冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【コソコソ話】
(㈩*㈩)<【オートクレール】は今の名前。かつての銘は

(㈩*㈩)<【■■■■■■】。これが幾つも分割された。

(㈩*㈩)<神話・伝説詳しい人ならピンと来る。

(・▽・)<()の能力は簡単に言えば……

(#ー#)<嫌な予感……

(・▽・)<鏡○子の強化付きの雨○前♪

(#ー#)<おい!

(・▽・)<時空操作だから応用範囲が広い。

(㈩*㈩)<ただし時間と空間(二兎)を追ったせいで。

(㈩*㈩)<微妙になっている。他の方がまだ使いやすい。

(㈩*㈩)<そして、どれもが〈次元斬〉がデフォルトで付いている。




 ******

 

 

 いきなり異世界に落ちたオウカ。最初は原因である【オートクレール】を圧し折ろうとした。

 

『その程度では折れません。それに折れた所で修復します』

 

 <アーティファクト>や<オブジェクト>はある程度の自己修復機能を持つモノが多い。周囲や所有者の魔力を吸収して修復する。その中でも<冥刀>の自己修復機能は桁違いであり、モノによっては木っ端微塵になっても完全修復する。

 

「俺の気分が晴れる」

 

 物に当たる趣味はないが、今回はスッキリする。そんな彼に【オートクレール】は告げる。

 

『短絡的ですね。それに貴方にはありがたいと思いましたが?』

「は?」

 

 意味不明な言葉に首を捻るオウカ。【オートクレール】は続ける。

 

『ここは過去の世界です』

「……おいおいマジか」

『マジです』

 

 これこそが【オートクレール】のチカラ。しかも劣化しているのにこういう事が可能である。

 

『帰還する際に、あまり時間が経っていないように出来ますので』

「……」

 

 澄ました声の解説。理解は出来るが納得は出来ない。取り敢えず、

 

「フン!」

『痛っ!?』

 

 オウカはそのへんにあった大きな石で思いっきり【オートクレール】をブン殴った。

 

 

******

 

 

 そこから一人と一振りの旅が始まった。とは言え、実はこの移動がかなりの無茶だったせいで、出だしから躓いて困った事にはなった。だが、事前に予測していた【オートクレール】の準備でどうにかなった。

 

 この世界はいわゆるポストアポカリプス。しかも、異世界系<ダンジョン>の様子を知る限り、終焉が完全に確定した世界。

 こうなった経緯はと言えば、

 

『きっかけはどこも一緒ですね』

 

 こちらでも、オウカがいた世界と同じように、突如として異空間から怪物が発生した。ところが、対抗する人が少なく、混乱が続き、犠牲者がかなり出た。

 実は、向こうの世界の混乱が比較的早く収まったのは、前兆現象を察知し、〈予知〉、〈予測〉、〈啓示〉が使用できる<プレイヤー>のおかげと、事前予測がある程度出来ていたおかげもあった。一方、こちらではそれがない。それが拍車をかけた。

 

『人口と国土をかなり失いました』

「俺らも一歩間違えていたらそうなっていたのか……」

 そんな状況下、それらに対抗するためにとある天才が、人智を超えた超常武器を開発したとの事。それが、

 

私達(<冥刀>)です』

「なるほど。……ちょっと疑問があるんだけど」

『はい?』

「これ、俺が知って良かったの?」

 

 世間一般では、<冥刀>は、幾つか種類がある<ダンジョン>の中でも、滅んだ異世界から見つかるオーバーテクノロジーの<オブジェクト>や<アーティファクト>の一種であるとなっている。間違ってはいないのだが……。

 凄い機密事項を聞いてしまった気がする。そんなオウカに【オートクレール】は苦笑して答える。

 

『ええ、大丈夫です。そもそも自我が強い<冥刀>なら普通に教えてくれますし。知っている人もポツポツいると思いますよ』

 

 実のところ、公表している人はいるが、あまり信じられておらず、都市伝説の一種となっている。

 

 閑話休題。

 

 そして、作り手である『無量大数叢雅』が自分の技術を他の人々にも伝え、≪叢雅一門≫を発足した。その人達が千差万別な<冥刀>を作った。……大半どころか、大体は趣味に走ったが、そのおかげで怪物を駆逐出来たそうだ。

 だが、問題はその後だった。それは、

 

『そこからは人と人の争いです』

「……予想通りだった」

『予想当たって嬉しいですか?』

「ちっとも」

 

 ヤバイモノだと軍隊どころか、国すら滅ぼせる物もあったとの事。だからこそ、それらを巡り様々な事態が勃発した。

 単純な個人や集団の殺し合いならまだ可愛い方。国同士が争い、幾つも滅んだ。酷い事例が数多にあり、具体例を挙げるなら……。

 

『ある所に国が四つありました。それぞれA、B、C、Dとしましょう』

「全部亡国になっていたりしないよね?」

 

 オウカの嫌な予感に、彼女は返事をせずに説明を続ける。

 

 ある時、Aが一夜にして滅んだ。それの犯人とされたBと同盟を組んでいたCを、Dは滅ぼした。Aと同盟を組んでいたので敵討ちという名目である。

 

「……何かきな臭い」

『ええ。これある<冥刀>を手に入れるためにDが起こした自作自演です』

「うわあ……」

 

 Aは無量大数叢雅と交友があり、かなり強力な<冥刀>を所持していた。それを手に入れる事が動機だったそうだ。

 

『なあ、一つ確認いい?』

『何でしょう?』

『一夜で滅ぼしたって……どんな風に?』

 

 嫌な予感がしたオウカの問い。それに【オートクレール】は少し間を置いて話始めた。

 

『……<冥刀>には様々な能力があるのは貴方もご存じですね?』

「ああ」

 

 基本的に<冥刀>は身体強化と可変機能を持つ。それに加えて様々な能力を持っており、<スキル>が使えるようになる。それは色々であり、火、氷、雷などの自然現象の操作、概念や因果を操作するモノもある。因みに全く同じモノは存在しない。

 

『その中でもアレは……【スラエオータナ】は一際凶悪です』

「うん」

『細菌作成と散布です』

「……(絶句)」

 

 しかも皆殺しを目的とした、タンパク質を餌にして爆発的な感染拡大を引き起こす物がばら撒かれた。それに加えて【スラエオータナ】は細菌の威力を高めるため、細菌の制御、操作、消去は出来ない。要するに作る事とバラ撒く事しか出来ない。

 

『バイオハザードの結果、全国民一人残らず、骨だけになりました』

「……(唖然)」

 

 信じられないオウカに【オートクレール】は続けた。

 言葉も無かったオウカだったが、暫くして言葉を絞り出す。

 

「……人はそこまで残酷になれるのか?」

『この世界の住人の大半狂っているのですよ』

 

 曰く、大半の人々は倫理観や道徳が消し飛んでいるらしく、極悪非道の悪事に手を染め、悪行を働く行為を、至極当然の権利と言わんばかりに振る舞う極悪人ばかりとの事。

 どうにかしようとする人はいるにはいる。だが、全員やり方を間違えるか、おかしな方向に突っ走るため、悲劇を加速させる。

 優しい人は死ぬか、狂うか、堕ちた果てに、上記の仲間入り。だからこそ強い人しか残らない。しかも馬鹿、脳筋、外道、獣畜ばかり。

 

『だからこそ滅びました』

「是非もないな」

 

 牛の血を吸って生きる虻は、牧場の牛が全滅したら生きていけない。そんな事すらわかってなかった。

 

 そして、これは余談。

 三つの国を滅ぼしたDだったが、お目当てのモノは手に入らなかった、それどころか、Aの唯一の生き残りによって全滅した。……骨や建物は残ったAに対し、Dは人どころか土地すら残らず、大きな窪地になった。何せAの所有していた<冥刀>の破壊力は凄まじいのだから。

 

「……こういう時何て言うんだっけ?」

『?』

「ああそうだ……焼肉定食」

『……弱肉強食の事ですか?』

「似ているから間違えた」

『似てませんよ!?』

 

 更に『ある事件』のせいで新しい<冥刀>が作れなくなった事も拍車をかけた。

 だからこそ、この世界は滅ぶとの事。実際滅んだ。

 

「まあ俺には関係ないな」

『……ドライですね』

「何でもかんでも掴もうとすると取りこぼすからな」

 

 そうしてオウカの旅が始まった。色々な人や<冥刀>との出会いと別れがあり、ヤバイ事態や命の危機に陥った事もあった。

 彼は様々な経験をした。その中に、戦いがあった……というか戦いばかりだった。激闘や死闘ばかりで苦戦も多かった。強敵や難敵ばかりで何度も、何度も、何度も、死に掛けた。

 更に、その延長線上で世界の存亡に関わった。この世界がこうなってしまった根本的原因との対峙。もういないはずのある人物との出会い。そして、最終決戦。オウカとその愉快な仲間達はそれを潜り抜けた。

 そして、彼は世界を救った。……代償はあったが。

 

 それを終え、オウカは帰還した。幾らかの手土産を持って。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「ん……」

 

 オウカの意識が浮上する。目を開けるとそこは見知った天井。自宅である廃バス。

 

「ここは……俺の家。戻って来たのか……」

 

 ボソリと呟く。無事に異世界から帰れたオウカ。服装はその時のままだったが、足りないモノがあった。彼と一緒にいた【オートクレール】である。

 

「それにしても……」

 

 嘆息するオウガ。

 彼女との交流を思い出す。彼女とはある理由から途中で別れた。そのあれこれを思い出していると、

 

「どういうつもり?」

 

 声が聞こえた。心なしか声音が冷たい。

 誰の声なのかはわかるので視線を向けると、そこには一人の少女がいた。赤紫色の首元まで伸びた髪に、同じ色の瞳、綺麗とも可愛いとも形容される顔立ちをしている。

 

「よお。元気?」

「……」

 

 軽口に睨みを返す少女。それに肩を竦めるオウカ。

 

 こうなっているのには理由がある。

 

 この少女から、帰る前に何かしらの武器(<冥刀>)を持って行くように言われたオウカだが、彼が掴んだのは少女の手。つまりは少女を選び、連れて帰って来たのだ。

 

「もう一度聞く。どういうつもり? サクヅキ=オウカ」

「どうって? これが俺の選択」

「その選択に至った経緯を聞いている」

 

 少女の口調は少し荒くなっている。

 

「あなたは、本来凄まじい力を手にするはずだった」

「うん」

 

 それが【オートクレール】との取引だった。ところが、紆余曲折末、手に入れるはずだった力は手に入らなかった。

 

「でも代わりの力は手に入れたぜ?」

「知っている。でも今あなたが持つモノは残滓に過ぎない」

 

 最終決戦時に使ったモノはその場限りなので除外。

 

「だからこそ、わたしは代わりになるモノを用意した」

 

 どれもが選りすぐりの逸品であり業物。そういう代物は大抵デメリットが大きかったりするのだが、それも踏み倒せる。

 

「なのに、なぜわたしを選んだの?」

 

 少女の感情は高ぶっていた。恐らく答えを間違えれば、襲い掛かって来るかもしれない。そんな彼女にオウカは、

 

「寂しかったから」

「え」

 

 答えを告げた。それにポカンとした表情になる少女。そんな少女に構わずオウカは続ける。

 

「俺さ、この世界(こっち)で仲の良い友達っていないんだ」

 

 高校に入学したてなうえ、彼自身社交的とは言えないのでまだ友達はいない。勿論、知り合いが全くいない訳ではないが、どれもそこまで深い仲ではない。

 

異世界(あっち)ではさ、仲間や親友が出来た」

 

 お互い命を預け合う事の出来る仲間達。深い仲の友人が幾人も出来た。

 

「でも、()()なった」

 

 一拍置いて続ける。

 

「……後悔はないけど」

「……」

 

 寂し気なオウカ。

 

「だから、話し相手が欲しかった」

 

 あんな事があった、こんな事があったと、思い出を語りあう人が、チカラより何より欲しかった。それに、

 

「お前さ、俺がもしあの中から選んだら、一人になっていただろう? いやもしくは……いやこれは言わないでおく」

「……」

 

 沈黙の肯定だった。

 

「人ってさ、一人だと駄目になる。考えや行動が変な方向に向くんだよ」

 

 知っているだろう、よくわかるだろうとオウカは少女に語る。

 実際その通り。この二人は見て来たから知っている。考えや行動がおかしな方向に向き大迷惑をかけた馬鹿共を。……一部馬鹿は言いすぎだが。

 

「だから、誰かと一緒にいなくちゃダメなんだ」

 

 言い聞かせるように語るオウカ。

 彼が異世界でやっていけたのは仲間や友達のおかげなのだから。だからこその断言だった。

 

「それにお前はずっと苦労してきただろう? だったら幸せにならなくちゃならない。……そうだろう? 叢雅(ムラマサ)

 

 叢雅。

 この世界では()()誰も知らないであろう<冥刀>を作った刀工一門。この少女もその一人。

 そう呼ばれた少女は少し嫌そうな顔になる。

 

「そう呼ばないで」

「じゃあ……刹那?」

 

 『刹那叢雅』。これこそがこの少女の名前。

 

「同じ、変わらない」

 

 叢雅一門として知られている名前は本名ではなく、仕事用の名前である。

 じゃあ本名で呼べば良いのだが、彼女の場合はかなり特殊。本名を捨てている。

 どうすれば良いと首を捻るオウカに、少女は口元に笑みを浮かべてから告げる。

 

「わたしの(ナマエ)は何?」

「あ」

 

 思い出す。彼女のもう一つの(ナマエ)を。その中でも彼女は特に変わっている。……色々な意味で。

 

「【■■■■】、〖■■■■(■■■■■■)〗」

 

 その言葉に口元に笑みを浮かべる少女。

 

「その通り。私こそ刀工にしてその作品」

 

 自慢するように少女は告げる。

 他の刀工達のサポートばかりしていたが、ある時、自分自身を作品にしたのだ。……これには一門のほぼ全員が絶句した。無量大数すら流石に唖然としていた。

 

 <冥刀>に<トリニティ・ギア>や<トリニティ>という別名がある理由は、名が三つ存在するからである。

 表向きの銘と、能力を解放する際に唱えるもう一つの銘。そして意志名であり本当の名前である真名が存在する。なのだが、

 

「わたしにはまだ真名がない。あなたが付けると良い」

「はい?」

「さあ早く。それとも嫌なの?」

「別に嫌ではないけどさ。……わかった」

 

 その言葉に考える。

 

 ふと思いついたのは<冥刀>の真名の具体例。

 天使、悪魔、戦乙女、偉人、暴君、一部ローマ皇帝やその関係者(何の因果か全員ダムナティオ・メモリアエされた人)。

 

(普通に天使や悪魔じゃつまらないから、少し捻るか)

 

 そして数分程考え、

 

「マユって言うのはどうだ?」

「マユ?」

「うん」

 

 ゾロアスター教の天使のスプンタ・マンユと、悪神のアンリ・マンユ。この二つに使われているマンユから取った。そう説明すると少女は――

 

「気に入った。わたしはこれからマユと名乗る。オウカ」

「サクでいい」

「いいの?」

「ああ」

「わかった」

 

 それはオウカの愛称。ただし誰にでも許している訳ではない。それをマユはちゃんと理解している。

 

「これから宜しく」

「ああ。改めて宜しく」

 

 二人はお互い見つめ合いそして握手を交わした。




【TIPS】

叢雅一門
(㈩*㈩)<刀工一門。どこが剣だってツッコミ入れる作品もあるけど。

(・▽・)<メンバーってもしかして大数と小数の名前が元ネタですか?

(㈩*㈩)<そう。仕事名前としてそれを名乗る。

(㈩*㈩)<無量大数、那由他、六徳、虚空などなど。

(#ー#)<作者ごとの特徴ってあるのか?

(㈩*㈩)<ある。ハイリスクハイリターンとか、男の浪漫とか。

(㈩*㈩)<全員、本業がある。医者、カフェマスター、自宅警備員etc

(#ー#)<自宅警備員は職業じゃねえ。

(㈩*㈩)<あ、そうそう。わたし、刹那は助手が主。作品は自分自身。

(・▽・)<(#ー#)<さらっと名乗った!?
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