(㈩*㈩)<わたしとネラは普段はオウカにくっついているけど、
(㈩*㈩)<偶に別行動もする。
(㈩*㈩)<その場合、わたしが人形態で動く場合もあれば、
(㈩*㈩)<わたしは櫛のまま、ネラに乗っかって動く時もある。
(㈩*㈩)<会話や念話していない時は、別行動だと思って欲しい。
そして今回の協力者達に連絡をした結果、早速返信があった。
更にモモタの提案でリモート会議をする事になった。
会議が始まって早々、エンバが言う。
『オレが行く。文句ねえな』
何でもこちらも売人締めたり、半グレ蹴散らしたそうだが、全員たいした事なかったらしい。
『オマエらの話聞く限り、手応えある奴いそうじゃねえか……』
そういうエンバ。
そこへオノヅカがこう言う。
『だったら俺も行く。何かしら手掛かりがあるかもだからな』
そんな二人の提案。
特に反対する理由もないので、頷こうとしたのだが、そこへモモタが提案する。
『じゃあさ、メンバー変えてみない?』
『「はい?」』
彼に言わせれば、流石に全員でカチコミは不味いとの事。
罠の可能性もあるし、全滅の可能性だってなくもない。
『だから少数精鋭で突入して、何かあったら追加メンバーを送る様にすればいい』
「なるほど……」
「じゃあメンバーはどうするんですか?」
レイリの疑問にモモタは顎に手をやり考えていたが……
『……よし。決めた!』
そう言う訳で野郎四人が選ばれた。
『多少連携取らなくちゃだし、女の子達は今日頑張ったから休んだ方が良い』
「まだ行けますよ!」
『それでもだ。結構激戦だったんだろう?』
「「……」」
それは確かにそうだった。
一同何も言えなくなるが、アズミが口を開く。
「ナオさん」
『何? アズミさん』
「じゃあサクヅキくんは?」
昨日戦ったばっかりである。
それにモモタはこう言う。
『君は平気だろう?』
「はい。大した消耗もないですから」
異世界では連戦は当たり前。
この程度なら問題なく戦闘続行できる。
武器は一つお釈迦になったが、もうすでに補充済み。
問題はない。
『後、流石に女の子一人に野郎共複数は流石に悪い』
「……まあ確かに」
アズミは納得した。
そういう訳で野郎四人でのカチコミが決まった。
そして、細かい事を詰めていき……
『じゃあ、まとめるよ』
モモタが人差し指を上げる。
『突入するのは男四人』
中指を上げて続ける。
『一日立っても何も連絡がなかったり、ボクらが戻らなかったら、救援を送ってくれ』
因みに、定期連絡でないのは、通信遮断が掛けられている場合を考慮した。
『そして、突入は明日。今日は準備をして欲しい』
今すぐ行くべきと言う意見もあったが、準備を念入りにした方が良いとなった。
◇◆◇◆
そういう訳で男四人は森の中を進んでいく。
「お弁当持って来て良かった」
「ピクニックじゃねえんだぞ……」
「長引くかもだから食料は持って来てるでしょう? ボクはお菓子を持って来た」
「もっと持ってくるべきだったか? ……バナナしか持って来てねえけど」
「蜻蛉じゃなくてゴリラだったか」
「殺すぞ?」
こんな感じで偶に会話をしながら、進んでいく。
「そういえば……」
オウカがモモタとオノヅカに訊ねる。
「お二方の戦闘方法って何です?」
他者の能力・術技・武器を聞くのはマナー違反。
だが、一時的とは共に戦う相手に戦い方を聞くのは悪い事ではない。
というか、知らなければ共闘しようがないうえ、攻撃に巻き込まれる場合もある。
なので、プレイヤーは共闘相手には、自身の手札をある程度は知らせる。
「……確かに言わないとだね」
「ま、言ってもいいか」
モモタとオノヅカが自身の手札を明かそうとしたのだが……
「……なあ」
エンバが割り込む。
因みに彼には戦い方を聞かないオウカ。
というか、彼の出自から戦い方は明白だからだ。
「どうしたんです?」
オウカが訊ねる。
気を悪くした様子はない。
彼がただ話に水を差す訳ないと知っているからだ。
それに彼が続ける。
「オレらがこの森に入って結構立ったけど、何もねえ」
「……何もねえ事は良い事じゃねえのか?」
オノヅカの発言は実感が籠っていた。
元々、極道は自警団の役割も兼ねているので、そう思ったのだろう。
一方、モモタは何かに気づいたのか、はっとした顔になる。
「モンスター……はともかく、野生動物一つ出て来ないのはおかしい」
「そういえば鳥や鼠すら見てない」
オウカも気づいた。
今の時代、『大転換』の影響で、結構自然が広がっている。
そういう所にはモンスターも多いが、普通の野生動物――能力や術技を持っていない獣、鳥、蟲など――も結構いる。
なのだが、この森に入ってから、何も見てない。
流石に可笑しすぎる。
「「……」」
全員が立ち止まり、警戒度を引き上げた。
そのタイミングだった。
「……来る」
オウカが何かを感じ取った。
その言葉にモモタが目を閉じ何かを唱える。
感知をしているらしい。
少しして目を開ける。
「数は二体。猛スピードでこちらに近づいてる」
それにエンバが首を捻る。
「オレが気づけなかったって事は……生命体じゃねえな」
「昨日お前らが戦ったとか言うのが来るのか?」
オノヅカが呟いた。
そして、その答えはすぐに示された。
現れたのは二体の人型。
灰色のオートマタとでも言うべきか?
「人じゃないな……」
「これを人という奴はいねえだろ?」
「それ、差別になる場合があるよ?」
「……見た目はともかく、心がない。人でないのは間違えない」
オウカが呟き、エンバが答え、モモタが注意し、オノヅカが付け加えた。
雑談を交わし、四人は出て来た相手に分析する。
「生命反応はなし。ゴーレムか……ロボットか…」
「機械の駆動音がするが、魔力の反応もある。ハイブリッドだな」
「サクヅキ君。昨日戦った奴らと比べてどう?」
「全然違いますね」
オウカが昨日戦った人形達を思い返す。
ゴーレムとロボットのハイブリッド―― 【機甲人形】は五メートル程だったが、今いる人形はその半分以下。二メートルないだろう。
そして、【機構人形】はずんぐりむっくりとしていたが、こちらはかなりスマートであり、シルエットだけなら人間に近い、というか人型そのもの。
「でも、人型であるのは共通してますね」
他にも共通項はある
まず同型複数が出現した事。……数は違うが。
そして、武装している事。右手にサブマシンガン、左手にビックナイフを持っている。
「そうか。で? どうする?」
エンバが三人に問いかける。
心なしかうずうずしている。
誰がどう戦うか、と言う事である。
全員で袋にするか、二対二でいくか、一対二でいくか。
幾つか選択肢がある中で、モモタが口を開く。
「オノヅカくん。ボクらでやろう?」
「あん?」
「……ああ、そういう」
「それはいいが……。なぜ二人?」
オウカは何かを悟ったが、他の二人は疑問に思う中、きちんと答えるモモタ。
「ボクらがどう戦うか見せた方が良いと思って」
「……ああ、なるほどな」
その答えにオノヅカは納得した。
オウカがモモタとオノヅカの戦い方を、聞こうとしていたところだったので、丁度良かった。
戦い方がコロコロ変わるオウカはともかく、エンバ――蟲灼晃而一族の戦いはほぼ共通であるからこその言葉。
だが。
「……フン」
その言葉にエンバは理解はしたが、納得はしてなさそうだった。
暴れたかったのだろう。
それにモモタがフォローを入れる。
「次はキミ一人でやっていいからさ」
「……」
「人生、待つ事も大事だよ」
言い聞かせるように告げたモモタ。
それにエンバは……
「言い聞かせるようのはやめろ。餓鬼じゃねえんだから」
不承不承納得した。
そうして前に出たモモタとオノヅカ。
戦闘態勢に入る二人。
モモタは腰から長ドスを抜き構える。
「久しぶりに出番だよ」
オノヅカは眼が白黒反転し光る。その色は……
「……さてやるか」
そのまま敵に向かっていく二人。
それに二体のオートマタは、右手のサブマシンガンを発砲。無数の弾幕で迎える。
量産品ではあるが、性能は折り紙付きの代物。生半可な防御は貫かれる。
だが、それらは防がれ避けられる。
モモタは短く何かを唱え、前面に障壁を張り全弾防ぎ切った。
オノヅカは眼を複眼に変え、弾丸を見切って回避する。
オウカはモモタを見て、分析する。
(さっきの感知。今の障壁……)
どれも中々強力である。
障壁に至っては、生半可なモノなら貫通できる弾丸も出回っている中、無傷で防ぎ切っている。
(あの感じから言うとノーブルかな?)
ノーブル。
日本なら陰陽師や退魔士、海外ならエクソシストやウィザードなどの昔ながらの術技で戦うプレイヤーの事を指す。
偶に旧世代と呼んで馬鹿にする人も少数存在するが、実力者ではそんな人は存在しない。
恐ろしさをよくわかってる。
一方、エンバはオノヅカの方を見ていた。
(完全に生物化はしていないな。部分的に出せるのか……)
生物系のクロスは、能力に慣れて来ると、変化せずともある程度なら能力を発揮する事が可能になる。
更に、熟達すれば全身変化しなくても、手足の一部を変えたり、翼や翅を生やすだけでチカラを完全解放する事が出来るようにもなる。
オノヅカはその領域に達していた。
(複眼……つーと節足動物だよな? ウチと被るな)
……全く関係ない事も考えていた。
そんな事をエンバが思っている中、二人は遂に人形の近くへ迫る。
先手を切ったのはモモタ。
手に持った長ドスを振るう!
長ドスの長さは五十五.五センチ。モモタと人形の距離はまだ二メートルはある。
届かないはずなのだが、何かを感じ取ったのか、人形は左手のビッグナイフを使い防御する。
だが次の瞬間、人形はビッグナイフごと切断された。
真っ二つになり、倒れる。
「無駄な物を斬ってしまったってね」
呟いたモモタ。
その手の長ドスの刀身が、半透明の刃により延長していた。
★☆★☆★
モモタ=ナオは防御の魔法……特に障壁を張る事を得意としている。
これはその応用。
単分子以下の薄さの障壁を作り出す事で、刀身を延長させ、同時に相手を斬り裂く。
彼は最強の盾と最強の矛を持っている。
“最強矛盾”
一部の人は彼をそう呼ぶ。
■□■□
そして、オノヅカの方も動きがあった。
こちらも残り数メートル程の距離に近づいた時に、足の動きが変わる。
ステップを踏むような動きになる。
「やっとだ。やっと、ぶん殴れる」
そう呟いたオノヅカ。
それと同時、彼は今までのトップスピードで人形と距離を潰し、殴って届く距離となる。
だがそれはビッグナイフの届く距離でもある。
オノヅカが拳を振るうと同時、人形のビッグナイフが振るわれる。
轟音が響く。
そこには拳を振り抜いた姿勢のオノヅカがいた。
彼だけがいる。
その拳は甲殻類のような外骨格に覆われている。
《ブラウンクロス〔モンハナシャコ〕》
これこそが、オノヅカ=ケンヤのクロスだった。
蝦蛄は海老や蟹と同じ甲殻類であり、一見するば海老に似ているが全く違う。
体節、触覚、額角、分節、胸肢、鰓、抱卵行動など比べてもかなりの違いがある。
そんな蝦蛄の一番特徴的な部位が捕脚。
採餌用に特化した顎脚で、蟷螂の鎌を逆さまにしたような造形を持っている。
この捕脚を繰り出す事で、獲物にダメージを与えるのだが、種類により射出方法が違う。
泳いでいる魚を捕える、鎌を開きながら射出する刺撃と、対硬い甲殻の貝や蟹を砕く、鎌を閉じたままで射出する打撃に分かれる。
そんな中でモンハナシャコは打撃型に属し、その打撃のスピードは凄まじく、約20メートル毎秒、平均運動継続時間2.7ミリ秒、最大加速度約105メートル毎秒毎秒。簡単に言えば、二十二口径の拳銃に匹敵。
あまりの速さに対象に当った所の水は瞬時の圧力差によりキャビテーション(約500ニュートン)――液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象――が起こして沸騰し、打撃(400-1500ニュートン)の直でそれに匹敵するほどの二回目の衝撃を与える。
それが人間大に強化されるのだ。
その威力はとんでもない事になる。
軽いジャブで相手をズタズタにし、ストレートパンチで相手を内蔵を骨ごと砕く。
だからこそ人形はその場にいなかった。
木を何本も薙ぎ倒して吹っ飛んでおり、その胴体には大きな穴が空き、その手には砕け散ったビッグナイフがあった。
オノヅカは相手の攻撃ごとその拳で殴り砕いたのだ。
「脆い……」
そう呟いたオノヅカ。
それにエンバはボソリと呟く。
「
【TIPS:防御魔法】
(#ー#)<光属性の近縁。対霊、浄化などの聖に対し、こっちは防御と抵抗。
(・▽・)<光〇壁?
(#ー#)<言うな!? オホン。 特定の攻撃に対する抵抗を付与したり、
(#ー#)<防御障壁を張ったりする。
(㈩*㈩)<ねえ。カナタが使う反射は?
(#ー#)<アレも含む。けど、使い手はほとんどいない。
(㈩*㈩)<何で?
(#ー#)<見極め、調整、タイミングの問題だ。
(㈩*㈩)<……なるほど。
(#ー#)<だからこそ、よく使うあの女も強敵相手には被弾はしてる。