(#ー#)<前回出たあの槍みたいに<スキル>が付与してある奴。
(#ー#)<アレレベルだと、凄腕じゃないと作れない。
(・▽・)<どこも一緒ですね。……そういえば。
(#ー#)<何だ?
(・▽・)<そういう人達って<冥刀>の事をどう思っているんです?
(#ー#)<……得体の知れないシロモノ。
(㈩*㈩)<失礼な。
(・▽・)<実際、滅茶苦茶ですからね。ヴィーも感嘆してましたけど、同時に呆れてもいました。
バスの中では雑談をする生徒達。
オウカは、隣になったジンナと話す。
実のところ、本来はタナカが隣だったのだが、ジンナと相席になるはずだった女子がタナカの恋人だったので、交換した。
「「恋人いたんだ!?」」
それには全員死ぬ程驚いた。それにタナカは呟く。
「……ワイは一体どういう風に見られてたん?」
「アハハ」
因みに恋人も笑っていた。
そういう訳でジンナと話す。話題は最近の事から、<冥刀>について。そして、今回の実習について。
「場所一体どこなんだろうね?」
「察しは付く」
「え」
オウカは説明する。
「そもそも移動にバスを使う――という事はバスが使える範囲」
少し間を置き続ける。
「んで、広くて、ヤベーイ<モンスター>がほぼいない場所だと限られる」
「そうか……。だとすると」
とある場所がジンナの脳裏に浮かぶ。そして眉根を寄せる。
「大丈夫なのかな?」
「うん?」
「だってほら、……ね」
言葉を濁すジンナ。リアの事情を知っているだけに、実際に言葉に出すと何か起こりそうと思ったのだろう。
それをオウカも察したのか、
「ああ……うん」
これだけ言った。
その後、話題を(強引に)変えて雑談をしていると、場所についての発表があった。
「今回の実習は~」
キョウコは溜めに溜める。そして、その眼が開眼。
「狭山の丘陵です」
それは埼玉県と東京都の間にある丘陵、かつてはあるアニメキャラがいた森のモチーフで親しまれていた。
それは、この世界が変革してもあまり変わらなかった。なぜか危険だったり、凶暴だったりする<モンスター>が住みつかず、いるのは初心者でも撃破可能な小型<モンスター>位。だからこそ、かつての実習でも利用された事がある。
だが、あの事件、<ユニークネームドボスモンスター>の転移事件で大惨劇が巻き起こってからは、その時現れた【トロール】と、アニメキャラに因んで≪トロルの森≫と呼ばれるようになった。
事件以後、危険性は変わらないのだが、惨劇が起こった事と、そこまでレアな<オブジェクト>が取れない事から、あまり行く人がいなくなっている。
その言葉に全員絶句した。
先程までの喧噪が嘘のような沈黙。オウカすら予想はしていたが、他の場所の可能性もあると思っていただけに唖然としてしまった。マユと会話し合う。
[まあそういう反応になるよな]
[でも、何を考えてそうなったのだろう?]
マユの疑問にオウカは答える。
[まず、行くのが大変じゃなくて、危険な<モンスター>が出ない場所]
[それで、絞られる訳?]
[そういう事。それにあの森はあの事件以来、特にこういう事は起こっていない。平和そのもの]
[今回色々ありそうだからピッタリだった?]
[多分]
暫くして、オウカから予想を聞き、身構えていたジンナが発言した。
「先生」
「何でしょう」
因みにいつもの口調が戻らないキョウコ。
「何が起こったか知ってますよね?」
「知っている。……まあ、あの頃いた教師はいないけど」
あの事件で引率した教師はほとんどが死亡。生き残った人もいたが、年のせいで教師を引退した。
「それでも、経験談を語り継いでいる」
「だったら、なぜ?」
それに対する答えはオウカが言った事そのものだったので、割愛。
「~と言う訳。納得した?」
その言葉にジンナは答える。
「納得しました。理解もしました」
「そう、なら良かった」
「ですが、前みたいな事が起こったら、どうするんですか?」
その言葉に、
「大丈夫~」
キョウコの眼が糸目に戻り、口調が間延びしたものに戻った。
「事前に何度も見て回ったし~、腕の立つ<プレイヤー>も呼べた~」
ザンカを筆頭に腕の立つ人を招いた。更に引率教師には腕が立つ人もいる。
「それに~、森全域に〈転移封鎖〉を張ったから前みたいな事にはならないよ~」
〈転移封鎖〉
それは空間系の<スキル>を封じる術。準備やコストが結構かかるのだが、どうにかやりきったようだ。
その言葉に安心する生徒達。だが、オウカの表情は晴れない。それにマユが訊ねる。
[どうしたの?]
[いやさ、封鎖したらさ、避難も出来ないし、こっちの救援も来れなくない?]
[あ]
あの惨劇の時は、避難出来た人がいたのと、救援をよこせたのは〈転移〉が出来たからである。
確かに何かしらが突然やってくる事態は防げるが、逃げる事が出来ない。
[大丈夫かな?]
[まあ、事前に何度も見てるって言ってたし、大丈夫だろう。後で確認する]
そう言ったオウカだった。
******
暫くのバスの旅が終わり、現地に到着。班ごとに集まり、合図と共に出発となるのだが、
「ちょっと待ってて。先生に聞きたい事があるから」
「わかりました。気を付けてください」
「早く戻ってこい」
「お土産宜しくな~」
そういう訳でオウカはリア達から離れ、キョウコを探していると、自分を呼ぶ声が聞こえる。
「あ、いたいた~、サクヅキクン~」
声の主はキョウコだった。彼女もオウカの事を探していた。
「先生。聞きたい事がありまして」
「私も~、伝えたい事があってね~」
そういう事で、二人で話す事になる。
「ちょっと移動するよ~。オフレコで話したいから~」
そういう訳で、人が少ない所へ行く。そして、キョウコは簡易的な結界を張る。これで音は漏れない。
「それで~、何~?」
「〈転移封鎖〉についてです」
その言葉にキョウコの眼が開眼する。
「私もその件で用があったの」
口調が間延びしていない。どうやら考えが一致していたらしい。
まずオウカは単刀直入に問う。
「アレがあると、救援も避難も出来ないのわかってます?」
「わかってる。というか私や一部の人は反対した」
今回の件、やはり賛否があったらしい。だが結局、多数決で張る事になった。
「確かに封鎖すれば外からの侵入は防げます。でももし潜んでいるモノがいたら?」
「それを私も危惧している」
今の世の中、何が起こるかわからない。
「だから、キミにこれを渡しておく。端末ある?」
「ええ」
オウカが端末を出すと、そこにキョウコはデータを送る。それは《トロルの森》の地図であり。赤点が六つある。
「もしかして?」
「この点の位置にある、柱を壊せば〈転移封鎖〉が解除される」
「なるほど。……これ俺に言ってもいいんですか?」
「本当は駄目」
実はこれ引率教員や助っ人<プレイヤー>でも全員は知らない。
「でも今回は特別。皆には内緒ね」
「わかりました」
聞きたい事も聞け、用事も終わったので、結界を解除するキョウコ。
「じゃあいってきます」
「気を付けてね~」
オウカは班員の元へ戻り、キョウコは待機場所へ戻った。
そして、オウカが班員の元に戻ってから十分後。実習がスタートされた。
これが、後に過去最悪の大惨事が発生する実習の始まりだった。
******
実習が開始して数時間。オウカ達は最初のチェックポイントを目指す。因みにこのチェックポイントは班ごとに違う。
そういう訳で、オウカ達は山を歩く。
「てくてくてくてく」
「口で言うんやな……」
オウカのボケにツッコミを入れるヤマダ。
今の所、特に変わった事や、危険な事はなく順調に進んでいた。
体力に自信のある、オウカやランコはともかく、タナカとリアが不安要素だったのだが、付いてきていた。
曰く、
「近接戦闘は苦手ですけど、歩くだけなら何とか……」
「一応鍛えとるで」
との事。
オウカは渡されている紙の地図を見ながら、ペースを考えて、言う。
「このペースなら、昼食までに最初のチェックポイントに付けそうだな」
最初はどうなるかと思ったが、意外に行けそうである。そんな彼にランコが問いかける。その眼は傍らのリアに向いている。
「休憩はどうする?」
「もう少し進みたいところだけど……」
オウカもリアを見る。見た所は大丈夫に見える。とは言え無理させては元も子もない。
そういう訳でオウカは提案する。
「少し休むか」
それに班員も同意する。
「賛成~」
「同じく」
「もう少し行けますけど……」
リアは少し不満そうだったが、反対ではなさそう。
なので、休憩を取る。地面や椅子(折り畳みの物を出した)に座り、飲み物を飲み、おやつを食べる。
オウカはチョコバーを出して食べる。
「もぐもぐ」
「口で言うんやな~」
そういうタナカは飲み物を飲んでいる。
リアとランコは羊羹を食べて、お茶を飲んでいる。
十分程休み、出発する四人。暫く歩いていると、オウカがこちらに近づく気配を感じる。
「何か来る」
「「!」」
警戒する三人。そして、鳴き声と唸り声と同時に出て来た。
「グルルル……」
「ガルゥ」
「ハッハッハッ」
数匹の狼の<モンスター>だった。比較的オーソドックスな<モンスター>であり、通常の狼よりステータスが高く、種類によっては<スキル>を使ってくる。ランクは最下級だが、油断しているとやられる。
その狼達に対し、タナカが提案する。
「ワイが戦ってもええ?」
それに三人は特に反対する理由もないので頷く。
「ありがとな~」
礼を言ってタナカは前に出た。
「《クロス》解放」
タナカのその言葉と同時、
それを見たオウカは、ほうとなる。
(《レッドクロス》……自然か)
火、雷、氷などの自然で起こる事を発生させて、操作するのが《レッドクロス》。使い手自体はその影響を受けない。そして、威力や範囲が、強力かつ広大なため、当たりとも呼ばれる。
とは言え、身体強化の補正はないうえ、<スロット>も空かない。これが唯一の欠点ではあるが、使いこなせればそれらはあまり気にならない。
(何を操るのでしょう?)
リアが疑問に思う中、タナカが戦闘を開始する。
彼が手から出したのは――炎。
「セイヤ! ハア!」
掛け声と共に火球を放つ。それは狼に当たると炎上していく。
「キャイン!?」
「ガアアア!?」
悲鳴を上げながら、燃え尽きていく狼。襲いかかる狼もいたが、
「ほいよっと」
「ギャオン!?」
その前に火球が着弾して炎上。あっという間に狼は全滅した。
その結界に胸を張るタナカ。
「一丁上がりや。どうや」
その結果に、リアは褒める。
「凄いです! わたくしは攻撃系は使えないので羨ましいです」
「そっちも悪くないと思うで。ワイは防御や回復は出来へんし」
因みに、タナカの<スキル>構成は、《レッドクロス〔炎〕》を活かすために、火力向上、自動回復、耐性突破などである。
そのため、生半可な耐性や防御も突破できる。
ランコの評価は普通だった。
「まあ悪くないな。大技で片付けるという選択肢はなかったのか?」
「大技は持っとるよ。でも、消耗が激しいからな。アレくらいならプラマイゼロやし」
ちゃんと考えて、ああいう戦い方にしたらしい。
一方、オウカの評価はあまり良くなかった。
「確かに、圧倒していたけど……」
「なんや? 何か文句ある?」
「素材は?」
狼達は燃え尽きて灰、骨、魔石くらいしか残っていない。
「「あ」」
三人が今気づいたかのような顔をした。
なので、オウカは更に捕捉する。
「毛皮がある獣は、できるだけ傷つけないで殺すのが良いんだよ」
オウカはナイフを投げた。すると、隠れていた狼に当たる。
「ギャ!?」
狼は絶命した。傷も一か所で済み、これなら、毛皮、肉、内蔵も使える。
「こんな感じでね」
そういうとオウカは剥ぎ取りを始めた。
ナイフ片手にオウカは解体していく。その様を見た三人はコメントする。
「凄いです」
「私もある程度は出来るが……」
「あれはおかしいで」
実際、タナカの言葉は最もだった。幾度も経験した事あるかのように、手際が良かった。
それにオウカは答えを言う。
「師匠から習ったからね。お手本見せて貰って、後は、何度も実戦で」
剥ぎ取りは失敗すると、可食部が減る。それどころか、肉が臭くなる。
「場合によってはそれが御飯になるから、上手くやらないと」
そして、完全に解体が終わる。それをオウカはとりあえず仕舞う。
「じゃあ進もうか。とりあえず……」
時計を見る。時間は十時半。
「一時までは進もう」
それに三人は頷いた。
******
最初のチェックポイントを通過し、幾らか進んで昼休憩。
メニューは道中で倒した<モンスター>の肉の串焼き。焼き加減を調節し、香辛料をかけて、まあまあ美味い。
リアがオウカに問いかけて来た。
「携帯食料は食べないのですか?」
「アレは取って置いた方が良い」
即答するオウカ。それにタナカが聞いて来た。
「何で?」
「食べると減るだろう?」
「当然やな」
「だから、そういうのしか食べられない時に食べるべき」
場所や環境によっては、食料になる<モンスター>や<オブジェクト>が取れない所もある。だからこそのオウカの言葉である。
「幸いココは平気だけどね」
そう言って、串焼きを齧る。
実際、≪トロルの森≫は、食べる事の出来る狼や兎の<モンスター>がいるうえに、食べられる野草や茸もある。
リアがしみじみとコメントする。
「比較的安全な所なんですね」
「<プレイヤー>にとってはな~」
タナカが補足する。
確かに<プレイヤー>にとってはそこまでではないが、常人にとってはまあまあ危険である。熊がよく出る森に入る危険性位はあるかもしれない。
ランコがポツリと呟く。
「実習先に選ばれる訳だな」
実際その通り。
あの大事件まではよく使われていた。だが、惨劇以降は避けられていた。
リアが一人事にように呟く。
「今回は安全に終わると良いですね」
全員が頷いた。
【TIPS】
《レッドクロス》
(#ー#)<前述の通り、自然現象を操る。火、風、氷、光、闇etc
(#ー#)<色々あって、かなり細かく分かれる。
(#ー#)<例えば、風の場合――特定元素限定、竜巻限定とか。
(#ー#)<火だったら、爆炎、青い炎とかだな。
(・▽・)<悪○の実の自○系ですね。
(#ー#)<言うな!?
【コソコソ話】
(・▽・)<そういえば、どんな<モンスター>が出現したのですか?
(#ー#)<【トロール】の突然変異個体である。【ガラガラドン】。
(㈩*㈩)<それ、確かトロールを倒した山羊の名前。
(#ー#)<ああ。あえてそれを名乗ってる。ソイツが来ても殺せるぞっていう意思表示。
(㈩*㈩)<趣味が悪い。
(#ー#)<同感だ。んで前も説明した通り<ユニークネームドボスモンスター>。
(#ー#)<好物は人肉。人間との意思疎通は出来るが、分かり合うのは不可能な<エネミー>。
(#ー#)<パワーが凄まじく、耐久も高い上、再生力も異常。
(#ー#)<生半可な攻撃じゃ通らないうえ、通ったとしても再生される。
(#ー#)<そんで鈍足だったんだが、空間歪曲を持っていてな……
(・▽・)<まさか……。
(#ー#)<短距離テレポート、次元ごと切り裂いて防御無視、
(#ー#)<更に、空間を歪めての行動阻害。まあヤバかった。
(#ー#)<最終的には集中砲火でどうにか倒された。
(・▽・)<それは犠牲者山ほど出ますね。