冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【コソコソ話】
(㈩*㈩)<実はわたしは使い手が必要ない。だから契約してない。

(#ー#)<ふうん。

(・▽・)<ひとり歩きしているス○ンドみたいな感じですか?

(㈩*㈩)<それが近い。

(#ー#)<もっと良い例えねえのか!? ……ねえかもな。




 △▲△

 

 

 時間はオウカが声を掛けられた所まで遡る。

 

 彼に声を掛けて来たのは、手のひらサイズの赤い機械アリだった。

 

「どういう事?」

 

 機体アリの本体は【オーガ】に取り込まれているはず。それに加え搭乗していたネラはどうにか命は繋いだものの、動ける状態ではない。

 【アリス】の中の、同乗者を乗せる場所を確認する。

 

「は?」

 

 そこにいたのは意識を失ったリアのみ。ネラがいなくなっていた。正確には服だけ残って体がなくなっている。

 そんな彼の疑問に答えるように、機械アリは喋る。

 

「理由、開示。畢竟、鏤骨、合技」

 

 彼女の説明曰く。

 

 【アスカトル】には複製体の機械アリを作る能力がある。

 普段量産する機械アリは、本体と比べ、大きさと性能はそこまででもない。偵察、群体攻撃、術技の演算補助、本体を仲介した通信がおこなえるくらい。……くらい? まあいいや。因みにえげつない技もあるが今回は割愛。

 

 だがそれが〈畢竟(アリストテレス)〉では大きく変わる。素材が必要になり(量産には素材はいらない。厳密には複製なので)、製作時間は長くなるが、オーダーメイドで特殊な機械アリを作れるとの事。特定技能に特化させたり、特殊な能力を持たせたりできるそうだ。

 それを使い、ネラは特殊な機械アリを作っていた。その中の一つに、自分の体に何かあった際のスペアボディとなる機械アリ。かなり特殊な用途だったので、出来たのはつい最近で、それを体内に仕込んでいたらしい。

 

 ところが、今回の件で重傷を負ったどころか、本体まで取り込まれてしまい、せっかく作ったモノすら使えなくなった。

 その事態に、【アスカトル】は、ネラを助けるため殉じて〈冥肌鏤骨(オストラコン)〉となった。こういう事例は稀に確認される。

 

 その結果、ネラに【アスカトル】のチカラ全てが譲渡。更に、仕込んでいた機械アリと、人間の体が合体した結果、ネラは手のひらサイズの機械アリになった。因みに取り込まれた機体は抜け殻のようなモノになった。

 

 そういう訳で、今の彼女は<デュナミスト>と<冥刀>の中間存在になっている。強いて言うならマユの状態に近いかもしれない。

 

「貴方、処置、御蔭」

「意味があったのなら良かったよ」

 

 因みに、オウカの処置があったからこそ、命が繋がれ、【アスカトル】がチカラを渡す猶予が出来たとの事。

 そんなオウカにネラは提案。

 

「提案」

「?」

「契約、誓願」

「はい?」

 

 求めて来たのは契約。

 

「<冥刀>、使手、必要」

「それは知っているけど……」

当機(わたし)、其方、安定。能力、十全、使用、可能」

「う~ん」

 

 昔は色々な<冥刀>を使っていた。だが、今は一本も持っていない。……実はマユは持ち主が必要ないので、契約がない。ただ一緒にいるだけである。

 

「貴方、補助、可能。今回、勝利、可能」

「それしか手は無さそうだな。良いだろう」

 

 そういう訳でオウカは、機械アリ――ネラに親指を差し出す。すると、彼女は顎で指を噛み血を啜る。こうして契約は完了した。

 

「じゃあ宜しく。ええと【アスカトル】でいいのか?」

「否定。当機(わたし)、冥刀、人間、中間」

 

 【アスカトル】は殉じた。

 

「其故、ネラ。貴方、呼称、許可」

「わかった。じゃあ、ネラ。俺もサクでいい」

「了解。主人(サク)

 

 そして、彼女のサポートで勝利したのだ。ところが、相手の自爆に巻き込まれかけるも、

 

「如何!?」

「大丈夫」

 

 オウカの【匣】は、条件を満たした生物すら仕舞える。それは自分をも含むので、緊急時のシェルター代わりにもなる。なのでそこに避難した訳である。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 オウカは空き教室で、食事を取りながら事情を話した。因みに、メニューはカツ丼。リアはまだ意識が戻らないので、保健室へ行く事になった。

 

 全てを話し終えて、一息つくためにお茶を飲むオウカ。彼は蜂蜜を入れたレモンティーである。

 

「ふぃ~」

 

 ネラもティーカップに頭部を入れてお茶を飲んでいた。彼女は砂糖沢山のミルクティーである。

 

「美味」

「「味覚あるんだ!?」」

 

 高校側の面々がツッコミを入れる。

 

 一方、≪蟲≫の面々は苦い顔をしていた。

 その前にあったのは、機体型<冥刀>の待機形態が五本、彼らのエモノ。なのだが、色褪せている上、罅や刃毀れだらけ。

 

「どうしましょう……」

「生きてはいるようだが、修理がいるな……」

「仕事出来ないし」

「そもそもぉ、リーダーがいなくなったぁ」

「……」

 

 自爆寸前、本体をネラが機械アリを使い回収していたので、【オーガ】以外の十九の<冥刀>は無事ではあった。

 とは言え、自己修復可能なラインを超えている。……正確には自己修復は不可能ではないが、こうまでなると、時間が凄まじくかかる。部品の修理や追加、刻印の書き直しなどをした方が速く直る。

 ただし、専門の職人は必要。しかも今回はあまりに損傷と消耗が激しすぎるので、凄腕でないとできない。しかも、彼らの機体のメンテナンスをしていたのが、ハーミットだったので、彼がいないので出来ない。彼ら自体もある程度のメンテナンスは可能だが、そこまでの腕は持っていない。

 そんな彼らに声を掛けたのはマユ。

 

「直そうか? 報酬は貰うけど」

「出来るのですか?」

「出来るのか?」

 

 彼女が<冥刀>の作刀に関わった刀工である事は知らないので、疑わしいそうな眼を向けるカルゴとカツト。

 マユは微笑んで答える。

 

「この程度ならすぐ終わる」

「本当だし?」

「嘘じゃねえのぉ?」

「……」

 

 ファン、サイズ、フタオの顔も疑わしそう。

 なので、マユは見せる事にする。

 という訳で、キョウコに声を掛ける。

 

「すいません」

「な~に~」

「頑丈な部屋を貸して」

「うん~? 何するの~?」

「コレらの修理」

「できるの~?」

 

 頷くと、キョウコは端末を操作して部屋を取ってくれた。

 

 そういう訳で、実験に使われる部屋にやってきた全員。因みに、ザンカとジンナも付いて来た。

 

「ボクも見てみたい」

「興味あるっす」

 

 見物人に溜息を吐くマユ。

 

「まあいいか」

 

 気持ちを切り替える。

 

 そして、お手本として出したのは、機体型の待機形態である刀剣。先程回収したモノの一つで、色褪せ刀身はボロボロ。

 銘は【エーラーワン】。ゾウムシの機体を召喚する<冥刀>。

 

 マユは修理に必要な道具を出していき、同時並行で刀剣を診ていく。

 

(かなり不味い状態。でも、ギリギリ修復可能な範囲)

 

 刀剣を携帯用の炉に入れ熱しながら、彼女はインゴットを出す。見た所、特殊な金属ではないのだが、

 

「〈錬成〉」

 

 それを一瞬で【エーラーワン】の素材に合わせた金属にしてしまう。

 

「「!?」」

 

 それにオウカ以外の全員が絶句。

 そんな彼らにオウカは心の中で称賛しながら、冷静に言う。

 

「(流石、刹那叢雅。)これで驚いていたら、持ちませんよ?」

 

 絶句者を他所に、作業は進む。

 マユは刀剣を台に置き固定。右手に鎚、左手にインゴットを持ち構える。

 

「さて」

 

 インゴットが端から糸になっていき、刀剣に纏わりつく、それにマユは小槌で刀剣を叩いていく。暫く叩き続け……

 

「ここ」

 

 タイミングを見て、水を入れた水槽に入れて冷やす。すると、そこには色と艶が戻った待機形態の【エーラーワン】があった。

 

「後は……」

 

 彫刻刀と筆が合体したようなモノを出し、刻印を書き直していく。それと同時に核を修復する。

 そうして一時間もしない内に<冥刀>は完全に復活した。

 

 そうしてマユは見物人を振り返る。手には【エーラーワン】の待機状態の剣がある。完全復活……どころか新品同様な状態になった。

 

「どう?」

 

 だが、それに答える声はない。ほぼ全員唖然呆然絶句しており、Sun値直葬している者、アホ面を晒す者までいる。……本人の名誉のために誰かは言わないでおこう。

 そんな状況で、唯一正気を保っていたオウカが彼女に声を掛ける。

 

「マユ、マユ、マユ」

「何? 三回も呼びかけて」

「ちょっとやりすぎ」

「そう? 六徳叢雅(あのアホ)よりマシ」

(考案者兼、製作者と比べんな!?)

 

 心の中でツッコミを入れるオウカ。

 そんな会話をしていると全員が再起動していく。

 まず≪蟲≫達がマユの方へ詰め寄りお願いする。

 

「失礼な事を申しました。謝ります。なので修理をお願いします」

「詫びの代金も払う。だから修理を頼みたい」

「マジお願いするし」

「前払い金はこれぐらいでいいかぁ」

「……!!」

 

 更にそこへザンカまで乱入しようとする。それを止めるジンナだが、建前と本音が逆になっている。

 

「早速【ウルナッハ】のメンテをお願いするっす!」

姉さん落ち着いて(ボクもお願い)!」

 

 そんな混沌とした状況を見守るオウカに、話しかけて来たのはネラ。

 

主人(サク)

「うん?」

「彼女、何者?」

 

 その問いにオウカは答えようかどうしようか迷う。正確には場所の問題。二人きりなら言っても良かったが、この状況ではどこに聞き耳があるかわからない。

 なので迷っていると。キョウコがこちらにやって来た。

 

「それは~、ワタシも~、聞きたいな~」

 

 そんな二人の視線にオウカは溜息を吐く。そして、他の面々の注意がマユに向いている事を確認して、キョウコに遮音の結界を張って貰ってから話し始める。

 

「アイツは<冥刀>を作った鍛冶師です。自分を<冥刀>にする事で生き残っていました」

 

 驚くネラ。一方、キョウコは驚いた顔をしながらも、納得したような顔もしている。

 

「驚愕!?」

「……なるほど」

 

 キョウコが間を開けて話す。

 

「<ダンジョン>で彼女に出会った訳?」

「まあそうですね」

 

 嘘は言っていない。だがこれで誤解させる事はできる。

 

(なるほど~、彼女のおかげで~。チカラを手に入れたのか~)

 

 このように。

 色々誤解しているキョウコを他所にネラは訊ねる。

 

当機(わたし)、検査、懇願」

「わかってる。頼んどく」

「感謝」

「まあでも……」

 

 チラリとマユの様子を伺う。

 すると、彼女は≪蟲≫の<冥刀>を五つ同時に修理していた。凄まじいマルチタスクだが、この程度、他の叢雅も出来る。

 

「今日は出来るかわからん」

「理解。待機、得意」

 

 そうしてオウカは次にキョウコに話しかける

 

「先生。実習はどうするのですか?」

「うん? まあとりあえず中止前の状況で点数をあげる感じかな」

「再度実習や無しにならなくて良かったです」

「再度はちょっと無理。予定ギチギチだから」

 

 そう言って笑ったキョウコだが、その顔がすぐに曇る。

 

「それより後始末が面倒。どうしよう」

 

 そんな彼女の様子にオウカとネラは苦笑した。




【コソコソ話】
(・▽・)<実はマユこと、刹那叢雅、やらかしました。

(#ー#)<何を?

(・▽・)<専門家なら異常さがわかるんですけど……

(・▽・)<実はここまでの修繕できる人は、この世界にいないんです。

(#ー#)<……そういう事か。というか錬成自体異常だけどな。

(・▽・)<ええ。しかも、最後の肯定に至っては、あの世界にも……いないのです。

(#ー#)<は!?

(・▽・)<最後の核修復促進。アレが出来るの叢雅一門だけなので。
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