冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【前書】
(・▽・)<今回の話はタイトルらしくなりました♪

(#ー#)<ぶっちゃけ本編より回想編の方が似合う題だしな。

(㈩*㈩)<それは言ったらダメ。


弐拾壱

 ☆★☆★☆

 

 

 <冥刀>のカタチは武器の形が多い。変わり種と呼ばれる六徳や虚空の作品ですら、待機形態では刀剣のカタチをしている。

 なのだが、最初から刀剣どころか、武器ですらないカタチのモノも存在する。

 『須臾叢雅』のアクセサリー系が良い例だが、一応、刀剣の形にしたり、模様や刻印を彫ったりしているのでギリギリセーフかもしれない。

 

 そして、そんな彼より外れているのが『清浄叢雅』の作品である。医者である彼の作品は――使い手に融合したり、内蔵するモノ。一般には同化型と呼ばれる。

 それらには種類がある。

 

 

 義手、義足、義眼、義臓のように、体の器官を代替するモノ。

 

 片手に握れるサイズの、アクセサリーのようなモノで体内に埋め込み使うモノ。

 

 本来、人間には存在しない角、尻尾、翅などの追加器官となるモノ。

 

 

 これらは、強力である。そして、代償も比較的良心的である。

 

 代替するモノなら、その部位を喰らわせる事。一見一聞では、重い代償に思えるかもしれないが、ちゃんと代用してくれるので日常生活は困らない。

 埋め込みと追加器官の場合は、痛み。麻酔でも無効化できない凄まじい痛みが走る。しかも気絶や発狂しないぐらいに調整されている。これを性格が良いと捉えるか、悪いと捉えるかはその人次第である。

 

 そして、どちらもそれ以上は求めない。だからこそ、よく使われている。……特に<冥刀>が生まれた世界では。こちらの世界ではあまりないが、それでも手に入れた人は結構使われる。

 オウカの場合、持ち、使い、受け継いだ。

 

 因みに、これは余談。

 本来はアクセサリーや普通に装備して使うタイプの<冥刀>を、内蔵させて使う人もいる。その場合、疑似的な同化型とも言えるかもしれない。とは言え、これは余程、その<冥刀>に好かれていて、腕の良い鍛冶師と医者のサポートがないと出来ないが。

 

 

 ■□■□

 

 

 ヨシムラ=シゲユキは今回の襲撃に万全を期していた。

 人数を集め、武器を揃え、切り札も用意した。更に、忍者集団と同盟を組んで更に拡充し、無貌から<冥刀>を貰い受けた。

 

(これならいける! アイツを殺せる!)

 

 だが、その結果は――信じられないものになった。ヨシムラは目の前の光景が信じられず、無貌は沈黙する。

 

「な、何なんだ……コレ」

「……」

 

 散々な物になっていた。

 用意した兵隊達は既に半分が死んだ。今も順調に削れていっている。

 思わず叫ぶヨシムラ。

 

「お前、一体何なんだ!」

 

 その声にオウカは答える。

 

「ただの魔王だよ」

 

 その言葉のように、オウカの姿は異形となっていた。背中と腰からは十一本の蠍尾のようなモノが伸び、伸縮自在、縦横無尽に動き相手の命を刈り取っていた。

 

 【ギルタブリル】。

 追加器官である同化型の<冥刀>の一つ。待機形態では一本の蠍尾であり、使い手を選ぶと融合する。そして、普段は肉体の中に引っ込んでいるのだが、抜錨すると、使い手が操れる数の尾を生やす事ができる。オウカの操れる数は十一本。

 そして、その尾は硬く、速く、力があり、伸び縮み自在。それらが動き回るだけで手に負えないのに、毒物を生成し先端の毒針から放出、手足に巻き付ける事で殴蹴を強化、エナジードレインする事もできる。

 闇医者ディアンがストックしていたチカラであり、多人数戦でよく使っていた。

 

 そんな状況に歯噛みするヨシムラ。

 

(このまま全滅だ。オレが出るか?)

 

 奥の手は二つ。偶然に手に入れたモノと、無貌から貰ったモノ。前者は凄まじく強力だが、長時間使いすぎると自分も危ない。後者は安定している代わり、一定時間しか使えない。

 暫し考え決断した。

 

「やるか」

 

 一方、無貌はターゲット――リアに目を移す。

 

(……この隙に狙えれば、無理か)

 

 リアは球体の結界を張り、その中央にいた。目を閉じており結界の維持に集中している。これを破るのは至難だろう。

 更に、ランコが槍を片手に彼女を守っている。爆裂光球を飛ばし、槍を振るい、時に投槍し、オウカが撃ち漏らした相手を倒している。

 この状況をひっくり返すには手札を切るしかない。

 決断する。

 

「使うか」

 

 そして――

 

「「刃金の誓いを、今此処に!」」

 

 ヨシムラと無貌の宣誓が響き渡る。

 

「「!!」」

 

 不味いと判断した、オウカとランコ。即座に止めに入ろうとしたが、それを配下達が妨害する。それに加え位置関係も悪く、遠い位置にいるため止められない。

 

「雷よ、天から降り注げ」

 

 ヨシムラが両手に付けていた腕輪が変形。腕を覆う籠手となる。肘から指先までを覆い、五指から鋭い爪が伸びる巨大な籠手。

 

「それらは全て我が力」

 

 籠手がバチバチと帯電し始め、それが全身へと伝播する。

 

「この鎖は命を絡める」

 

 無貌の手に現れたのは金属製の鎖。その手でグルグルと振り回す。

 

「この鎌は命を刈り取る」

 

 鎖の両側の先端が変形していき手鎌となっていく。

 

「縊り殺せ、斬り殺せ」

 

 その形状は――所謂、鎖鎌。なのだが、本来は分銅である所が鎌になっている。言うなれば二丁鎖鎌とでも言うべきモノ。

 

「「光へ堕ちろ、闇を照らせ」」

 

 そして――二刀の<冥刀>が解放される。

 

剣轟抜錨(デュナミス)――《聚蚊成雷・稜威高鞆(イヅノタカトモ・ヤールングレイプル)》!」

剣轟抜錨(デュナミス)――《閃鎖鎌・宍戸某(シシドナニガシ・レージング)》」

 

 それとほぼ同時、彼らの配下が全滅した。

 

「チィッ!」

「遅かったか……」

 

 止められなかったのを悔いるオウカとランコ。だが、予期せぬ事態や、相手が有利になる事など、戦闘で付き物と知っているオウカは気持ちを切り替え、マユに訊ねる。

 

[マユ!]

 

 以心伝心。マユはすぐさま二刀の情報をオウカに伝える。

 

[【ヤールングレイプル】は逡巡の作品]

[確か……武器は作らない人だったけ?]

[うん。本職は音楽家、兼、楽器職人]

 

 『逡巡叢雅』。本業は音楽家。絶対音感持ち。

 様々な楽器を演奏する売れっ子の音楽家。自分の楽器で自分で作りたいと、バイオリンや横笛などを作り始めた。元々、着ている服は全部自作していた彼女だからこその思いだった。そんな彼女は、ある時、無量大数から誘いを受け、叢雅一門に加入した。

 とは言え、彼女はある誓いを立てていた。直接的な武器を作らないという事。

 だからこそ、彼女の作品は、直接的な武器はなく、防具系や楽器系。

 【ヤールングレイプル】はその一つ。待機形態は腕輪であり、抜錨すると籠手に変わる。

 

[発電・蓄電した電気を様々な事に使える。でも空になったらただの籠手]

 

 それ自体が代償なので、比較的安全に使える<冥刀>。

 

[【レージング】は瞬息の作品]

[合体武器!]

[何で嬉しそう?]

 

 『瞬息叢雅』。本業はカフェのマスター。超絶無口。

 手先が器用で、趣味の日曜大工で色々作っていた。そんなある日、彼の店の常連だった無量大数から誘いを受け、叢雅一門へ加入。

 彼が作ったのはマルチウェポン。要するに一つの武器に二つ以上の機能を持たせた物。ハルバードや銃剣などが良い例である。

 【レージング】はその一つ。北欧神話の狼を縛り付けようとした鎖の名前と、有名な剣豪『宮本武蔵』と戦った鎖鎌使いの武芸者の名前を元に銘付けられた。

 

[変形機能が特色。鎌を鉄球にしたり、鎖が複数になったり、どこまでも伸びる]

 

 体力・気力を消費するオーソドックスな<冥刀>。

 

 望む答えが得られたオウカは礼を言う。

 

[わかった。ありがとう]

 

 そして、どうするかを思考した。ランコに向けて叫ぶ。

 

「サクライ!」

「何だ!」

「どっちか頼めるか?」

 

 この二人、そこまで弱くない。特に無貌が問題。彼は底がしれない。もしかしたら、異世界でもやっていけそうな気がする。だからこそこう言った。

 その言葉にランコは思考。リアを守らなければならないが、流石にオウカだけに任せる訳にはいかない。

 

(どうする……)

 

 そんな彼女にリアが声を掛けた。

 

「行ってください。ランコ」

「え、ですが」

「わたくしは大丈夫。結界はまだ維持できるので」

 

 微笑む自分の主に、従者は決意する。そして、槍をヨシムラに向ける。

 

「わかった。私はあの男を倒す」

「じゃあ、俺は忍者を殺る。あ、そうそう」

 

 オウカは捕捉する。

 

「アイツが使っている<冥刀>は【ヤールングレイプル】。発電した電気が無くなれば無力」

「……貴重な情報ありがとう。本当に詳しいな」

 

 そして、一対一が二カ所で勃発した。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 先制はオウカ。

 

「ハァア!」

 

 背から延ばした【ギルタブリル】の蠍尾十一本、全部を無貌に向けて伸ばす。一本でも凄まじい破壊力を持ち、毒を持つため、掠りでもしたらアウト。

 だが、それを無貌は全部避け切る。そして、オウカに向けて近づく。

 

「肝が冷えるな」

 

 先程の戦闘で見切っていた。だからこその芸当。

 

「そう言うなら当たって見せろ!」

「断る」

 

 そして、自身の間合いに入り込み、右手の鎌を振るう。余りにも速い閃光のような一撃。それを、

 

「ハァ!」

「うお」

 

 六尺棒と蠍尾では間合いの問題で使えない、違う武器を取り出すには間に合わない。だからこそ、左腕で防ぐオウカ。響き渡るのは金属音。

 

「ほう、甲冑をつけているのか?」

「世の中物騒だからね」

 

 オウカは手足に金属製の甲冑を着こんでいる。しかもこれはオウカの友達の作品。彼女曰く、ミルフィーユのように作り、極限まで軽量化したとの事で、これを突破する事は

 

「普通の防具なら、【レージング】は切断出来るのだがな」

「生憎普通の防具じゃないのさ」

「そうか。ならば」

 

 左腕の鎌を振るう無貌。

 

「急所を狙おう」

 

 狙うは頭部。だが、その攻撃はオウカが六尺棒を手放し、代わりに出したナイフで防がれる。

 

「駄目か」

 

 そう言うと、一足飛びに離れる無貌。その動きはかなり速い。しかも、引き際に炸裂弾と何かの粉末が投げられる。

 

「!」

 

 不味いと判断するオウカ。だが、周囲を囲むように投げられたため避けられない。

 

「散れ」

 

 爆発する炸裂弾。それらが粉末に引火し、大爆発となる。特性の物なので爆発力は凄まじい、それが粉塵爆発と合わさり、その威力は凄まじい物になる。

 だが、

 

「防いだか……」

 

 オウカは生きていた。【ギルタブリル】を全身に巻き付け、繭のようにして防ぎ切った。だが、そのおかげで蠍尾はボロボロになっていた。暫く使えない。

 

「生憎とこの程度じゃ、死ねないのさ」

 

 そう言うとオウカは腰に佩刀した段平を抜刀。

 

 戦いは更に激しくなる。

 

 

 ■□■□

 

 

 ランコとヨシムラの戦いの舞台は外に移っていた。

 

 ランコは戦闘スタイル的に外の方がやりやすい。というか、屋内や狭い場所だと、室内を破壊したり、自分を巻き込みかねない。そして、ヨシムラの場合も同様だった。……正確に言えば、最後の奥の手が広い場所の方が良い。

 

 ランコは不動。爆裂光球や爆発するギミックを持つ投槍を、ヨシムラ目がけて放ち、時に襲い掛かるヨシムラを槍で迎撃する。

 ヨシムラは攪乱。【ヤールングレイプル】のチカラで引き上げたスピードで、攻撃を避けながら、時に爪撃による衝撃波を放つ。

 

 戦況はランコがやや有利

 

 元々地力はあったヨシムラ。それが、現在使用している薬物(違法)や、<冥刀>

のチカラで増強され、【ヤールングレイプル】のチカラで雷電を纏う事でスピードを引き上げている。

 だからこそ、戦闘力はオウカに配下共々フルボッコにされた時を遥かに超えている。この状態なら、あの時みたいな事にはならない。勝てるかは不明だが、善戦は出来る。はっきり言えば、単純スペックであれば、ランコにほとんど勝っている。

 

 だが、戦闘と言うのはスペックで決まる物ではない。ランコはどうにか互角に持ち込んでいた。

 まず、近づかない。近距離戦は得意なのだが、相手のスペックが高すぎる。だからこそ、自分が有利な中距離戦で戦う。罠として、一定以上の衝撃や接触、任意で爆発する爆裂光球を、空中に機雷のようにしたり、投槍を任意のタイミングで爆発させる事で機動力を削ぎ、隙が出来たタイミングで攻めたてる。ヨシムラはそれをどうにか避けるも爆風を喰らいダメージが蓄積されている。

 とは言え、この戦い方は消耗が大きい。なのだが、ランコは回復系の装備を付ける事で継戦を可能としている。まだ数時間持つ。

 

 ヨシムラの内心は焦っていた。

 

(クソ! 【ヤールングレイプル】の充電が持たねえ)

 

 【ヤールングレイプル】は、危険な代償はない扱いやすい<冥刀>で、使用に何かしらのコスト蓄積が必要なタイプである。因みに那由他の作品はこのタイプが多い。

 だが、このタイプはどれも短期決戦向けなうえ、長期戦や強敵との連続戦闘には向いてなく、戦闘終了後は準備期間が必要となる。

 ヨシムラは手に入れて間もなく、充電も心もとない。急速充電も可能だが、負担が大きく、暫く充電すら出来なくなる。

 

(仕方ねえ……。アイツ相手に残しておきたかったが)

 

 ヨシムラは決意する。もう一つの切札を切る事を。

 口腔に仕込んでいた薬を噛み砕き嚥下。すると、その体が膨張する。そして、そこには十メートルはあろうかという巨大なジャガーがいた。

 彼が使ったのは、《クロス》の増強薬。古代生物のチカラを使える《アンバークロス》を解析して作られた物で、《ブラウンクロス》や《ヘーゼルクロス》の<クルセイダー>を巨大化させる。勿論、サイズに応じたスペックになる。

 それに合わせて籠手もそのサイズになる。これくらいのサイズ変更は大抵の<冥刀>に可能。

 更に、それに急速充電を重ねる。これで暫くは持つ。

 

「さあ覚悟しろ」

 

 それにランコは一本の槍を出す。かつてオウカ相手に使おうとした円盤槍だった。

 

「そっちこそ」

 

 戦いは佳境に差し掛かる。




【TIPS】

『清浄叢雅』
(㈩*㈩)<本職は医者。総合診療が主だけど、手術も可能なうえ、義肢の作成、漢方薬の調合まで出来る。

(・▽・)<ディアンみたいな闇医者じゃないんですね。

(㈩*㈩)<医師免許は持ってるよ。


『逡巡叢雅』
(㈩*㈩)<本職は音楽家。零○曲識が近い。まああんなキャラでもないし、性格でもない。

(#ー#)<同じだったら色々駄目だろう……。

(㈩*㈩)<歌が凄く上手い。わたしも習った。


『瞬息叢雅』
(㈩*㈩)<カフェマスター。コーヒーを淹れるのが上手。

(㈩*㈩)<彼の作品は浪漫満載だから好かれてる。

(・▽・)<分かる人は分かりますけど、分からない人には分からない世界ですね。

(㈩*㈩)<うん。因みにわたしも店をよく手伝った。軽食とか作ってた。


【コソコソ話】
(㈩*㈩)<最後の疑似同化。実はとある人物がやってる。

(#ー#)<……もしかして。
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