(・▽・)<次から少しの間、回想を挟みます。
(#ー#)<……案の定終わらなかったな。
(・▽・)<……言わないでください。
(・▽・)<こうなったら、広げられるだけ広げます。
(・▽・)<とりあえず起承転結の転に入れたので。
(#ー#)<……(後どれくらいで終わるんだか)。
▼▽▼
全ての始まりはソレを見た事だった。
★☆★☆★
ゴブリン――小鬼とも言う――は一部を除き害獣ならぬ、害モンスター扱いされている。
その理由は簡単。人の害にしかならないから。
まず人を襲うから。
しかもそれは食べるためでなく、ただ遊びで殺す。ただ殺すだけならまだしも、苦しめて殺す場合が多々。……一応食べはするらしい。
そして、最大の問題はゴブリンは雄しかおらず、繁殖には他種族の雌が必要。
それに一番適しているの人間である。
だからこそ、ゴブリンの集団は村や都市、大規模な物になると国に襲撃を掛けて、男は殺し、女は犯す。
質が悪く、害しかない。
だからこそ、見つけたら即殺が推奨され、集団が見つかったら、討伐がプレイヤーに依頼される。
一部人に害をなさない穏健なゴブリン……ホブゴブリンも存在して、間違える場合があるのではないか? と思われるが、かなり外見と雰囲気が違うもで、その心配はない。
******
ゴブリンは集団になっていくと、より上位の存在となる物が出て来る。
ただの
そうなると、生半可なプレイヤーでは勝てなくなる。
そして、
その強さと能力から、村や都市どころか、国が滅んだ事例がある。
そんなあるゴブリンの群れにとあるゴブリンいた。
その役職は
実はこれかなり珍しい。
大抵が戦闘職になってしまうので、こういう生産職がいる群れは滅多にない。
そして、それが露見した場合、通常の数倍規模の討伐隊が組まれる。
武器や防具が整っている場合、その強さも上昇するのだから。
そうして、その群れもかなりの大規模な討伐隊が組まれ、殲滅された。
そんな中で、そのゴブリンスミスは命からがらどうにか生き延びた。
そのまま行く所もなく、ズタボロの状態で彷徨っていた中……
『?』
とある音が聞こえた。
それは鉄打ちの音。
それに導かれるように彼はそこへ行く。
すると、そこには小屋があり、一人の老人が鍛冶をしていた。
『……!』
思わずその光景に見とれてしまった。
一見で分かった。自分以上の腕前だと。
『……』
そのゴブリンスミスはそれを食い入るように見つめた。
そうしなければならない、そう思ったからだった。
………………
…………
……
それからそのゴブリンスミスは、その近くに自身の拠点にして、その近くで取れる物――木の実、野草、昆虫、小動物――で腹を満たし、毎日その鍛冶師の所に通い鍛冶を見るのが日課となった。
とは言え、自分はモンスターなので堂々と見る訳には行かないので、除き見るのが精々。
そして老人が鍛冶場から引き上げると、ゴブリンスミスも拠点に帰り、自分で鍛冶をする。
盗み見た技術を試したかったのだ。
こうしてこのゴブリンスミスは鍛冶の技術を上げていった。
……
…………
………………
そんな日々は数年続いたある日、転機が起こる。
その日もゴブリンスミスは老人の鍛冶をじっと見ていたのだが……
『ッ!?』
老人が倒れた。
それにゴブリンスミスは居ても立っても居られなくなり、そこへ駆けつけ老人を介抱し始めた。
自分の事がバレ、下手をすれば殺されるかもしれない。
だが、そんな事はどうでも良かった。
(もう鍛冶が見れなくなるのは嫌だ!)
ただそれだけだった。
………………
…………
……
幸いにも老人はすぐに回復した。
そして、とある事実をゴブリンスミスは知る事になる。
それは……
『お前さんじゃったか……、ずっと見ていたのは……』
『!?』
老人……カジヤマ=トウシュウサイは知っていたのだ。
自分の鍛冶を見ている者がいたのに。
何で放って置いたんだと、訊ねる前にカジヤマは答える。
『ワシはの、大変革前から鍛冶をやっておったんじゃが……』
大変革の前は食べるのにも困る日々。
だが、モンスターやダンジョンが現れ、それらから武器を作り出せるようになってからは、かなりの収入を得られるようになった。
そうして彼は一心不乱に鍛冶をしていたのだが、ある時ふと気づいた。
『作品は幾つも遺せた。だがな技術を誰にも教えていない事にな……』
とは言え、弟子など急に出来る訳がない。
そんな日々を過ごす中で……
『気づいたんじゃよ。自分の鍛冶を見ている者がいる事にな』
流石にモンスターだとは思わなかった、とカラカラ笑うカジヤマ。
そして、真顔になると、ゴブリンスミスにこう言った。
『ワシの鍛冶……受け継いでくれんか?』
その問いに迷いなくゴブリンスミスは頷いた。
そして……
『そういえばお主、名前はあるのか?』
首を横に振るゴブリンスミス。
『じゃったらワシが付けてやる。……そうじゃのう、イムロンというのはどうじゃ?』
それはしっくり来た。
なので、頷いた。
それからこのゴブリンスミスはイムロンとなった。
それからゴブリンスミスはイムロンと名乗るようになり、カジヤマの正式な弟子となった。
そうして様々な事を学んだ。
幻想金属ごとの特性、加工方法、合金化。
金属の質を高める方法。
金属へのモンスターの素材の混ぜ込み方。
更に武器の作成も本格的に習った。
カジヤマは刀や槍だけでなく、鎚、鎧、鉄砲すら作れるので、それを習った。
イムロンはスポンジのようにそれを吸収していった。
それと同時、イムロンは種族として進化していった。
体は大きくなり、ステータスが上昇しただけでなく……
『師匠。これはどうだろう?』
『……』
『? どうした?』
『キャー!? 喋ったー!?』
知能が上がり、喋れるようになった。
勿論、鍛冶の技術も向上した。
……というかこっちが本命である(笑)。
そんな日々が続く中、ついにその時が来た。
『……ワシもここまでか』
布団の上でそう言ったカジヤマ。
ある時、風邪を引き、それが中々良くならず、悪化していき、遂に寝床から起き上がれなくなった。
『まあ、悔いはない。技術は全てお前に伝え切れたからな』
とは言えカジヤマはやり切った顔をしていた。
だが、それにイムロンは……
『嘘をつかないでくれ。何か心残りがあるんだろう』
否を唱えた。
結構長い付き合いであるイムロンにはわかる。
この顔は何かまだ心残りがある。
それにカジヤマは暫く沈黙した後、口を開く。
『嘘ではないぞ? BestではないがBetterだ』
『では、Bestでない理由は何だ?』
『……』
少し沈黙後、口を開く。
『正直に言えば……心残りが二つある』
『やっぱりな』
イムロンは納得したような顔をする。
それにカジヤマは理由を述べる。
『まず一つ目としては、未完の作品があるんだ』
『未完?』
『ああ。お前さんは冥刀はわかるだろう?』
『わかる』
因みにこの世界の鍛冶師にとってはアレは異物みたいな物。
見るのも嫌と言う人も頭にいる。
『アレを超える物を作ろうと思っていたんだ』
『……』
『まあソレはしょうがない。お前に託す』
『わかった』
『完成させろとは言わん。無理なら弟子に引き継がせろ』
自分に弟子出来るか? と思ったが、とりあえず何も言わないで置く。
『二つ目はな、死に場所だ』
『死に場所……』
『布団の上でなく、鍛冶場で死にたかった』
ワシは鍛冶師だからな、と笑うカジヤマ。
そして、疲れたのか咳き込み始める。
『大丈夫か?』
『……ああ。少し眠る』
『……お休み師匠』
『ああ。また明日』
そうしてカジヤマは眼を閉じた。
そして……もう目覚めなかった。
カジヤマが亡くなった後、イムロンは彼を埋葬した。
シンプルな墓を作ってから、彼はここを出る事にした。
世界を見てみようと思っていたのだ。
とは言え、その前にやる事がある。
『コレか?』
それはカジヤマの未完の作品を見つける事。
幸いすぐに見つかった。
見つかったのだが……
『……何だコレ』
思わずそう言ってしまったイムロン。
『師匠……。アンタ、何を目指していたんだ?』
思わずそう言ってしまった。
正直言って、どこかに廃棄したい気持ちもあったが、流石にそんな事は出来ない。
『まあやるだけやるさ』
そうして荷物をまとめてその場所を出た。
★☆★☆★
それから旅をしながら鍛冶を続けた。
モンスターだけでなく、プレイヤーのためにも武器や防具を作った。
時に、討伐されそうになった時もあったが、全て返り討ちにした。
そんなある時、とあるゴブリンの群れの食客になった時に出会いがあった。
それがクロガネ姉妹との出会い。
それから彼女らのおかげで、拠点を構え、希少なオブジェクトを加工できるようになっただけでなく、冥刀鍛冶と技術交流も出来た。
おかげで師匠の作品も完成にぐっと近づいた。
だが、後一手。何かが足りない。
そうした時、とある刀工の逸話を読み、刹那叢雅の話を聞き、ある事を思い付いた。
とは言え、それをやってしまったら、自分はもう後がなくなる。
そして、後の工程を引き継げる人がいないとならない。
だから、やる気がなかった。
もしやるとすれば……
『もう死が間近になった時だな』
■□■□
イムロンはまず始めに自身の影から出したのは全身鎧。
これは彼が師匠の最後……寝床から起き上がれなくなってしまった事を鑑みて作った代物。
この鎧は防御よりも生命維持に特化しており、重要な部位を欠損する重傷、瀕死の重症でも健常状態で動く事が可能。
(これでどれだけ持つか……)
そうして作業を始める。
まずは依頼の仕事をやり切る事。
マユのサポートの元、急ピッチで完遂を目指す。
勿論オウカとネラもサポートをする。
「……すまんな」
「別に構わない」
「ああ。困った時はお互い様だ」
「其通」
そうしながら、彼は作業と並行してある事をする。
それは……
「お前達に伝えて置く事がある。敵の詳細だ」
本来、マルチタスクを彼はあまり好まない。
だが、今回は事情が事情。
なので、彼は相手の詳細を語った。
「~と言った感じだ」
「「……」」
イムロンは全てを語り終えた。
それはとても正確なもの。
(正直言ってこれは大きい)
そう思ったオウカ。
イムロンはどうして自分達が負けてしまったのかも、きちんと分析していた。
おかげで相手――カマタとセナヤマの奥の手を知れた。
特に【ダークウィング】の真骨頂とセナヤマの奥の手。
これはかなり不味い。
相性最悪なのが結構いる。
(後で皆に共有しないと……)
そう思っていると、イムロンが注文の作業全てを終え、使い捨ての転移装置で全部を送り届ける。
「ふう……」
一息入れ、次に匣から武器を出し、調整していき、全て仕舞う。
それから最後の作業を始める。
彼がどこからともなく出したのは……
「「!?」」
「何其……?」
オウカ、マユ、ネラの三人が絶句、呆然、唖然とする。
そんな三人にイムロンは答える。
「師匠も遺作の剣だ」
その言葉に、どうにか正気に返ったオウカが訊ねる。
「師匠……いたのか?」
「ああ」
今度はマユが聞く。
「その人は何を目指したの?」
「冥刀を超える物を目指していた」
「だからって……」
最後にネラが聞く。
「其本、当剣?」
「ああ」
三人が何も言えなくなり、ネラが疑問をぶつけるのも当然だった。
ソレの大きさはオウカより少し小さいくらい。
鞘はないが、刀身はある。
鍔らしき物も存在する。これなら持ち手を傷付ける心配はない。
形も剣なのだが、色は様々な物を混ぜたのかマーブルやグラデーションのようになっている。
ここまではいい。
問題はその刀身だった。
刃がないのは、百歩譲って良い。
模造刀や模擬戦用の武器は刃はなく、特定個人でないと刃が出ないという刀剣は存在している。
問題はそれではなく、その刀身――数多の眼鼻口が集まっている物だった。
そのせいか、生物のような印象を与えている。
どう見ても禍々しいが、どことなく神聖さも感じられる。
その剣を熱し始めるイムロン。
暫くしてから叩き始める。
途中で様々なオブジェクトを混ぜ込みながら叩き続ける。
そして、あるタイミングで口を開く。
「サクヅキ=オウカ。この匣と中身はやる。好きに使え」
「……あ、ああ」
「刹那叢雅。最後の工程を頼んだ」
「え」
マユが返事する間もなく、鎚を振り下ろしたイムロンの手が止まる。
そのまま動かなくなった。
鬼の鍛冶師はそのままの体勢で絶命した。
【TIPS:カジヤマ=トウシュウサイ】
(#ー#)<大変革……要するにモンスターやダンジョンの大規模発生。
(#ー#)<それ以前から鍛冶をしていた奴。その技術を確立した人でもある。
(#ー#)<実はクラフターの間ならかなり知られている。
(㈩*㈩)<へえ。でも何でそんな人がこんな僻地に?
(#ー#)<一人で静かに鍛冶がしたかったらしい。
(㈩*㈩)<分かる気がする。
(・▽・)<と言う事は……かなり高齢?
(#ー#)<ああ。大変革の時に三十代だったからな。
(#ー#)<イムロンと会った時はもう老人だ。