(・▽・)<今回……【後書】が二倍やるかわり、こっちは短めです。
そこへネラが口を開く。
[可笑、点有]
[それはわかってます!]
ミユの口調が少し荒れる。
そこへマユが聞いてくる。
それにミユは咳払いをしてから答える。
[有得、無其、一族、固有]
[ええ、そうですね]
[血筋、以外、使筈]
歴史の古いノーブルには、その一族の血が通っている、門弟である、という条件を満たしていないと、使えない術技呪法がある。
[わかってますよ。でも現実問題、相手は使ってます!]
バグズ界蟲拳は前者。しかも一族しか使えないはず。
だからこそ否定したい二人だったが……
「どうした? 何をぼうっとしている」
相手は待ってくれない。
一気に間合いを詰め、拳にオーラを集中。
そして。
「組織のボスを舐めんじゃねえ!」
拳一閃。
紅の氷虎の頭部も砕ける。
そのまま拳のラッシュで紅の氷を砕いていく
それに三人は切り替える。
[疑問は出てきますが]
[今戦、集中]
[それもそうね]
戦いは最終ラウンドに入った。
▼▽▼
“三奇拳”の一つである『バグズ界蟲拳』
その始まりは江戸時代頃。
一人の男から始まった。
『どうするかね……』
彼の名前はムシャコウジ=アマリ。
先日まで百獣寺で修行をしており、中伝までいった。
ところが、霊獣と契約となった際に、それが出来なかったのだ。
『お前は破門だ!』
と言う訳であちらこちらをフラフラしていた。
そんな時、ある山に入った時だった。
深い山で怪物が出ると噂される山。
彼はそこでとある存在と出会った。
それが――とあるモンスターだった。
******
実は昔からモンスターは存在する。勿論ダンジョンも。
今の時代が一般的になっただけで、昔も存在はしていた。
日本では、妖怪、怪異、怪物などと呼ばれ、それに対処していたのが、陰陽師、呪術師、退魔士である。
そして、アマリ自身もモンスターとの戦闘経験がある。
正式な霊獣拳士ではないが、対抗できると思っていたのだが……
『ヤバイ……死ぬ……』
そこにいたモンスターである鬼は恐ろしく強かった。
……もし霊獣と契約していれば結果は違ったかもしれなかったが。
どうにか崖から川に飛び込み、命からがら逃げだした。
そして、陸地に辿り着いて意識を失った。
このままであれば、アマリは死んだだろう。
だが、彼は死ななかった。
とある存在が彼を助けたのだ。
………………
…………
……
アマリの意識が浮上する。
『ここは?』
そこは洞窟の中のよう。
ふと体を見ると、傷には薬草が貼り付けられている。
(誰かが介抱してくれたのか?)
そんな事を思っていると、何者かが近づいて来る気配がした。
(様子を見るか……)
そういう訳で狸寝入りをするアマリ。
すると、助けた存在が現れた。
この時の彼は思っていた。
自分を助けたのは人であるか、もしくは獣であると。
野生動物が人を助けたという事例はなくもない。
更に、モンスター化した影響で頭が良くなった場合もある。
そのため、現れた存在に狸寝入りをやめる勢いで、起きそうになってしまった。
『!!??』
当然の如く人ではない。と言うか哺乳類ですらない。
鳥類、爬虫類、魚類ですらない。と言うか脊椎動物ですらない。
そこにいたのは――昆虫……の幼虫。
白く太い体を持ち、前方に前脚六本を持っている。
蜂や蝶の幼虫に近いだろうか?
これが通常の大きさ……掌に乗る位だったら、驚かなかっただろう。
だが、それは余裕で自分の背丈どころか、牛や熊以上に大きい。
ソレは背中には木の葉の包みを乗せている。
そのままアマリの近くに来ると、木の葉の包みが一人でに動き、彼の近くに落ちる。
(手を動かさずに何かを動かせるのか……)
最初は驚いたが、少しずつ落ち着いて来たアマリ。
そのままその様子を観察する。
すると、ソレはそのまま奥に踵を返していなくなった。
遠ざかるのを確認して、彼は起き上がり、その包みを解いてみる。
すると、そこには木の実、茸、草があった。
どうやら食べられそうな物を持って来てくれたらしい。
「ありがたい……」
とりあえず食べていく。
そのまま黙々と食べ、全て食べきった。
そして、一言。
「肉や魚が欲しい」
こいつ厚かましい。
……
…………
………………
そうしてアマリはそこに暫く逗留した。
この幼蟲が持って来てくれた薬草のおかげで傷も治り、体力も回復していく。
だが、ソレは警戒心が強かった。
何度か話しかけようとしたのだが、その度に逃げられた。
……ぶっちゃけ滅茶苦茶遅いので普通に追いつけるし、追い越せるが、命の恩人(?)であるため手荒な事はしたくない。
だが、遂にある時……
『なあ』
『!』
何度目かの呼び止め。
だが、やはり逃げようとしたので……
『ちょっと待てよ!』
『!?』
オーラ操作で膂力を上げて、蟲を掴み押しとどめる。
そして、話しかけた。
『別に何かやる気はねえ。だから話そうぜ?』
それでもその幼蟲はジタバタ藻掻いていたが、観念したのか動かなくなった。
『じゃあ、話そうぜ』
『……そのまえに、てをはなしてください』
『喋った!?』
正確にはテレパシーである。
そうしてお互いの事情を語り合った。
『なるほど。あなたははもんされたのですね』
『そういうお前は居場所がなかったのか……』
この幼蟲――【カイチュウ】は生まれた時からハブられ、いじめられ、あちらこちらを転々としていたそうだ。
だが、この山に流れ着いてからは平穏に暮らせていたそうだ。
ところが、どこからかあの鬼が流れ着いて来たせいで、隠れ住むようになったとの事。
『ともだちはみんなたべられました』
『お前は戦わねえの?』
『たたかえないのです』
【カイチュウ】はユニークネームドモンスターであるが、凄まじく弱い。
栗鼠と殴り合ったら負ける、との事。
そんな彼女にアマリは提案する。
『なら話は簡単だ。俺がそいつを倒せば良い』
『いまのままでは、かてませんよ?』
『……』
沈黙するアマリ。
実際その通りだった。
そんな彼に【カイチュウ】は提案する。
『ならかけてみますか?』
『何にだ?』
『じぶんのこううんとそのからだに』
【カイチュウ】はステータスは低いかわり、特殊能力に全振りしていた。
そのチカラは――眷属変性。
他者を自身の眷属とする事で、凄まじく強化・進化させる事が可能。
ただし、確実に上手くいくかは本人次第。
その提案に彼は。
『乗った!』
『……そくとうですか。しぬかもしれないのですよ?』
死ぬ可能性の方が高い。
使った事はないが、そんな感じがしていた。
『人間いつ死ぬかはわからねえ。それに……』
『それに?』
『破門された時点で死んでるようなもんだからな』
目標が唐突に消えてしまったのだ。
それからは生きてはいるが、死んでないだけだった。
だからこそ、これはもう一度生きるためのチャンスと彼は受け取ったのだ。
そして、アマリは【カイチュウ】からチカラを拝領した。
曰く、適合しなければ死ぬ可能性もあったそうだが、彼は賭けに勝った。
そして、彼は鬼と戦い勝利した。
とは言え、それは戦いと呼べるものではなかった。
後に【カイチュウ】は語る。
『ひがいしゃが、かがいしゃにどうじょうすることってあるんですね』
………………
…………
……
それからアマリはその山を貰い受け、そこを本拠地として活動し始めた。
【カイチュウ】を匿う意味もあった。
その後、なんやかんやあって嫁を(複数)貰い、子供も出来た。
その子供達は全員彼と同じチカラが受け継がれていた。
これには彼も妻達だけでなく、【カイチュウ】すら驚いた。
彼女曰く
『それがあなたのたいしつなのかもしれませんね』
との事。
なので彼は、自分の子供達に百獣拳を自分流に改良したものを教えた。
それがバグズ界蟲拳の始まりだった。
******
アマリの血を引く者は確実にそのチカラが受け継がれる。
だからこそ、外部から強い血を入れる事で強化していき、発展していった。
因みに、数代を経て、いつまでも苗字がこれでは格好がつかないと、武者小路から蟲灼晃而へと苗字を変わった。
幸運な事に、他の二つの拳法のようにナニかしらが起こり、衰退や断絶する事もなかった。
更に、ダンジョンとモンスターが一般化した際に、大々的に活動できるようになったせいか、更に発展した。
……まあその際に、なんやかんやで三つの派閥に分かれてしまったが、仲が悪いという事も無く現在も交流している。
ただ、イデア百獣拳とはかなり揉めてしまった。
まあ対抗試合の末、多少認め合うようになった。
★☆★☆★
なぜなら、魔力に比べると劣ってしまうからだ。
出来る事は強化の延長線上のみ、引き出すのには鍛錬が必要、人は竜と比べ生命力が低いので出力がそこまででもないなど欠点が多い。
だからこそ、オーラを使用するプレイヤーは何かしらの手段で増強してから使う。
例えば、オウジマ=レイリであれば特殊な武器を使う事で出力を強化し、ハナヤマ=ベニバナはクロスと自らに憑依させたドラゴンの二つのチカラで増強させている。
そして、三奇拳はモンスターのチカラを使う事で出力を上げている。
とは言え、その前に厳しい修行を乗り越え、特殊な呼吸や飲食をおこなう。
そして、皆伝となると……
イデア百獣拳は契約。
霊獣と契約し、その体に霊獣を宿す。
ドラグ真龍拳は簒奪。
屠龍を成し遂げる事で、体を増強させる。
バグズ界蟲拳は拝領。
蟲灼晃而一族の始まり、アマリの血を引く者、もしくは【カイチュウ】に眷属化の処置を受ける。
だからこそ、これはおかしかった。
血を引いている訳ないし、【カイチュウ】と面識がある訳でもないのに。
■□■□
こうして始まったミユ(+α)対
氷虎が粉砕されてしまったミユは距離を保ちながら攻撃を仕掛けていくのだが、オーラに阻まれ、拳や蹴りで粉砕される。
苦い顔にミユにマユが問いかける。
[近接はやっぱり無謀?]
[……ええ。そもそも三奇拳の使い手に接近戦を挑もうというのが馬鹿です]
ネラもうんうんと頷く。
[傭兵、時代、散々、注意、喚起]
同僚や他の傭兵仲間とも交流していたネラ。
……今も連絡を取り合ったりする。
長年活動し、今は引退してしまったとある人から言われていた。
『良いか。三奇拳の使い手には注意しろ』
遠い目をしていた。
『本当にアイツらはヤバイ』
恐らく思い出したくない事を思い出しているのだろう。
『まあ真龍拳は断絶、霊獣拳はあまりいないから、頭の片隅に留めとけば良い』
前者は断絶、後者はある事件でごっそり皆伝クラスの拳士が減ったので、遭遇率は低い。
だが……
『問題は――界蟲拳だ。アレはまず数が多い。他の二つと比べ物にならない』
『多数、存在?』
『ああ』
一族全員がチカラを使う事が出来るから、必然的に人数が多くなる。
『そしてオーラを使うだけじゃない。三つに分かれているのは知っているな?』
『首肯』
ある時、昆虫のチカラではなく、蝦蛄――甲殻類のチカラを持った人物が生まれたらしい。オーラではない別のチカラを持っていたそうだ。
しかもその子供も甲殻類、もしくは甲虫系ばかりで、チカラすら受け継がれた。
だからこそ、まず二つに分かれた。
その人達はヨーロッパ方面に渡った。
更に、昆虫ではあったのだが、特異体質と毒蟲のチカラの二つを合わせ持つ人物が生まれた。
その子供も親のチカラが受け継がれていた。
そういう訳でもう一つ別れ、中国方面に渡った。
『分かれた二家にはな一族相伝の奥義がある。〈外甲殻〉と〈毒身〉だ』
〈外甲殻〉は体表に甲殻を纏う事で防御力を上げる。
マシンガンの掃射どころか、至近距離の砲撃すら弾く。
攻撃に転用する事も可能で、硬化した拳や蹴りは金属すら砕く。
〈毒身〉は体の隅々が猛毒となっている事。
毒手の全身版なうえ、呼気や汗すら猛毒である。
副産物として、毒系は一切効かない。
どちらも恐ろしく厄介。
『でもな、宗家が劣っている訳じゃない』
オーラだけではなく、何かしらを+αで持つそうだ。
[何持、可能、性有]
それには沈黙するしかないミユとマユだった。
【コソコソ話】
(・▽・)<この人は契約出来なくて破門されたんですね。
(㈩*㈩)<ちょっと厳しくない?
(#ー#)<まあ仕方ない。そもそも目標を達成できないからな。
(#ー#)<因みに、他にも破門の条件はある。
(#ー#)<無益な殺生、盗み、姦淫とかだな。
(・▽・)<その辺は普通ですね。……アレ? やらかした人は一体何を……?
(#ー#)<おいおいやるが、まあ殺生だな。うん。
(㈩*㈩)<……(絶対禄でもない)……。
【コソコソ話】
(・▽・)<このムシャコウジ一族ってもしかいて呉〇族? もしくはグレイシー一族?
(㈩*㈩)<完全にそれだよね。それと『刃〇眼』の二つの家も混ざってる。
(#ー#)<……まあな。実際あの家みたく、強い血取り込んでるし、一族秘伝の技術とかもあるし。
(#ー#)<近所付き合いも結構あるそうだし。
(・▽・)<え!?
(#ー#)<近所付き合いは良いし、その辺のチンピラじゃ相手にならないし。
(㈩*㈩)<それもそうだよね。……ところでさ、この【カイチュウ】ってどうしたの?
(#ー#)<今も生きてるぞ? その辺はまあ追々。……出てきたらな。
(・▽・)(㈩*㈩)<はい!?
(・▽・)<明日も更新します。
(#ー#)<その代わり、月初めの二回更新はなしだ。
(㈩*㈩)<この章、後一話だからね。