冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【コソコソ話】
(#ー#)<ムシャコウジ一族は何かしらの蟲のチカラを借りてる。

(#ー#)<まあこの蟲ってのは範囲が広い。

(・▽・)<哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類以外含む感じですか?

(#ー#)<ああ。分派した一家は甲殻類を含んでいるし。

(#ー#)<もう片方は蜈蚣とかの多足類も含んでいる。

(#ー#)<そして、今まで登場した蟲灼晃而一族の名前持ち五人。

(#ー#)<エンバ、ショウ、ネムの三人は昆虫。ゼンゾウとギイは違う。

(#ー#)<……この二人の場合、昆虫じゃない。

(㈩*㈩)<じゃあ何?

(#ー#)<それは追々明らかになる。因みにネムって奴は蚊だ。正確にはネムリユスリカ。

(・▽・)<……弱そうですね。

(#ー#)<テ〇フォーマーズのアイツ、滅茶苦茶強いだろう?

(㈩*㈩)<アレ多分、本人の強さ。


一八七

 だが彼からは怒りと殺気の圧が漏れ出ている。

 心の弱い者なら気絶、波大抵の強者ですら動けなくなるだろう。

 それにエンバは声をかける。

 

「落ち着け。ジジイ」

「……」

「長老」

 

 ショウも声を掛けた。

 二人から声を掛けられ、ゼンゾウの怒りと殺気の圧が少しずつ弱まっていく。

 暫くして。

 

「すまんの。自分の不甲斐なさと、相手に怒っていた」

 

 そう言った。

 

 そのタイミングで老婆が入って来た。

 手にはお茶とお菓子が乗った盆。抹茶と栗羊羹。

 

 この人物は使用人の一人であり、かなりの古参。御年九十近く。

 当主とも長い付き合いであるので、先程の威圧に耐えていた。

 

「どうぞ」

「……すまんの」

「いえ。慣れておりますので」

 

 ウフフと笑う老婆。

 そして、退室した。

 

 クールダウンした所で話が再開する。

 

「それで? これからどうすんだ?」

 

 栗羊羹を齧りながら、エンバが聞いた。

 

「やつがれも後始末が終わりましたので……」

 

 そう言ってからジロリとエンバを見るショウ。

 それに目線を逸らすエンバ。

 

「エンバに合流します」

「ああ、そうしてくれ」

 

 それにショウは軽く微笑んてからお茶をすする。

 色々な報告で手応えのある敵が多いと聞いて血が騒いでいたのだ。

 穏やかそうであるが、そこは蟲灼晃而一族。

 血の気も多い。

 

 すると中に居た他の面々も口々に言う。

 

(おさ)。自分も出たいです」

「あ、ずるいぞ。こっちだって思いっきり戦いたい」

「それより黒幕を根こそぎしないと」

「それもそうだけど、気になるだろう」

「……何が?」

「エンバですら手こずった奴がいるそうじゃないか。腕が鳴る」

「あん?」

 

 中に居た他の一族の者からもそんな声が上がる。

 

 蟲灼晃而一族は暗殺者ではあるが、本質は戦闘者。

 自分達一族の細胞が良い様に利用されているのは怒りがある。

 だが、やはり強い者と戦いたいのだ。

 

 そんな意見にゼンゾウは口を開く。

 

「お主らの意見もわかる。総力戦も選択肢にある」

「「では」」

「じゃがのう……」

 

 遠い目をするゼンゾウ。

 

「ドラグ真龍拳は消滅、イデア百獣拳は衰退。三奇拳はワシらだけになってしもうた」

「……総力戦ではこちらが全滅もしくは衰退の可能性があると?」

「あくまで可能性じゃ。それに組織同士の戦いで横っ面を殴られて壊滅なんて事はザラじゃ」

 

 儂はそれを幾つも見て来た、と彼(?)は続けた。

 

「じゃからこそ……」

 

 一拍置くと、長老はこう言う。

 

「儂が行く」

 

 その言葉に一同は静まり返る。

 暫くの静寂後……。

 

「ジジイ。ボケたか?」

 

 エンバがこう言った。

 

「……正気ですか?」

 

 ショウまでそう言った。

 

 それを皮切りにその他の面々も口々に言う。

 

「何を考えているですか!?」

「当主は奥でふんぞり返って、顎で指示を下すの仕事ですよ!」

「少なくとも最後まで生き延びなければならないでしょう!」

 

 そんな声々をゼンゾウは目をつぶり黙って聞いていたが……

 

「喝!」

 

 咆える。

 それに一同静まり変える。

 

「今回はそれほどの事態じゃ。それに……」

 

 一拍置いて続ける。

 

「儂はな……長く生き過ぎた」

 

 そして独白が始まる。

 

「始めにアマリ様を見送った」

 

 アマリ。ムシャコウジ=アマリ。

 蟲灼晃而一族の始まり。

 実は病で早逝している。

 

「その息子、孫、ひ孫、玄孫達を見送って来た」

 

 無関係な者がこの言葉を聞いたら、気が狂ったのかと思うだろう。

 だが、この場の全員は知っている。

 それが本当の事だと。

 

「一族の誰かが死ぬのを見るのは沢山じゃ。総力戦となればなおさらじゃ」

 

 一族総出で戦えば高い確率で勝利可能。

 だが、確実に死傷者は出る。

 そして、横っ面を殴られる可能性が高い。

 

「じゃからこそ、儂が出る」

 

 そう言って彼は隅に座している一人の中年男性に声をかける。

 

「幸い次期当主は決まっておる」

「……」

「ネム」

「え!? 私ですか!?」

 

 いきなり振られて驚く中年男性。

 うだつ上がらないサラリーマンを彷彿とさせる。

 この人物こそはムシャコウジ=ネム。

 

「そうじゃよ。お主以外おらん」

「いやいやいやいやいや」

 

 いやが多い。

 腰が結構低い人物であり、使用人にすら敬語で話す。

 

「無理ですよ! 他にも候補はいるでしょう! エンバさんはともかく」

「あん? 殺すぞ?」

「ひぇ! す、すみません」

 

 怯えながら続ける。

 

「ショウさんとか、ギイさんとか、他にも居ますよ?」

 

 それにショウが微笑みながら言葉を続ける。

 

「いえ、貴方が適任だと思いますよ? ショウは論外ですし」

「おい」

「そして、やつがれも、ギイも、トップになるのは無理です」

「ああ」

 

 一人座らず、壁にもたれかかっていた男がそう言う。

 

「ショウに同意見だぜ。ギーは誰かの下で戦うからこそ自分が出せるんだ」

 

 黒い皮ジャンを着た伊達男。

 彼こそがムシャコウジ=ギイだった。

 

「ネム。お前は自分を卑下するがな、ギーはお前が凄いと思うぜ?」

「ど、どこがですか……。私は皆さんのようにそこまで強くないですし」

「言う程弱くはないですよ?」

 

 ショウがこう言う。

 ネムはこれでも一族でも上位に来る強さを持っている。

 

「そして、一族では珍しい穏やかな気質」

「臆病なだけです……」

「その方がいい」

 

 ショウが口を挟んだ。

 

「暴れるだけでは早死にします。……エンバのように」

「おい」

「そうだ。コイツはすぐに死にそうだろう?」

「よし。そんなに喧嘩売ってるなら買ってやる。表出ろテメーら」

 

 青筋を浮かべ立ち上がるエンバ。

 それにギイがまあまあと言う風に前に出る。

 そんな様子をショウは横目で見てから、ネムに向けて続ける。

 

「それにあなたは誰かを見下す事もないし、頭も切れる」

 

 そうでしょう? とショウはこの場の面々に視線を移す。

 すると。

 

「……確かにな」

「頭も良いし」

「普通に良い人だもんな」

「腰が低いけど、頭ごなしに命令しないし」

「指示がムカつかねえし」

「パワハラ、セクハラ、モラハラもしない」

 

 どうやら皆同意見らしい。

 

 そして、ゼンゾウが口を開く。

 

「話は付いた。ネム。お前は今から当主を名乗れ」

「ひょえ!? 今日!?」

「そうじゃ。これから儂は一兵士になる」

「「どこが一兵士!?」」

 

 全員のツッコミをゼンゾウは無視。

 そのまま上座から下がり、ネムの所へ行き……

 

「よっこら」

「ッ!」

 

 片手で持ちあげ

 

「しょういち!」

「わ~!?」

「「古い!?」」

 

 上座にぶん投げる。

 ネムはどうにか器用に着地。

 そして暫く何か言いたげだったが。

 

「わかりました。私が当主です」

「「異議なし!」」

「ですが! 早速ですが指示を出します」

「なんじゃ? 言って置くが……」

「ゼンゾウ様が出るのは止めません。その代わり……」

 

 エンバと向かい合うギイに声をかける。

 

「ギイさん」

「ん?」

「貴方もそちらに回ってください。四人で動いてください」

「……異議はない。了解した」

 

 好戦的に笑うギイ。

 それにゼンゾウがネムへ問う。

 

「大丈夫なのか? 戦力をこれ以上裂かんために儂が出るといったんじゃが……」

「それでもです。総力戦よりマシでしょう?」

「それは……まあ」

「他の皆さんはいつも通りに仕事を受けてください。ただし! 単独行動は絶対に駄目です。いいですね? 皆さん!!」

 

 そうして方針が決まり……

 

「さて蹂躙だ」

「本格的に戦うのは何十年ぶりかのう……」

「暴れますよ」

「ドラマティックに行こう」

 

 四匹の蟲が出張る事と相成った。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「~という訳。だから今の蟲灼晃而一族で最強格の四人が出て来る」

「……そうですか」

 

 モモタの話を聞き終えて、オウカは少しだけほっとする。

 

(良かった。総力戦を選択しないで)

 

 全員が出張ってきたら、色々不味かった。

 あちらだけに任せる訳には行かないうえ、この件で一族に何かあったら後味が悪い。

 

「ところでこの件はエンバさんから聞いたんですか?」

「う~ん、一応そう言えるかな?」

「?」

 

 含みある言い方に首を捻ったオウカ。

 そこへキリコが寄って来て捕捉する。

 

「その人との通話で周りの人が捕捉した」

「ああ、そういう……」

「因みにあーしはその時、丁度近くで聞いてた」

 

 それに納得したオウカ。

 そんな彼にモモタが

 

「サクヅキくん」

「何です?」

「あ~」

 

 何かを言い淀んでいる。

 それにキリコが言ってしまう。

 

「それでその人があなたに会いたいんだって」

「俺ぇ?」

「……うん。それともう一人」

「もう一人?」

 

 誰だ? と首を捻るオウカにモモタはその名を告げる。

 それにオウカは一瞬きょとんとした後……

 

「あ~。そういえば直接礼を言いたいとか言っていたような……」

 

 思い出して納得した。

 

「と言う訳で連絡頼める?」

「わかりました」

 

 そういう訳で端末を出して電話をする事にした。

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 そして放課後。

 オウカがやって来たのは料亭。

 結構高そうな場所。

 

「ここか……」

「そうみたいですね」

「こういう所初めて」

 

 そんな事を言ったオウカへ答えたのは……

 

「私も似たようなものです」

 

 シワス=ミユだった。

 

 そもそもB細胞の発端は、彼女の所属していた殺し屋組織のボスがそれを使った事である。

 だからこそ、彼女が呼ばれた訳だった。

 

「似たようなってどういう事?」

 

 オウカの疑問にミユは苦笑して答える。

 

「ほら、私の仕事で、ターゲットがこういう所に居る事があって」

「……納得」

 

 理解した所で二人で料亭に入る。

 因みに二人の恰好は制服姿。

 礼服や冠婚葬祭にも使えるので、制服は便利である。

 

 そうして名前と予約してある人の名前を言うと、奥へ通される二人。

 

「……すんなり言って良かった」

「何を想像していたんですか?」

「貧乏人め! って門前払い」

「……そんな所あるんですか?」

「向こうじゃあったらしい」

「……法も治安もあったもんじゃないと所と比べないでください」

 

 ごもっとも。

 

 そしてオウカとミユが案内を受けてやって来たのは奥の部屋。

 後で知った事だが、一番大きく高いVIP専門の部屋だそうだ。

 

「ここでございます」

「ここか」

「ここみたいね」

「左様でございます」

 

 そうして襖を開けると、そこには四人の人間がいた。

 

「よう、サクヅキ」

「エンバさん。この間ぶりです」

「おう」

 

 手を挙げて挨拶したのはいつものサングラスをした柄の悪そうな男。

 ムシャコウジ=エンバ。

 

「エンバ。彼が?」

「ああ。今回の発起人……になるのか?」

「そうですか」

 

 エンバに話しかけた人物が立ち上がる。

 黒縁の眼鏡をかけている穏やかそうな人物。

 オウカの所まで来て自己紹介をする。

 

「やつがれはムシャコウジ=ショウです」

「……ご丁寧にどうも。俺はサクヅキ=オウカです(。この人が堅物眼鏡かな?)」

 

 そんな事を思っていると、もう一人が挨拶する。

 

「ギーはムシャコウジ=ギイだ。……ダンディだねぇあんちゃん」

 

 それは皮ジャンにサングラスをした伊達男。

 サングラスはエンバの物に比べて色が濃い。

 

「そ、そうですか? (ダンディって初めて言われた)」

 

 オウカは可愛いとかは言われる事が多い。偶に恰好良いとも言われる。

 そんな彼は少し戸惑いながら、後一人に目を移す。

 

 そこに居るのは形容しづらい人物。

 中性的で男女どちらかわからず、年齢もわからない。

 若そうとも言えるし、年を取っているとも言える。

 分かる事は一つ。

 

(只者じゃなさそう……)

 

 そんな事を思っていると、ギイがオウカの横にいるミユに目を移す。

 

「ところで、そこのセクシーな姉ちゃんは誰だい?」

「私はシワス=ミユです」

 

 自己紹介してから説明しようとすると……

 

「この人があの細胞の件の情報をくれたんじゃよ」

「「!」」

 

 性別不詳、年齢不詳の人物が口を開く。

 

「申し遅れたの。儂はムシャコウジ=ゼンゾウ」

 

 一拍置いて続ける。

 

「蟲灼晃而一族の前の当主じゃ」

「「前!?」」

 

 流石に驚くオウカとミユ。

 一体何歳なんだと思う二人へ、一族の三人がこう言う。

 

「ジジイはな、大転換前どころか、江戸時代くらいから生きてるらしいぜ?」

「何でも初代当主からずっと見送って来たとかなんとか……」

「正確な年齢は本人も忘れているそうだぜ」

 

 三者三様の言葉。

 

「……儂を妖怪か何かと思ってるのかのう?」

「「似たようなもの」」

 

 三人の言葉が重なった。




【コソコソ話】
(㈩*㈩)<……ねえ。このゼンゾウって人……何歳?

(#ー#)<本人も覚えていないが、少なくとも江戸時代位から生きてる。

(#ー#)<因みに、蟲灼晃而一族の初代当主の孫にあたる。

(・▽・)<……なんで生きてるんですか?

(#ー#)<力の源の蟲の特性と……バグ。

(㈩*㈩)(・▽・)<バグ!?

(#ー#)<それについてはいずれ。

(#ー#)<因みに、古い歴史のノーブルだと、こういう怪物がチラホラいる。

(#ー#)<四桁生きている化け物もいるとか、居ないとか……

(㈩*㈩)<こいつら人間やめてる~♪ どないなっとんねん~♪

(・▽・)<……そういう貴方も人間やめてますけどね。

(㈩*㈩)<……。

(#ー#)<そう言えば!? こいつも結構年いってたな!?
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