(㈩*㈩)<前も言ったけど、冥刀の使い手、特に畢竟に目覚めている人は
(㈩*㈩)<秘咒を使える場合が多い。……あっちだと剣能って呼んでいたけど。
(㈩*㈩)<サクの仲間も持っている人は多かった。……無意識に使っている人も多いけど。
(・▽・)<例えば、私だったら殺意の感知、ディアンは解析と鑑定ですね。
(㈩*㈩)<百合女はステータス強化・配分、ポンコツお嬢様は特殊■■■。
(㈩*㈩)<毒舌メイドは自在ゾーン、鍛冶士は■■。
(#ー#)<何か伏字があるんだが?
(㈩*㈩)<それは追々。
■□■□
同時に飛び出した結果。
「ほら、入った」
早かったのはユウナ。
そのまま鉈を振るいマリアを斬りにかかる。
「……」
マリアはパイルバンカーを盾にするが、その隙間を鉈は掻い潜り、マリアを斬り刻んでいく。
血塗れになっていくが、その眼は死んでいない。
(何か狙っているな。それはともかく……)
ある事をユウナは思っている。
(硬い! 筋肉の密度が違う!?)
近接系の戦闘者なら筋肉が付いているのは当然。
なのだが、それがマリアは異常だった。
歩き方や佇まいから、なんとなくわかっていた事だが、体感して改めて予想を遥かに超えていた。
そのせいで傷は付き、出血はしているが、浅い。
……しかもパイルバンカーを盾にしているので、重要な部位に傷がつけられない。
それに加え……
(カウンターが怖いよね)
皮を切らせて肉を断つ。肉を切らせて骨を断つ。
それをユウナは恐れていた。
(このまま削って行って失血を狙う)
深入りはせず、刻む事を選択するユウナ。
だが、それはマリアも予想済み。
だからこそ、マリアはあえて脱力する。
「(予想よりも深く食い込んだ)!?」
ユウナの一撃がマリアに深く食い込む。
そのせいで引き抜くまでタイムラグが出てきてしまう。
かなりの血が流れるが、マリアは筋肉を使って締め、血と鉈を止める。
そのまま狙うのは鉈を持つユウナの左腕。
「!」
それにユウナは何の躊躇いもなく武器を手放す。
「予想通り」
「!?」
マリアの拳の連打。
威力より速さを重視。
それをユウナは後ろに下がる事で凌ぐが……
(数発貰った……)
何発か喰らってしまった。
速さ重視の一撃なのに、骨に罅がいった。
「危ない危ない」
「流石ですね」
マリアは刺さった鉈を引き抜くと、空き缶でも丸めるかのようにしてしまう。
それにユウナは軽く唖然としながら呟く。
「君はゴリラか何か?」
「ゴリラに失礼です」
((いや!? あなたは!?))
観戦者がその言葉にツッコミを内心で入れる。
そんな中で、ユウナは考えていた。
(武器を失くしたのは痛いな……。どうしよう)
そんな事を思った時だった。
「ユウナさん!」
レイリが何かをぶん投げた。
それは――レイピア。
初めて殺した相手からの戦利品
「使ってください!」
「ありがとう」
そしてユウナはレイピアを構えた。
******
時間は少し戻る。
いきなり勃発した勇者と聖女のバトルに一同呆然としていたが、マリアが斬られた時点で再起動し始める。
「い、いきなり戦いが始まっちゃいました」
「と、止めないと……」
(今の所)感性がまともなレイリとイヌコがこうコメント。
だが、それにカナタ、ジンナ、クインと言った感性が(誰かさんのせいで)少し狂ってしまった面々が首を横に振る。
「……無理ね」
「邪魔したらこっちがやられる。……多分」
「ん」
この三人――オウカと交流した面々はわかる。
あの世界の住人はまともに見えてどこか狂っている。
特に、ソルドアットと交流が深いカナタにはわかっている。
「マリアさんがしているのは八つ当たり。だから殺す気はなさそうよ?」
「「アレで!?」」
「ええ」
彼女がよく使う、握力に任せて相手を腕や足を破壊する技を使っていないのが、何よりの証拠。
ユウナもおそらくそれがわかっているのか、殺す気はなさそう。
……まあどちらも幾らかの損傷は負って貰おうとは思っているようだが。
それにキョウコとイオリは至極真っ当な事を言う。
「それはそうかもしれないけど~」
「流石にこのままはまずいよ」
そうしていると、戦況が一変。
ユウナが鉈を手放し、マリアがその鉈を丸めて捨てた。
「「うわあ……」」
あまりの怪力に唖然とする面々。
そんな中、レイリとクインの二人はある事に気づく。
「クインちゃん。今のユウナさん確か……」
「ん」
「「武器がない」」
ユウナは目覚めた研究所で最初に手に入れた鉈を使っている。
本人曰く
『よく使うのは刀剣だから、こういう武器がしっくりくる』
との事。
彼女が目覚めた研究所の護衛や傭兵が持っていた武器はナイフやチャカばかりで、あの鉈が一番長く使いやすいらしい。
「さすがに素手じゃ……」
「ん」
その時、レイリの脳裏に過ったのはとある武器。
この間の実習で彼女が殺した相手から渡されたモノ。
「アレなら……」
「?」
入学祝いに買ってもらった腕輪型の匣からレイリはあるモノを引っ張り出す。
それは剣。いわゆるレイピア。
≪紅露刃亜≫の幹部の一人――ヒカリヤ=サエの冥刀【メルヴェイユーズ】。
「ユウナさん! これを!」
「レイリ!?」
驚くイヌコを無視してぶん投げる。
それを振り向きもせずユウナは受け取る。
そしえ、レイリにくるりと振り向き……
「ありがとう」
礼を言って構えを取った。
******
ユウナの構えは中々様になっている。
(確か……得物はロングソードやブロードソードと伝え聞いてましたが……)
それをマリアはちゃんとわかっている。
(もしかしたら、刀剣系は大概使えるのかもしれませんね)
刀剣と言っても種類は様々であり、剣道とフェンシングが全く違うように、使い方も違う。
(そして、最大の問題は――あの冥刀のチカラですね)
マリア……というか冥刀と関わる者や、生命反応に敏感な者は相手の武器が冥刀かどうか、なんとなくわかる。
だからこそ警戒しなければならない。
強化、属性、次元、概念etc。
何でもありなのだから。
警戒するマリアへユウナはこう言う。
「そこまで警戒しないで良いよ。この子はかなり厳しめで今はあまり使えない」
「そうですか……」
嘘は言っていないようだが、それで警戒を解くなんてもっての外。
「それに能力だって補正中心だ」
補正中心。
つまりは筋力や瞬発力といった身体能力の強化が主。
派手さがないので、低く見られがちで、オークションの値段も冥刀としては低くなる
だが、熟練の戦闘者は知っている。人によってはそれが鬼に金棒となり、ドエライ事になる事を。
「……」
「それを言って油断しないのは流石」
そう言って、ユウナは踏み込む。
冥刀の補正で今まで一番早い!
「!?」
「ほら入った」
レイピアでの突き。
それを辛うじてパイルバンカーを盾にして防ぐ。
「貫けないか……。なら」
連続突き。
しかも同じ場所を狙うのではなく、先程の鉈攻撃と同じように、隠せない場所を狙いに行く。
「く……」
体に穴が空いていくマリア。
どうにか隙を付いて拳を打ち込もうとするが、そんな隙がない。
しかも先程の先程の戦法を警戒されており、深くは突き刺してこない。
(失血を狙いに行く気ですか)
思考しながら、目線を移す。
(やはりこれでは不利ですね……)
【カズィクル・ベイ】は大型のパイルバンカー。
当たれば一撃で殺せるだろうが、当たらない。
大型重量武器の宿命。
ならば……。
「仕方ありません……」
「何がだい?」
「これ最初に見せるのは、サク様にする予定だったのに」
その言葉と同時、巨大なパイルバンカーが二つに別れて縮小する。
あっという間に杭が付いた籠手のようになる。
これが、マリアの手札、冥刀の変形機構の応用だった。
●○
「急に悪いな。訊ねてきて」
「ああ、何の用かって? 模擬戦に付き合ってほしくて」
「俺の今の友達は武器使いばっかりでな」
「双剣、刀と呪符、槍と爆発とかな」
「え? ベニ? アレはそうだけどちょっと……」
「アレは人というより竜だから。……え、貶していないかって?」
「大丈夫。アイツにとっては誉め言葉」
「じゃ、やろうか」
……
…………
………………
「うん。やっぱり腕は落ちていないな」
「流石マリア。……鍛錬は欠かしていないようだな」
「ん? 正拳突きしかしていない? いいんだよお前はそれで」
「基礎は極めれば誰にでも通用するから」
「え? 今のままじゃ駄目? 何で?」
「……。ふんふん。なるほど。今の武器と戦闘スタイルが合わない」
「確かにそれはな。お前の場合、徒手空拳の喧嘩殺法だからな」
「パイルバンカーがあのカタチだからある程度使えているだけだからな」
「でもさ、奥の手は? あの戦いで使っていたみたいに」
「うん? 切り札や奥の手は最後まで取っておきたい?」
「まあそうだな。俺も人の事言えないな……。悪い」
「じゃあさ、一緒に考えよう。三人寄れば文殊の知恵だ」
………………
…………
……
「候補はいくつもあがったけど、やっぱり冥刀の変形機構を使うのが一番だな」
「え? そう簡単に出来るのかって? 出来る……とは思う」
「冥刀ってサイズ調整とか刃潰しとかの機能は大体に付いているし」
「モノによっては結構滅茶苦茶な変形できるモノもあるし」
「とりあえず対話をしてみれば良い。無理って言うなら……最後の手段を使う」
「え? 何かって? ウフフフフフフ……」
……
…………
………………
「じゃあ今日は帰る。え? 泊まっても良い?」
「アハハ。それは今度のお楽しみという事で」
「またな。ちゃんと会話しておけよ?」
「会話をする口があって、聞くための耳があって、理解する脳があるんだからな」
「うん? あっても機能していない馬鹿がいる? あの世界には沢山?」
「……」
「なあマリア。あの世界にいたのはヒト科の害獣、ケダモノ以下の外道畜生だ」
「でも、この世界にはそんな奴はいない……と言いたいけどいるんだよな」
「何人か地獄に落としたし」
「でも、ここの世界は皆狂っている訳じゃないから大丈夫」
「俺を信じろ? え? 信じてる? 信仰してる?」
「……信仰はしなくて良いよ。俺は神様じゃないんだから」
■□■□
「第二ラウンドと行きましょう」
マリアは地面を踏み砕き間合いを詰める!
「!?(不味い)」
間合いに入られたユウナ。レイピアの内に入られてしまう。
「今度はこちらから」
そして、振りを小さくコンパクトにした打撃を連続で繰り出す。
「ハアアアアアア!」
「おっとっとと……、わっと」
マリアはそれをどうにか避けていく
恐らく一発でも当たって、怯んだらアウト。
(本命が来る……)
ガントレット状態になり、小型化しているが、あのパイルバンカーは不味い。直撃したらアウト。
(鉈失くしたのが痛かった)
レイピアは使えない距離。
ならば……
[ねえサイズ……変えられる?]
今使っている冥刀――【メルヴェイユーズ】に聞いてみる。
それに彼女はシュルシュルと縮んでいく。
あっという間にナイフサイズのレイピアになる。
「ありがとうっと!」
「!」
攻守交替。
適格にマリアへのカウンターを打ち込んでいく。
流血していくマリア。
だが、攻撃の手は緩めない。
拳を打ち込み続ける。
そして……
「い!?」
遂に拳はユウナへ掠めた。
頬から少し流血するユウナだが……その程度で済まなかった。
「っ!?」
突如として、横っ面を殴られたかのように、ユウナが横に傾く。
(何!? 今n……不味い!?)
致命的な隙。
それをマリアは見逃さない。
そのままユウナの腹部に軽く指を当てる。
「今までよくもグサグサ刺してくれましたね」
その言葉と同時。
「お返しです!」
「ゴバア!?」
ワンインチパンチが放たれユウナが吹っ飛んだ。
そのまま飛んだ先で倒れるかと思われたが、片膝付くだけでどうにか堪える。
だが、当たり前の如く無傷では済まない。
「ゴフ!?(何これ……。体内で爆弾が爆発したみたい)」
血を吐き出すユウナ。
そんなユウナに近づきながら、マリアは語る。
「おやまだ動けるとは……」
その顔は少し驚いている。
「ワタクシとしては
今のマリアの打撃には、かつて使っていた冥刀のチカラが宿っている。
その気になれば、
「(殺す気はないですからね。)これで終わりですか?」
マリアの問いにユウナは……
「アハハ。笑えないジョークだ」
立ち上がり叫ぶ。
「こんなもので、殺す気もない攻撃で、僕を止められると思うなよ!」
その顔には狂気的な笑み。
「殺さなかった事を後悔させてやるぅ!」
レイピアがオーラを纏っていく。
ここからが【メルヴェイユーズ】の本領発揮だった。
【コソコソ話】
(・▽・)<サクは何をする気だったんですか?
(㈩*㈩)<わたしに頼んでそういう機構付ける予定だったみたい。
(・▽・)<……そう簡単に出来るモノなんですか?
(㈩*㈩)<分割機能くらいなら時間はかかるけど大丈夫。
(㈩*㈩)<流石に銃を剣にするみたいな、全く違う武器にするのはちょっと……
(・▽・)<……誰も流石にそこまでは望まないですよ。