冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

192 / 194
【TIPS:ムシャコウジ=ゼンゾウ】
(#ー#)<蟲灼晃而一族の三代目当主にして、数百年生きる大怪物。

(#ー#)<実は両性具有。生殖機能は……ある。

(・▽・)<……つまり孕ませる事も、孕む事も出来る……と?

(#ー#)<言い方!? ……まあ間違ってはねえ。

(#ー#)<だが、数人産んで産ませた段階で生殖機能が突如として無くなった。

(・▽・)<なぜ?

(#ー#)<わからん。ただそれと同時に年を取らなくなったそうだ。

(㈩*㈩)<不老になった代償だね。人は死ぬから子孫を残そうとするんだから。

(#ー#)<……。

(・▽・)<そういえば、今更なんですけど……

(㈩*㈩)<何?

(・▽・)<マユさんって子供産めるんですか? 冥刀化してますけど。

(#ー#)<そういえば……。あの蟻女もそうだよな。

(㈩*㈩)<……わからない。……今度確かめてみる。相手はいるし。

(・▽・)<何をする気ですか!?

(#ー#)<別サイト行きになるぞ!?


ⅭⅩⅭⅡ

 ■□■□

 

 

 ゼンゾウとキシタニの戦いは、決着が付きかけていた。

 

 ゼンゾウが声を掛ける。

 

「……よく」

 

 その体に傷一つない。

 

「よくここまで持ったのう……」

 

 これと言って消耗もない。

 

 それに答えるキシタニは……

 

「はん……」

 

 身体中傷だらけ。

 

「まだ現役だから……な」

 

 消耗も激しい。

 

 考えてみればこの結果は当然。

 

 ゼンゾウは三奇拳の一つであるバグズ界蟲拳の使い手。

 当主であったが、毎日の稽古と鍛錬は欠かしていない。

 しかも、稽古はただの稽古ではない。

 実戦形式の稽古をしており、下手をしなくても死にかねないものをこなしている。

 

 キシタニは暴力団の組長。

 下っ端の頃に、戦い方は兄貴達から習ってはいるが、流石にその稽古は三奇拳程の苛烈さはない。

 カチコミなどもしてきたが、最近はしていない。

 今でも、体は鍛えているが、そこまででもない。

 

 質も量も比べ物にならない。

 だが、それでもキシタニは食い下がった。

 麻薬の力、今までの経験、アーティファクトなどなど。

 だからこそ、瞬殺されずまだ生きている。

 

(まだか……まだなのか)

 

 そして、もう一つ。

 キシタニは勝とうとはしていなかった。

 時間稼ぎとしての守りに徹していた。

 だからこそ、この結果。

 

「ま、良く持ったほうじゃ。苦しみなく殺してやろう」

 

 その言葉と共に、ゼンゾウは足を上げ、踏みしめる。

 

「!?」

 

 それを横っ飛びに回避するキシタニ。

 その一瞬後、彼が居た場所に巨大なエネルギーで出来た足が落ちて来る。

 これは闘氣(オーラ)の技であり、他の三奇拳も使う事が出来る。

 ゼンゾウはこれを得意としている。

 ……“クマ”ムシだからだろうか。

 

「やはり身体能力だけでなく、感覚も鋭くなっているのう……」

 

 その言葉と同時、ゼンゾウは駄々をこねるように足を何度も踏みしめる。

 それと同時、エネルギーの足が幾つも幾度も落ちて来る。

 

「うおおおおおお!?」

 

 キシタニはそれを回避、回避、回避。

 だが、完全に避けきれず掠る。

 それでも必死に避ける。

 動きを止めたら……死ぬ。

 

(まだか……まだなのか!?)

 

 他の場所では生きている組員達が他の三人相手に戦っていた。

 今残っているのは幹部クラスなので、鎧袖一触されずに何とか生き延びているがボロボロ。

 もう時間がない。

 

 その時だった。

 

「「お待たせしました!!」」

 

 声が響いた。

 それはある者を取りに行かせていた舎弟達の声。

 その声と同時、現れたのはロボット、ゴーレム、オートマタ。

 今までも何機か居たのでそこは問題ではない。

 問題は……

 

「「多!?」」

 

 思わずエンバとショウがツッコミを入れた。

 

 数が桁違いに多い。

 倍程度ではない、十倍以上はいる。

 

「へえ……」

「ほう」

 

 一方のギイとゼンゾウはまだあったかというような声を漏らした。

 

 そして、キシタニはそれを見て一旦下がる。

 追おうとするゼンゾウだったが、そこへ機甲軍団が盾になるため追う事が出来ない。

 

「……逃げるのかのう?」

「一時退くだけだ」

 

 ゼンゾウの嫌味もなんのその。

 その顔には希望の光がある。

 そのままキシタニは回復をし始める。

 

(まだ何かありそうじゃの)

 

 そう思っていると、機甲軍団が襲い掛かって来る。

 それらを蹴散らしていると……

 

「おやっさん!」

「おう。待ってたぜ」

 

 ミズタが走り寄って来た。

 その手には奇妙な機械を持っている。

 エンバはそれに見覚えがあった。

 

「ありゃあ……」

「……見覚えがありますか? エンバ」

 

 ショウが訊ねた。

 勿論、戦闘しながら。

 それにエンバも戦いながら答える。

 

「この間戦ったゴーレムの動力炉に似ている」

「似ている? そのものじゃねえのか?」

 

 ギイの問いかけ。

 彼はオートマタの攻撃を受け流しながら訊ねて来た。

 それにエンバは記憶から引っ張り出しながら答える。

 

「いや違う。大きさがデカい。それと見た目がシンプルだった。あんなゴテゴテしてなかった」

「つまり……それ以外の機能があると見たほうが良いのう」

 

 ゼンゾウが総括した。

 勿論彼? 彼女? も戦闘中。

 どうにかキシタニへ近づこうともしているが、機甲軍団のせいで近づけない。

 

(この状況で出した……と言う事は何かありそうじゃが……)

 

 ゼンゾウの長年の勘が告げている。

 何の策もなく、機甲軍団をこのまま倒し続けると不味い。

 だが、倒さないという訳にはいかない。

 

「……是非もない。痛し痒しじゃのう」

 

 溜息を吐いて、近くにいたオートマタは砕いた。

 

 

 ******

 

 

 一方、≪岸谷組≫の面々は機甲軍団が暴れている隙にどうにか集まっていた。

 沢山いた構成員はもう十人もいない。

 

(……こうなるとはな)

 

 完全にケジメ案件だな、とキシタニは思っていた。 

  そんな事を思っていると、生き残りの一人が話しかけて来る。

 

「おやっさん」

「……なんだ?」

「自分を責めないでください」

「……」

 

 思わぬ言葉に無言になる。

 そこへ他の面々も励ましてくる。

 

「おやっさんは間違ってません!」

「そもそも何も食えなきゃ、仁義も任侠も無理ですよ」

「死んだ面々は親父を恨んでませんよ」

「……」

 

 その言葉に少しだけ救われた。

 これが後押しになり、ある決断をする。

 

「(決めた。)よし」

「「?」」

「「どうしました? 親父(おやっさん)」」

「オメェら命令だ」

「「はい、なんでしょう!」」

「スポーツドリンク買ってこい」

「「は?」」

 

 いきなり意味不明な命令。

 それにほぼ全員の目が点になる。

 そして、反論する。

 

「そ、それは今でなくても良いでしょう!」

「こんな時に言わなくても……」

「今は戦闘中ですよ!」

 

 唯一何かわかった顔をしたのは、一番付き合いが一人。

 

「……」

「……」

 

 彼はキシタニとアイコンタクト。

 そして、背を向ける。

 

「行くぞお前ら」

「は!?」

「でも、おやっさんが」

 

 反論する組員に彼は続ける。

 

「渡世では親の命令は絶対だ。行くぞ!」

「でも」

「しかし」

「でもも何もない! 行くぞ!」

 

 そのまま彼は生き残りを連れ、行こうとしない下っ端を引っ掴み連れて行った。

 

「逃がさんぞ」

「命惜しくば置いてけ」

 

 ゼンゾウとエンバが動く。

 ゼンゾウは腕の関節を外す事でリーチを伸ばし、エンバは高速移動で追いかけようとする。

 だが、その前に機甲軍団が出て来る。

 

「チィ!」

「邪魔だ。どけ! ガラクタ共」

 

 壊され、砕かれてしまう機甲軍団。

 だが、生き残りを逃がす事に成功した。

 それにキシタニは安堵の息を吐く。

 

「フウ……」

 

 そんな彼の耳に入ったのは拍手の音。

 音の先を見ると、それはギイ。

 拍手をしていた。

 

「自分を犠牲に部下を逃がすか。良い覚悟じゃねえか」

「そりゃあどうも」

 

 彼は敵であれ、敬意を払う。

 そんな彼にショウはこう言う。

 

「ですが、わかってますか? 貴方一人になってしまいましたよ?」

「……」

「それに……自慢のロボももういませんね」

 

 沢山いた機甲軍団はもう全滅していた。

 組員への時間稼ぎに使ったのが、最後だった。

 

 だがそれにキシタニは笑う。

 

「いや、これでいいのさ」

 

 そして、手に持った奇妙な機械を掲げて咆える。

 

「さあ、決戦だ。オレの最後の花道だ!」

 

 その言葉と同時、機械が光った。

 それと同時だった。

 

「……?」

 

 一番初めに気づいたのはショウ。

 彼は鳴く虫を元にした蟲のチカラを持つからこそ、耳が良い。

 ……こういう傾向は一族で多々ある。

 

 それにギイが訊ねる。

 

「どうした?」

「壊したはずの機械が……震えている」

 

 あまりにも微弱過ぎるので、ショウだからこそ気づけた事。

 

「あん? どういう事だ?」

 

 エンバの問いに、ショウは首を横に振る。

 一方、ゼンゾウは何かに勘づいたらしく、キシタニを見る。

 

「何かしようとしているのう……」

 

 キシタニはそれに――ニヒルな笑みで答える。

 

「……さてねえ。邪魔したいんならすればいい」

 

 そして、一族の面々を見て語る。

 

「相手が何かしら手札を出して来た時にどうするかは人による」

「「……」」

 

 他の面々が無言で先を促す中、ゼンゾウは答える。

 

「出させる前に潰す奴もいるが、出させてから叩き潰す者もおる」

「やつがれは前者ですね」

「ギーは後者だな」

「オレも後者」

 

 出させてからの方が多い。

 それに苦笑してゼンゾウはこう言う。

 

「儂の場合、どっちもやって来た。それで結論は……」

「「は?」」

「出させてから潰す方が良い」

 

 ゼンゾウの長い人生の教訓だった。

 

「その心は?」

 

 唯一、出させる前に潰す派のショウが訊ねた。

 少しだけ不満げな表情。

 それにゼンゾウは答える。

 

「何かしら対策している者が多いんじゃよ」

 

 そういう手札は時間が掛かったり、何かしら癖があったりする。

 だからこそ、万全に使えるようにしている者が多い。

 

「だからじゃ」

「……納得しました」

 

 ショウは大人しく下がる。

 そして、ゼンゾウは改めてキシタニを見て告げる。

 

「そういう訳じゃ。何かするならやってみよ」

「そうかい……」

 

 その言葉にキシタニは内心安堵していた。

 

(危ねえ……。邪魔されてたら不味かった)

 

 実は何の対策もしていなかったキシタニ。

 長年の経験と嘘で乗り切ったのだ。

 とは言え、それはおくびにも出さない。

 

 そして。

 

「じゃあお望み通り見せてやる」

 

 遂に発動する。

 

 キシタニの手にあった奇妙な機械が光を放つ。

 それと同時、周囲に散らばっている機甲軍団の残骸が集まり始める。

 そして、それらが彼の周囲を舞って行き……

 

「これが……最後だ!」

 

 その言葉と同時、残骸が一気にキシタニの方へ引き寄せられる。

 そして、ガチャガチャと音を立てて変形していく。

 最後に、ガラクタから脱皮、羽化、孵化するかのように何かが出て来た。

 暫くしてそこに居たのは……

 

「ほう、そうなったか」

 

 ゼンゾウが呟いた。

 

 それは巨体を持っていた。

 ……とりあえず鯨と海豚の違いのように四メートル以上は巨大としておく。そして十メートル超えたら超を付ける。

 形状は人型。色々な形状のロボット、ゴーレム、オートマタなどの機甲軍団の残骸が合体しているのに、形は整っている。

 ただ、そのせいかあちらこちらが違う色になっている。そのせいかパッチワークロボットとでも言うべき物になっている。

 武器は右手に持ったガラクタを集めて作ったような剣。……見た目から切れ味は皆無そう。それ以外は特に無さそうだが……。

 

 それを見た蟲灼晃而の面々はと言えば……

 

「……なるほどのう」

「そうなったか……」

「今までと似たような感じですけど……」

「気を付けろよ。同じな訳がない」

 

 全員結構冷静に構えている。

 逆に何をしているのかと、楽しみにしている感がある。

 それに中にいるキシタニは……

 

『余裕がいつまで持つかな! 喰らえ!』

 

 攻撃を選択。

 パッチワークロボット――PRは各所のスリットからミサイルや弾丸を発射する。

 それを蟲灼晃而の面々は思い思いの手段で回避する。

 

 エンバはスピードで回避。

 ショウは地面に潜行し回避。

 ギイは衝撃を受け流す。

 ゼンゾウは闘氣(オーラ)を纏い防御。

 

 そのままPRは近くに居て、動かなかったギイを狙いに行く。

 そして、ガラクタの剣を振りかぶる。

 

(これなら受け流せる!)

 

 ギイはそれに対し不動。

 元々、蟲の特性もあり、彼に物理攻撃は効きづらい。特に面の攻撃――打撃――は完全無効で、線の攻撃――斬撃――、点の攻撃――貫通ですらある程度軽減可能。

 だからこその選択。

 

 それを地面から様子を伺っていたショウはある事に気づく。

 

(何でしょう? コレ点…)

 

 ガラクタの剣が奇妙な音を発している。

 嫌な予感がする。

 だからこそ、地面から顔だけ出して注意する。

 

「ギイ。避けろ! 何か不味い!」

 

 だがそれにギイは首を横に振る。

 

「いや、駄目だ。それはギーじゃない」

 

 ギイは自分の理想を持ち、それに従う。

 だからこそ、こうなった彼の考えを変えるのは至難の技。

 

「~~!! どうなっても知りませんよ!」

「安心しろ。自己責任だ。教えてくれてありがとう」

 

 ショウはその場から退避。

 そのタイミングでガラクタ剣が振り下ろされた。

 




【TIPS:機甲軍団】
(㈩*㈩)<ゴーレム、オートマタ、ロボットで構成されている。

(㈩*㈩)<それぞれ特徴がある。

(・▽・)<特徴ですか?

(㈩*㈩)<うん。オートマタはスピード型で両腕がブレードになっている。

(㈩*㈩)<対してロボットはパワー型で銃器で武装している。

(㈩*㈩)<この二つは安価で大量購入可能だったから山程いる。

(・▽・)<ほう。それでゴーレムは?

(㈩*㈩)<こっちはちょっと毛色が違う。まず滅茶苦茶高価。

(・▽・)<どれくらいです。

(㈩*㈩)<一体で前の二つの合計金額より高い。……多少値引きはして貰ったけど。

(・▽・)<何かしら機能があるんでしょう?

(㈩*㈩)<うん。本体は貧弱なんだけど、周囲の無生物から自分と同スペックのゴーレムを量産できる。

(・▽・)<そりゃあ高くなる訳です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。