(#ー#)<ヨーロッパに渡った蟲灼晃而一族……通称西征派。
(・▽・)<その呼び方、良いんですか?
(#ー#)<……。話を戻す。
(・▽・)<あ、話題逸らしましたね。
(#ー#)<うるせえ。……オホン。そこの一族は甲虫や甲殻類系の蟲のチカラを持つ。
(#ー#)<んで、
(㈩*㈩)<確か、体表面が硬くなるんだっけ?
(#ー#)<そう。それにより凄まじい防御力を持っている。
(#ー#)<そして、今回話に出て来たドロローサっていう女はその一族出身。
(#ー#)<しかも最強クラスだから、文句も強く言えない訳だ。
(・▽・)<もしかして……出て来ます?
(#ー#)<……ノーコメント。
(なんでここまでの事を?)
リアのように何かしら狙われる理由があるのだろうか?
そんな事を思っていると、お菓子とお茶を盆に乗せて、ジンナが戻って来た。
「お待たせ」
「あんまり待っていないから大丈夫」
そう言って出されたクッキーを頂く。
程よい甘みで美味しい。
二、三枚食べた当たりでジンナが訊ねて来る。
「紅茶にレモン、砂糖、ミルクは入れる?」
「じゃあレモンと砂糖をお願い」
「わかった」
レモンと砂糖を貰い、それを紅茶に入れ、混ぜながら思う。
(改めて何だろう?)
そんな事を思っていると、ジンナが座る。
オウカの隣に。
「!」
ちょっと驚くが何も言わないオウカ。
「……」
「……」
「「……」」
両者何も言わない。
クッキーを食べ、紅茶を飲む。
そうしてクッキーが無くなり、紅茶も無くなった辺りで……
「ボクね……記憶がないの」
いきなり爆弾発言をかました。
それに少し驚き、オウカは聞く。
「それっていつから?」
「小さな頃の記憶がね。全くないの」
なんでも最初の記憶は十代程から始まるそうだ。
「だからお父さんやお母さんの記憶もない」
「……そっか」
「しかもさ……」
一拍置いて続ける。
「アルバムってあるでしょう?」
「あるな」
「ないの、ウチ」
「……」
それはおかしい。
沈黙したオウカに、ジンナが続ける。
「しかもボクの小さい頃の写真がね……一枚もないの」
「一枚もか?」
「うん。しかも親と一緒に映ったりしているのも」
「それって……」
「確実に何かあるでしょう?」
少し悲しそうな顔をするジンナ。
そんな彼女にオウカは訊ねる。
「ザンカさんには?」
「言っていない」
「……n」
何で? と聞こうかと思ったが、寸前で飲み込んだオウカ。
身内だから聞けない事と言うのはある。
「姉さんに心配かけるのもアレだしね」
姉さん過保護だから、と少し悲しそうに笑った。
そして、その笑みを真面目な顔にして続ける。
「ねえサク君」
「なんだ? ……改まって」
「前のさ、改竄騒動覚えているよね?」
「……忘れられない」
アレは未だに腹が立つ。
歯を噛みしめるオウカにジンナは続ける。
「アレでさ、ボク通じなかったじゃない?」
「そうだな」
「あの装置はね、普通の耐性じゃ防げないみたい。備えを多重にしてるか……」
一拍置いて続ける。
「範囲外しかない」
「範囲外……」
「そう。当事者とターゲット、そして……人間じゃない者」
だから、とジンナはこう言う。
「ボクは……人間じゃないのかもしれない」
その言葉にオウカはどう答えるのか?
ジンナとしては……
(嫌われたり、避けられたり、化け物扱いはないと思うけど)
それでも……怖かった。
オウカと知り合ってからもう一年を超え、過去もある程度は聞いたうえ、人柄もよく知っている。
(励ましてくれたりするのかな?)
その可能性が高いと思っていた。
そして、返ってきた言葉は……
「ジンナが化け物? そんな訳ないだろう」
こんな言葉だった。
「だってボクは……」
「化け物って言うのはさ、ヒトの心が無い奴らを指すんだよ」
彼は思い出していく。
「罪なき人を食い物にする奴とか……」
異世界で会った人物……
「人の皮を被ったケダモノとか……」
特にモンセラートと共に裁いた奴らを。
「他者の命を踏みにじる下衆とか……」
そいつらは決まって自分が悪事を働く事を当然だと思っている。
「人の命を弄ぶ外道とか……」
だからこそ、いつも決まって命乞いをする。
「我欲に溺れる奴とか……」
当然、オウカとモンセラートは許す訳もない。
「……まあ例を挙げるとキリがないけどさ」
そう言ってオウカは隣に座っているジンナの手を握る。
「少なくとも外道畜生鬼畜共と比べれば……人間だよジンナは」
「……流石にそんな奴らと一緒くたにされるのは嫌なんだけど……」
「おっと」
しまった、という顔をするオウカにジンナは思わず少し噴き出す。
そんな彼女にオウカは続ける。
「手を開いてくれるか?」
「うん? ……うん」
ジンナは手を開く。
その手にオウカは手を重ねる。
「指も五本」
じっとジンナを見る。
「眼は二つ、鼻は一つ、口は一つ。腕は二本、足は二本。そして……」
オウカは重ねた手の指を曲げジンナの手を握る。
彼女も釣られたように握り返す。
……俗にいう恋人繋ぎになっている。
「人に優しくできる心がある。だったら人間だよ」
オウカはふっと微笑む。
そして、自嘲する。
「化け物って言うのはな、俺みたいな人間だよ」
そう言って先程挙げた外道畜生の仕置きを思い起こして続ける。
「人を苦しめて殺しても何とも思わず……」
そして、思い返す。
「最初のコロシでも何にも感じなかったような俺のようn」
「言わないで!」
ジンナが遮った。
そして、彼女はもう片方の手をオウカの空いた手を握り続ける。
「ボクが人間なら、キミだって人間だよ。人に優しく出来るんだから」
そう言ってから泣き出しそうな顔をして続ける。
「お願いだから自分を傷つける発言はやめて」
「……悪い」
その言葉にオウカは謝るしかなかった。
そうして暫し沈黙が続く。
「……」
「……」
どちらも何も言わない。
「……」
「……」
ただ手は握り合った状態。
「「……」」
そうしあっていると、視線が交差し、見つめ合う二人。
「「……」」
そのまま距離が近づいて行く。
そして……
………………
…………
……
時刻は真夜中。
オウカは帰る支度をしている。
それを見てジンナは思う。
(姉さん……居なくて良かった)
遅くなると言っていたが、今日は帰って来れないに進化(退化?)した。
「じゃあ帰る」
「泊まって行けば?」
「いい。ザンカさん朝帰りする可能性あるでしょ?」
「確かに……」
見られたら……色々不味い。
そういう訳で、支度を終え、玄関へと向かうオウカをジンナは見送る。
「……ええとさ」
「うん?」
「ボクらの関係ってどうなったのかな?」
「……」
「もうただの友達や仲間……じゃないでしょう?」
オウカは沈黙。
暫くして言葉を絞り出す。
「……。……わからない」
「まあキミの場合、人間関係色々あるものね」
オウカの過去を知っているジンナだから言える言葉。
友達や仲間でもどこまで進んでいるかは人それぞれだった。
殺し合ってばかりのソルドアットやコジュウロウのような関係もあれば、リリアーヌのようにそういう事までやっている人もいる。
「ほっとけ」
そっぽを向くオウカに、ジンナはクスクスと笑って続ける。
「まあさ、友達や仲間のままで良いけど……」
オウカの顔を間近で覗き込んで言う。
「今までよりは好きになってくれると嬉しい」
「……おう」
そして、オウカは玄関の扉を開ける。
「じゃ、またね」
「うん。また」
そう言ってオウカはジンナの家を出た。
人の居なくなった玄関を暫く見つめていたジンナ。
そして。
「ふわ……」
少し欠伸をしてから、自分の部屋に引っ込んだ。
………………
…………
……
そして朝。
朝食のコーンフレークを準備していると……
「ただいまーっす」
ザンカが帰って来た。
「お帰り姉さん」
「ジンナちゃ~ん」
そして、いきなり抱き着いて来た。
「姉さん……苦しい。離れて……」
「成分を補給するっす~」
引き剥がそうとするジンナを抱きしめ続けていたザンカだったが……
「っす?」
突如力が緩む。
その隙にジンナはどうにか離れる。
「……どうしたの?」
「何か別の人の匂いがしたっす」
鋭い。ちゃんとシャワー浴びて体を洗ったのに。
それにジンナは。
「何でもないよ」
そう言って笑った。
そして食事を終え、ジンナは身支度を始める。
それにザンカは疑問に思う。
(アレ? まだ余裕あるっすよね?)
今はまだ早朝と言っても良い時間。
早すぎる。
「ジンナちゃん。学校行くにしては早すぎやしないっすか?」
「ちょっと寄る所があるから」
「寄る所?」
少し間を開けて答えを言う。
「イムロンさんの所」
イムロン。
鬼の鍛冶師である。
「……何か頼んでいたんすか?」
「うん。メンテナンスも頼んでいたから」
そう言って彼女が見せたのは両腕に嵌った鈍色の腕輪。
一見すると、彼女の愛刀である【エスペ・アヴァンチュルーズ】の待機形態のようであるが、実は影打のようなもの。
本物に比べるとスペックは劣るうえ、能力もないが、腕輪への変形機能と補正は高い。
「これでも護身用にはなるけどね……」
「じゃあ、アタシも一緒に行くっす」
「……大丈夫? 寝てないでしょう?」
心配そうなジンナにザンカは笑う。
「人間一晩寝なくても死なないっす」
「そういう問題じゃない気がするけど……」
パフォーマンスの問題があると思う。
だが、ザンカは問題ない、という風に笑い……
「良い機会だから、アタシも【ウルナッハ】のメンテナンス頼むっす」
「……そう」
そういう訳で二人は家を出た。
そのまま道を歩いているとザンカがジンナに話しかける。
「……ジンナちゃん」
「何?」
「最近どうっすか?」
「どうって?」
ふわふわした言い方に首を捻るジンナ。
それにザンカは少し笑ってこう言う。
「ほら変わった事とか、楽しかった事とか……何かあったかな~って思ったっす」
「特にこれと言って」
ない、と続けようとしたジンナ。
だったが、昨日――今日にもつれた事――あった事を思い出し、少し顔を赤らめて続ける。
「……ないよ」
「絶対嘘っす!」
ザンカは目ざとく見破った。
「何かあったすよね!? 一体何したんすか?」
「さあ?」
嘘を言うのは良くない上、下手の事を言うと色々突っ込まれそうなので、そういう答えにしたジンナ。
「本当何があったんすか!?」
「大丈夫。命にはかかわらない」
そんな答えにザンカは考える。
(う~ん……)
この感じだとジンナは恐らく言わないだろう。
とは言え問い詰めるべきだと、勘が言っている。
なので。
「……じゃあこの件は一旦置いておくっす」
「あ、そう」
「代わりに、最近何かあったか教えてもらうっすよ!」
そのまま姉妹は会話をして、目的地へと向かった。
そうして鐵姉妹は人気の無い通りに入り、目的地である廃屋へ辿り着く。
中に入り、階段を降っていると、聞こえるのは鉄打ちの音。
「何か良いっスね。この音」
「うん」
そうしてノックをしてから扉を開ける。
するとそこでは大柄の鬼が熱せられた鉄を打っていた。
彼こそがイムロン。ゴブリンのユニークネームドボスモンスター。
鐵姉妹をチラリと見ると、口を開く。
「暫し待て。もう少しで終わる」
コクリと頷いた姉妹。
そして、五分後。
「……フウ」
一息入れるイムロン。
それにザンカはタオルを渡し、ジンナはお茶を渡す。
「どうぞっス」
「はい」
「……すまんな」
イムロンはそれを受け取る。
そしてタオルで汗を拭き、首に掛け、お茶を一気に飲み干す。
「……フウ。ところで」
彼は訊ねた。
「ジンナは冥刀を取りに来たのはわかる」
「……出来た?」
「ああ、バッチリだ」
「良かった」
ほっとするジンナ。
そんなイムロンは一旦踵を返す。
少しして戻って来たその両手には二つの腕輪――待機形態の冥刀がある。
そして、彼の視線はザンカへ向く。
「それで? お前は何をしに? 付き添いか?」
「それもあるっすけど、ついでに【ウルナッハ】のメンテナンスも頼もうと思ったっす」
「……構わんが、すぐは出来ん」
「いいっス。ゆるりと待つっす」
ザンカはそう言った。
ジンナは受け取った腕輪を双剣に変え軽く素振りする。
「……うん。調子良い」
「ならいい」
そんなイムロンに、ジンナは借りていた腕輪を外して渡す。
この腕輪は双剣になる機能がある。
それ以外にはこれといって能力はないが、補正は高い。
「はい。返す」
彼女としては一時的に借りたつもりだったが……
「いや、いい」
「え」
「持って置け。何かの役に立つだろう」
「……いいの?」
「ああ」
そう言うので、ジンナは返そうと思った腕輪を再び腕に嵌める。
腕輪二つ装備になる。
(ちょっとチャラチャラしてるかな?)
そう思った。
そんな彼女にイムロンは訊ねる。
「コレの使い勝手はどうだった?」
実はジンナに渡した腕輪は気軽に携行出来る武器の試作品。
アクセサリーから武器に変わる。
匣があるのにどうして? と思うかもしれないが、武器を預ける所もあるので、そういう対策で作ったのだ。
「うん。良いと思う」
「そうか。ならもっと作るか」
そう言ったイムロンだった。
【後書】
(・▽・)<さて、どうしたか、どうなったか。それは各自の想像にお任せします。
(㈩*㈩)<どうなったか? どこまでヤったのか? もね。
(#ー#)<これ、あからさまだろ……。