金は払った。……かなり余分に。
◇◆◇◆
学外実習が終わって数日後。
その日、オウカは帰りが少し遅くなった。
「ただいま~」
いつもなら居る人の返事があるのだが、聞こえない。
「?」
気配はあるのでいるはず。
オウカは不審に思いながら、リビングに行くと、そこには同居人と護衛対象がいた。
「……」
「……」
「……」
「「……」」
三人は沈黙して、卓の中央にある手紙を見ていた。
そんな三人にオウカはとりあえず……
「ただいま。どうした?」
再び挨拶、そして疑問をぶつけた。
それに答えたのはマユ。
「おかえり」
「おう。で?」
「……。面倒事がやって来た」
「面倒? もしかして……」
目線をマユから移す。
すると、移された張本人が口を開く。
「……わたしの件」
嫌そうに言ったのはミユ。
それは彼女が組織から、円満に抜けるために出される三つの依頼。
今の所、二つまでクリアしている。
つまりは三つ目が出たと言う事。
それにオウカは卓にある手紙を指さす。
「読んでも?」
「「……」」
誰も答えないが、沈黙の肯定と受け取り、読み始める。
暫くして読み終える。
「……」
オウカもまた沈黙してしまう。
手紙の内容は殺しの依頼。
ただし、ターゲットが指定されていない。
場所、日付、時間の指定があり、そこで指示するとの事。
そして、場所は……
「豪華客船ね……」
ご丁寧にチケットまで同封されている。
ただし一人分。
「一人で来いとまで書いてある……」
「完全、罠嵌」
卓の上のネラが機械アリの姿で、器用に肩を竦める。
「……で?」
オウカはミユを見る。
「どうするの?」
「……」
無言のミユ。
暫くして言葉を絞り出す。
「どうするも何も……」
「何も?」
「行くしかないです」
嫌そうに言う。
本当に嫌そう。
それにオウカは続けて問いかける。
「それで? 俺らは?」
「付いてきて欲しいですけど……」
その先が言えない。
完全に相手側に警戒されている。
だが、それにオウカは少し笑う。
「大丈夫」
「え……」
「潜入は得意だ。それに……」
マユとネラに視線を移す。
「一匹と一つならセーフだろ?」
「? ……あ」
ミユも理解した。
彼女もマユとネラを見た。
だが……。
「他の人にくっつくのはちょっと……」
「右同」
あんまり良い顔をしない。
冥刀は使い手が死ぬまで契約者を変えないのだから、当然と言えば当然。
とは言え、今回は流石に主義を曲げて貰わなければならない。
なので、どうにか説得し。
「はあ……。わかった。今回は仕方ない」
「不承、不承」
どうにか納得して貰う。
「さて……じゃあ打ち合わせだ」
そう言ってニヤリと笑うオウカ。
「全部都合よく行くと思っている馬鹿共を」
一拍置く。そして
「地獄へ落とすぞ」
宣言した。
■□■□
そして当日。
ミユの姿は客船内にあった。
「見た所……普通の客船ですね」
その言葉に答える声があった。
[奇妙。人少、船大]
念話で話すのはネラ。
ブローチに化けている。
これくらいの擬態なら朝飯前である。
[AIとかあるんだから、それが当然なんじゃないの?]
同じように念話で訊ねるのはネラ。
今はミユの頭にくっついている。
異世界出身である彼女の問いに、ネラは念話で回答する。
[大船、用意、必要、無筈。小船、平気]
[……確かに]
[それもそうですね]
ミユも念話で頷く。
因みに、この念話はマユが持っている機能で、話す人物にもそれをさせる事が可能で、その気になればグループチャットみたいな事まで可能。
[後気、事他]
[何です?]
[
[言われてみれば……]
今いる所を見渡してもカメラだらけ。
そのせいで、いつもならこういう時に、機械アリを偵察に放つネラですら諦めた程。
[現在、不動]
[今はおとなしくしよう]
[それがいいですね]
そんな会話を念話でしながら、ふとミユは思い出す。
それは行く前にオウカに言われた言葉。
『ミユ』
『何です?』
『もしもの時は……すぐに逃げろ』
『え』
『三十六計逃げるにしかずだ』
そして、カードを渡される。
『これは?』
『友人から貰ったモンスターが入ったカード。飛んで逃げろ』
因みにコレはクインが幾つか作ってオウカに渡した。
召喚した人の指示に従うとの事。
『良いんですか? こんな貴重な物……』
『あまり貴重じゃないから。素材さえあれば作れるらしい』
オウカの顔を思い出しながら、ミユは懐からカードを出す。
(友人さんにも感謝しないと。帰ったらお礼言おうかな)
そう心の中で呟いた。
………………
…………
……
そして、指定された場所に付く。
「ここですね」
[……本当?]
ネラが奇妙に思うのも無理はない。
そこは客船内の客室の前。
[ここに
[ですかね……]
マユの考えに同意して扉を開ける。
ところがそこは……
「?」
何もない。誰もいない。
ただの空室に見える。
[如何?]
ネラも首を捻る。
[とりあえず入ってみます]
そうしてミユが部屋に踏み込んで少し歩いた時だった。
足元に魔法陣が展開される!
「!?」
[しまった!? 転移陣!?]
マユが慌てて叫ぶが遅かった。
彼女らの姿は部屋から消えた。
★☆★☆★
転移と一口に言っても色々な種類が存在する。
そして、その乗り心地(?)ならぬ飛び心地、転移心地も様々。
地脈を利用した転移は、距離を縮めるようなもの。
地面に接していないと使えないうえ、移動出来る場所にも制限がある。
……まあ、使い手がかなり少ないため、利用する機会は少ない。
空間を切り裂き、繋げるという方法もある。
一番負担が少ない方法ではあるが、使える人はほぼいない。
因みに、主人公やマユが使うのはこれ。
装置や呪符で使われるのが、空間を飛び越える方式。
こちらは、船酔いしやすい人は酔う傾向にある。
一番よく使われてはいる方法である。
そして、今回の魔法陣に仕込んであった転移は、当然の如く三番目だった。
■□■□
浮遊感と、地震のように揺れる感覚が終わると、そこは広い空間だった。
「ここは?」
当たりを見渡しながら、ミユは同行者に念話で呼びかける。
[ネラさん! マユさん! いますか?]
その言葉に答える声がある。
[いるよ]
[健在]
バレないよう念話である。
それにほっとするミユ。
そして、少し心が落ち着くと、辺りに人が居る事に気づく。
[結構いますね]
[人数、十人、程度]
[佇まいから見ても、カタギじゃない。全員戦闘者]
ネラとマユの分析に、ミユは考える。
(どういう事? 一体何をさせる気なの?)
そんな事を思っていると、話しかけて来る人物がいる。
「ちょ~っと、い~かい? お嬢さん」
少し独特な口調。
振り向くと、そこにいたのは一人の男性。
金髪に赤いシャツを着た軽薄そうな雰囲気をしている。
だが、ミユ達にはわかる。
この男ただものではない。
とは言え……
「なんでしょう?」
今は情報が欲しい所なので、彼女は答える事にする。
「アンタも転移でここへ?」
「ええ。客室に入ったら」
「オレと同じか~」
金髪は顎に手をやり、何かを考えていたが、訊ねる事にする。
「ひょっとして……、アンタも組織抜けた?」
「……ええ。そっちも?」
「ああ」
曰く、この金髪は過酷な紛争地域で、傭兵として五年戦い、その後、一報入れてから抜けたそうだ。
「何も言われてなかったし、追手とかもなかったから、不問だと思ったんだけどな~」
「流石に返事聞かないのは、不味いんじゃない?」
ミユがそう言う。
それに男は苦笑いした。
そうして組織を抜けたからは気ままに生きていたのだが……
「そうしたらアイツが接触して来たんだ」
「……もしかして
ミユの言葉にマユを吊り上げる金髪。
「そっちもか?」
「ええ。そしたら内部抗争で上司だった人が死んだって」
「……で?」
「殺されるか、依頼を受けるかで……」
「何から何まで同じだな。ところでそっちの上司は?」
言うか迷ったが、言う事にするミユ。
「……
「見事に穏健派だな。こっちは
それは幹部の一人。
ミユも何度かあった事はある。
(確か……中立的な人だっけ?)
内部抗争で大半が死んだと聞いたが、まさか……
「穏健派と中立派ばかりが死んだ……?」
思わず口に出てしまう。
すると、周りで聞いて来たらしい面々もこちらに加わって来る。
「
「……そっちはど~うなんだ?」
「こっちの上司は
「
「「私達は
「
複数の言葉にマユが記憶を掘り起こす。
[アレ? 幹部って確か七人だったよね?]
[其筈。大半、死亡。……一人、残存]
ネラがまとめる。
それに他の面々も考えに至る。
「……つまり生き残った幹部は~、
「「……」」
金髪が代表して言葉を絞り出した。
それに一同沈黙。
全員の顔は苦々しいものになっている。
それにその人物を知らないマユとネラが訊ねる。
[其人、何方?]
[どんな人なの?]
マユとネラの疑問。
ミユはそれに暫く沈黙していたが、重々しい口を開く。
[……凄い過激派]
組織の幹部達はそれぞれ傾向がある。
依頼の内容、部下の扱い、失敗時にどうするか。
例えば、ミユの上司であった
他の穏健派・中立派も似たような感じなのだが、内部抗争で生き残った幹部である
まず依頼。誰からでも受ける。
だからこそ、逆恨みによる依頼も受けるため、善人がかなり犠牲になっている。
ただ、部下の扱いは悪くない。報酬も弾む。
だが、仕事は選ばせず、失敗には容赦しない。一回でも失敗したら死あるのみ。
この姿勢から、他の幹部からは非難される事が多かった。
【コソコソ話】
(#ー#)<実は上記の通り、空間系以外にも転移はある。
(・▽・)<地脈移動ですか……。でもこれって誰が使えるのですか?
(#ー#)<陰陽師や退魔士等の昔ながらのノーブルの一部。
(#ー#)<千年以上歴史がある家とかは使える……ところもある。
(㈩*㈩)<失伝する事もあるよね。アレ? カナタのトコは?
(#ー#)<アレは空間系のオーソドックスな奴。
(#ー#)<久遠家は空間系に適性あるから出来るんだ。