冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【TIPS:ヴァイオレットクロス〔カード〕】
(#ー#)<クロスだから人によりけり。

(#ー#)<コイツの場合、創り出したカードに生物を閉じ込められる。

(#ー#)<能力と相性がマジで良かった。

(#ー#)<因みに、アイツが死んだら消滅するんだが……

(#ー#)<特殊な作り方をしたモノは消えない。

(#ー#)<それどころか檻のように使える。


cⅹⅹⅹⅴ

 ■□■□

 

 

 天ノ角高校から少し離れた所に喫茶店がある。

 その店内のレイアウトは少し変わっており、卓が一人二人用しかない。

 そして、大型観葉植物や仕切りで個人スペースが守られている。

 だからこそ、一人でティータイムを楽しむ場所として重宝されている。

 

 だからこそ、席はほぼ埋まっている。

 その中に、一人の人物がいた。

 全身黒づくめの恰好をしており、室内であるのに、帽子と手袋を外していない。……まあ今の時代変わった恰好が多いのだが。

 彼は先程来て、コーヒーとシベリアを注文した所だった。

 品物が来るのを待つ間、考え事をしていた。

 

(依頼は順調……)

 

 端末に目を通す。

 

(死者は……想定内より少ないですね……)

 

 指でこめかみを揉む。

 

(そんなに生き残りたいのですかね)

 

 そんな事を思っていると、円筒型のロボが注文の品を持って来た。

 それを受け取り、シベリアを食べ、コーヒーを飲みながら考える。

 

(そして、問題は彼女)

 

 自身の同僚だった女性の顔を思い起こす。

 

(一番面倒で厄介な依頼を押し付けたのに、全部達成するとは……)

 

 報告を受けた時は驚いた。

 

(こんな事になるんだったら、助っ人禁止にしておくべきでしたか?)

 

 そう思ったが、後の祭り。

 それに加え……

 

(その助っ人のせいで彼女に接触出来ませんし……)

 

 あの依頼から、彼女は自宅に帰らず、その助っ人の家に居候するようになっていた。

 しかも、彼女は単独行動を取らなくなり、誰かと一緒にいるようになっている。

 更に、あちらこちらに機械アリを設置して、護衛、索敵までおこなっている。

 

(完全に警戒されてますね)

 

 溜息を吐いてコーヒーを飲む。

 

「どうしましょうかね」

 

 男は――γ(ガンマ)と呼ばれる男は溜息を吐いた。

 

「まあ、今は小休止」

 

 そして、残りを食べ終える。

 ふと、視線をテレビに移す。

 その映像を見て……

 

「そうだ!」

 

 ある事を思いついた。

 そして、それを実行するため、彼は店を出た。

 勿論代金は払った。……かなり余分に。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 学外実習が終わって数日後。

 その日、オウカは帰りが少し遅くなった。

 

「ただいま~」

 

 いつもなら居る人の返事があるのだが、聞こえない。

 

「?」

 

 気配はあるのでいるはず。

 オウカは不審に思いながら、リビングに行くと、そこには同居人と護衛対象がいた。

 

「……」

「……」

「……」

「「……」」

 

 三人は沈黙して、卓の中央にある手紙を見ていた。

 

 そんな三人にオウカはとりあえず……

 

「ただいま。どうした?」

 

 再び挨拶、そして疑問をぶつけた。

 それに答えたのはマユ。

 

「おかえり」

「おう。で?」

「……。面倒事がやって来た」

「面倒? もしかして……」

 

 目線をマユから移す。

 すると、移された張本人が口を開く。

 

「……わたしの件」

 

 嫌そうに言ったのはミユ。

 それは彼女が組織から、円満に抜けるために出される三つの依頼。

 今の所、二つまでクリアしている。

 つまりは三つ目が出たと言う事。

 

 それにオウカは卓にある手紙を指さす。

 

「読んでも?」

「「……」」

 

 誰も答えないが、沈黙の肯定と受け取り、読み始める。

 暫くして読み終える。

 

「……」

 

 オウカもまた沈黙してしまう。

 

 手紙の内容は殺しの依頼。

 ただし、ターゲットが指定されていない。

 場所、日付、時間の指定があり、そこで指示するとの事。

 そして、場所は……

 

「豪華客船ね……」

 

 ご丁寧にチケットまで同封されている。

 ただし一人分。

 

「一人で来いとまで書いてある……」

「完全、罠嵌」

 

 卓の上のネラが機械アリの姿で、器用に肩を竦める。

 

「……で?」

 

 オウカはミユを見る。

 

「どうするの?」

「……」

 

 無言のミユ。

 暫くして言葉を絞り出す。

 

「どうするも何も……」

「何も?」

「行くしかないです」

 

 嫌そうに言う。

 本当に嫌そう。

 それにオウカは続けて問いかける。

 

「それで? 俺らは?」

「付いてきて欲しいですけど……」

 

 その先が言えない。

 完全に相手側に警戒されている。

 だが、それにオウカは少し笑う。

 

「大丈夫」

「え……」

「潜入は得意だ。それに……」

 

 マユとネラに視線を移す。

 

「一匹と一つならセーフだろ?」

「? ……あ」

 

 ミユも理解した。

 彼女もマユとネラを見た。

 だが……。

 

「他の人にくっつくのはちょっと……」

「右同」

 

 あんまり良い顔をしない。

 冥刀は使い手が死ぬまで契約者を変えないのだから、当然と言えば当然。

 とは言え、今回は流石に主義を曲げて貰わなければならない。

 なので、どうにか説得し。

 

「はあ……。わかった。今回は仕方ない」

「不承、不承」

 

 どうにか納得して貰う。

 

「さて……じゃあ打ち合わせだ」

 

 そう言ってニヤリと笑うオウカ。

 

「全部都合よく行くと思っている馬鹿共を」

 

 一拍置く。そして

 

「地獄へ落とすぞ」

 

 宣言した。

 

 

 ■□■□

 

 

 そして当日。

 ミユの姿は客船内にあった。

 

「見た所……普通の客船ですね」

 

 その言葉に答える声があった。

 

[奇妙。人少、船大]

 

 念話で話すのはネラ。

 ブローチに化けている。

 これくらいの擬態なら朝飯前である。

 

[AIとかあるんだから、それが当然なんじゃないの?]

 

 同じように念話で訊ねるのはネラ。

 今はミユの頭にくっついている。

 異世界出身である彼女の問いに、ネラは念話で回答する。

 

[大船、用意、必要、無筈。小船、平気]

[……確かに]

[それもそうですね]

 

 ミユも念話で頷く。

 

 因みに、この念話はマユが持っている機能で、話す人物にもそれをさせる事が可能で、その気になればグループチャットみたいな事まで可能。

 

[後気、事他]

[何です?]

撮影、機械(カメラ)、多過]

[言われてみれば……]

 

 今いる所を見渡してもカメラだらけ。

 そのせいで、いつもならこういう時に、機械アリを偵察に放つネラですら諦めた程。

 

[現在、不動]

[今はおとなしくしよう]

[それがいいですね]

 

 そんな会話を念話でしながら、ふとミユは思い出す。

 それは行く前にオウカに言われた言葉。

 

『ミユ』

『何です?』

『もしもの時は……すぐに逃げろ』

『え』

『三十六計逃げるにしかずだ』

 

 そして、カードを渡される。

 

『これは?』

『友人から貰ったモンスターが入ったカード。飛んで逃げろ』

 

 因みにコレはクインが幾つか作ってオウカに渡した。

 召喚した人の指示に従うとの事。

 

『良いんですか? こんな貴重な物……』

『あまり貴重じゃないから。素材さえあれば作れるらしい』

 

 オウカの顔を思い出しながら、ミユは懐からカードを出す。

 

(友人さんにも感謝しないと。帰ったらお礼言おうかな)

 

 そう心の中で呟いた。

 

 

 ………………

 …………

 ……

 

 

 そして、指定された場所に付く。

 

「ここですね」

[……本当?]

 

 ネラが奇妙に思うのも無理はない。

 そこは客船内の客室の前。

 

[ここにγ(ガンマ)とか言う人いるんじゃない?]

[ですかね……]

 

 マユの考えに同意して扉を開ける。

 ところがそこは……

 

「?」

 

 何もない。誰もいない。

 ただの空室に見える。

 

[如何?]

 

 ネラも首を捻る。

 

[とりあえず入ってみます]

 

 そうしてミユが部屋に踏み込んで少し歩いた時だった。

 足元に魔法陣が展開される!

 

「!?」

[しまった!? 転移陣!?]

 

 マユが慌てて叫ぶが遅かった。

 彼女らの姿は部屋から消えた。

 

 

 ★☆★☆★

 

 

 転移と一口に言っても色々な種類が存在する。

 そして、その乗り心地(?)ならぬ飛び心地、転移心地も様々。

 

 

 地脈を利用した転移は、距離を縮めるようなもの。

 地面に接していないと使えないうえ、移動出来る場所にも制限がある。

 ……まあ、使い手がかなり少ないため、利用する機会は少ない。

 

 空間を切り裂き、繋げるという方法もある。

 一番負担が少ない方法ではあるが、使える人はほぼいない。

 因みに、主人公やマユが使うのはこれ。

 

 装置や呪符で使われるのが、空間を飛び越える方式。

 こちらは、船酔いしやすい人は酔う傾向にある。

 一番よく使われてはいる方法である。

 

 

 そして、今回の魔法陣に仕込んであった転移は、当然の如く三番目だった。

 

 

 ■□■□

 

 

 浮遊感と、地震のように揺れる感覚が終わると、そこは広い空間だった。

 

「ここは?」

 

 当たりを見渡しながら、ミユは同行者に念話で呼びかける。

 

[ネラさん! マユさん! いますか?]

 

 その言葉に答える声がある。

 

[いるよ]

[健在]

 

 バレないよう念話である。

 それにほっとするミユ。

 そして、少し心が落ち着くと、辺りに人が居る事に気づく。

 

[結構いますね]

[人数、十人、程度]

[佇まいから見ても、カタギじゃない。全員戦闘者]

 

 ネラとマユの分析に、ミユは考える。

 

(どういう事? 一体何をさせる気なの?)

 

 そんな事を思っていると、話しかけて来る人物がいる。

 

「ちょ~っと、い~かい? お嬢さん」

 

 少し独特な口調。

 振り向くと、そこにいたのは一人の男性。

 金髪に赤いシャツを着た軽薄そうな雰囲気をしている。

 だが、ミユ達にはわかる。

 この男ただものではない。

 とは言え……

 

「なんでしょう?」

 

 今は情報が欲しい所なので、彼女は答える事にする。

 

「アンタも転移でここへ?」

「ええ。客室に入ったら」

「オレと同じか~」

 

 金髪は顎に手をやり、何かを考えていたが、訊ねる事にする。

 

「ひょっとして……、アンタも組織抜けた?」

「……ええ。そっちも?」

「ああ」

 

 曰く、この金髪は過酷な紛争地域で、傭兵として五年戦い、その後、一報入れてから抜けたそうだ。

 

「何も言われてなかったし、追手とかもなかったから、不問だと思ったんだけどな~」

「流石に返事聞かないのは、不味いんじゃない?」

 

 ミユがそう言う。

 それに男は苦笑いした。

 

 そうして組織を抜けたからは気ままに生きていたのだが……

 

「そうしたらアイツが接触して来たんだ」

「……もしかしてγ(ガンマ)?」

 

 ミユの言葉にマユを吊り上げる金髪。

 

「そっちもか?」

「ええ。そしたら内部抗争で上司だった人が死んだって」

「……で?」

「殺されるか、依頼を受けるかで……」

「何から何まで同じだな。ところでそっちの上司は?」

 

 言うか迷ったが、言う事にするミユ。

 

「……Ϻ(サン)

「見事に穏健派だな。こっちはϷ(ショー)の旦那だ」

 

 それは幹部の一人。

 ミユも何度かあった事はある。

 

(確か……中立的な人だっけ?)

 

 内部抗争で大半が死んだと聞いたが、まさか……

 

「穏健派と中立派ばかりが死んだ……?」

 

 思わず口に出てしまう。

 すると、周りで聞いて来たらしい面々もこちらに加わって来る。

 

Ϻ(サン)Ϸ(ショー)まで死んでいたのか……」

「……そっちはど~うなんだ?」

「こっちの上司はͰ(ヘータ)さんです。まあ元ですけど」

Ϛ(スティグマ)

「「私達はϘ(コッパ)でした」」

Ͳ(サンピ)のお嬢です」

 

 複数の言葉にマユが記憶を掘り起こす。

 

[アレ? 幹部って確か七人だったよね?]

[其筈。大半、死亡。……一人、残存]

 

 ネラがまとめる。

 それに他の面々も考えに至る。

 

「……つまり生き残った幹部は~、Ϝ (ディガンマ)の野郎だけか?」

「「……」」

 

 金髪が代表して言葉を絞り出した。

 それに一同沈黙。

 全員の顔は苦々しいものになっている。

 

 それにその人物を知らないマユとネラが訊ねる。

 

[其人、何方?]

[どんな人なの?]

 

 マユとネラの疑問。

 ミユはそれに暫く沈黙していたが、重々しい口を開く。

 

[……凄い過激派]

 

 組織の幹部達はそれぞれ傾向がある。

 依頼の内容、部下の扱い、失敗時にどうするか。

 

 例えば、ミユの上司であったϺ(サン)の場合、依頼は悪人殺ししか受けず、部下に対しては、仕事を選ばせ、使い捨てする事もなく、報酬は弾む。その代わり、失敗には若干厳しいが、命までは取らない。

 他の穏健派・中立派も似たような感じなのだが、内部抗争で生き残った幹部であるϜ (ディガンマ)が問題だった。

 

 まず依頼。誰からでも受ける。

 だからこそ、逆恨みによる依頼も受けるため、善人がかなり犠牲になっている。

 ただ、部下の扱いは悪くない。報酬も弾む。

 だが、仕事は選ばせず、失敗には容赦しない。一回でも失敗したら死あるのみ。

 

 この姿勢から、他の幹部からは非難される事が多かった。




【コソコソ話】
(#ー#)<実は上記の通り、空間系以外にも転移はある。

(・▽・)<地脈移動ですか……。でもこれって誰が使えるのですか?

(#ー#)<陰陽師や退魔士等の昔ながらのノーブルの一部。

(#ー#)<千年以上歴史がある家とかは使える……ところもある。

(㈩*㈩)<失伝する事もあるよね。アレ? カナタのトコは?

(#ー#)<アレは空間系のオーソドックスな奴。

(#ー#)<久遠家は空間系に適性あるから出来るんだ。
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