冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

164 / 182
【コソコソ話】
(・▽・)<このヨシダという方の知り合いはどうなったんですか?

(㈩*㈩)<皆さんの想像通り殺された。しかも……

(㈩*㈩)<その家族や親類まで殺された。そして漏らした奴も同様。

(・▽・)<まあそれくらいやりますよね。

(㈩*㈩)<しかもその知り合いの目の前で見せつけて最後に殺した。

(・▽・)<ふうん。

(#ー#)<(そういえばコイツ物騒な世界出身だったな。だから動じないんだな。)


ⅭⅬⅩⅣ

 ……

 …………

 ………………

 

 

 そうしてヨシダの案内を受け、彼が所属している組織――≪(ジン)≫のヤサの近くにやって来たオウカ達。

 物陰から様子を伺ってみる。

 そこは少し広めの廃倉庫であり、見張りが二人扉の前に立っている。

 

「さて……どうしよう?」

「一気に行きましょう!」

「そればっかりね。」

「それしかないけど」

「異論はないけど、誰がやるの?」

 

 そうして相談した結果……

 

「私と」

「あーしがやる」

 

 カナタとアズミがやる事になった。

 理由は――隠密状態で一気に殺れるから。

 

 アズミは気配を濃くする事も、薄くする事も自前で可能。

 そのためヘイト集めてのタゲ取りも可能だが、気配を遮断し、無意識に入り込んでの隠密活動も結構上手い。

 カナタは数多の感覚を欺瞞させる術を使う事で、五感探知に引っかからず動く事が可能。

 レイリはともかく、オウカとジンナも隠密は出来るが、この二人の隠密は凄まじいからこそ適任。

 

「じゃあお願い」

「ええ」

「任せて」

 

 オウカの言葉に二人は頷く。

 そして、一気に動く。

 

 カナタは幾つもの術を合わせ姿を消し、アズミは気配を無くす。

 そして、見張りに接近する。

 

「あーあ、暇だな」

「真面目にやんねえと殺されるぞ」

「だな」

 

 会話をしている男二人。

 武装は対プレイヤー、モンスター用の長銃。

 最近、ある企業が作り出して出回っている代物。

 

 装弾数は二百発。銃剣の如く先端にナイフが付いており、かなり頑丈に出来ているので槍のように使え、遠近万能に戦える。

 

 そういう訳で二人は背後に回る。

 そして合図と共に。

 

「フ」

「ハッ」

 

 同時に動いた。

 カナタは小太刀を一閃し、首を切断。

 アズミは両手で首を捻り折る。

 

「ッ!」

「ポキュ!」

 

 そうして見張りは何が起こったのかもわからず死んだ。

 死んだ瞬間、物陰にいた三人……

 

「じゃあ行きましょう!」

「そうね」

「おい、しっかりついて来いよ」

「は、はい!」

 

 否、四人は動く。

 ヨシダもセットである。

 騙しもせず、罠も仕掛けなかったので、死なせるのは惜しいとなった。

 

 前に出たのはレイリ。

 

(後、どれだけ持つだろう……)

 

 その手には愛用のツギハギ巨斧。

 

「ドア! オープン、ザ、プラアアイスウゥ!」

「……ブレイクじゃない?」

「プライスは要らないと思う」

 

 ツッコミを入れるジンナとオウカに構わず、それを自らの剛力でぶん投げた。

 それは扉を砕き、その近くにいた者達を吹き飛ばした。

 

 中には数十人近くがいる。

 いきなり突っ込んで来た巨大な斧にざわめく半グレ達。

 

「な、なんだ!?」

「カチコミか!」

 

 だが、冷静に武器を装備する者もチラホラ。

 どうやら訓練されているらしい。

 

「馬鹿か、この人数相手によぉ」

「死にに来たか?」

 

 そうして入って来る者を迎撃しようとしたが。

 

「何か言っていないですぐ動け」

「うお!?」

 

 オウカがいつの間にか近くにいた。

 

「お前の来世……河童な」

「人間が良い!?」

 

 手に持った黒いナイフで相手の頭部を斬った。

 そのまま縦横無尽に暴れ、頭無し人間を量産する。

 

 ジンナも動く。

 

「やっぱりこっちの方がしっくり来る」

 

 手に持っているのは冥刀【エスペ・アヴァンチュルーズ】の双頭剣形態。それを双剣にする。

 

「ハ、フ、ヤア!」

「ギャ」

「へぶ」

「ピぎゃ」

 

 双剣が振るわれるたび相手が死んで逝く。

 その一撃は鋭く、速く、重い。

 

「舐めるなよ!」

 

 盾を持った奴が前に出て来る。

 ジンナの一撃を受け止めたが……

 

「脆い」

「へあ!?」

 

 盾ごと真っ二つ。

 

 実はアズミとの模擬戦が終わってもなお、抜錨状態を解除しなかったので、戦闘力はあの時のまま。

 今のジンナのステータスはドエライ事になっている。

 

 そして戦うのはこの二人だけではない。

 

「新武器の試しと行こうかな……」

 

 二人とは少し遅れて突入するレイリ。

 巨斧はぶん投げてしまったので無手。

 だったが、その手にいつの間にか斧二つ握られている。

 どことなく異質な気配を放つ一対の斧。

 実はこれ――冥刀である。

 

 

 ▼▽▼

 

 

 銘は【ラビリス】。

 γ(ガンマ)と呼ばれていた殺し屋が使っていた斧。

 ミユのゴタゴタの際、オウカはその人物と戦い倒した後、何かの役に立つかもしれないと回収して、マユに調整して貰い、預かって貰っていた。

 

 そうして今回オウカを待っている間、マユがレイリに訊ねる。

 

『その斧、どうしたの?』

『この間の実習で壊れちゃって……』

『新しいのは?』

『持っていないです』

『そう、なら』

 

 彼女は【ラビリス】を渡す。

 

『はい。これ使って』

『え!?』

『いいの!?』

 

 驚くレイリ。アズミも冥刀の希少性を知っているので聞いた。

 それにマユはさも平然と答える。

 

『仕舞っておくなら誰かが使った方がいい。変形機能で大斧にもなるからピッタリだと思って』

『……』

 

 レイリは手を伸ばそうとして躊躇うも……

 

(斧の冥刀ってあんまりないんだよね)

 

 この事を思い出し。

 

『……~~』

 

 受け取った。

 

 

 ■□■□

 

 

 そしてレイリは言葉を紡ぐ。

 

「刃金の誓い、今此処に」

 

 両手の斧が脈動する。

 

「戦士七人、乙女七人。怪物の生贄となれ」

 

 レイリはオーラを纏う。

 

「迷宮、牛魔、雷光、英雄、短剣。赤い糸玉」

 

 半グレ達は詠唱を止めようと襲い掛かって来る。

 

「されど怪物倒し、迷宮より生きて戻れ」

 

 だが、それをレイリは捌いていく。

 

「光へ堕ちろ、闇を照らせ」

 

 そして、レイリの目が光る。

 

剣轟抜錨(デュナミス)――《迷宮流離・坂田金時(キントキ・ラビリス)》」

 

 詠唱が終わると同時……

 

「!」

 

 レイリは、冥刀のチカラで増強されたステータスで切り込む。

 

「は、はえぇ!」

「い、いつの間に」

 

 怯む相手を双斧で斬り裂く。

 

「フッ」

「ぎゃああ!?」

「ごえぇ……」

 

 その手に躊躇いはない。

 

(ああ、この感覚……病みつきになりそう)

 

 人の命を絶つ事に快楽を感じてしまうレイリ。

 だが

 

(溺れないようにしないと)

 

 自身を律する。

 普段は抑え、こういう時に発散させる。

 もしどうしようもなくなったら、その時は

 

(サクヅキ先輩か、クインちゃんに殺してもらおうっと)

 

 そう思ったら、気が楽になって来た。

 

「フフフ」

 

 レイリは笑った。

 そのまま笑顔で相手を殺していく。

 

 それに半グレ達は怖気付く。

 

「ば、化け物!」

「に、逃げろぉー!」

「逃げ場なんてねえ! 戦え!」

 

 まとめ役らしい奴が檄を飛ばすが、効果はない。

 それどころか……

 

「ぐぎゃあ!?」

「ほげえ!!」

 

 出口へ向かった者達の断末魔が上がる。

 彼らが倒れると、そこにはその下手人がいる。

 

「好き放題やって来たんだから、好きにやられる覚悟を持たないと……ね」

 

 手に太刀を持った少女――クドウ=カナタ。

 そのままバッタバッタと斬り払って行く。

 下手に術を使うよりもこちらの方が絶望を与えられる。

 

 それに半グレ達はここの出口は無理だと諦める。

 

「ならあっちだ!」

「逃げるぞ!」

 

 別の出口に向かう。

 

「やった。出口だ!」

 

 そこならまだ大丈夫だと希望を持っていたが……

 

「張っているに決まっている」

「ギャアアア」

 

 そこには――イサカ=アズミがいる。

 タイキックで首の骨が圧し折れ一発で絶命した半グレ。

 

 実は事前に周囲を偵察していたのである。

 だからこそ、カナタとアズミの二人は逃げそうな所に張っていた。

 

「さあ死になさい」

 

 そのまま流れるような蹴りにより、出口にいた者の命を奪って行った。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「ど、どうしてこうなった……?」

 

 リーダーが呟くのも無理はない。

 

 半グレ組織≪燼≫は壊滅寸前だった。

 中では、オウカ、ジンナ、レイリが暴れ、出入口にはカナタとアズミがいる。

 つまりは逃げる事が出来ず、戦うしか選択肢がない。

 

(せっかくここまで大きくなったのに……)

 

 リーダーは今までの事を走馬灯のように思い出し始めた。

 

 

 ▼▽▼

 

 

 ≪燼≫

 よくある弱小半グレ組織(?)

 とは言え、弱小組織に過ぎず、一時は敵対組織にやられる寸前だった。

 だが……

 

『なぁ、ちょっくらよぉ〜、協力してくんねえかぁ?』

 

 ある時、その人物がやって来て全てが変わった。

 下っ端の一人が敵対組織との抗争中に、助けて貰ったと言う事で連れてきたのだ。

 

『オイラはあまり表立って動けねえんさぁ〜』

 

 との事。

 そして、この人物は手付金代わりに敵対組織を全滅させた。

 そういう訳で、その男――カマタの下に≪燼≫は付く事になった。

 それからは彼の指示で動いたおかげで収入が増え、組織の規模も大きくなった。

 

 ……ただ偶に舐めた奴が粛清されるようにはなった。

 しかも全く容赦がない。

 なにせ何をやっているのかをちょっと漏らしただけの奴が、その家族諸共殺害された。

 それには全員が怖気づいた。

 結果、組織を抜けようとした奴も出たが、その日の内に骸となった。

 とは言え、飴と鞭の内、鞭だけでなく、飴もあった。

 下っ端までかなりの金が貰えるようになったのだ。

 

 だからこそ、抜けようとする者はいなくなった。

 来るもの拒まず、去る物はこの世からとなり、組織は拡大していった。

 だが、その組織は壊滅しようとしていた。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 そうして、生きている者は残り僅かとなった。

 人間ピンチになると、逆に冷静となる。

 だからこそリーダーは気づいた。

 襲撃者の後ろに自身の組織の下っ端が居る事に。

 

「おい! お前裏切ったのか!?」

「ぴえ!?」

 

 怯える裏切者――ヨシダ。

 彼は怯えながら言葉を絞り出す。

 

「は、吐かないと殺されるから……」

「馬鹿! 裏切者がどうなったか知っているだろう!?」

「そ、それは……」

 

 その時だった。

 

「こうなるねぇ~」

 

 第三者の声。

 

「「ッ!!」」

 

 このままだと不味いと感じ取ったのは――勘の鋭いオウカとレイリ。

 咄嗟の判断でオウカはジンナを掴み伏せさせる。

 

「伏せろ!」

「わ!」

 

 レイリはヨシダに足払いして地面に倒しておく。

 

「ごめんなさい!」

「ほべ!?」

 

 そうして自分も伏せた瞬間だった。

 斬撃が辺りを乱舞する。

 その結果、その場で立っていた者は全員斬り刻まれた。

 

「ぎゃあああ!」

「か、カマタさん!? なんで!?」

「俺らまでぇ―!!」

 

 暫し断末魔がこだました。

 

 その結果、立っていた者達――<<燼>>の構成員は斬り刻まれて絶命。

 生き延びたのは伏せていたオウカ、ジンナ、レイリ、ヨシダの四人。……出入口を付近にいたカナタとアズミも無事。

 

 伏せながらオウカは分析している。

 

(今の攻撃……空間切断が付与されてた)

 

 つまりは、概念、もしくは次元系統――時間、空間、重力――の防御でないと防げない。

 

(それと今のいきなり放たれた……という事は)

「サク君、サク君」

 

 ジンナの呼びかけに、オウカの思考がストップする。

 彼女は続ける。

 

「この態勢はちょっと……」

 

 オウカは今ジンナを押し倒した状態になっていた。

 

「……すまん」

 

 素直に謝ったオウカ。

 

「こういう事はTPO考えてね?」

 

 いたずらっぽく言うジンナに、オウカは言い返す。

 

「そこから先……シテいいの?」

「!」

 

 ジンナの顔がトマト色になった。

 何か雰囲気が甘くなっている。

 

 そこへ立ち上がったレイリが叫ぶ。

 

「先輩達! そういう事は後にしてください!」

「そういう問題!?」

 

 ヨシダがツッコミを入れる。

 因みに足払いが強すぎた事と、転倒した時の打ちどころが悪かったせいで、まだ立てない彼。

 

「……ま、確かにそうだな。ほいっと」

「……ありがと」

 

 オウカは先に立ち上がり、ジンナに手を貸して立ち上がらせる。

 

 するとそれを見計らったかのように声が聞こえる。

 

「生き残りがいるのかぁ?」

 

 その言葉と同時、空間が破けたかのように裂ける。

 そして、そこから男が出て来た。

 短めの髪をした物静かな雰囲気の男。

 これだけなら街中にでも歩いていそうなのだが、とある一点が異常。

 肩に巨大な大鎌を担いでいる。

 そして、目が白黒反転し、片方は青く、片方は青紫に光っている。

 その眼がぐるりと辺りを見渡し、口を開く。

 

「雑魚が一人、強そうなのが二人、凄く強そうなのが二人……」

 

 そして、視線はオウカを真っ直ぐに捉える。

 

「ヤバそうなのが一人」

「そう言って貰えて光栄だね」

 

 オウカは笑った。……俗にいう眼が笑っていないという奴だった。

 そんな彼は問いかける。

 

「もしかしてお前が……カマタ?」

「そうだけど、誰から聞いた?」

 

 その言葉にオウカはすぐに答える。

 

「断末魔で叫ばれていた」

「あらら」

 

 ヨシダからも聞いていたが、あえてこう答えたオウカだった。




【TIPS:ラビリス】
(㈩*㈩)<両刃斧型の冥刀。元はγ(ガンマ)が持っていた物。

(㈩*㈩)<オウカが回収して、レイリに渡した。

(㈩*㈩)<補正が高めで、変形機能も高い。そして能力は身体増強のオーラ。

(㈩*㈩)<後、奥の手で迷宮の展開がある。

(#ー#)<だからラブリュスとラビリンスを合わせた名前になってのんか?

(㈩*㈩)<そういう事。そして冥刀らしく所有者によって多少差異も出てる。

(㈩*㈩)<その辺は追々。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。