(・▽・)<ベニバナさんが感じた違和感。何だかわかりますか?
(#ー#)<知らん。
(㈩*㈩)<……。
(・▽・)<ちょっとネタバレですが、その作品が使い捨てと言ってますけど……
(・▽・)<一つだけ作ったとは言ってませんよね?
(#ー#)<あ!? じゃあ残りは一体……?
(㈩*㈩)<まさか……。でも……。
(・▽・)<これについては追々。ただヴィーはある賭けをした、とだけ。
■□■□
オウカの自宅の地下にある鍛冶場。
そこでは鉄打ちの音がずっと響いていた。
それが止んだ。
「ふう……」
全ての作業が終わって一息ついたヴィー。
頭に付けたゴーグルを外す。
「どうにか間に合いました……」
その手にはイムロンが遺した異形なる剣。
どうにか完成させたのだ。
他にもオウカが預けていた黒腕、指輪と腕輪があり、どれもメンテナンスを終えたどころか、打ち直しすら終わっている。
決戦は明日。
どうにか間に合わせられた。
ヴィーは振り返って礼を言う。
「皆さんもお疲r」
最後まで言えなかった。
「だ、大丈夫ですか!?」
そこは死屍累々になっていた。
ヴィーの補助をしていたマユ、ネラ、カナタはぶっ倒れていた。
「し、死ぬ……」
「……(撫苦撫苦)……」
マユが呻き、ネラは泡を吹いていた。
マユに至っては人間を辞めているし、ネラも人間の枠からはみ出している。
だから普通に人間以上のスタミナを持つので、数日寝ない位平気なはず。
だったが、やはり体力だけでなく、気力と魔力を極限まで消耗したので倒れてしまった。
そして、更に酷い状態なのは……
「……(気を失っている)……」
カナタだった。うつ伏せでぶっ倒れてピクリとも動かない。
そもそもカナタは人間である。……やめる予定はない。今の所。
プレイヤーなので常人よりスタミナはあるが、それでも数徹はキツい。
しかも碌な食事・睡眠も取らず、体力・気力・魔力をすり減らしたのでこうなるのは当然。
「ど、どうしましょう……」
慌てるヴィー。辺りを歩き回る。
因みにヴィーは結構元気。
元々本職がこれなうえ、秘咒である怪力の副産物か、スタミナも並外れている。
「と、とりあえず水を……」
そう言って鍛冶場を出た時だった。
轟音が外から響く。
「な、何ですか!? 次から次に!!」
無視しようとも思ったが、一応様子を見ようと思い庭へ出ると……
「な!?」
そこには隕石でも落下したかのような窪みになっていた。
そしてその中央に居たのは……
「し……死ぬかと思った(汗)」
「百万回殺しても死にそうにないですわ」
「元凶が威張るな!」
オウカだった。
その隣には袴ブーツの女性が居る。
会話から察すると、この女性が何かしらの手段を使ってここまで帰って来たらしい。
恐らく禄でもない手段で。
思考停止・行動停止していたヴィーであったが、何とか再起動。
「だ、大丈夫ですか!? サクさん」
「何とかな……。痛たたた……」
座り込んでいたオウカがどうにか起き上がる。
土埃に塗れてはいるが、大きな怪我は無さそう。
それに傍らにいた和装の少女――ベニバナが胸を張って続ける。
「当たり前ですわ! そういう技にしましたもの!」
「だったらもっと安全に着地出来るようにしろ!」
「そうしたら速度が低下してしますわ」
「別にいいけど。……遅くすれば良かったんじゃねえの?」
「あ」
「……」
白い眼でオウカはベニバナを見る。
それになんとか誤魔化そうと視線を彷徨わせていたベニバナは、ふとヴィーに目線を向ける。
「あなたが……もしかして、あの鍛冶師さんですの?」
「あ、あの……、え、その……はい」
ヴィーは縮こまり小声で肯定した。
彼女は結構人見知りなので初対面の人とうまく話せない。
……そんなんでよく客商売やろうと思ったなお前。
「噂はサクから聞いてますわ。超凄腕だと」
「いえいえまだまだです」
褒めたベニバナに謙遜したヴィー。
「特殊な素材を扱う事は出来ますし」
ヴィーが可能な事は大きく分けて三つ。
普通の鍛冶師では加工どころか変形させる事すら出来ない素材を、飴細工のように扱い武器を作り出す。
「冥刀を直したり、死んだモノを復活させる事もできます」
冥刀に手を加え、修理だけでなく、改造や打ち直し、更には死にかけのモノを蘇生させたり、死んだモノを組み合わせ新たなモノを作り出す。
「冥刀の破片から
冥刀の破片から強力な武器すら作れる。しかもヴィーの場合、バラバラになった破片の数だけ特殊な武器を作れる。
だが……
「未だに冥刀は作れませんから」
彼女は一の力を二や十どころか百にする事は出来ても、零を一にする事は出来ない。
そんな彼女にベニバナはこう言う。
「それすら並の鍛冶師は出来ませんですわ」
そもそも冥刀は異物にして遺物。
叢雅一門が(ほぼ)全滅してしまった際に、作り方は失伝してしまった。
それに加え、この世界にとっては、冥刀は異世界の産物。なので多少の修理がせいぜい。
だからこその言葉である。
そんな真摯な言葉にヴィーは黙り込んでしまう。
「……」
顔を赤くして恥ずかしそうだった。
そして、ベニバナの本題はここからだった。
「今回の件が一段落したら、
「おい!」
今まで黙って聞いていたオウカがツッコミを入れる。
「さりげなく何頼んでいるの……」
「だって……
「気持ちはわからんでもないけど……」
オウカは人の立場に立って考える事が出来る。
……最近それが出来ない奴が多すぎる。
「そもそもお前さん武器使わないし、鎧とかアクセも付けてないじゃん」
★☆★☆★
ハナヤマ=ベニバナの戦闘スタイルは、自身に宿る竜と龍のチカラを使った徒手空拳を使うのだが、それは色々試したからこそこうなっている。
武器は、戦闘方法が徒手空拳なので付けない。
そういう格闘スタイルの場合、
彼女は殴蹴が中心の格闘スタイルだが、相手を掴んでそのまま握りつぶしたり、爪を伸ばして引っ掻き攻撃をおこなうからこそ、逆に邪魔になるとの事。
加えて、クロスやモンスターのチカラを使った場合、凄まじい身体能力となるため、生半可な武器では持たず、壊れてしまう。……実際ミスリル製のグローブを握り潰した事もあるらしい。
防具は、邪魔になるので付けない。
彼女は、生物系のクルセイダーであるうえ、特殊な処置によりモンスターを体に埋め込んでいる。
だからこそ能力発動・解放前で素の状態ですら、生半可な武器――勿論対プレイヤー・モンスターを想定――で攻撃されても掠り傷一つ負わない。それどころか逆に武器が砕ける。
そして、完全解放すればその身体能力は凄まじい事になってしまうので、逆に動きが阻害されてしまうからこそ、いつも着ているのはただ頑丈なだけの和装、袴、ブーツくらいである。……最近は自己修復機能が付いてる物を特注しているらしい。
アクセサリーは、あまり付けられない。スキルでアクセサリーを沢山付けられるようにしているヒナタとは真逆。
元々、シャーマン――特に人の枠からはみ出てモンスターの領域に足を踏み込んでいるプレイヤー――によく見られる症状。
なのでベニバナは平均的なプレイヤーよりさらに少ないアクセサリーしか付けられない。必需品を入れているアクセサリーの匣がせいぜいである。
◇◆◇◆
オウカはベニバナの事情を知っているからこその疑問。
それに彼女はこう答える。
「サクは去年の対抗戦を覚えてます?」
「忘れられるかよ……」
ソルドアットとの激闘。
数多の冥刀どころか、天剣まで出て来た死闘。
「そして、あの事件」
「……あの?」
どの事を指しているのかわからないオウカ。
……まあ色々巻き込まれているので当然っちゃ当然。
それにベニバナは躊躇いがちに言う。
「……サクがエライ目にあったアレですわ」
「……」
オウカは理解して黙り込む。
それはワクイ=サクタが起こした改竄騒動。
あの件でベニバナは改竄を喰らわず、サクの味方だった。
「……不快にさせたならすみませんですわ」
「……いいさ、別に」
「それで思ったんですの。何か他の強化プランが必要だと」
ベニバナは弱くない。それどころかかなり強い。
今ではオーラの深奥にして奥義である〈心牙〉まで使いこなしており、オウカの見立てでは、
「だから仕事の合間を縫って色々してましたの」
天ノ角高校を卒業してから、ベニバナはきままなプレイヤー稼業をしている。
モンスターを討伐したり、ダンジョンに潜ったり。
実力さえあれば結構稼げるうえ、セミリタイヤみたいな事も可能なのが冒険者、もしくは探索士である。
「色々……と言うと?」
「オブジェクトを集めたり……」
いつか良い職人に出会えた時のために色々ストックしているらしい。
「冥刀も探してましたわ」
身近に使い手が何人かいるので、何かしら相性の良いモノがあれば使おうと思ったらしい。
「ほらサクなんて冥刀を沢山使っていますから、会えると思ったんですけど……」
「そう簡単じゃねえぞ」
呆れ気味にオウカはそう言った。
☆★☆★☆
この作品にはしょっちゅう冥刀が出て来るが、結構な貴重品であり、持っている人は極少数である。
そもそも、新たに作る事は出来ず、過去に叢雅一門が作り、未だ無事で壊れていないモノしかない。
そして、見つからないよう、普通の武器や廃棄品に擬態している物もあるうえ、市場やオークションに出回る事もあるが、手に入れるには最低億単位の金が必要になる。
更に、なんとか手に入れたとしても、相性のせいで使えない場合もあるうえ、使えたとしても代償のせいで、とんでもない事になる場合がある。
◇◆◇◆
オウカの苦言にベニバナは答える。
「それはわかってましたわ……。でも皆さん持っていますから」
どうやら何かしら手に入ると思っていたらしい。
だが、出会えない。
「オークションや武器屋は?」
「行きましたわ……」
そういう所には偶に出回る。
ただし武器屋でも、支店やチェーン店を沢山持つ所でないとないが。
……偶に擬態している物が普通の武器屋に紛れている事はあるが。
「ありましたけど、
因みにベニバナは言わなかったが、金額的に届かなかったのもある。
……オウカもそれには薄々気づいたが、あえて何も言わなかった。
それにオウカがふと思い出したのは、又聞きで聞いた言葉。
「そういえばマユが言っていたな……」
マユ――刹那叢雅は叢雅一門のサポートをしていた。
だからこそ、全員と交流がある。
そんな冥刀鍛冶の中で、刀剣にこだわった真正の鍛冶師――恒河沙叢雅がいつも言っていた言葉があるらしい。
「恒河沙叢雅がいつも言っていた言葉がある。[人が武器を選ぶんじゃねえ、武器が人を選ぶんだ]」
「……え」
「もしかしたら……何かしらぴったりな得物が待っているかもな」
オウカの言葉にキョトンとした顔をしたベニバナだったが、少しして笑い出す。
そして、こう言う。
「サクは案外ロマンチストですね」
「そうか?」
首を捻るオウカへ、ヴィーもこう言う。
「アタシもそう思いますよ」
「……そうか」
別に馬鹿にする言葉ではないので、オウカは納得して置いた。
そして、ヴィーはベニバナにこう答える。
「あの……ベニバナさん? ですよね」
「ですわ」
「アナタの依頼ですけど、受けるかどうかは素材とかを見てからでいいですか?」
その言葉に頭上に疑問符を浮かべるベニバナ。
それにオウカが捕捉する。
「ヴィーは素材を見てからどんな武器を作るか決めるんだよ」
「……」
沈黙したベニバナ。
暫くして言葉が反芻出来たらしい。
確認する。
「普通逆では?」
「ヴィーは普通じゃないから」
「……酷いです」
普通のクラフター――生産者のプレイヤー――はどんな武器を作るか決めてから、素材を集める。
だがヴィーは違う。
その素材を見てから、どんな武器にするかを決める。
だからこそ、「~を作ってくれ」という注文が取りずらい。
その武器になりたがる素材を探さなければならないので、時間がかかるのだ。
【コソコソ話】
(・▽・)<ヴィーが作った最高欠作ですが、冥刀ではないです。
(㈩*㈩)<魂魄がないし、生物じゃないものね。
(#ー#)<(言っている事おかしくないか?)
(・▽・)<ですが素材に冥刀の破片が使われてます。
(・▽・)<勿論特殊な素材……この世界風に言うならオブジェクトがふんだんに。
(#ー#)<そういえば採算度外視って言っていたな。