冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

152 / 182
【コソコソ話】
(・▽・)<やっぱりあるんですね。特に後者。

(㈩*㈩)<前者はこっちにもあったよね?

(・▽・)<……まあ。でも使う人なんていませんでしたけど。

(㈩*㈩)<それは確かに。

(#ー#)<どういう事だ?

(・▽・)<ほら、クローンは作るのにそれ相応の施設とか、設備が必要でしょう?

(#ー#)<そうだろうな。

(・▽・)<そういう所には金目の物とかありますよね。

(#ー#)<だろうn……あ!

(・▽・)<そういう事です。使っても襲撃されてパーです。

(#ー#)<……本当に末期だな。

(・▽・)(㈩*㈩)<何を今更。


(#ー#)<あ、そうそうホムンクルスについては追々やる。

(#ー#)<取り敢えず今は許可があって、適切に運用すればOKとだけ。

(・▽・)<違法にやってそうな所ありそうですね。

(㈩*㈩)<でも素人が手を出せなそうだから、そこまで多くないんじゃない?

(#ー#)<まあな。


佰伍拾弐

「久しぶりだから上手く出来ているか不安だけど……」

 

 朝食のメニューは白い御飯、豆腐とわかめの味噌汁、漬物、茹で鮭、サラダ。

 それにクインは味噌汁を一口飲んで。

 

「ん」

 

 親指を立てる。

 どうやら大丈夫だったらしい。

 

「良かった」

 

 それにほっとするユウナ。

 そうして二人で朝食を食べていく。

 途中でクインはテレビをつける。

 ニュースを見ようと思ったのだ。

 

「テレビだ。久しぶりだな……」

「テレビなかったの?」

「あったけど……、ほら放送する所が」

「……」

 

 納得すると同時、本当に酷い世界だったんだと、唖然とするクイン。

 そして、アナウンサーがニュースを読み上げて行く。

 

『次のニュースです。東京都で郊外にあった建物が全焼しました』

 

 そして映像が出る。

 そこには燃え尽きて骨組みだけになった建物があった。

 それにユウナが反応した。

 

「あ……」

「ん?」

「僕が居た所だ」

「ん!?」

 

 驚いて少しむせるクイン。

 味噌汁を飲んで落ち着く。

 そして訊ねる。

 

「確か?」

「周囲が同じ」

 

 そうしてニュースを聞いていく。

 

『幸い建物には人が居なかったため、死傷者は出ませんでした』

 

 その言葉にクインはユウナを見る。

 

「どういう事?」

 

 ユウナの話を聞く限り、彼女はそこにいた研究員や護衛を皆殺しにしている。

 火が付いたとしても、骨も残らず燃えるなんてありえない。

 というか、研究所があったというのだから、耐火設備はあるはずなのに。

 

 それにユウナは漬物を齧りながら、考えを述べる。

 

「僕はやっていないよ」

「わかってる」

「やるべき事やって、金目の物……足が付きにくい物を持ちだした位だから」

 

 一拍置いて告げる。

 

「誰かが証拠隠滅したんじゃないのかな?」

 

 ユウナが中を見た限り、完全違法な研究所。

 見つかったら不味いからこその行動であろう。

 

「……誰がそれをやったの(whodunit)

「わからないけど……」

 

 彼女は少しだけ口元に笑みを浮かべてこう言う。

 

「完全に隠滅は出来ていないようだからね」

「……」

 

 何かをしたらしいユウナ。

 聞こうとも思ったが、藪蛇の可能性があったので。

 

「ん」

 

 曖昧な返事をするだけにした。

 

 それからは二人は特に会話もせず、黙々と食事を続けた。

 暫くして。

 

「ごちそうさまでした」

「ん」

「洗い物しておくね」

「ん」

 

 ユウナが洗い物をしている時に、クインは学校へ行く支度をする。

 

「終わりっと。あ、クインちゃん」

「ん?」

「僕も学校行くから」

「ん!?」

 

 そういう訳で。

 

「……」

「学校か。初めてだな」

 

 制服姿のクインは、ユウナと一緒に歩いていた。

 因みに服装はクインの学校指定のジャージ。

 ダボダボな物が丁度あったので、それを借りて着ている。

 

(んん……)

 

 クインの脳内は色々な考えが渦巻いていた。

 

 

 そもそも生徒でも、教員でもない者を連れて行っていいのか。

 オウカの関係者だから、全く無関係ではないのかもしれない。

 異世界(ゴミ溜め)出身の危険人物を平穏な場所に放り込んでいいのか。

 特定外来生物みたいな事にならないか。

 まあ今は冥刀を持っていないようなだから、大丈夫かもしれないが。

 

 

(高校に着いたら、サクに押し付けよう)

 

 そんな他力本願な事を思い、現実逃避のために、気になった事を訊ねる事にする。

 

「ん」

「何?」

「学校、初めてなの?」

「うん。僕は辺境生まれだからね。ないものには行けないから」

 

 冥刀が生まれた世界は、怪物の襲来により、文明レベルが結構下がってしまった。

 場所によってこことどっこいどっこいな場所もあれば、中世レベルの場所もあった

 

「読み書きを教えてくれる人に習った感じかな?」

 

 村にいた一番学歴があった人が、読み書き、計算、歴史を教えてくれた。

 

「戦い方は?」

「道場があってね。村の子はそこに通う事になってた」

 

 あの世界は、道場が結構あった。主要武器(メインウェポン)が刀剣なので当然と言えば当然かもしれないが。

 そのため、村の子供は男女共に道場に通っていた。

 とは言え、護身がある程度可能になった時点で、やめてしまう人が多かった。特に女子。

 だが、ユウナは通い続けた。

 その結果、いつの間にか道場の師範すら勝てなくなった。

 

「……そんなので盗賊団に挑んだの?」

「何かしたかったのさ。……今に考えれば随分青かったな」

 

 実は最初の襲撃で村の戦える者達は皆死んでいた。

 それが理由の一つでもあるかもしれない。

 昔を思い出し、たははと笑うユウナ。

 すると、そこへ誰かが近づいて来る。

 

「おはよー、クインちゃん、ユウナさん」

「おはよう」

 

 それはレイリ……とイヌコだった。

 

「ん」

「ああ、おはよう。レイリちゃん。……と」

 

 イヌコとは初対面なユウナ。

 それにレイリが紹介する。

 

「わたしの幼馴染の――ワンコちゃんです」

「イヌコよ! いい加減にしなさい!」

 

 ツッコミを入れるイヌコに、レイリはアハハと笑う。

 そんな光景を見てユウナは微笑まし気な表情をする。

 

「?」

「いや、昔をちょっと思い出した」

「ん」

 

 悲惨な過去を持っているユウナだが、楽しい時間があったのだろう、とクインは思った。

 

 そして、イヌコがユウナに改めて自己紹介する。

 

「改めて。私はアサギ=イヌコです」

「ワンコって呼んで良いですよ」

「呼ぶな! あ、オホン。すいません」

 

 余計な事を言ったレイリにツッコミを入れるイヌコ。

 そんな様子に気にする事もなく、

 

「いや、別に気にしないから。僕はユウナ。ええと……」

 

 少し考えこう言った。

 

「サクの知り合い」

「……ああ」

 

 色々察したイヌコ。

 

 彼女はオウカとクラスは違ううえ、長い事避けていた気まずさもあり、今はそこまで仲良くはない。 

 友達や仲間と言える程の中でないが、会えば挨拶して、雑談くらいはする。

 だからこそ、彼が特定の人に許している呼び名がある事、過去に何かあった事は知っている。

 

 そして、彼女は頭を下げる。

 

「昨日は色々ありがとうございます」

「うん?」

「レイリが元気になったのは、あなたのおかげと聞いたので」

 

 ユウナという人に話を聞いて貰えたと聞いていたイヌコ。

 そのおかげか、レイリは実習前の様子に戻りつつある。

 

「いやいや、僕は何もしてないよ」

 

 軌道を少しだけ修正し、背中を押した程度。

 

「きっと自分一人でも解決できたんじゃないかな?」

「そうだとしても時間はかかったでしょうから。本当にありがとうございます」

「大した事していないから。頭を上げて」

 

 また頭を下げるイヌコの頭を上げさせるユウナ。

 そして、レイリを見て口を開く。

 

「レイリちゃんは良い友達を持ったね」

「え」

「大事にしなよ」

 

 一拍置いて続ける。

 

「自分を大事に思って、大事にしてくれる人は大事にしないと駄目だよ?」

 

 人生の先輩からの忠告さ、とユウナは続ける。

 そんな彼女にクインは素朴な疑問をぶつける。

 

「ん」

「何」

「何歳?」

 

 その言葉にユウナはう~ん、と腕組し考え始める。

 暫くして口を開く。

 

「……何歳だっけ?」

「「知らないよ!?」」

 

 ツッコミを入れるレイリとイヌコ。

 クインが聞く。

 

「自分の年齢、わからないの?」

「ほら、二人には言ったけど、僕色々あったじゃない?」

 

 色々が凄まじいレベルだが。

 

「だから記憶とかも結構摩耗してるから」

 

 特に死ぬ寸前と、死んだ後はかなり使われた。しかも粗雑に。

 そのせいで、今では生前の記憶はかなり曖昧だった。

 

(活動してたのは……百年くらいになるかな?)

 

 そんな事を思ったユウナだった。

 

 そうして話しながら歩いていると、学校が見えて来る。

 

「へえ……結構良い設備」

 

 そう呟くユウナを横目に、イヌコがクインに訊ねる。

 

「彼女、学校に行くつもりなの?」

「ん。サクに押し付ける」

「部外者よね?」

「サクの知り合い」

「だからって……」

 

 流石に駄目だろう、とイヌコは思う。

 それに、

 

「去年……一応年明けだから今年だけど」

 

 イヌコは語る。

 

「侵入者があって大騒動になったんだから」

 

 オウカとマリア、≪聖霊教≫の円卓が侵入した事件である。

 あの件は、危険物があり、ああするしかなかったと言う事で、≪聖霊教≫が壊れた物を弁償し、怪我人に見舞金を支払ったり、回復魔法を受ける事で片付いた。

 とは言え、色々な事情が重なったとは言え、流石にあそこまで良いようにされてしまったので、侵入者に対しては更に厳重になっている。

 

「だからどうなるか……」

 

 不安そうなイヌコ。

 するとそこへ、

 

「あ、イヌコ。おはよう」

「ジンナ……」

 

 やって来たのはジンナ。 

 元々彼女はどこかの誰かと違って、誰とでも仲良く出来る。

 なので、レイリがオウカとつるむようになってから、ジンナはイヌコと仲良くなっていた。

 

 そんな彼女を見て、イヌコの顔が明るくなる。

 

「助かったわ」

「?」

 

 状況が理解出来ず、首を捻る彼女にクインが口を開く。

 

「ん」

「?」

 

 ユウナを前に出す。

 

「この人は?」

「サクの知り合い。あっちの」

「え」

 

 ジンナはオウカの過去を結構知っている。

 クインの言葉で察したのだが……。

 

(誰?)

 

 オウカが道中で会って、友誼を結んだ人全員知っている訳ではない。

 とは言え、現状では知っている方なので、照合していく。

 

剣士(コジュウロウ)拷問士(モンセラート)じゃない)

 

 前者だったら、そもそも人が周りにいない。

 

百合(リリアーヌ)鍛冶師(ヴィー)でもない)

 

 どちらも人が離れているので違う。……前者は相手から、後者は自分から。

 

お嬢様(ベアトリクス)メイド(アンジェリカ)は違う)

 

 外見と中身から違う。

 

義姉(ミスト)義妹(アーリルシア)じゃないよね)

 

 こちらも同じく。

 

(誰なんだろう?)

 

 どういう人物かと、外見は聞いていたからこそ出来た事。

 だが、誰も当てはまらない。

 

 うんうん唸っていると、ユウナが苦笑して告げる。

 

「僕は語られていないかもね。付き合いは短いから」

「あ、そうなんですか?」

「一時間もないかも」

「「それで友達なの?」」

 

 イヌコと言葉が重なる。

 それにユウナは断言する。

 

「少しの邂逅でも、心が通じ合う時があるのさ」

 

 その眼は遠くを見つめていた。

 

 とりあえず三人はジンナに事情を話す。

 それに納得すると同時、難しそうな顔をするジンナ。

 

「今は厳しいと思う。親や兄弟ですら中に入るのは厳しいし」

 

 前までは多少緩かったのだが、この間の件のせいで色々厳しくなった。

 忘れ物を届けに来た親や兄弟ですら、中に入るのは出来ず、出入り口付近で待機になる。

 用事があって中に入ろうとする人でも、教職員が同伴しないと、中で行動出来ない。

 

『面倒臭くなったっす』

 

 とはザンカ談。

 

 それにユウナは問題ない、と笑う。

 

「スニーキングミッションはよくやったから得意」

「「やるな!?」」

「潜入も得意だから、問題ない」

「「問題しかない!?」」

 

 ユウナの言葉に、イヌコ、ジンナ、レイリの三人がツッコミを入れていると、

 

「学校近くで貴方達何をしてるの?」

 

 それはカナタだった。

 ジンナとイヌコの目が輝く。

 

「カナタ先輩……」

「丁度良い所に来てくれました」

「回れ右したくなってきた……」

 

 げんなりするカナタにクインがユウナを紹介する。

 

「サクのあっちの知り合い」

「へえ、そうn」

 

 カナタの視線がユウナを捉えた途端、言葉が止まる。

 そのまま硬直してしまう。

 

「「?」」

 

 ほぼ全員が疑問に思う中、ユウナは何かを察した顔をする。

 

「へえ……」

 

 そう一言呟く。

 そして、カナタに近づき口を開く。

 

「君はわかるんだね」

「……ッ!?」

 

 その言葉に、カナタは右手に刀、左手には呪符を出し、戦闘態勢に入る。

 だが、その顔は真っ青で汗びっしょり。息も荒い。

 手や足も震えている。

 まるで何かに怯えてるかのよう。

 

 尋常でない様子にユウナに視線が集中する。

 空気が緊迫していく。

 

 クインが双大剣を突きつけ聞く。

 

「何した?」

「何も」

 

 肩を竦める。

 それにジンナが冥刀を展開し、ユウナに視線を向けながら告げる。

 

「……どう見てもそうは見えないよ」

 

 緊張が高まって行く中、カナタが告げる。

 

「こ、この人は何もしていないわ。た、ただ驚いただけだから」

「な、何にですか?」

「この人……凄く強いのを感じ取っただけ」

 

 カナタは秘咒で対象の強さが何となくわかる。

 今まで強い人は何人も見てきたが、この人物――ユウナの強さは異常だった。

 まるで、山脈や災害と形容するしかない。

 

 そんなカナタにユウナは捕捉する。

 

「普通の人には、僕の強さってわからないみたいだよ? 大きすぎて見えないんだって」

 

 過去に言われた事を思い返してユウナはこう言った。




【TIPS:異世界の歴史】
(・▽・)<丁度良い機会だから、やりましょう。

(#ー#)<ええと確か……変わった経緯はこっちと同じだったよな?

(・▽・)<怪物の襲来がきっかけですね。

(・▽・)<でも、そちらと違い備えが出来ていなかったので、かなり追い込まれました。

(・▽・)<そして……、反撃の手として

(㈩*㈩)<冥刀が開発された。

(#ー#)<急に出た!? まあ当事者だしいいのか。

(㈩*㈩)<それで怪物は掃討出来たけど、次に人間同士の争いとなった。

(・▽・)<叢雅一門全滅は怪物襲来の二十年後くらい。

(・▽・)<その更に三十年後にユ……勇者が活動しました。

(・▽・)<そして、五十年後にヤク事件でトドメが刺されました。

(#ー#)<百年で滅んだのか……。

(㈩*㈩)<百年頑張った……と言えるかな。無理か。


(#ー#)<連続更新はここまで。次は土曜日だ。

(#ー#)<まあ楽しみにしてくれ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。