冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

23 / 182
【コソコソ話】
(#ー#)<前回出たあの槍みたいに<スキル>が付与してある奴。

(#ー#)<アレレベルだと、凄腕じゃないと作れない。

(・▽・)<どこも一緒ですね。……そういえば。

(#ー#)<何だ?

(・▽・)<そういう人達って<冥刀>の事をどう思っているんです?

(#ー#)<……得体の知れないシロモノ。

(㈩*㈩)<失礼な。

(・▽・)<実際、滅茶苦茶ですからね。ヴィーも感嘆してましたけど、同時に呆れてもいました。


弐拾参

 バスの中では雑談をする生徒達。

 オウカは、隣になったジンナと話す。

 実のところ、本来はタナカが隣だったのだが、ジンナと相席になるはずだった女子がタナカの恋人だったので、交換した。

 

「「恋人いたんだ!?」」

 

 それには全員死ぬ程驚いた。それにタナカは呟く。

 

「……ワイは一体どういう風に見られてたん?」

「アハハ」

 

 因みに恋人も笑っていた。

 

 そういう訳でジンナと話す。話題は最近の事から、<冥刀>について。そして、今回の実習について。

 

「場所一体どこなんだろうね?」

「察しは付く」

「え」

 

 オウカは説明する。

 

「そもそも移動にバスを使う――という事はバスが使える範囲」

 

 少し間を置き続ける。

 

「んで、広くて、ヤベーイ<モンスター>がほぼいない場所だと限られる」

「そうか……。だとすると」

 

 とある場所がジンナの脳裏に浮かぶ。そして眉根を寄せる。

 

「大丈夫なのかな?」

「うん?」

「だってほら、……ね」

 

 言葉を濁すジンナ。リアの事情を知っているだけに、実際に言葉に出すと何か起こりそうと思ったのだろう。

 それをオウカも察したのか、

 

「ああ……うん」

 

 これだけ言った。

 その後、話題を(強引に)変えて雑談をしていると、場所についての発表があった。

 

「今回の実習は~」

 

 キョウコは溜めに溜める。そして、その眼が開眼。

 

「狭山の丘陵です」

 

 それは埼玉県と東京都の間にある丘陵、かつてはあるアニメキャラがいた森のモチーフで親しまれていた。

 それは、この世界が変革してもあまり変わらなかった。なぜか危険だったり、凶暴だったりする<モンスター>が住みつかず、いるのは初心者でも撃破可能な小型<モンスター>位。だからこそ、かつての実習でも利用された事がある。

 だが、あの事件、<ユニークネームドボスモンスター>の転移事件で大惨劇が巻き起こってからは、その時現れた【トロール】と、アニメキャラに因んで≪トロルの森≫と呼ばれるようになった。

 事件以後、危険性は変わらないのだが、惨劇が起こった事と、そこまでレアな<オブジェクト>が取れない事から、あまり行く人がいなくなっている。

 

 その言葉に全員絶句した。

 先程までの喧噪が嘘のような沈黙。オウカすら予想はしていたが、他の場所の可能性もあると思っていただけに唖然としてしまった。マユと会話し合う。

 

[まあそういう反応になるよな]

[でも、何を考えてそうなったのだろう?]

 

 マユの疑問にオウカは答える。

 

[まず、行くのが大変じゃなくて、危険な<モンスター>が出ない場所]

[それで、絞られる訳?]

[そういう事。それにあの森はあの事件以来、特にこういう事は起こっていない。平和そのもの]

[今回色々ありそうだからピッタリだった?]

[多分]

 

 暫くして、オウカから予想を聞き、身構えていたジンナが発言した。

 

「先生」

「何でしょう」

 

 因みにいつもの口調が戻らないキョウコ。

 

「何が起こったか知ってますよね?」

「知っている。……まあ、あの頃いた教師はいないけど」

 

 あの事件で引率した教師はほとんどが死亡。生き残った人もいたが、年のせいで教師を引退した。

 

「それでも、経験談を語り継いでいる」

「だったら、なぜ?」

 

 それに対する答えはオウカが言った事そのものだったので、割愛。

 

「~と言う訳。納得した?」

 

 その言葉にジンナは答える。

 

「納得しました。理解もしました」

「そう、なら良かった」

「ですが、前みたいな事が起こったら、どうするんですか?」

 

 その言葉に、

 

「大丈夫~」

 

 キョウコの眼が糸目に戻り、口調が間延びしたものに戻った。

 

「事前に何度も見て回ったし~、腕の立つ<プレイヤー>も呼べた~」

 

 ザンカを筆頭に腕の立つ人を招いた。更に引率教師には腕が立つ人もいる。

 

「それに~、森全域に〈転移封鎖〉を張ったから前みたいな事にはならないよ~」

 

 〈転移封鎖〉

 それは空間系の<スキル>を封じる術。準備やコストが結構かかるのだが、どうにかやりきったようだ。

 

 その言葉に安心する生徒達。だが、オウカの表情は晴れない。それにマユが訊ねる。

 

[どうしたの?]

[いやさ、封鎖したらさ、避難も出来ないし、こっちの救援も来れなくない?]

[あ]

 

 あの惨劇の時は、避難出来た人がいたのと、救援をよこせたのは〈転移〉が出来たからである。

 確かに何かしらが突然やってくる事態は防げるが、逃げる事が出来ない。

 

[大丈夫かな?]

[まあ、事前に何度も見てるって言ってたし、大丈夫だろう。後で確認する]

 

 そう言ったオウカだった。

 

 

 ******

 

 

 暫くのバスの旅が終わり、現地に到着。班ごとに集まり、合図と共に出発となるのだが、

 

「ちょっと待ってて。先生に聞きたい事があるから」

「わかりました。気を付けてください」

「早く戻ってこい」

「お土産宜しくな~」

 

 そういう訳でオウカはリア達から離れ、キョウコを探していると、自分を呼ぶ声が聞こえる。

 

「あ、いたいた~、サクヅキクン~」

 

 声の主はキョウコだった。彼女もオウカの事を探していた。

 

「先生。聞きたい事がありまして」

「私も~、伝えたい事があってね~」

 

 そういう事で、二人で話す事になる。

 

「ちょっと移動するよ~。オフレコで話したいから~」

 

 そういう訳で、人が少ない所へ行く。そして、キョウコは簡易的な結界を張る。これで音は漏れない。

 

「それで~、何~?」

「〈転移封鎖〉についてです」

 

 その言葉にキョウコの眼が開眼する。

 

「私もその件で用があったの」

 

 口調が間延びしていない。どうやら考えが一致していたらしい。

 まずオウカは単刀直入に問う。

 

「アレがあると、救援も避難も出来ないのわかってます?」

「わかってる。というか私や一部の人は反対した」

 

 今回の件、やはり賛否があったらしい。だが結局、多数決で張る事になった。

 

「確かに封鎖すれば外からの侵入は防げます。でももし潜んでいるモノがいたら?」

「それを私も危惧している」

 

 今の世の中、何が起こるかわからない。

 

「だから、キミにこれを渡しておく。端末ある?」

「ええ」

 

 オウカが端末を出すと、そこにキョウコはデータを送る。それは《トロルの森》の地図であり。赤点が六つある。

 

「もしかして?」

「この点の位置にある、柱を壊せば〈転移封鎖〉が解除される」

「なるほど。……これ俺に言ってもいいんですか?」

「本当は駄目」

 

 実はこれ引率教員や助っ人<プレイヤー>でも全員は知らない。

 

「でも今回は特別。皆には内緒ね」

「わかりました」

 

 聞きたい事も聞け、用事も終わったので、結界を解除するキョウコ。

 

「じゃあいってきます」

「気を付けてね~」

 

 オウカは班員の元へ戻り、キョウコは待機場所へ戻った。

 そして、オウカが班員の元に戻ってから十分後。実習がスタートされた。

 

 これが、後に過去最悪の大惨事が発生する実習の始まりだった。

 

 

 ******

 

 

 実習が開始して数時間。オウカ達は最初のチェックポイントを目指す。因みにこのチェックポイントは班ごとに違う。

 そういう訳で、オウカ達は山を歩く。

 

「てくてくてくてく」

「口で言うんやな……」

 

 オウカのボケにツッコミを入れるヤマダ。

 今の所、特に変わった事や、危険な事はなく順調に進んでいた。

 体力に自信のある、オウカやランコはともかく、タナカとリアが不安要素だったのだが、付いてきていた。

 曰く、

 

「近接戦闘は苦手ですけど、歩くだけなら何とか……」

「一応鍛えとるで」

 

 との事。

 

 オウカは渡されている紙の地図を見ながら、ペースを考えて、言う。

 

「このペースなら、昼食までに最初のチェックポイントに付けそうだな」

 

 最初はどうなるかと思ったが、意外に行けそうである。そんな彼にランコが問いかける。その眼は傍らのリアに向いている。

 

「休憩はどうする?」

「もう少し進みたいところだけど……」

 

 オウカもリアを見る。見た所は大丈夫に見える。とは言え無理させては元も子もない。

 そういう訳でオウカは提案する。

 

「少し休むか」

 

 それに班員も同意する。

 

「賛成~」

「同じく」

「もう少し行けますけど……」

 

 リアは少し不満そうだったが、反対ではなさそう。

 なので、休憩を取る。地面や椅子(折り畳みの物を出した)に座り、飲み物を飲み、おやつを食べる。

 オウカはチョコバーを出して食べる。

 

「もぐもぐ」

「口で言うんやな~」

 

 そういうタナカは飲み物を飲んでいる。

 リアとランコは羊羹を食べて、お茶を飲んでいる。

 

 十分程休み、出発する四人。暫く歩いていると、オウカがこちらに近づく気配を感じる。

 

「何か来る」

「「!」」

 

 警戒する三人。そして、鳴き声と唸り声と同時に出て来た。

 

「グルルル……」

「ガルゥ」

「ハッハッハッ」

 

 数匹の狼の<モンスター>だった。比較的オーソドックスな<モンスター>であり、通常の狼よりステータスが高く、種類によっては<スキル>を使ってくる。ランクは最下級だが、油断しているとやられる。

 

 その狼達に対し、タナカが提案する。

 

「ワイが戦ってもええ?」

 

 それに三人は特に反対する理由もないので頷く。

 

「ありがとな~」

 

 礼を言ってタナカは前に出た。

 

「《クロス》解放」

 

 タナカのその言葉と同時、角膜(クロ)結膜(シロ)が反転。そして、十字架のような紋様が浮かび光る。虹彩の色は――赤だった。

 

 それを見たオウカは、ほうとなる。

 

(《レッドクロス》……自然か)

 

 火、雷、氷などの自然で起こる事を発生させて、操作するのが《レッドクロス》。使い手自体はその影響を受けない。そして、威力や範囲が、強力かつ広大なため、当たりとも呼ばれる。

 とは言え、身体強化の補正はないうえ、<スロット>も空かない。これが唯一の欠点ではあるが、使いこなせればそれらはあまり気にならない。

 

(何を操るのでしょう?)

 

 リアが疑問に思う中、タナカが戦闘を開始する。

 彼が手から出したのは――炎。

 

「セイヤ! ハア!」

 

 掛け声と共に火球を放つ。それは狼に当たると炎上していく。

 

「キャイン!?」

「ガアアア!?」

 

 悲鳴を上げながら、燃え尽きていく狼。襲いかかる狼もいたが、

 

「ほいよっと」

「ギャオン!?」

 

 その前に火球が着弾して炎上。あっという間に狼は全滅した。

 その結界に胸を張るタナカ。

 

「一丁上がりや。どうや」

 

 その結果に、リアは褒める。

 

「凄いです! わたくしは攻撃系は使えないので羨ましいです」

「そっちも悪くないと思うで。ワイは防御や回復は出来へんし」

 

 因みに、タナカの<スキル>構成は、《レッドクロス〔炎〕》を活かすために、火力向上、自動回復、耐性突破などである。

 そのため、生半可な耐性や防御も突破できる。

 

 ランコの評価は普通だった。

 

「まあ悪くないな。大技で片付けるという選択肢はなかったのか?」

「大技は持っとるよ。でも、消耗が激しいからな。アレくらいならプラマイゼロやし」

 

 ちゃんと考えて、ああいう戦い方にしたらしい。

 

 一方、オウカの評価はあまり良くなかった。

 

「確かに、圧倒していたけど……」

「なんや? 何か文句ある?」

「素材は?」

 

 狼達は燃え尽きて灰、骨、魔石くらいしか残っていない。

 

「「あ」」

 

 三人が今気づいたかのような顔をした。

 なので、オウカは更に捕捉する。

 

「毛皮がある獣は、できるだけ傷つけないで殺すのが良いんだよ」

 

 オウカはナイフを投げた。すると、隠れていた狼に当たる。

 

「ギャ!?」

 

 狼は絶命した。傷も一か所で済み、これなら、毛皮、肉、内蔵も使える。

 

「こんな感じでね」

 

 そういうとオウカは剥ぎ取りを始めた。

 ナイフ片手にオウカは解体していく。その様を見た三人はコメントする。

 

「凄いです」

「私もある程度は出来るが……」

「あれはおかしいで」

 

 実際、タナカの言葉は最もだった。幾度も経験した事あるかのように、手際が良かった。

 それにオウカは答えを言う。

 

「師匠から習ったからね。お手本見せて貰って、後は、何度も実戦で」

 

 剥ぎ取りは失敗すると、可食部が減る。それどころか、肉が臭くなる。

 

「場合によってはそれが御飯になるから、上手くやらないと」

 

 そして、完全に解体が終わる。それをオウカはとりあえず仕舞う。

 

「じゃあ進もうか。とりあえず……」

 

 時計を見る。時間は十時半。

 

「一時までは進もう」

 

 それに三人は頷いた。

 

 

 ******

 

 

 最初のチェックポイントを通過し、幾らか進んで昼休憩。

 メニューは道中で倒した<モンスター>の肉の串焼き。焼き加減を調節し、香辛料をかけて、まあまあ美味い。

 リアがオウカに問いかけて来た。

 

「携帯食料は食べないのですか?」

「アレは取って置いた方が良い」

 

 即答するオウカ。それにタナカが聞いて来た。

 

「何で?」

「食べると減るだろう?」

「当然やな」

「だから、そういうのしか食べられない時に食べるべき」

 

 場所や環境によっては、食料になる<モンスター>や<オブジェクト>が取れない所もある。だからこそのオウカの言葉である。

 

「幸いココは平気だけどね」

 

 そう言って、串焼きを齧る。

 実際、≪トロルの森≫は、食べる事の出来る狼や兎の<モンスター>がいるうえに、食べられる野草や茸もある。

 リアがしみじみとコメントする。

 

「比較的安全な所なんですね」

「<プレイヤー>にとってはな~」

 

 タナカが補足する。

 確かに<プレイヤー>にとってはそこまでではないが、常人にとってはまあまあ危険である。熊がよく出る森に入る危険性位はあるかもしれない。

 ランコがポツリと呟く。

 

「実習先に選ばれる訳だな」

 

 実際その通り。

 あの大事件まではよく使われていた。だが、惨劇以降は避けられていた。

 リアが一人事にように呟く。

 

「今回は安全に終わると良いですね」

 

 全員が頷いた。




【TIPS】

《レッドクロス》
(#ー#)<前述の通り、自然現象を操る。火、風、氷、光、闇etc

(#ー#)<色々あって、かなり細かく分かれる。

(#ー#)<例えば、風の場合――特定元素限定、竜巻限定とか。

(#ー#)<火だったら、爆炎、青い炎とかだな。

(・▽・)<悪○の実の自○系ですね。

(#ー#)<言うな!?


【コソコソ話】
(・▽・)<そういえば、どんな<モンスター>が出現したのですか?

(#ー#)<【トロール】の突然変異個体である。【ガラガラドン】。

(㈩*㈩)<それ、確かトロールを倒した山羊の名前。

(#ー#)<ああ。あえてそれを名乗ってる。ソイツが来ても殺せるぞっていう意思表示。

(㈩*㈩)<趣味が悪い。

(#ー#)<同感だ。んで前も説明した通り<ユニークネームドボスモンスター>。

(#ー#)<好物は人肉。人間との意思疎通は出来るが、分かり合うのは不可能な<エネミー>。

(#ー#)<パワーが凄まじく、耐久も高い上、再生力も異常。

(#ー#)<生半可な攻撃じゃ通らないうえ、通ったとしても再生される。

(#ー#)<そんで鈍足だったんだが、空間歪曲を持っていてな……

(・▽・)<まさか……。

(#ー#)<短距離テレポート、次元ごと切り裂いて防御無視、

(#ー#)<更に、空間を歪めての行動阻害。まあヤバかった。

(#ー#)<最終的には集中砲火でどうにか倒された。

(・▽・)<それは犠牲者山ほど出ますね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。