(#ー#)<蟲灼晃而一族の三代目当主にして、数百年生きる大怪物。
(#ー#)<実は両性具有。生殖機能は……ある。
(・▽・)<……つまり孕ませる事も、孕む事も出来る……と?
(#ー#)<言い方!? ……まあ間違ってはねえ。
(#ー#)<だが、数人産んで産ませた段階で生殖機能が突如として無くなった。
(・▽・)<なぜ?
(#ー#)<わからん。ただそれと同時に年を取らなくなったそうだ。
(㈩*㈩)<不老になった代償だね。人は死ぬから子孫を残そうとするんだから。
(#ー#)<……。
(・▽・)<そういえば、今更なんですけど……
(㈩*㈩)<何?
(・▽・)<マユさんって子供産めるんですか? 冥刀化してますけど。
(#ー#)<そういえば……。あの蟻女もそうだよな。
(㈩*㈩)<……わからない。……今度確かめてみる。相手はいるし。
(・▽・)<何をする気ですか!?
(#ー#)<別サイト行きになるぞ!?
■□■□
ゼンゾウとキシタニの戦いは、決着が付きかけていた。
ゼンゾウが声を掛ける。
「……よく」
その体に傷一つない。
「よくここまで持ったのう……」
これと言って消耗もない。
それに答えるキシタニは……
「はん……」
身体中傷だらけ。
「まだ現役だから……な」
消耗も激しい。
考えてみればこの結果は当然。
ゼンゾウは三奇拳の一つであるバグズ界蟲拳の使い手。
当主であったが、毎日の稽古と鍛錬は欠かしていない。
しかも、稽古はただの稽古ではない。
実戦形式の稽古をしており、下手をしなくても死にかねないものをこなしている。
キシタニは暴力団の組長。
下っ端の頃に、戦い方は兄貴達から習ってはいるが、流石にその稽古は三奇拳程の苛烈さはない。
カチコミなどもしてきたが、最近はしていない。
今でも、体は鍛えているが、そこまででもない。
質も量も比べ物にならない。
だが、それでもキシタニは食い下がった。
麻薬の力、今までの経験、アーティファクトなどなど。
だからこそ、瞬殺されずまだ生きている。
(まだか……まだなのか)
そして、もう一つ。
キシタニは勝とうとはしていなかった。
時間稼ぎとしての守りに徹していた。
だからこそ、この結果。
「ま、良く持ったほうじゃ。苦しみなく殺してやろう」
その言葉と共に、ゼンゾウは足を上げ、踏みしめる。
「!?」
それを横っ飛びに回避するキシタニ。
その一瞬後、彼が居た場所に巨大なエネルギーで出来た足が落ちて来る。
これは
ゼンゾウはこれを得意としている。
……“クマ”ムシだからだろうか。
「やはり身体能力だけでなく、感覚も鋭くなっているのう……」
その言葉と同時、ゼンゾウは駄々をこねるように足を何度も踏みしめる。
それと同時、エネルギーの足が幾つも幾度も落ちて来る。
「うおおおおおお!?」
キシタニはそれを回避、回避、回避。
だが、完全に避けきれず掠る。
それでも必死に避ける。
動きを止めたら……死ぬ。
(まだか……まだなのか!?)
他の場所では生きている組員達が他の三人相手に戦っていた。
今残っているのは幹部クラスなので、鎧袖一触されずに何とか生き延びているがボロボロ。
もう時間がない。
その時だった。
「「お待たせしました!!」」
声が響いた。
それはある者を取りに行かせていた舎弟達の声。
その声と同時、現れたのはロボット、ゴーレム、オートマタ。
今までも何機か居たのでそこは問題ではない。
問題は……
「「多!?」」
思わずエンバとショウがツッコミを入れた。
数が桁違いに多い。
倍程度ではない、十倍以上はいる。
「へえ……」
「ほう」
一方のギイとゼンゾウはまだあったかというような声を漏らした。
そして、キシタニはそれを見て一旦下がる。
追おうとするゼンゾウだったが、そこへ機甲軍団が盾になるため追う事が出来ない。
「……逃げるのかのう?」
「一時退くだけだ」
ゼンゾウの嫌味もなんのその。
その顔には希望の光がある。
そのままキシタニは回復をし始める。
(まだ何かありそうじゃの)
そう思っていると、機甲軍団が襲い掛かって来る。
それらを蹴散らしていると……
「おやっさん!」
「おう。待ってたぜ」
ミズタが走り寄って来た。
その手には奇妙な機械を持っている。
エンバはそれに見覚えがあった。
「ありゃあ……」
「……見覚えがありますか? エンバ」
ショウが訊ねた。
勿論、戦闘しながら。
それにエンバも戦いながら答える。
「この間戦ったゴーレムの動力炉に似ている」
「似ている? そのものじゃねえのか?」
ギイの問いかけ。
彼はオートマタの攻撃を受け流しながら訊ねて来た。
それにエンバは記憶から引っ張り出しながら答える。
「いや違う。大きさがデカい。それと見た目がシンプルだった。あんなゴテゴテしてなかった」
「つまり……それ以外の機能があると見たほうが良いのう」
ゼンゾウが総括した。
勿論彼? 彼女? も戦闘中。
どうにかキシタニへ近づこうともしているが、機甲軍団のせいで近づけない。
(この状況で出した……と言う事は何かありそうじゃが……)
ゼンゾウの長年の勘が告げている。
何の策もなく、機甲軍団をこのまま倒し続けると不味い。
だが、倒さないという訳にはいかない。
「……是非もない。痛し痒しじゃのう」
溜息を吐いて、近くにいたオートマタは砕いた。
******
一方、≪岸谷組≫の面々は機甲軍団が暴れている隙にどうにか集まっていた。
沢山いた構成員はもう十人もいない。
(……こうなるとはな)
完全にケジメ案件だな、とキシタニは思っていた。
そんな事を思っていると、生き残りの一人が話しかけて来る。
「おやっさん」
「……なんだ?」
「自分を責めないでください」
「……」
思わぬ言葉に無言になる。
そこへ他の面々も励ましてくる。
「おやっさんは間違ってません!」
「そもそも何も食えなきゃ、仁義も任侠も無理ですよ」
「死んだ面々は親父を恨んでませんよ」
「……」
その言葉に少しだけ救われた。
これが後押しになり、ある決断をする。
「(決めた。)よし」
「「?」」
「「どうしました?
「オメェら命令だ」
「「はい、なんでしょう!」」
「スポーツドリンク買ってこい」
「「は?」」
いきなり意味不明な命令。
それにほぼ全員の目が点になる。
そして、反論する。
「そ、それは今でなくても良いでしょう!」
「こんな時に言わなくても……」
「今は戦闘中ですよ!」
唯一何かわかった顔をしたのは、一番付き合いが一人。
「……」
「……」
彼はキシタニとアイコンタクト。
そして、背を向ける。
「行くぞお前ら」
「は!?」
「でも、おやっさんが」
反論する組員に彼は続ける。
「渡世では親の命令は絶対だ。行くぞ!」
「でも」
「しかし」
「でもも何もない! 行くぞ!」
そのまま彼は生き残りを連れ、行こうとしない下っ端を引っ掴み連れて行った。
「逃がさんぞ」
「命惜しくば置いてけ」
ゼンゾウとエンバが動く。
ゼンゾウは腕の関節を外す事でリーチを伸ばし、エンバは高速移動で追いかけようとする。
だが、その前に機甲軍団が出て来る。
「チィ!」
「邪魔だ。どけ! ガラクタ共」
壊され、砕かれてしまう機甲軍団。
だが、生き残りを逃がす事に成功した。
それにキシタニは安堵の息を吐く。
「フウ……」
そんな彼の耳に入ったのは拍手の音。
音の先を見ると、それはギイ。
拍手をしていた。
「自分を犠牲に部下を逃がすか。良い覚悟じゃねえか」
「そりゃあどうも」
彼は敵であれ、敬意を払う。
そんな彼にショウはこう言う。
「ですが、わかってますか? 貴方一人になってしまいましたよ?」
「……」
「それに……自慢のロボももういませんね」
沢山いた機甲軍団はもう全滅していた。
組員への時間稼ぎに使ったのが、最後だった。
だがそれにキシタニは笑う。
「いや、これでいいのさ」
そして、手に持った奇妙な機械を掲げて咆える。
「さあ、決戦だ。オレの最後の花道だ!」
その言葉と同時、機械が光った。
それと同時だった。
「……?」
一番初めに気づいたのはショウ。
彼は鳴く虫を元にした蟲のチカラを持つからこそ、耳が良い。
……こういう傾向は一族で多々ある。
それにギイが訊ねる。
「どうした?」
「壊したはずの機械が……震えている」
あまりにも微弱過ぎるので、ショウだからこそ気づけた事。
「あん? どういう事だ?」
エンバの問いに、ショウは首を横に振る。
一方、ゼンゾウは何かに勘づいたらしく、キシタニを見る。
「何かしようとしているのう……」
キシタニはそれに――ニヒルな笑みで答える。
「……さてねえ。邪魔したいんならすればいい」
そして、一族の面々を見て語る。
「相手が何かしら手札を出して来た時にどうするかは人による」
「「……」」
他の面々が無言で先を促す中、ゼンゾウは答える。
「出させる前に潰す奴もいるが、出させてから叩き潰す者もおる」
「やつがれは前者ですね」
「ギーは後者だな」
「オレも後者」
出させてからの方が多い。
それに苦笑してゼンゾウはこう言う。
「儂の場合、どっちもやって来た。それで結論は……」
「「は?」」
「出させてから潰す方が良い」
ゼンゾウの長い人生の教訓だった。
「その心は?」
唯一、出させる前に潰す派のショウが訊ねた。
少しだけ不満げな表情。
それにゼンゾウは答える。
「何かしら対策している者が多いんじゃよ」
そういう手札は時間が掛かったり、何かしら癖があったりする。
だからこそ、万全に使えるようにしている者が多い。
「だからじゃ」
「……納得しました」
ショウは大人しく下がる。
そして、ゼンゾウは改めてキシタニを見て告げる。
「そういう訳じゃ。何かするならやってみよ」
「そうかい……」
その言葉にキシタニは内心安堵していた。
(危ねえ……。邪魔されてたら不味かった)
実は何の対策もしていなかったキシタニ。
長年の経験と嘘で乗り切ったのだ。
とは言え、それはおくびにも出さない。
そして。
「じゃあお望み通り見せてやる」
遂に発動する。
キシタニの手にあった奇妙な機械が光を放つ。
それと同時、周囲に散らばっている機甲軍団の残骸が集まり始める。
そして、それらが彼の周囲を舞って行き……
「これが……最後だ!」
その言葉と同時、残骸が一気にキシタニの方へ引き寄せられる。
そして、ガチャガチャと音を立てて変形していく。
最後に、ガラクタから脱皮、羽化、孵化するかのように何かが出て来た。
暫くしてそこに居たのは……
「ほう、そうなったか」
ゼンゾウが呟いた。
それは巨体を持っていた。
……とりあえず鯨と海豚の違いのように四メートル以上は巨大としておく。そして十メートル超えたら超を付ける。
形状は人型。色々な形状のロボット、ゴーレム、オートマタなどの機甲軍団の残骸が合体しているのに、形は整っている。
ただ、そのせいかあちらこちらが違う色になっている。そのせいかパッチワークロボットとでも言うべき物になっている。
武器は右手に持ったガラクタを集めて作ったような剣。……見た目から切れ味は皆無そう。それ以外は特に無さそうだが……。
それを見た蟲灼晃而の面々はと言えば……
「……なるほどのう」
「そうなったか……」
「今までと似たような感じですけど……」
「気を付けろよ。同じな訳がない」
全員結構冷静に構えている。
逆に何をしているのかと、楽しみにしている感がある。
それに中にいるキシタニは……
『余裕がいつまで持つかな! 喰らえ!』
攻撃を選択。
パッチワークロボット――PRは各所のスリットからミサイルや弾丸を発射する。
それを蟲灼晃而の面々は思い思いの手段で回避する。
エンバはスピードで回避。
ショウは地面に潜行し回避。
ギイは衝撃を受け流す。
ゼンゾウは
そのままPRは近くに居て、動かなかったギイを狙いに行く。
そして、ガラクタの剣を振りかぶる。
(これなら受け流せる!)
ギイはそれに対し不動。
元々、蟲の特性もあり、彼に物理攻撃は効きづらい。特に面の攻撃――打撃――は完全無効で、線の攻撃――斬撃――、点の攻撃――貫通ですらある程度軽減可能。
だからこその選択。
それを地面から様子を伺っていたショウはある事に気づく。
(何でしょう? コレ点…)
ガラクタの剣が奇妙な音を発している。
嫌な予感がする。
だからこそ、地面から顔だけ出して注意する。
「ギイ。避けろ! 何か不味い!」
だがそれにギイは首を横に振る。
「いや、駄目だ。それはギーじゃない」
ギイは自分の理想を持ち、それに従う。
だからこそ、こうなった彼の考えを変えるのは至難の技。
「~~!! どうなっても知りませんよ!」
「安心しろ。自己責任だ。教えてくれてありがとう」
ショウはその場から退避。
そのタイミングでガラクタ剣が振り下ろされた。
【TIPS:機甲軍団】
(㈩*㈩)<ゴーレム、オートマタ、ロボットで構成されている。
(㈩*㈩)<それぞれ特徴がある。
(・▽・)<特徴ですか?
(㈩*㈩)<うん。オートマタはスピード型で両腕がブレードになっている。
(㈩*㈩)<対してロボットはパワー型で銃器で武装している。
(㈩*㈩)<この二つは安価で大量購入可能だったから山程いる。
(・▽・)<ほう。それでゴーレムは?
(㈩*㈩)<こっちはちょっと毛色が違う。まず滅茶苦茶高価。
(・▽・)<どれくらいです。
(㈩*㈩)<一体で前の二つの合計金額より高い。……多少値引きはして貰ったけど。
(・▽・)<何かしら機能があるんでしょう?
(㈩*㈩)<うん。本体は貧弱なんだけど、周囲の無生物から自分と同スペックのゴーレムを量産できる。
(・▽・)<そりゃあ高くなる訳です。