(#ー#)<そういや、ちょっと気になったんだが……
(・▽・)<何です?
(#ー#)<縫合したら……抜糸しなくちゃならねえよな? それってどうすんだ?
(・▽・)<ああ! それは平気です。必要ないので。
(#ー#)<あん?
(・▽・)<ディアンの糸……冥刀然り、欠作然り、人体に馴染んで溶けてなくなりますので。
(・▽・)<因みに、どちらも特殊な処置により無菌化してます。
(#ー#)<流石というか何と言うか……。
そうして手術を終え、オウカは包帯姿となる。
……とは言え目立つ部位は左目くらいなので、ミイラ男には程遠い(笑)。
「サク」
「うん?」
膝枕のままディアンはオウカに告げる。
「あくまで繋げただけだから、無理は禁物」
「腕はだな」
「眼も!」
駄目だコイツ、とディアンは思った。
「ポーションは飲んでおくから大丈夫」
「それは当然。……高性能なのあって羨ましい」
ボソリと本音を漏らすディアン。
あの世界にも似たような薬はあるにはあるが、こちらの世界の最高品質の物とは比べ物にならない。
「いい? ……戦闘時まで使わないで。特に眼は。ギリギリまで使わないで」
「え……」
「返事は!」
「……わかった」
宜しい、とディアンは笑う。
そんな彼女を見て、自分の体勢にある事を思い出す。
「そういえばさ……」
「うん?」
「最初の出会いもこんな感じだったな」
「ああ……確かに」
そうして二人は思い出した。
△▲△
その日……オウカは死に瀕していた。
チカラを取り戻した【オートクレール】……否、【アロンダイト】により攻撃を喰らった事で、重傷を負っていた。
否、重傷よりも重い状態。死体寸前。
(不……味い……、死……ぬ……)
だが、今は何も出来なかった。
頭部は欠けており、腕はなく、足もない。
骨は圧し折れ、内臓もぐちゃぐちゃ。
眼は潰れ、皮膚は焼けただれている。
血が流れ、体が冷たくなっていく。
もう座して死を待つしかない状態。
その時、声が聞こえた。
「うわあ……凄い重傷。生きてる?」
それは偶然通りがかったディアン。
オウカに問いかける。
「……」
「生きてるみたいだね。とりあえず応急処置っと」
血が止まったのを感じる。
すると、その声の主はこう声を掛けて来た。
「わかると思うけど、キミはこのままだと死ぬ」
「……ぁ」
「だけどアタシならどうにか出来る。……まあ成功するかは微妙なラインだけど」
「……ぉ」
「どうする? 生きたい?」
「……ぁ」
「わかった。ならキミを助けよう。――刃金の誓い、今此処に」
詠唱と同時に無菌室が作り出されていく。
そして。
「まさか作って置いたのが役立つとは……」
彼女が出したのは、作り物の体のパーツ。
「これはアタシがチューンした義肢とか義臓の冥刀。これを代替器官にする」
適合出来れば生きれるが、しなければ壮絶死しかない。
「ま、頑張ってね」
「ぁ」
そして、手術が始まった。
◇◆◇◆
「思えばあの時が一番ヤバかったかもしれん……」
「そりゃあそうでしょう……」
ディアンが思い出しながら続ける。
「手足はない、内臓や眼球は潰れて、骨は粉々、脳も半分だけ」
一拍置いて続ける。
「あの状況で生きているのかが不思議だった。医者によっては[死なせてやるほうが良かったのでは]って言うかもしれない状態だった」
「……ああ」
「でもキミは生きようとしてた」
それにオウカは口を開く。
「当然だ。あの時はまだ死ねなかったから」
死ぬのは怖くない。それでも死ぬのは嫌。
これでも人を殺している身。いずれ死んで地獄逝きなのは当然。
だが、やる事やっていないのに死ねない。
「うん。だからアタシは助けた。大博打だったけどね」
「アレはマユも呆れてたぞ?」
「……ああ! 刹那叢雅ね」
ディアンがオウカを助けるために使った手段は単純。
足りない部分を補う。それも冥刀で。
腕は【アガートラーム】
足は【ウィザール】(本来は靴型だが改造)
骨は【ディア・ズィンゲンド・クノッヘン】
血液は【イーコール】
心臓は【ザグレウス】
眼は【スィアチ】
脳は【アインシュタイン】
皮は【アラライオ】
髪は【シヴ】
喉は【アダム】
表立ったのはこれだけだが、それ以外にも色々使った。
本来、冥刀は一人一つ。無理して二つ三つ。
それ以上は何かしらの手段を使わねば無理。
そのうえ、能力によっては互いに打ち消し合い、足を引っ張り合う。
だからこそ、ディアンはある手段を使った。
「【エッジキング】」
「ヴァリューホスト……阿僧祇叢雅の作品」
形状はペンダント型のナイフ。
切れ味はペーパーナイフ程度で、補正もなく、特殊能力もなく、変形機能すらない。
この冥刀単体では何も出来ず、戦闘ではほぼ役に立たない。
だが、その真骨頂は他の冥刀を使う時。
「冥刀の複数・並列使用。能力複合が出来るんだよな」
「うん。壊れてたけど、それを体に埋め込んだ」
だからこそ、オウカは復活したのだ。
「……ま、成功したのはアタシの腕と技術、サクの体質のせいだけじゃないね」
「ん?」
「生きていたい……という意志だよ。それが大事なんだ」
「……」
無言のオウカ。
それに釣られるようにディアンも黙る。
そのまま時間が流れていく。
「~♪」
ディアンは歌を歌い始める。
そうしながらオウカの髪を撫でる。
それにオウカは抵抗する事もなく、なすがままに任せた。
…………………
…………
……
暫くしてオウカは口を開く。
「起きる」
「ん? うん……」
少し名残惜しそうなディアンの膝から体を起こし、立ち上がる。
そのまま体をほぐすように動かして、彼はディアンの方を向く。
「じゃあ俺は行く」
「そう……。じゃあアタシも出ようかな」
二人はこの場から後にしようとする。
そんな中、オウカが話しかける。
「……ところでさ」
「うん」
それはふと湧いた疑問。
「お前さんはどうするの?」
この一言には幾つかの意味が込められている。
そもそもどれくらい時間があるのか?
今回の件はどう行動するのか?
今回の決着したらどうするのか?
それにディアンはフフフと笑う。
「ずっと出て来ないで、力を貯めてたおかげで、時間はあるよ」
まあこういうのあまり好きじゃないんだけどね、と彼女は笑う。
ディアンは医者なので、蘇りとかは好きではない。
「どれくらい?」
「それはわからない。……まあソルドアットみたく一カ月とかじゃないから安心して」
「……」
オウカの表情は硬い。
ソルドアットの件が少しトラウマになっている。
それにディアンは安心させるように続ける。
「流石に数年で力尽きるなんて事はないからさ」
「ならいいけど……」
オウカの雰囲気が戻った所で、ディアンは続ける。
「それとアタシは別行動を取るよ」
「……別行動?」
「うん。ちょっと気になる事があってね」
「何だ?」
「今はまだ確証がないから言わない」
医者だからこそ気づけたことがあるのかもしれない。
それに、オウカは特に反対する理由もないので頷く。
「それで?」
「今回の件が終わったら? そんなの決まってるでしょ」
「……そうだろうな」
苦笑するオウカ。
ディアンは続ける。
「アタシは医者だよ? また診療所でも開くさ」
「免許とか、場所とかどうすんだ?」
そもそもディアンは異世界の人間。
この世界に戸籍すらない。
それにディアンはフフフと笑う。
「幾らでもやりようあるからね~」
(何か怖い……)
そんな事を思ったオウカ。
それにディアンはオウカを追い抜かすように歩いて行き……
「じゃあね。連絡は機械アリでやる」
「やれるの?」
「うん」
どうやら何かしら仕込みをしていたらしい。
そしてディアンは自身の体を解く。
そして、数秒も経たずにその姿は手のひらサイズの生物となる。
その姿は……
「蟻?」
ネラの機械アリに似ている。
それにディアンは首を横に振って続ける。
「蟻蜘蛛」
「わからねえよ!?」
オウカのツッコミにディアンはケラケラ笑って、その場を後にした。
ディアンがどこかへ行ってしまい、一人になったオウカ。
「俺はどうするか……」
ボソリと呟く。
自宅ではヴィーたちが作業しているので帰れない。
……恐らく帰れるのは決戦の前日だろう。
つまり数日はどこかに泊まるか、野宿するしかない。
(その気になれば高級ホテルに泊まる金はあるけど……)
何か躊躇われる。
だったら野宿やネットカフェでもいいか、と思い……
「どこか寝れる場所探すか」
そう言ってから、その場を離れるオウカだった。
………………
…………
……
そういう訳で街を歩いていると……
「アレ? サク君?」
聞き覚えのある声。
振り向くと、そこにいるのは一人の少女。
黒いトレンチコートを着て、眼にバイザーを付けている。
「ヒナ……」
それはソラナキ=ヒナタ。
因みに、着ている物はこれだけで、この服装は冥刀の代償なので一年中これ。
どう見ても怪しい人にしか見えないが、実はアクセサリーの効果で自分を知らない人以外からは認識されづらくなる効果があるので、通報された事はない。
「こんな所でどうしたの?」
「ちょっとな……」
「……? ……!」
疑問符を浮かべていたヒナタだが、その表情がすぐに驚愕へ変わる。
その目線は空になった左腕と左目へ向けらている。
「その腕どうしたの!? それとその眼も!」
声が少し大きくなっている。
それにオウカは説明する事にする。
「実は――」
ヒナタはオウカの事情を深い所まで知っている。
なので、ヴィーの事を話しておく事にする。
ただし、ディアンの事は伏せて置く。
敵を騙すにはまず味方から。ディアンの事は伏兵にする気なオウカだった。
説明を聞き、バイザー越しでも目を見開いて驚くヒナタ。
「よ……よくここまで来れたね」
「ああ……」
世界というのは無数に存在する。
しかもその世界が見つけられたとしても、会いたい人物が居る時代・居る場所に行かなければならないので、難しいという次元ではない。
……【オートクレール】やその原型である天剣【アロンダイト】は出来る事には出来るが、かなり負担がかかる。
「流石に心臓止まるかと思った」
「強心臓なのに?」
「うるせ」
「あ痛!?」
笑うヒナタのデコピンを打つオウカ。
痛がるヒナタだが、その顔は笑っている。
(本当に明るくなったな……)
しみじみそう思ったオウカだった。
そんなヒナタは、額を抑えたままオウカに問いかける。
「それで、今日の宿を探しているんだよね?」
「おう」
「……だったらウチ来る?」
「いいの?」
ヒナタは一人暮らしをしている。
男女二人になってしまうのだが……。
それにヒナタはいたずらっぽい笑みを浮かべて続ける。
「大丈夫か?」
「今更でしょ? だってお互い全て見せ合っているんだから」
「人聞きの悪い事言うな!」
間違っていないが間違っている。
オウカのツッコミにヒナタはケラケラ笑う。
そしてふと真顔になると小声で呟く。
「それにこれはチャンスだし」
「何か言った?」
「ううん、マリモ」
「マリモ!?」
………………
…………
……
そういう訳でヒナタの家にお邪魔する事になったオウカ。
「お邪魔します……」
「取り敢えず座って。何か作る」
丁度夕食の時間。
なのでヒナタは冷蔵庫と棚を覗く。
「……俺がやろうか?」
オウカの提案にヒナタは首を横に振る。
「ウチが作る。……最初の頃にサクの料理ご馳走になったし」
「そういえばそうだったな。確か……カルボナーラ作ったっけ」
「うん(。あの時のカルボナーラ何か美味しかったな)」
そうしてヒナタは台所に今回使う食材を出していく。
「ラーメンで良い?」
「ああ。何味?」
「味噌」
「一番好きかも」
「それなら良かった」
そうして調理開始。
「♪~」
鼻歌を歌いながら料理するヒナタの後ろ姿を見るオウカ。
前に彼が聞いた話だが、昔のヒナタ――復讐時代――は料理どころか碌な物を食べてなかったらしい。
値引き弁当や総菜パンだけで食いつないでいたとの事。
それだけでは流石に健康に悪いので、叔母であるカヤが週一で無理矢理自宅に連れて行って色々食べさせていたらしい。
そして、復讐が終わった後から自炊を始めたとの事。
今では色々レパートリーも増えたそうだ。
(ま、作り方見ながらやれば、美味しい物は出来るからな)
そう思ったオウカだったが、その直後ある人物を思い出して顔を顰める。
(例外はいるけど。マリアとか)
オウカの友人である“ハカイシスター”マリア。
実は彼女は料理下手やメシマズ……というかバイオテロの領域。
孤児院で料理を作った所、食べた全員を病院送りにしたり、頑丈な胃袋を持つオウカですら気絶させた逸話を持っている。
作り方を見たり、教えた通り作ったとしてもなぜかこうなってしまう。
自覚があるのが唯一の救いである。
……まあ偶にやりたがるが、絶対にやらせないオウカである。
【コソコソ話】
(㈩*㈩)<ようやっと公開。オウカの体を構成する冥刀達。
(・▽・)(#ー#)<……(絶句)……。
(㈩*㈩)<因みにどれも派手な能力はなくて、補正や身体強化が高いタイプ。
(・▽・)<……ここまで酷かったとは。というか何で生きていたんです?
(㈩*㈩)<本人の生命力。それと完全にトドメ刺される前に
(㈩*㈩)<【オートクレール】の意志……善なる意志がサクを逃がしたから
(#ー#)<……アレ? でも描写的に今は生身になっていないか?
(㈩*㈩)<ああそれ? ツルギ達が冥肌鏤骨した際に生身を再生させたから。
(・▽・)<三連休なので連続更新します。
(#ー#)<……カクヨム追い越さねえか?
(・▽・)<セーブしますので。……多分大丈夫。
(#ー#)<多分程不安煽る言葉は存在しねえよ。