冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【前書】
(・▽・)<遂に登場しました。鍛冶師ヴィシュヴァカルマン。私の友達。

(#ー#)<……良いのか?

(・▽・)<この展開は作者も迷いましたが、どうせなら好きな事やろう、という事です。

(㈩*㈩)<……。

(㈩*㈩)<……何で? だって皆サクの事忘れているはずなのに……。

(㈩*㈩)<というか異世界だよ? どうやって? どうして?

(・▽・)<それについては……追々。

(・▽・)<ただこれだけ。彼女、結構滅茶苦茶です。その鍛冶の腕が。


二百三

 というかミシミシ言っている。

 このままでは明らかに不味い。

 ……というか。

 

「苦しい……」

「……苦悶」

 

 オウカにくっついていたネラとマユも巻き込まれた。

 万力のように締め付けられている。

 このままでは三人の死因が圧死、もしくは窒息死になる。

 それにカナタは呆然としていたが、どうにか我を取り戻す。

 

「えっと、落ち着いてください!」

 

 どうにかヴィーをオウカから引き離そうとするが……

 

(力強!?)

 

 全く剥がれない。

 どうにか身体強化を使って引き離そうとするが、それでも駄目。

 

(この人、……どれだけパワーあるの!?)

 

 そう思ったカナタ。

 

 因みにカナタは知らない事だが、ヴィーは秘咒を持っている。

 それは――〈超力招来〉

 簡単に言えば、凄まじいパワーが出せる事であり、その力はなんと特異体質のマリア以上。

 オウカの現在過去含めた仲間・友達全員で、様々な手段使ってのブーストありの腕相撲をした場合でも一位を取れる。

 

 そういう訳なので

 

「離れてください! 離れなさい!!」

 

 カナタの腕力程度では離せる訳もない。

 そして、遂に必死にタップしていたオウカの手がだらんと垂れ下がる。

 ネラとマユのうめき声も聞こえなくなった。

 それにカナタは血相を変える。

 

「サク君、死んじゃいますよ!」

「……はっ」

 

 その言葉にマリアはようやく力を緩めた。

 カナタはその隙に、オウカをヴィーから引き剥がして彼の体を抱きしめる。

 

「サク君、生きてる?」

「……どうにか」

「マユさん、ネラさん、大丈夫?」

「何とか……」

「死思」

 

 どうにか無事だった三人。

 それに一安心したカナタは改めてヴィーを見る。

 

 立ち上がった事で、改めて分かる事がある。

 

 まず服装。

 袖なしシャツと頑丈そうなズボンはわかっていたが、革製のエプロンを付けており、[まさに鍛冶師!]という恰好である。

 次にスタイル。

 その背はやはりかなり高く、百九十近くはあるだろう。

 そして、出る所は出て、引っ込む事は引っ込んでいる。

 更に顔。

 癖のないローズミストの髪を姫カットにしており、化粧はしていない。だが、顔が左右対称で、パーツも綺麗で、位置も整っている。

 

(磨けば光りそう。本当にキレイな人)

 

 そんな事を思っていると、異音が響く。

 それはヴィーのお腹。

 全員の視線がヴィーに集中する。

 それに彼女は大きな体を縮こませて、恥ずかしそうな顔をする。

 

 そんな彼女にカナタはこう声を掛ける。

 

「……何か食べm」

「食べます!」

 

 ヴィーは食い気味にこう言った。

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 そういう事で飲食が出来る場所に行く事にする。

 だが、ここからオウカとカナタの家は遠いうえ、幾つかの条件と制限が引っかかるため、転移が使用出来ない。

 そして、出来たとしても生憎すぐに用意できる食べ物がない。

 なので……

 

「とりあえずこれでも食って置け」

「ありがとうございます」

 

 オウカはいつも仕込んでいる非常食――ジャーキーと羊羹を渡す。

 それをもそもそと食べるヴィーを横目に、飲食店を探す。

 そして、見つけたのは――焼肉屋。

 しかも個室がある店。

 

「ベストタイミング」

 

 そういう訳で店に入る。

 時間帯としては昼食には遅く、夕食としては早いので、空きがあった。

 なので、店員に案内された個室に入り、早速する頼む物を決める。

 メニュー表を見て、眼に付いたメニューを注文する。

 ……今は何よりスピード。

 

「とりあえずこれをお願いします」

「わかりました」

 

 そして退出する店員。

 そのタイミングでヴィーが口を開く。

 

「……サクさん」

「どうした?」

「お腹が……空きました」

「……」

「溜めて言う事?」

 

 沈黙するオウカ、ツッコミを入れたマユ。

 実は焼肉屋までの道中で、仕込んでいる食べ物を全部食べさせたのだが……

 

「焼石に水ね……」

 

 カナタが溜息を吐いた。

 そのタイミングで、ネラが口を開く。

 

「丁度、肉来」

 

 店員が注文の品を持ってやって来た。

 カルビ、ロース、ホルモン、ミノ、タン、ハツ、レバーなどなど。

 牛肉ばかりではなく、野菜と白米もある。

 因みにデザートも頼んであるが、食後に来るようにした。

 

「わあ……」

 

 顔を輝かせるヴィー。

 それにオウカは苦笑しながら、暖まった鉄板に野菜と肉を並べていく。

 少し経つと焼けて来たので……

 

「どうz」

 

 最後まで言えなかった。

 ヴィーは白米片手に肉を取り、タレに付けて食べ始めた。

 

「~~!!」

 

 声にならない声を上げたヴィー。

 そのままモリモリと焼けた肉を食べ始める。

 それを微笑ましそうに見ていたオウカだが、肉がドンドン減って行くので……

 

「おっと不味い。俺らも食べましょう」

「!? そうね」

「わたしも」

「腹満」

 

 他の面々に声をかけ、オウカ達は食べ始める。

 五人で食べる(入店前にマユとネラは人間形態になった)には少し多めの量を頼んだのだが、ずっと空腹だった人と、健啖家がいるので、あっという間に無くなりかける。

 なので、追加注文をして、五人は食べ進めて行った。

 

 

 ……………

 …………

 ……

 

 

 そうして肉を何度か追加注文する。

 最初は牛だったので、鳥、豚、羊など別の肉を頼んで食べる。

 そうして、三度目の追加注文の肉を食べていると、ようやっとヴィーの箸のペースが落ちて来た。

 それを見計らいオウカは口を開く。

 

「ヴィー」

「……」

「ヴィー」

「……はっ」

 

 二度程呼びかけ彼女はこちらを向く。

 

「何ですか。モグモグ」

 

 食べるペースは落ちない。

 

「単刀直入に聞くぞ。何でここにいる?」

 

 そもそも最終決戦でオウカの仲間・友達は彼の事を忘れたはず。

 それに加え、ここは異世界。行くのも一苦労……では済まない。

 

「それはわたしも気になった」

 

 マユも口を挟んだ。

 彼女もそれが気になっていたのだ。

 

(そういえば……そうよね)

(何故、此処、存在?)

 

 カナタとネラもそれに気づいた。

 そんな四人の視線を受け、縮こまるヴィー。

 

「……」

 

 何も言えなくなる彼女。

 ……食事のペースは落ちない(笑)。

 それにオウカは少し溜息を吐いて、こう言う。

 

「ヴィー」

「な、なんでしょう?」

「今いくらになったか……聞きたい?」

「う!?」

 

 この焼肉屋、個室なので値段が程々にする。

 とは言え、この四人はお金に困っている訳ではないうえ、結構余裕がある人もいるので、特に問題はない。

 だが、問題はヴィー。

 この状況から恐らく無一文。一銭も持っていないだろう。

 

「「……」」

 

 無言で視線を向ける四人。

 それにヴィーは遂に白状し始める。

 

「ええと……その……」

「ゆっくりでいいから話せ」

 

 ドリンクバーで持って来たジュースを渡すオウカ。

 そんな彼は彼女と最後に会った時を思い起こしていた。

 

 

 △▲△

 

 

 オウカが異世界から帰還する前に、仲間・友達の様子を見に行った。

 とは言え、全員覚えていないので、遠目で様子を見るだけに留めていた。

 だが、一人だけ直接会いに行った人がいた。

 それがヴィーだった。

 

『ここは変わらないな……』

 

 彼女の店の前に立ち呟いたオウカ。

 そのまま入店する。

 その動機は――武器の購入。

 ナイフやドスなどの武器を買って置こうと思ったのだ。

 

(無いなら無いでいいや。刺身包丁で代用しよう)

 

 とは言え、平和になった世界なので、武器が売っていない可能性の方が高い。

 だからダメ元で入店した訳だった。

  そうして店の中を見渡す。

 すると……

 

『だ、誰でしょう?』

 

 奥から人が出て来た。

 ヴィーことヴィシュヴァカルマン。

 そんな彼女にオウカはこう言う。

 

『客』

『! な、何をお探しですか!』

 

 ちょっとテンションが上がったヴィー。

 少し食い気味に聞いて来た。

 なので、オウカはとりあえず自分の探している物を言う。

 それに彼女は何かを考えるような仕草をして。

 

『! ちょっと待っててください!』

 

 そう言って奥へ引っ込んだ。

 暫くして戻って来た彼女の手には大きな木の箱。

 ……かなりの重量で、多分数人がかりで持つような代物だろうが、それを一人でしかも、機械等のアシスト無しに軽々と持って来て、オウカの前にドンと置く。

 

『……それは?』

『昨日まで作っていた作品達です』

 

 そう言って木の箱を開ける。

 

『!』

 

 それに少し驚いたオウカ。

 そこには色々な武器と防具が入っていた。

 それらは結構前に、完成はいつでもいいから、と頼んだ物だった。

 

『……どうして』

『何か作りたくなって作っていたんです』

 

 なんででしょう? と軽く首を捻り笑うヴィー。

 そんな彼女にオウカは問う。

 

『全部貰う』

『え!?』

『いくらだ』

 

 その言葉にヴィーは眼を見開いた。

 暫くして言葉を紡ぐ。

 

『お代はいいです』

『は!?』

『趣味で作ったような物ですし……』

 

 そう言ってオウカに笑う。

 

『なんででしょう? あなたからお代を取りたくないんです』

『……』

『もしかして、どこかで会ってます? あたし達』

 

 それにオウカは何も言えなくなった。

 そして、少しうつむく。

 今は顔を見られたくなかった。

 

『だ、大丈夫ですか?』

 

 それに心配そうに聞いて来たヴィーへオウカはこう言う。

 

『大丈夫だよ、ヴィー』

『え』

『じゃあこれは貰って行く』

 

 木の箱を異空間――この頃は【アロンダイト】の置き土産が残っている――に仕舞い、それと入れ替わりに金と金目の物を幾らか出しておく。

 

『これはお代だ』

『あ』

『じゃあな。これだけあれば店続けられるだろう?』

 

 そう言って彼は彼女に背を向けて、店から出る。

 

『ま、待って、』

 

 背中に声が聞こえたが、扉を閉めて駆けだす。

 

『待ってください! ……サクさん』

 

 呼ばれた名前に立ち止まりたい衝動に駆られるが、それを堪える。

 パルクールをしてまで遠くに離れ、オウカは一息ついた。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

(後で確かめたら……頼んでいた物全部あったっけ)

 

 嬉しいと同時に悲しかった。

 因みに今はそれらは全部ない。

 改竄騒動の際に、全て失った。

 

(思い出したら、腹立って来た……)

 

 オウカから圧と殺気が漏れ始めた。

 それにヴィーが小さく悲鳴を上げる。

 

「ぴ!?」

「「サク(サク君)」」

 

 それを他の女性陣が止める。

 

「おっと悪い」

 

 圧と殺気を綺麗に収め、オウカはヴィーに問う。

 

「それで?」

 

 どうして思い出せたのか? どうしてここにいるのか?

 その問いにヴィーはゆっくりと語り始める。

 

「えっと……、サクさん店に来てくれたじゃないですか」

「ああ」

「逃g……帰った後に何かおかしいと思って……」

 

 あの反応から間違えない。

 彼と自分は何か関係がある。

 とは言え、思い出せない。

 

「だからあちこち漁っている時に、この子を見つけました」

 

 そう言って彼女は頭に付けているゴーグルを外して見せる。

 一見すれば少し古ぼけたゴーグル。なのだが、独特の雰囲気を持っている。

 

「それもしかして……」

「そう。冥刀」

 

 カナタの問いに答えたのはマユ。

 

「【アルハーゼン】。ロリコンの作品」

「変態……、須臾?」

「そう」

 

 ネラの問いに頷いたマユ。

 なんとこのゴーグル、アクセサリー職人の須臾叢雅の作品らしい。

 

「元々アイツの作品は補助が多い」

 

 今オウカが使っている【グウェンゾライ】しかり、オウカとヴィーの共通の友人であるモンセラート然り。

 直接攻撃能力は低かったり、皆無だったりする。

 

「その中でもこれは変わり種」

「どこが?」

 

 あの人の作品は全部変わり種な気がする。

 それにマユは答える。

 

「まず戦闘系じゃない。補正は器用さ特化」

「え!?」

「驚愕……」

 

 それに驚いたのはカナタとネラ。

 どうやらあのパワーを冥刀によるものだと思っていたらしい。

 それにオウカはジト目でこう言う。

 

「何を勘違いしていたのかはわかるけど、違うからな」

「「……」」

「マユ」

「ん」

 

 話が戻る。

 マユは説明を再開する。

 

「そして能力は……自分が持つ技術・能力の限界突破」

 

 どんな技術・能力でも伸ばしていけば、いずれは壁に到達する。

 だが、この【アルハーゼン】はそれを壊す事が出来る。

 

「「……」」

 

 それにカナタとネラが沈黙する。

 イマイチ、ピンと来ないらしい。

 それにオウカがこう言う。

 

「ゲームでさ、カンストってあるでしょう? レベルの限界。それがなくなるんだぞ?」

「それは凄いわね……」

 

 ゲームをやるカナタが納得した。




【TIPS:超力招来】
(・▽・)<ヴィーの秘咒。簡単に言えば怪力、パワーですね。

(#ー#)<それって鍛えたり、プロテイン飲まずに?

(・▽・)<そうですよ。因みに後天覚醒なので、人を傷つけた事はありません。

(㈩*㈩)<それは何より。……でもこれなら自分で戦った方が良くない?

(・▽・)<戦闘センスゼロなんですよ彼女。それに鍛冶に腕力は必要ですから。
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