(㈩*㈩)<実はわたしは使い手が必要ない。だから契約してない。
(#ー#)<ふうん。
(・▽・)<ひとり歩きしているス○ンドみたいな感じですか?
(㈩*㈩)<それが近い。
(#ー#)<もっと良い例えねえのか!? ……ねえかもな。
△▲△
時間はオウカが声を掛けられた所まで遡る。
彼に声を掛けて来たのは、手のひらサイズの赤い機械アリだった。
「どういう事?」
機体アリの本体は【オーガ】に取り込まれているはず。それに加え搭乗していたネラはどうにか命は繋いだものの、動ける状態ではない。
【アリス】の中の、同乗者を乗せる場所を確認する。
「は?」
そこにいたのは意識を失ったリアのみ。ネラがいなくなっていた。正確には服だけ残って体がなくなっている。
そんな彼の疑問に答えるように、機械アリは喋る。
「理由、開示。畢竟、鏤骨、合技」
彼女の説明曰く。
【アスカトル】には複製体の機械アリを作る能力がある。
普段量産する機械アリは、本体と比べ、大きさと性能はそこまででもない。偵察、群体攻撃、術技の演算補助、本体を仲介した通信がおこなえるくらい。……くらい? まあいいや。因みにえげつない技もあるが今回は割愛。
だがそれが〈
それを使い、ネラは特殊な機械アリを作っていた。その中の一つに、自分の体に何かあった際のスペアボディとなる機械アリ。かなり特殊な用途だったので、出来たのはつい最近で、それを体内に仕込んでいたらしい。
ところが、今回の件で重傷を負ったどころか、本体まで取り込まれてしまい、せっかく作ったモノすら使えなくなった。
その事態に、【アスカトル】は、ネラを助けるため殉じて〈
その結果、ネラに【アスカトル】のチカラ全てが譲渡。更に、仕込んでいた機械アリと、人間の体が合体した結果、ネラは手のひらサイズの機械アリになった。因みに取り込まれた機体は抜け殻のようなモノになった。
そういう訳で、今の彼女は<デュナミスト>と<冥刀>の中間存在になっている。強いて言うならマユの状態に近いかもしれない。
「貴方、処置、御蔭」
「意味があったのなら良かったよ」
因みに、オウカの処置があったからこそ、命が繋がれ、【アスカトル】がチカラを渡す猶予が出来たとの事。
そんなオウカにネラは提案。
「提案」
「?」
「契約、誓願」
「はい?」
求めて来たのは契約。
「<冥刀>、使手、必要」
「それは知っているけど……」
「
「う~ん」
昔は色々な<冥刀>を使っていた。だが、今は一本も持っていない。……実はマユは持ち主が必要ないので、契約がない。ただ一緒にいるだけである。
「貴方、補助、可能。今回、勝利、可能」
「それしか手は無さそうだな。良いだろう」
そういう訳でオウカは、機械アリ――ネラに親指を差し出す。すると、彼女は顎で指を噛み血を啜る。こうして契約は完了した。
「じゃあ宜しく。ええと【アスカトル】でいいのか?」
「否定。
【アスカトル】は殉じた。
「其故、ネラ。貴方、呼称、許可」
「わかった。じゃあ、ネラ。俺もサクでいい」
「了解。
そして、彼女のサポートで勝利したのだ。ところが、相手の自爆に巻き込まれかけるも、
「如何!?」
「大丈夫」
オウカの【匣】は、条件を満たした生物すら仕舞える。それは自分をも含むので、緊急時のシェルター代わりにもなる。なのでそこに避難した訳である。
◇◆◇◆
オウカは空き教室で、食事を取りながら事情を話した。因みに、メニューはカツ丼。リアはまだ意識が戻らないので、保健室へ行く事になった。
全てを話し終えて、一息つくためにお茶を飲むオウカ。彼は蜂蜜を入れたレモンティーである。
「ふぃ~」
ネラもティーカップに頭部を入れてお茶を飲んでいた。彼女は砂糖沢山のミルクティーである。
「美味」
「「味覚あるんだ!?」」
高校側の面々がツッコミを入れる。
一方、≪蟲≫の面々は苦い顔をしていた。
その前にあったのは、機体型<冥刀>の待機形態が五本、彼らのエモノ。なのだが、色褪せている上、罅や刃毀れだらけ。
「どうしましょう……」
「生きてはいるようだが、修理がいるな……」
「仕事出来ないし」
「そもそもぉ、リーダーがいなくなったぁ」
「……」
自爆寸前、本体をネラが機械アリを使い回収していたので、【オーガ】以外の十九の<冥刀>は無事ではあった。
とは言え、自己修復可能なラインを超えている。……正確には自己修復は不可能ではないが、こうまでなると、時間が凄まじくかかる。部品の修理や追加、刻印の書き直しなどをした方が速く直る。
ただし、専門の職人は必要。しかも今回はあまりに損傷と消耗が激しすぎるので、凄腕でないとできない。しかも、彼らの機体のメンテナンスをしていたのが、ハーミットだったので、彼がいないので出来ない。彼ら自体もある程度のメンテナンスは可能だが、そこまでの腕は持っていない。
そんな彼らに声を掛けたのはマユ。
「直そうか? 報酬は貰うけど」
「出来るのですか?」
「出来るのか?」
彼女が<冥刀>の作刀に関わった刀工である事は知らないので、疑わしいそうな眼を向けるカルゴとカツト。
マユは微笑んで答える。
「この程度ならすぐ終わる」
「本当だし?」
「嘘じゃねえのぉ?」
「……」
ファン、サイズ、フタオの顔も疑わしそう。
なので、マユは見せる事にする。
という訳で、キョウコに声を掛ける。
「すいません」
「な~に~」
「頑丈な部屋を貸して」
「うん~? 何するの~?」
「コレらの修理」
「できるの~?」
頷くと、キョウコは端末を操作して部屋を取ってくれた。
そういう訳で、実験に使われる部屋にやってきた全員。因みに、ザンカとジンナも付いて来た。
「ボクも見てみたい」
「興味あるっす」
見物人に溜息を吐くマユ。
「まあいいか」
気持ちを切り替える。
そして、お手本として出したのは、機体型の待機形態である刀剣。先程回収したモノの一つで、色褪せ刀身はボロボロ。
銘は【エーラーワン】。ゾウムシの機体を召喚する<冥刀>。
マユは修理に必要な道具を出していき、同時並行で刀剣を診ていく。
(かなり不味い状態。でも、ギリギリ修復可能な範囲)
刀剣を携帯用の炉に入れ熱しながら、彼女はインゴットを出す。見た所、特殊な金属ではないのだが、
「〈錬成〉」
それを一瞬で【エーラーワン】の素材に合わせた金属にしてしまう。
「「!?」」
それにオウカ以外の全員が絶句。
そんな彼らにオウカは心の中で称賛しながら、冷静に言う。
「(流石、刹那叢雅。)これで驚いていたら、持ちませんよ?」
絶句者を他所に、作業は進む。
マユは刀剣を台に置き固定。右手に鎚、左手にインゴットを持ち構える。
「さて」
インゴットが端から糸になっていき、刀剣に纏わりつく、それにマユは小槌で刀剣を叩いていく。暫く叩き続け……
「ここ」
タイミングを見て、水を入れた水槽に入れて冷やす。すると、そこには色と艶が戻った待機形態の【エーラーワン】があった。
「後は……」
彫刻刀と筆が合体したようなモノを出し、刻印を書き直していく。それと同時に核を修復する。
そうして一時間もしない内に<冥刀>は完全に復活した。
そうしてマユは見物人を振り返る。手には【エーラーワン】の待機状態の剣がある。完全復活……どころか新品同様な状態になった。
「どう?」
だが、それに答える声はない。ほぼ全員唖然呆然絶句しており、Sun値直葬している者、アホ面を晒す者までいる。……本人の名誉のために誰かは言わないでおこう。
そんな状況で、唯一正気を保っていたオウカが彼女に声を掛ける。
「マユ、マユ、マユ」
「何? 三回も呼びかけて」
「ちょっとやりすぎ」
「そう?
(考案者兼、製作者と比べんな!?)
心の中でツッコミを入れるオウカ。
そんな会話をしていると全員が再起動していく。
まず≪蟲≫達がマユの方へ詰め寄りお願いする。
「失礼な事を申しました。謝ります。なので修理をお願いします」
「詫びの代金も払う。だから修理を頼みたい」
「マジお願いするし」
「前払い金はこれぐらいでいいかぁ」
「……!!」
更にそこへザンカまで乱入しようとする。それを止めるジンナだが、建前と本音が逆になっている。
「早速【ウルナッハ】のメンテをお願いするっす!」
「
そんな混沌とした状況を見守るオウカに、話しかけて来たのはネラ。
「
「うん?」
「彼女、何者?」
その問いにオウカは答えようかどうしようか迷う。正確には場所の問題。二人きりなら言っても良かったが、この状況ではどこに聞き耳があるかわからない。
なので迷っていると。キョウコがこちらにやって来た。
「それは~、ワタシも~、聞きたいな~」
そんな二人の視線にオウカは溜息を吐く。そして、他の面々の注意がマユに向いている事を確認して、キョウコに遮音の結界を張って貰ってから話し始める。
「アイツは<冥刀>を作った鍛冶師です。自分を<冥刀>にする事で生き残っていました」
驚くネラ。一方、キョウコは驚いた顔をしながらも、納得したような顔もしている。
「驚愕!?」
「……なるほど」
キョウコが間を開けて話す。
「<ダンジョン>で彼女に出会った訳?」
「まあそうですね」
嘘は言っていない。だがこれで誤解させる事はできる。
(なるほど~、彼女のおかげで~。チカラを手に入れたのか~)
このように。
色々誤解しているキョウコを他所にネラは訊ねる。
「
「わかってる。頼んどく」
「感謝」
「まあでも……」
チラリとマユの様子を伺う。
すると、彼女は≪蟲≫の<冥刀>を五つ同時に修理していた。凄まじいマルチタスクだが、この程度、他の叢雅も出来る。
「今日は出来るかわからん」
「理解。待機、得意」
そうしてオウカは次にキョウコに話しかける
「先生。実習はどうするのですか?」
「うん? まあとりあえず中止前の状況で点数をあげる感じかな」
「再度実習や無しにならなくて良かったです」
「再度はちょっと無理。予定ギチギチだから」
そう言って笑ったキョウコだが、その顔がすぐに曇る。
「それより後始末が面倒。どうしよう」
そんな彼女の様子にオウカとネラは苦笑した。
【コソコソ話】
(・▽・)<実はマユこと、刹那叢雅、やらかしました。
(#ー#)<何を?
(・▽・)<専門家なら異常さがわかるんですけど……
(・▽・)<実はここまでの修繕できる人は、この世界にいないんです。
(#ー#)<……そういう事か。というか錬成自体異常だけどな。
(・▽・)<ええ。しかも、最後の肯定に至っては、あの世界にも……いないのです。
(#ー#)<は!?
(・▽・)<最後の核修復促進。アレが出来るの叢雅一門だけなので。