冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【前書】
(・▽・)<次から少しの間、回想を挟みます。

(#ー#)<……案の定終わらなかったな。

(・▽・)<……言わないでください。

(・▽・)<こうなったら、広げられるだけ広げます。

(・▽・)<とりあえず起承転結の転に入れたので。

(#ー#)<……(後どれくらいで終わるんだか)。


ⅭⅩⅭⅩ

 ▼▽▼

 

 

 全ての始まりはソレを見た事だった。

 

 

 ★☆★☆★

 

 

 ゴブリン――小鬼とも言う――は一部を除き害獣ならぬ、害モンスター扱いされている。

 その理由は簡単。人の害にしかならないから。

 

 まず人を襲うから。

 しかもそれは食べるためでなく、ただ遊びで殺す。ただ殺すだけならまだしも、苦しめて殺す場合が多々。……一応食べはするらしい。

 そして、最大の問題はゴブリンは雄しかおらず、繁殖には他種族の雌が必要。

 それに一番適しているの人間である。

 だからこそ、ゴブリンの集団は村や都市、大規模な物になると国に襲撃を掛けて、男は殺し、女は犯す。

 質が悪く、害しかない。

 だからこそ、見つけたら即殺が推奨され、集団が見つかったら、討伐がプレイヤーに依頼される。

 一部人に害をなさない穏健なゴブリン……ホブゴブリンも存在して、間違える場合があるのではないか? と思われるが、かなり外見と雰囲気が違うもで、その心配はない。

 

 

 ******

 

 

 ゴブリンは集団になっていくと、より上位の存在となる物が出て来る。

 ただの兵士(ソルジャー)でなく、騎士(ナイト)騎乗兵(ライダー)魔術師(メイジ)神官(プリースト)などなど。

 そうなると、生半可なプレイヤーでは勝てなくなる。

 そして、(キング)が出てきた場合は、かなり不味い。

 その強さと能力から、村や都市どころか、国が滅んだ事例がある。

 

 そんなあるゴブリンの群れにとあるゴブリンいた。

 その役職は鍛冶師(スミス)

 実はこれかなり珍しい。

 大抵が戦闘職になってしまうので、こういう生産職がいる群れは滅多にない。

 

 そして、それが露見した場合、通常の数倍規模の討伐隊が組まれる。

 武器や防具が整っている場合、その強さも上昇するのだから。

 そうして、その群れもかなりの大規模な討伐隊が組まれ、殲滅された。

 そんな中で、そのゴブリンスミスは命からがらどうにか生き延びた。

 そのまま行く所もなく、ズタボロの状態で彷徨っていた中……

 

『?』

 

 とある音が聞こえた。

 それは鉄打ちの音。

 それに導かれるように彼はそこへ行く。

 すると、そこには小屋があり、一人の老人が鍛冶をしていた。

 

『……!』

 

 思わずその光景に見とれてしまった。

 一見で分かった。自分以上の腕前だと。

 

『……』

 

 そのゴブリンスミスはそれを食い入るように見つめた。

 そうしなければならない、そう思ったからだった。

 

 

 ………………

 …………

 ……

 

 

 それからそのゴブリンスミスは、その近くに自身の拠点にして、その近くで取れる物――木の実、野草、昆虫、小動物――で腹を満たし、毎日その鍛冶師の所に通い鍛冶を見るのが日課となった。

 とは言え、自分はモンスターなので堂々と見る訳には行かないので、除き見るのが精々。

 そして老人が鍛冶場から引き上げると、ゴブリンスミスも拠点に帰り、自分で鍛冶をする。

 盗み見た技術を試したかったのだ。

 

 こうしてこのゴブリンスミスは鍛冶の技術を上げていった。

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 そんな日々は数年続いたある日、転機が起こる。

 その日もゴブリンスミスは老人の鍛冶をじっと見ていたのだが……

 

『ッ!?』

 

 老人が倒れた。

 それにゴブリンスミスは居ても立っても居られなくなり、そこへ駆けつけ老人を介抱し始めた。

 自分の事がバレ、下手をすれば殺されるかもしれない。

 だが、そんな事はどうでも良かった。

 

(もう鍛冶が見れなくなるのは嫌だ!)

 

 ただそれだけだった。

 

 

 ………………

 …………

 ……

 

 

 幸いにも老人はすぐに回復した。

 そして、とある事実をゴブリンスミスは知る事になる。

 それは……

 

『お前さんじゃったか……、ずっと見ていたのは……』

『!?』

 

 老人……カジヤマ=トウシュウサイは知っていたのだ。

 自分の鍛冶を見ている者がいたのに。

 何で放って置いたんだと、訊ねる前にカジヤマは答える。

 

『ワシはの、大変革前から鍛冶をやっておったんじゃが……』

 

 大変革の前は食べるのにも困る日々。

 だが、モンスターやダンジョンが現れ、それらから武器を作り出せるようになってからは、かなりの収入を得られるようになった。

 そうして彼は一心不乱に鍛冶をしていたのだが、ある時ふと気づいた。

 

『作品は幾つも遺せた。だがな技術を誰にも教えていない事にな……』

 

 とは言え、弟子など急に出来る訳がない。

 そんな日々を過ごす中で……

 

『気づいたんじゃよ。自分の鍛冶を見ている者がいる事にな』

 

 流石にモンスターだとは思わなかった、とカラカラ笑うカジヤマ。

 そして、真顔になると、ゴブリンスミスにこう言った。

 

『ワシの鍛冶……受け継いでくれんか?』

 

 その問いに迷いなくゴブリンスミスは頷いた。

 そして……

 

『そういえばお主、名前はあるのか?』

 

 首を横に振るゴブリンスミス。

 

『じゃったらワシが付けてやる。……そうじゃのう、イムロンというのはどうじゃ?』

 

 それはしっくり来た。

 なので、頷いた。

 それからこのゴブリンスミスはイムロンとなった。

 

 それからゴブリンスミスはイムロンと名乗るようになり、カジヤマの正式な弟子となった。

 そうして様々な事を学んだ。

 

 

 幻想金属ごとの特性、加工方法、合金化。

 金属の質を高める方法。

 金属へのモンスターの素材の混ぜ込み方。

 

 

 更に武器の作成も本格的に習った。

 カジヤマは刀や槍だけでなく、鎚、鎧、鉄砲すら作れるので、それを習った。

 イムロンはスポンジのようにそれを吸収していった。

 それと同時、イムロンは種族として進化していった。

 体は大きくなり、ステータスが上昇しただけでなく……

 

『師匠。これはどうだろう?』

『……』

『? どうした?』

『キャー!? 喋ったー!?』

 

 知能が上がり、喋れるようになった。

 勿論、鍛冶の技術も向上した。

 ……というかこっちが本命である(笑)。

 

 そんな日々が続く中、ついにその時が来た。

 

『……ワシもここまでか』

 

 布団の上でそう言ったカジヤマ。

 ある時、風邪を引き、それが中々良くならず、悪化していき、遂に寝床から起き上がれなくなった。

 

『まあ、悔いはない。技術は全てお前に伝え切れたからな』

 

 とは言えカジヤマはやり切った顔をしていた。

 だが、それにイムロンは……

 

『嘘をつかないでくれ。何か心残りがあるんだろう』

 

 否を唱えた。

 結構長い付き合いであるイムロンにはわかる。

 この顔は何かまだ心残りがある。

 それにカジヤマは暫く沈黙した後、口を開く。

 

『嘘ではないぞ? BestではないがBetterだ』

『では、Bestでない理由は何だ?』

『……』

 

 少し沈黙後、口を開く。

 

『正直に言えば……心残りが二つある』

『やっぱりな』

 

 イムロンは納得したような顔をする。

 それにカジヤマは理由を述べる。

 

『まず一つ目としては、未完の作品があるんだ』

『未完?』

『ああ。お前さんは冥刀はわかるだろう?』

『わかる』

 

 因みにこの世界の鍛冶師にとってはアレは異物みたいな物。

 見るのも嫌と言う人も頭にいる。

 

『アレを超える物を作ろうと思っていたんだ』

『……』

『まあソレはしょうがない。お前に託す』

『わかった』

『完成させろとは言わん。無理なら弟子に引き継がせろ』

 

 自分に弟子出来るか? と思ったが、とりあえず何も言わないで置く。

 

『二つ目はな、死に場所だ』

『死に場所……』

『布団の上でなく、鍛冶場で死にたかった』

 

 ワシは鍛冶師だからな、と笑うカジヤマ。

 そして、疲れたのか咳き込み始める。

 

『大丈夫か?』

『……ああ。少し眠る』

『……お休み師匠』

『ああ。また明日』

 

 そうしてカジヤマは眼を閉じた。

 そして……もう目覚めなかった。

 

 カジヤマが亡くなった後、イムロンは彼を埋葬した。

 シンプルな墓を作ってから、彼はここを出る事にした。

 世界を見てみようと思っていたのだ。

 とは言え、その前にやる事がある。

 

『コレか?』

 

 それはカジヤマの未完の作品を見つける事。

 幸いすぐに見つかった。

 見つかったのだが……

 

『……何だコレ』

 

 思わずそう言ってしまったイムロン。

 

『師匠……。アンタ、何を目指していたんだ?』

 

 思わずそう言ってしまった。

 正直言って、どこかに廃棄したい気持ちもあったが、流石にそんな事は出来ない。

 

『まあやるだけやるさ』

 

 そうして荷物をまとめてその場所を出た。

 

 

 ★☆★☆★

 

 

 それから旅をしながら鍛冶を続けた。

 モンスターだけでなく、プレイヤーのためにも武器や防具を作った。

 時に、討伐されそうになった時もあったが、全て返り討ちにした。

 

 そんなある時、とあるゴブリンの群れの食客になった時に出会いがあった。

 それがクロガネ姉妹との出会い。

 それから彼女らのおかげで、拠点を構え、希少なオブジェクトを加工できるようになっただけでなく、冥刀鍛冶と技術交流も出来た。

 おかげで師匠の作品も完成にぐっと近づいた。

 だが、後一手。何かが足りない。

 

 そうした時、とある刀工の逸話を読み、刹那叢雅の話を聞き、ある事を思い付いた。

 とは言え、それをやってしまったら、自分はもう後がなくなる。

 そして、後の工程を引き継げる人がいないとならない。

 だから、やる気がなかった。

 もしやるとすれば……

 

『もう死が間近になった時だな』

 

 

 ■□■□

 

 

 イムロンはまず始めに自身の影から出したのは全身鎧。

 これは彼が師匠の最後……寝床から起き上がれなくなってしまった事を鑑みて作った代物。

 この鎧は防御よりも生命維持に特化しており、重要な部位を欠損する重傷、瀕死の重症でも健常状態で動く事が可能。

 

(これでどれだけ持つか……)

 

 そうして作業を始める。

 まずは依頼の仕事をやり切る事。

 マユのサポートの元、急ピッチで完遂を目指す。

 勿論オウカとネラもサポートをする。

 

「……すまんな」

「別に構わない」

「ああ。困った時はお互い様だ」

「其通」

 

 そうしながら、彼は作業と並行してある事をする。

 それは……

 

「お前達に伝えて置く事がある。敵の詳細だ」

 

 本来、マルチタスクを彼はあまり好まない。

 だが、今回は事情が事情。

 なので、彼は相手の詳細を語った。

 

「~と言った感じだ」

「「……」」

 

 イムロンは全てを語り終えた。

 それはとても正確なもの。

 

(正直言ってこれは大きい)

 

 そう思ったオウカ。

 

 イムロンはどうして自分達が負けてしまったのかも、きちんと分析していた。

 おかげで相手――カマタとセナヤマの奥の手を知れた。

 特に【ダークウィング】の真骨頂とセナヤマの奥の手。

 これはかなり不味い。

 相性最悪なのが結構いる。

 

(後で皆に共有しないと……)

 

 そう思っていると、イムロンが注文の作業全てを終え、使い捨ての転移装置で全部を送り届ける。

 

「ふう……」

 

 一息入れ、次に匣から武器を出し、調整していき、全て仕舞う。

 それから最後の作業を始める。

 彼がどこからともなく出したのは……

 

「「!?」」

「何其……?」

 

 オウカ、マユ、ネラの三人が絶句、呆然、唖然とする。

 そんな三人にイムロンは答える。

 

「師匠も遺作の剣だ」

 

 その言葉に、どうにか正気に返ったオウカが訊ねる。

 

「師匠……いたのか?」

「ああ」

 

 今度はマユが聞く。

 

「その人は何を目指したの?」

「冥刀を超える物を目指していた」

「だからって……」

 

 最後にネラが聞く。

 

「其本、当剣?」

「ああ」

 

 三人が何も言えなくなり、ネラが疑問をぶつけるのも当然だった。

 

 ソレの大きさはオウカより少し小さいくらい。

 鞘はないが、刀身はある。

 持つ所()はある。とは言え、鮫肌らしき物を巻いた粗末な物だが。

 鍔らしき物も存在する。これなら持ち手を傷付ける心配はない。

 

 形も剣なのだが、色は様々な物を混ぜたのかマーブルやグラデーションのようになっている。

 ここまではいい。

 問題はその刀身だった。

 刃がないのは、百歩譲って良い。

 模造刀や模擬戦用の武器は刃はなく、特定個人でないと刃が出ないという刀剣は存在している。

 問題はそれではなく、その刀身――数多の眼鼻口が集まっている物だった。

 そのせいか、生物のような印象を与えている。

 どう見ても禍々しいが、どことなく神聖さも感じられる。

 

 その剣を熱し始めるイムロン。

 暫くしてから叩き始める。

 途中で様々なオブジェクトを混ぜ込みながら叩き続ける。

 そして、あるタイミングで口を開く。

 

「サクヅキ=オウカ。この匣と中身はやる。好きに使え」

「……あ、ああ」

「刹那叢雅。最後の工程を頼んだ」

「え」

 

 マユが返事する間もなく、鎚を振り下ろしたイムロンの手が止まる。

 そのまま動かなくなった。

 鬼の鍛冶師はそのままの体勢で絶命した。




【TIPS:カジヤマ=トウシュウサイ】
(#ー#)<大変革……要するにモンスターやダンジョンの大規模発生。

(#ー#)<それ以前から鍛冶をしていた奴。その技術を確立した人でもある。

(#ー#)<実はクラフターの間ならかなり知られている。

(㈩*㈩)<へえ。でも何でそんな人がこんな僻地に?

(#ー#)<一人で静かに鍛冶がしたかったらしい。

(㈩*㈩)<分かる気がする。

(・▽・)<と言う事は……かなり高齢?

(#ー#)<ああ。大変革の時に三十代だったからな。

(#ー#)<イムロンと会った時はもう老人だ。
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