冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【コソコソ話】
(・▽・)<前話で出た二つのダンジョンってヤバイのですか?

(#ー#)<ああ。≪深淵の海≫と≪シーサーの城≫共に難易度は高め。

(#ー#)<挑戦者がかなりの数死んでいる。

(#ー#)<まあ、ただ迷い込んだ場合、生きて戻れる場合も多いんだが、

(#ー#)<攻略しようとすると、話は別。

(㈩*㈩)<迷い込むなんてあるの?

(#ー#)<あるんだ。ほら前の≪トロルの森≫の事件。アレもそうだ。

(㈩*㈩)<あ。


弐拾伍

 ◇◆◇◆

 

 オウカ達は順調に進んでいた。そして……

 

「チェックポイントはもう少しか」

「長かったですね」

「これで最後やな~」

「増えなきゃな」

「「増えてたまるか!?」」

 

 そんな会話をしていた時だった。

 リアが突如足を止める。それにタナカとランコが問いかける。

 

「リア様?」

「どうしたん?」

「……いえ、何でもないですよ」

 

 微笑みながらそう言うリアだったが、何か様子が変な事にオウカとランコは気づく。

 なのでオウカは強硬策を取る。

 

「おい、ちょっと見せろ」

「おい貴様!」

 

 ランコが止めるが、それを無視して、リアの足の靴と靴下を脱がせる。そこにあったのは大きな靴擦れ。それだけならいいのだが、足首が腫れあがっている。

 

「……!」

「リア様!?」

「やっぱりな……」

 

 師匠や友人のおかげで、多少の医療知識はあるオウカが見る。

 

「骨は……罅ぐらいはあるかも。いつ挫いた?」

「……」

「言え」

「……昨日です」

「そういえば、確かに捻っとったな」

 

 実はリアは昨日、山道で足を挫いていた。だが、彼女の得意分野は回復系。だからすぐ治すと思っていた。だが、全く治っていない。

 それにオウカはある事を思い出していた。

 

 

 △▲△

 

 

 それはオウカが師匠の所で色々学んでいた頃。

 

 彼女は形から入る人だった。普段はメイド服(自分で作った特別製)だが、状況に応じてよく着替える。

 彼女の友人であり、オウカとも面識がある、とある人物曰く、

 

「アレはコスプレ好きなのさ」

 

 との事。

 なので、彼女はこの日は教師の服を着て、眼鏡を掛けて、オウカに色々教えていた。

 彼女が彼に聞いて来た。

 

「<スキル>を強力にするのに必要な物ってわかりますか?」

「気合と根性とテクノロジー?」

「違います。それ好きなんですか?」

 

 そう言って黒板に書き出していく。

 

「まず、コストやリソースを掛ける事」

 

 火に注ぐ油が多ければ多い程、火は燃え上がる。

 

「次に、制御を捨てる事」

 

 形を整えなければ料理はすぐに出来る。

 

「最後に、欠点を付ける事」

 

 使う方に制限や縛りがあった方が威力が上がる。

 

「例えば、ある回復魔法の使い手は、自分には使えないという縛りを付けて、回復魔法の威力を上げてます」

「それ自分が危ないですよね?」

「ええ。でもその分威力が上がったとか」

 

 範囲と速度が上がったそうだ。

 そして、これは余談だが、

 

「……因みに真逆もいます」

「自分以外使えない?」

「はい」

「それはそれでどうかと思いますけど……」

 

 因みに、この自分に使う人は手足位なら再生できたらしい。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 師匠の授業を思い出したオウカ。

 思い返せば、随分とランコは過保護だった。点と点が線になっていく。そして、オウカはリアへ問いかける。

 

「リア。お前、回復魔法自分に使えないんだな」

「……」

 

 沈黙するリア。タナカは驚くも信じられないようだった。

 

「!? いや、そんなアホな事ある訳……」

「ある。師匠曰くあったらしい。ほら、<スキル>強化の三要素」

「あ!」

 

 実はコレ結構有名で、授業でも学ぶ。

 

 そんなリアは、オウカの言葉に、観念したような顔になる。

 

「はい、そうです」

「リア様!」

「良いのです。もうバレています」

 

 そうして説明を始める。

 

「わたくしは回復魔法に制限を掛けてます。自分に使えない代わり、他者に使用するる際、その効果が倍増します」

 

 元々、回復しか適性がなかったうえに、それすらも弱かったそうだ。だからこそ、強化する際に欠点を持たせた。

 だが、それだけしてもまだ足りないと思った

 

「そんなある時、偶然手に入れたある<スキル>を使う事d」

「リア様! それは」

 

 ランコが遮る。どうやらトップシークレットらしい。だが、それを無視してリアは話し続ける。

 

「致命に至らない負傷を癒さず、自然治癒に任せる。その代わりに回復魔法を更に増強させているのです」

 

 《宇兆神鳥(マカーマート・アル・トゥユール)

 それがリアが持つ<レアスキル>だった。小さい頃に偶然手に入れたらしい。

 

 絶句する一同。

 そんな雰囲気を変えようと、リアは微笑んで言った。

 

「勿論、それ以外にもメリットはありますよ? 例えば出血多量や臓器不全になりませんし、感染症とは無縁です」

 

 つまりは、出血性ショック、敗血症、サイトカインストーム、破傷風などに罹らない。

 だが、逆を返せば、回復魔法を受ける事や、薬により治療が出来ないと言う事。この時代にそれはあまりにもキツい。

 

 オウカはふと思った事を口に出してしまう

 

「それだけしても部位欠損を習得出来なかったのか……」

 

 その言葉が聞こえてしまったらしく、寂しそうにリアは答える。

 

「……はい。わたくし元々適性低いので」

「貴様!」

 

 ランコがキレた。

 槍を出し、オウカの首元に向けた。

 

「その暴言許さんぞ!」

「ランコ! 今すぐ槍を降ろしなさい!」

 

 それにリアは止めようとしたが、それをオウカは手で制した。

 そして、彼の口から出た言葉は。

 

「気持ちはわかる。俺も同じ立場だったら躊躇いなくやったと思うし」

 

 リアに対する同意だった。更に続けるオウカ。

 

「俺も強化するために、色々やったんだ。<冥刀>が手に入らなきゃ。二度目のナノマシンを入れてたし」

「それ死ぬで!?」

 

 タナカの絶叫は最もだった。

 実は、《クロス》のナノマシンは二度目以降の注射が可能。なのだが、成功率が極端に下がる。だからこそ、二つ以上のチカラを持つ<クルセイダー>が非常に稀。

 

「だって諦められないから。お前もそうだろう?」

「はい」

 

 頷くリアにオウカは続ける。

 

「俺さ、才能を盗られたんだ」

「「は?」」

 

 その言葉にポカンと口を開けるタナカとランコ。

 一方、リアは気になった事を訊ねる。

 

「それはもしかして、《クロス》の事ではなくて?」

「ああ。胎内で。<スロット>や才能、適性、身体性能などを盗られた」

 

 その言葉に、全員の脳裏にある事が過る。

 

((胎内? つまり盗った相手って……))

 

 その母親か、双子の兄弟姉妹という事になる。そして、この場合は後者の可能性が高い。

 今度はタナカが訊ねる。

 

「双子だったん!?」

「うん。まああんまり似てないけど」

 

 正確には、似てなくしたが、それは言わないで置いた。

 次にランコが槍を降ろして訊ねる。

 

「それは故意にか? 偶然にか?」

「故意に決まってんじゃん」

 

 答えたオウカの口元は、笑っているが、目は全く笑っていない。

 まだ自我や精神もはっきりしない、赤子にそんな事は不可能。

 つまりは、

 

((その施術をした奴がいる!))

 

 聞く限り完全アウト。そもそも、<スロット>移植は、生命関連――特に魂魄について詳しくないと出来ない。

 

「そんで、産まれて、色々あって、家出して、師匠に出会った」

 

 色々は本当に色々。今回は割愛するオウカ。というか話すと色々ヤバイ。そのためか、これを完全に知っている人は、異世界の仲間や友達の中でも五人もいない。

 

「師匠に言われたんだよ」

 

 あの時の事を、思い出しながら言う。

 

「〔貴方に才能はない。<プレイヤー>として大成はしないでしょう〕」

 

 世の中には、努力の鬼、才能お化け、得体の知れない人、全部兼ね備えた化物がいる。それらには勝てないだろう。

 

「でもな、凡人には凡人の維持がある」

「「(どこが凡人!?)(どこが凡人!?)」」

 

 心の中で言おうとした事が口に出てしまったタナカ。

 それにオウカはケラケラ笑う。

 

「凡人だぜ? 俺。だって今の強さは全部貰いモノだから」

 

 オウカの凄まじい身体能力、特殊能力、戦闘技術。それらはすべて友達や仲間から貰った〈冥肌鏤骨(オストラコン)〉や〈剣威模倣(ミメーシス)〉。

 

「それに、俺は全部自分だけ。誰かのために使えるお前は凄いよ」

 

 それは心からの言葉だった。

 

 オウカの言葉に空気が戻ったが、問題は解決していない。

 

「それで? どうするん?」

「わたくしはまだ歩k」

「怪我人は黙れ」

 

 偶に厳しくなるオウカ。親しい人なら猶更である。

 

「いいよ。俺がおぶっていく」

「いえ、そんな迷惑をかける訳には……」

 

 謙遜するリアだが、オウカは譲らない。

 

「おぶるのが嫌なら、お姫様抱っこ、お米様抱っこ、肩車。どれがいい?」

「「いやそれは違う」」

 

 タナカとリアがツッコミを入れ、

 

[同意]

 

 マユも頷く。

 そんな三人にオウカは苦笑し説明する。

 

「師匠の訓練で、重い荷物持って登山があるから余裕。三人担いでいく事も出来る」

 

 今はやらないけど、と心の中で付け足す。

 そんな彼にリアは躊躇いがちに頷いた。だが、それにランコが否を唱える。

 

「待て、それなら私が背負う」

「お前も結構無理しているだろう?」

「そんな事は……」

「前も言ったけど、慣れていない所では見えないダメージがあるんだよ」

 

 それでも納得しないランコ。

 それにタナカが折衷案を出した。

 

「まあまあ。じゃあこうしよう」

 

 そういう訳で。

 

「わたくし、重くないですか?」

 

 オウカにおぶさったリアが訊ねる。

 

「全然。逆に軽すぎ。ちゃんと食べて……はいたな」

 

 護衛中、同居していたのでわかる。リアが出された食事やおやつを完食していた。因みに、太らないようランコは総カロリーを調整しているうえ、リアも毎日適度な運動をしている。

 

「ええ、ランコが作る食事やおやつは美味しいですので」

「いえ、まだまだです」

 

 謙遜するランコだったが、口元は緩んでいる。そんな彼女は表情を引き締め告げる。

 

「いいか、サクヅキ。チェックポイントで交代だ」

「わかってる」

 

 タナカの案は、オウカとランコの二人交代でリアを担ぐ事だった。

 因みにタナカは、

 

「悪いな~。ワイは力ないからな」

 

 

 膂力的に不可能なので、除外された。元々後衛系なのでしょうがない。

 そして、最後のチェックポイントに到達。そこにあるモノリスに魔力を流せば良い。とは言え一人ずつなので、

 

「じゃ、ワイから」

 

 最初はタナカから。それが終わると、タナカが伸びをする。

 

「これでクリアや~」

 

 その様子を見てランコが呟く。

 

「大丈夫そうだな」

「え、何が?」

「いや、もしかしたら罠があると思ってな」

「ワイは実験体!?」

 

 オウカは二人のコントを無視して自分も流す。

 

「うん。OK」

 

 そう言うとリアに呼びかける。ランコは漫才中なので無視。

 

「リア」

「あ、はい」

 

 そう言ってモノリスに魔力を流そうとするリアだったが、

 

「リア様! 私が先にやります。何かあるといけません!」

「え、でも」

「三人やって様子を見ないと」

「俺も実験体?」

 

 オウカの呟きを無視して、ランコはモノリスに魔力を流す。

 

「異常はなさそうです。どうぞ」

「はい」

 

 そして、リアはモノリスに触れた。

 その瞬間、リアが消えた。跡形もなく。

 あまりに突然の事に、反応出来ないランコとタナカ。漏れたのは声。

 

「え……」

「は?」

 

 だが、反応出来た者がいる。オウカだった。

 

「まさか!」

 

 即座にモノリスに近づく。髪に挿した櫛を抜き、モノリスに近づける。そして、マユに聞く。

 

[どうだ?]

 

 それと並行して、呆然としている二人にも声を掛ける。

 

「おい! ボサっとすんな!」

「「!」」

 

 オウカの声に我に返る二人。ランコが当たり一体を探し始め、タナカは緊急事態用の端末を出して連絡。

 

「リ、リアちゃん!? い、一体どこへ!?」

「えっと、こういう時は……連絡!」

 

 そして、マユはモノリスの鑑定をする。彼女は(一応)刀工であるので、物品の鑑定は得意。何かしらのギミックすら見抜ける。それは別の術理で成り立っているこの世界の技術も可能。

 マユが念話で話しかけて来た。

 

[何か仕込みがある。四人目の人が特定の魔力を流すと、飛ばされるようになっている。しかも隠蔽されている]

[おいおい、〈転移封鎖〉は?]

[わたしにはわからない。でも、何かしら抜け穴があるんじゃないの?]

[抜け穴?]

 

 オウカはこめかみを揉んで考える。だが、今はそれよりもリアの身の安全が第一。なので並行で思考しながら、マユに訊ねる。

 

[どこに飛ばされたかはわかるか?]

[わたしより、あなたが適任じゃないの]

[え]

[あなたが最初に使った<冥刀>は?]

 

 その言葉に思い出す。【オートクレール】の真の姿を。

 

「そうだったな」

 

 腰に佩刀している古代剣に触れて頷いた。




【コソコソ話】
(#ー#)<……もしかして主人公(アイツ)って結構波乱万丈?

(・▽・)<ええそうですよ。彼は私と違って実の親からの愛を貰えませんでした。

(㈩*㈩)<それどころか、奪われて、閉じ込められた。

(㈩*㈩)<前も書いたけど、育ての親と友人がいなかったら死んでた。

(#ー#)<……さりげなく言ったけど、お前は両親に愛されたんだ。

(・▽・)<はい♪ 私も親、姉妹、友達が生きていた間はおとなしくしてました。

(#ー#)<つまり、死んでから弾けたと?

(・▽・)<……ええ。だってあんな事になったんだから。

(#ー#)<(コイツも色々ありそう)……。

(㈩*㈩)<因みに、わたしはどちらとも言えない。

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