冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【コソコソ話】
(#ー#)<敵二人が使ったのは奥の手だ。味方にすら隠している……な。

(㈩*㈩)<どんなの?

(#ー#)<効果は追々だが、ある程度なら。

(#ー#)<セナヤマが使ったのはクロスの深度を上げた。獣化具合を上げた。

(#ー#)<一部の生物系クルセイダーが使えるな。しかもコイツの場合

(#ー#)<とある制約(ギアス)を設けて更に強化している。

(#ー#)<カマタは畢竟。鎖を体に巻き付けステータスを上昇させる。

(#ー#)<素のステータスが低いからそれを補うためにこうなったようだな。

(㈩*㈩)<それ以外に麻薬も使って強化してるのね。

(#ー#)<ああ。しかもコイツらは今までの奴らとは違う。

(㈩*㈩)<何が違うの?

(#ー#)<それは追々。……まあわかる人はわかる。


ⅭⅩⅭⅨ

 ◇◆◇◆

 

 

 この日、オウカはランニングをしていた。

 

「ハッハッハ……」

 

 オウカは毎日鍛錬は欠かさない。

 戦いの最後に物を言うのは体力だと、彼は思っている。

 

 そうして走っていると……

 

「うん……?」

 

 妙な感覚を感じ取る。

 それは空間の揺らぎ。

 

「なんだぁ?」

 

 常人……どころか普通のプレイヤーでは感じ取る事も不可能。

 なのだが、オウカはかつて時空の冥刀を使っていた影響で、そういうのにはかなり敏感。

 チカラを失いながらもコレは遺った。

 

(行ってみるか……)

 

 そういう訳で行ってみる事にする。

 そうして走っているとある事に気づく。

 

(アレ? この辺にイムロンの鍛冶場の場所?)

 

 嫌な予感が過る。

 

「間に合えよ……」

 

 スピードを上げ、パルクールのように駆ける!

 そして、その近くに行くと、そこには野次馬が大勢いる。

 

「おいおい」

「建物崩れてるじゃねえか」

「何があったんだよ……」

 

 そんな話し声が聞こえる。

 この感じから察するに、恐らくここにいる面々は何が起こったか知らない。

 そして、幸いな事に警察などの組織はまだ来ていない。

 

(イムロンの事バレると面倒だからな。ありがたい)

 

 オウカは気配を消し、野次馬の間を潜り抜け、目的地へ向かう。

 そして、そこは……

 

「嘘だろう……おい」

 

 イムロンの鍛冶場があった場所は完全に崩れ去っていた。

 しかもここの空間はまだ揺らいでいる。

 どうやらここが中心らしい。

 

「何があった!?」

 

 イムロンは強い。

 オウカでも確実に勝てるとは言えない。

 だからこそあった事が信じずらい。

 

「っと、そんな場合じゃねえ」

 

 少しだけ忘我していたオウカだが動き出す。

 このままだと、警察だのが駆けつけて面倒な事になる。

 とりあえずどうなっているかを確認しようと瓦礫の山に近づく。

 その時、ある物が目に入る。

 

「!?」

 

 それは瓦礫からはみ出た、圧し折れた剣の柄らしき物を握った人の腕。

 その腕と柄に見覚えがオウカにはある。

 

「ザンカさん!?」

 

 彼女を掘り出そうとしながら、彼は悟る。

 

(ザンカさん……アレを使ったのか!?)

 

 ザンカの奥の手をオウカは知っている。

 

 それは〈ヴァイオレットクロス〔ステロイド〕〉による筋力強化、【ウルナッハ】の畢竟により空間に摩擦を付けるという二つの合わせ技により引き起こす大規模空間破壊。

 自身にも冥刀にも負担がかかるので、多用出来ない最後の奥の手である。

 

(しかも【ウルナッハ】が折れてる……、いやこれ砕けてる? アレを連発した?)

 

 オウカは前にザンカとした会話を思い出した。

 

 

 △▲△

 

 

 それは結構前の事。

 改竄騒動後の話。

 

「アレ? サクくんじゃないっスか」

「……おや」

「? ……どうしたっス? アタシの事、忘れたっス?」

「いえ覚えてますよザンカさん」

 

 偶然ザンカと会い、夕飯を奢って貰う事になったオウカ。

 場所はラーメンの屋台。

 

「ここ味噌ラーメン一品しかメニューがないっスけど、日本一美味しいっスよ」

「へえ……」

 

 そんな会話に屋台の店主が口を挟む。

 

「バーロー! 世界一だ! 値段上げて量減らすぞ!」

「わ!? 勘弁して欲しいっス」

「……フフ」

 

 そんな会話があった後、出て来たラーメンを啜る。

 

「……美味しい」

「でしょう!」

「何でお前が誇らしげなんだ……」

 

 そんな訳で暫く味噌ラーメンを集中して食べる。

 そして、一杯目を食べ終え、二人揃って替え玉を頼む。

 

「お待ちっと」

「ども」

「っス~」

 

 二杯目は会話をしながら食べる。

 そんな中で、奥の手について話が出た。

 

「サク君って何か奥の手を持ってるっスか?」

「……奥の手ですか?」

「そうッす」

 

 そう言ってザンカは箸を振る。

 

「強力だけど、コストの問題で連発出来なかったり、リスクがあったりする技っス」

「ありますよ」

 

 オウカはそう言う。

 因みにそれは異世界から戻って来た後も、改竄騒動の後も。

 どちらもそういうモノはある。

 

「というかあそこの出身者は何かしら皆何かしら持ってますよ」

「へえっス」

(あそこ? どこの話だ?)

 

 店主が内心首を捻った。

 それに構わずオウカは箸を軽く突き出すようにして続ける。

 

「安定した手札も必要だけど瞬間火力や爆発力が必要な場合もありますから」

「そうっスよね!」

 

 思いっきり同意するザンカ。

 そして、

 

「アタシもあるっス。畢竟とクロスの合わせ技っス」

 

 彼女は自分の手札について話した。

 それを聞いてオウカは一言。

 

「……言って良かったんですか?」

 

 そういう手札は隠しておく物である。

 実際オウカは自分の手札をあまり明かさない。

 身内、仲間、友達にすら明かしていない手札がある。

 というか、プレイヤーは何かしら隠し札があり、それを聞くのはマナー違反となる。

 

「別にサクくんは吹聴しないし……」

 

 チラリと店主を見た。

 

「彼も口が堅いっしね」

「人の秘密を喋る趣味はねえ」

「それが当然」

 

 人の秘密を勝手に人に話す奴は死んだ方が良い。

 三人の意見が一致した。

 

「とと、話がズレたっス」

 

 そう言って箸を剣に見立て軽く素振りするザンカ。

 そして続ける。

 

「大抵一発で事足りるっス。今まではそうだったっスし」

 

 次元系の攻撃は防ぎづらい。

 同系統をぶつけるか、概念で抗うしかない。

 

「というか一発撃つだけでかなり冥刀がズタボロになっちゃうっス」

「つまり……二発目以降は折れる?」

「二発三発ならギリ耐えるっスかね? でもそれ以上は……」

 

 一拍置いて続ける。

 

「折れるだけなら御の字っス」

 

 下手をすれば砕ける。

 しかも……

 

「自己修復が効かない範囲で砕けるっス……多分」

 

 そうなったら最後。冥刀は死ぬ。

 だがその前に……

 

「……そうなる前に縁切られるかもですね」

 

 何度も言っているが、冥刀は自我がある。

 だからこそ、使い手を見限る事例は確認されている。

 ……退職金や違約金代わりに命とかを持って行く、質の悪いのもいる。

 

「まあだから使う事はないっスよ」

 

 そう言って味噌ラーメンの汁を飲み始めたザンカ。

 そんな彼女に声を掛けたのは――店主。

 

「人生ってのは選択の連続だ」

「親父さん?」

 

 ザンカが器から顔を見せる。

 それに構わず店主は続ける。

 

「やっちゃダメな事でもソレをしなければならないって時がある」

 

 そう言うと、ザンカを見て、オウカを見る。

 

「だからお前の場合、大事なモン守るために使う事があるかもな」

「大事な物……」

「ああ。それを使わなきゃならなくなる時がな」

 

 それを聞いてオウカは思う。

 

(この人、色々あったのかもな)

 

 きっと辛い経験をしてきたのだろうと思った。

 

 そうして二人は完食しきってお会計となる。

 

「銀河系一美味しい味噌ラーメンでした」

「兄ちゃん、次来るときタダでいいぜ」

「マジで!?」

「ズルいっス」

 

 そんな会話があった。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 そんな事を思い起こしたオウカ。

 そうしながらも手は緩めず、どうにかザンカを引っ張り出す。

 体はズタボロで、あちこちから出血しており、意識は失っている。

 だが、呼吸はあるし、心臓は動いている。

 

「これならどうにか……」

 

 そのまま手早く応急処置をしていく。

 そんな時……

 

「う……」

 

 ザンカの目が開く。

 

「あ、良かった。今は大人s」

 

 最後まで言えなかった。

 ザンカが起き上がろうとする。

 

「あ、今動いたら駄目d」

「……どいてっス。今行かないで……いつ行くんすか」 

 

 確実に何かがあったようだ。

 

 どうにか立ち上がり歩き出そうとしたザンカ。

 だが、すぐに崩れ落ちる。

 

「ッ!?」

「おっと」

 

 オウカはどうにか受け止めた。

 そして、訊ねる。

 

「何が……あったんですか?」

 

 オウカは溜めて訊ねた。

 何か嫌な予感がする。

 胸騒ぎが止まらない。

 

 そんな彼にザンカは告げる。

 

「ジンナちゃんが……攫われたっス」

「!?」

 

 驚いたオウカ。

 それは幾つもの驚きが混ざっている。

 

 ザンカがここまでの重傷を負った事。

 しかも場所からいってイムロンがいた。

 プレイヤーとモンスターの中でも、屈指の強者である二人が居て、相手を倒せなかったどころか、ジンナを攫われてしまった。

 そして、ジンナがなぜ狙われたのか。

 相手は一体誰なのか?

 色々な考えが頭をぐるぐるする。

 

 そして……

 

(なんで……なんで……)

 

 ザンカを責めそうになる。

 そこに居なかった自分を責めたくなる。

 とは言え、今は……

 

「っ~~!!」

 

 オウカは自分の頭部を思いっきり殴る。

 どうにか落ち着きを取り戻す

 

「よし! 落ち着いた!」

 

 ……思いっきり過ぎて、頭から血が出ているが、あまり気にした様子はない。

 

「ザンカさん。取り敢えず応急処置します」

「で、でも……」

「闇雲に動いた所で何も解決しません。今は取り敢えず治療を……」

 

 その言葉にどうにか起き上がろうとしていたザンカが止まる。

 そして、そのまま意識を失った。

 

「……気力だけで立ってたんだな」

 

 そう呟いたオウカは応急処置を再開する。

 それと同時並行で、端末を使って連絡を入れる。

 まずは自身の相棒。

 

「マユ」

[急にどうしたの?]

「俺が居る場所わかるな?」

 

 マユはオウカがどこに居ても場所を把握可能。

 

[わかるけど……]

「自宅へ転移させろ」

[急にどうs]

「いいから!」

 

 オウカの強い言葉に何かがあったらしいと悟り、急を要する事態だと悟ったマユ。

 

[わかった。数分待って]

「遅い。数秒でやれ」

[流石に無r]

 

 最後まで聞かず、端末をオウカは切った。

 そして、同時進行で知り合い全員にメールを送り注意喚起をしていると……

 ガラリと瓦礫が崩れ、誰かが這い出て来た。

 

「サクヅキ……」

 

 その声に聞き覚えがあったので振り向くオウカ。

 

「イムr」

 

 最後まで言えなかった。

 ボロボロだったザンカ以上にズタボロなうえ、体の半分欠損している。

 つまり下半身が消失していた。

 

(コイツは……不味い)

 

 オウカは友達が(闇)医者であり、色々手伝っているのでわかる。

 主要臓器が幾つか無くなっており、出血がひどい。

 ……イムロンは人間ではなく、モンスターであるが、そういう場合も人間と大体は同じなので似たようなもの。

 

「今処置w」

「いい」

 

 オウカの処置を拒否したイムロン。

 

「それより頼みがある」

「頼み……? いやそれよりも処置を」

「いい」

 

 再び首を横に振って拒否。

 そして、彼は言葉を紡ぐ。

 

「最後の頼みがある」

「さ、最後って縁起でもない……」

「わかるんだよ……、オレは長くない」

 

 そして、彼は続ける。

 

「だからやるべき事をやる。だから鍛冶場へ案内してくれ」

「鍛冶場……?」

「ああ。こっちのはもう使えないからな」

 

 鍛冶場が戦場になったうえ、大規模破壊技が放たれたので当然。

 必要な道具は携帯しているので、問題はないが、鍛冶場の設備がないと鍛冶が出来ない。

 

「お前の家には鍛冶場があったろ?」

「ええまあ……」

 

 オウカの家には鍛冶場がある。

 マユは(一応)刀鍛冶なので、かなり本格的な物が存在する。

 

「そこで作業をやらせてくれ……ゴフ」

 

 血を吐くイムロン。

 それにオウカは……

 

「わかりました。そろそろマユの奴が転移してくれると思うので」

「そうか。助かる」

 

 そのタイミングで端末が鳴る。

 出るオウカ。

 

「ようやっとか……」

[転移させるよ。周囲の人も?]

「ああ。頼む」

[じゃあ十秒後に。集まって置いて]

 

 端末が切れる。

 なのでオウカはザンカを抱え、イムロンに触れる。

 

「転移します」

[ああ]

「……」

 

 ザンカは気を失っているので答えなかった。

 そして、三人の姿は消えた。

 それから少しすると警察などの公的機関が駆け付けた。

 

 

 ******

 

 

 オウカ達が転移した場所は、マユの部屋。

 丁度用事があった鍛冶場。

 

「サク? 一体どうs」

 

 最後まで言えなかった。

 ボロボロのザンカと、下半身が無くなったイムロンを見て、ヤバイ事態だと悟る。

 

「い、医者呼ぶ?」

「いや、いいってさ。鍛冶場を貸してくれ」

「え……」

 

 意味がわからないという顔をするマユに、イムロンが声をかける。

 

「頼む。冥刀の刀鍛冶。刹那叢雅。鍛冶場を貸してくれ」

「……いいけど、それより病院に」

「お前も鍛冶師ならわかるだろう? 体よりまず作品だ」

 

 その言葉にマユも同意するしかない。

 なので。

 

「わかった。でもわたしも手伝う」

「……助かる」

「俺も何かする。ネラにも手伝わさせる」

 

 そうして鬼の鍛冶師の最後の仕事が始まった。




【TIPS:契約破棄】
(㈩*㈩)<冥刀の代償で、行動制限がある。破れない場合もあるけど……

(・▽・)<ああ、ヒナタさん!

(㈩*㈩)<うん。それと劇中未登場で記憶系だと、書き留める事すら出来なくなるんだけど……

(㈩*㈩)<モノによっては破れる代償もあるにはある。

(・▽・)<例えば?

(㈩*㈩)<う~ん……、[騎士道に忠実]、[特定の武器以外使用しない]とか。

(㈩*㈩)<後、[攻撃を防御しない、避けない]とか色々。

(・▽・)<ほうほう。では破ったらどうなるのですか?

(㈩*㈩)<冥刀の性格によりけり。見逃してくれるのもあるけど少ない。

(㈩*㈩)<大抵ペナルティがある。

(・▽・)<……まさか死?

(㈩*㈩)<そういうのもある。けど少ない。大抵は見捨てられる。

(㈩*㈩)<後、激痛とか寿命とか。

(・▽・)<……チカラを得た後も大変なんですね。
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