(#ー#)<サクヅキがいなかった場合、オオトリは苦しまずに死ねた。
(#ー#)<そして、上手くやれば逃げるチャンスもあった。
(・▽・)<あの護衛そんなに強かったんですか?
(㈩*㈩)<強い……というか厄介。正確には使ってる<冥刀>がだけど。
(㈩*㈩)<【ティル・ナ・ノーグ】って言うんだけど、異空間を作り出して潜れる、虚空叢雅の作品。
(㈩*㈩)<しかもコレの場合、自分しか潜れない。だから使い手は安全圏から攻撃可能だったんだけど……、相性が悪すぎた。
△▲△
それは、とある戦闘の後に交わされた会話。
そこには幾人もの人間がいた。
だが、辺り一面は、命だったものが転がっている状態であり、その中で生きているのは二人。
髪の長い少年と、髪の短い少女。
少年は両手にロングナイフを持ち、少女は右手に
どちらの武器も血と油に濡れているが、その体には傷はなく、多少の返り血がある程度。
少女が溜息を吐きながら、腰に三日月刀を収める。
「はぁ、手応えのない……」
「楽に済むならそれで良いと思うけど」
この二人は、この近隣を根城にしている、野盗を始末するためにやって来た。結果は御覧の通り、雑魚ばかりで鎧袖一触だった。だがそれが少女には気に食わなかったらしい。
「わかってないね、サクは」
「何を?」
「人生は楽しまないと」
「それはわかる」
一度しかないのだから。だがコイツの場合は違う。
「戦いこそが人生なのだから」
少女の言葉に少年――サクヅキ=オウカは半眼になる。彼はこの少女の気質――戦闘狂なのを知っている。
敵が強敵であればあるほど、苦戦すればするほど燃えるらしい。
「お前は、本っ当に戦いが好きだな」
「当然さ。だからソルは今の世界が好きだし、戦いの中で死ぬと決めている」
そんな彼女――ソルドアットの言葉をオウカはこう返す。
「俺はこの世界は嫌い」
「知ってる。サクは弱肉強食が嫌いだもんね」
「当たり前だ。だってそれは獣の論理だ」
人間の真価は弱者を救おうとした事。だからこそ、社会保障が出来て、どんな人でも幸せに生きられるようになった。なのに、この世界は完全に逆行し、外道、畜生、害悪、下衆しかいない。
「それに弱肉強食の果ては何も残らない。皆死ぬ」
この世界はそうして滅ぶ。
その言葉に、ソルドアットは神妙な顔をする。
「まあソルも今の世界は酷すぎると思う」
「おう」
彼女は人の心が存在する。だからヒトである。
「でもさ、平和になったら、ソルの居場所はなくなるね」
「そんな事はないだろう」
「え」
オウカの返しに、ソルドアットはキョトンとした顔をする。
「完全に争いはなくならないだろう。それにさ」
一拍置いてオウカは続けた。
「お前はセラと違って殺したい訳じゃないだろう?」
「うん。ただ戦いたいだけ」
「だったら、偶になら付き合ってやるからよ」
オウカ――友達の言葉にソルドアットは花のような笑みを浮かべた。
「じゃあ今から、
「……はいはい」
そして、二人はエモノを構えぶつかり合った。
こういう日々は全ての決着が付き、二人の道が違えるあの日まで続いた。
この時の二人は知らなかった。最終的に全存在を掛けて殺し合いをする事を。
◇◆◇◆
「ハッ」
寝床代わりにしているベッドから起き上がるオウカ。
時計を見てみると、時刻は早朝。普段起きる時間より遅め。
「寝過ごしたか……」
そう呟いた。
これでは朝の日課のトレーニングが出来ない。
(まさか、アイツの夢を見るとは)
そんな事を思っていると。
「早朝、起床、時間、……?」
声が聞こえた。しかもオウカの隣から。そういえば、何か暖かく柔らかいモノが傍らにある。
「……」
沈黙して掛け布団を剥がすと、そこには――長髪の裸の女性が目をこすっていた。
「ネラ、お前何してんの?」
オウカのツッコミ。それにネラは起き上がりながら答える。掛け布団で前は申し訳程度に隠している。
「睡眠」
「いや、そうじゃなくて、何で俺の寝床に潜り込んでいるの? それと人形態で」
普段は機械アリ形態のネラだが、人形態にもなれる。なぜか、こういうタイミングで人形態になる彼女である。
「人肌、恋求。成行?」
「いや、疑問形で答えられても……」
そんなオウカにネラは軽く微笑む。そして、顔を真面目にして聞いて来る。
「普段、比較、寝起、最悪。如何?」
「ん? ああ友達の夢を見てな」
「友達? 誰々?」
実はネラ、オウカの過去を聞いている。だからこそ、彼の愉快な仲間達の事を知っている。
「ほら、戦闘狂の」
「……納得」
思い立ったネラ。
そんな彼女にオウカは続ける。
「前も言ったけど、あの世界はさ、地獄だった。馬鹿しかいないから」
チカラを持ったモノが、驕り高ぶり弱者を虐げた結果、滅亡する事が確定していた。
「優しければ優しい程苦しむんだけど、アイツは結構上手くやってたんだ」
チカラがあったうえに、あの戦闘狂気質。だからこそであろう。
「だから、俺とアイツは最終的n」
最後まで言えなかった。
ネラがオウカを胸に抱きしめた。
「
どこかの誰かさんがやったように、窒息する程は抱きしめず軽く抱きしめる。
「貴方、選択、正解」
「……」
オウカは何も言わず抱きしめられたままになっていた。
「
ネラはオウカを抱きしめたまま仰向けになる。
そのまま、オウカの頭をあやすように撫でる。
「
オウカは暫くされるがままになっていた。
暫くして。
「……ありがとう」
顔を上げたオウカの言葉に、ネラは微笑んだ。
******
オウカが ≪天ノ角高校≫に入学して、あっという間に二ヶ月が経った。
この日の昼も、オウカは、いつものメンバーと昼食を取っていた。
普段は、オウカ、カナタ、マユの三人が主。
あの実習以来、リア、ランコ、ジンナが偶に加わるようになった。タナカとその恋人は来ない。なぜだろう?
そして、もう一匹? いやもう一人? が常に加わった。
「最近、校内、空気、緊張」
そう言ったのは、オウカの右肩に乗る、手のひらサイズの赤い機械アリ――ネラ。
あの実習以来、オウカの<冥刀>という事で、機械アリ形態で一緒に行動している。因みに、式神とか召喚獣扱いなので、学校に持ってきても大丈夫。
ネラの言葉に、オウカの右隣に座っていたマユが同意する。
「確かに」
ちなみに今日は人形態。最近、昼はこうなっている。
そんな二人(?)の言葉に、オウカはこめかみを触りながら呟く。
「何かあったような?」
思い出そうとする彼を、左隣に座ったカナタがフォロー。
「ほら、対校戦があるじゃない」
「ああ!」
「其確」
オウカとネラは覚えていたし、知っていた。結構有名だから当然だが、知らない者が一名。
「何それ?」
異世界出身なので、当然と言えば当然。
そんな彼女に、オウカは説明する。
「<プレイヤー>を育成する高校同士、様々な競技で競い合うんだよ」
「何の為?」
「自分の腕試しとか、自己アピールだな」
「優秀な成績を残せれば、将来の進路に有利ですから」
カナタが付け加えた。
実際その通りで、高校卒業後に、通常は下位ランクから始まるプロの<プレイヤー>で、中位ランクからスタート出来たり、有名企業のお抱えになれたり、│と《・》│あ《・》│る《・》│大《・》│会《・》への出場権が獲得出来たりする。
説明に納得するマユだった。
それと同時にある疑問が湧き上がる。
「それで、どんな競技をやるの?」
「えっと、バトルとレース」
「色々」
その説明では、スカスカである。なので、カナタが説明する。
「二人共。その説明だと、あまりにも大雑把過ぎるわよ」
おこなわれる競技は六つ。
・出てくる大量の敵をいかに多く速く倒せるか――『殲滅戦線』
・目標物をどれだけのダメージを与えられるか――『大破壊』
・小さく大量の的をいかに正確に速く撃ち抜けるか――『クイック・シューティング』
・山有り谷有り罠有り妨害有りの――『ハイパーレース』
・どれだけ早く飛べるかを競う――『飛空』
・ほぼほぼ何でも有りのバトルロワイヤル――『バトル✕バトル✕バトル』
そして、コレらに偶にルールが追加、改定されたりする。
マユは納得と同時に、湧き上がる疑問を聞く。
「追加って?」
「禁忌術技や、心身に後遺症が残るモノの使用禁止、会場を消し飛ばす程火力過多なモノや、世界に影響与えるモノの使用禁止とか」
「……使った人いるの?」
「黎明期は凄かったらしいわよ」
動画投稿サイトを見てみたら、と言うカナタ。
実際、凄まじかったらしく、死傷者続出だった。しかも選手だけならまだ良いのだが、観客まで巻き込まれて、死傷する事態になっていたそうだ。
ソレにルール追加をして、安全対策を万全におこない、皆が楽しめるモノになった。
ネラがオウカに聞いてくる。
「│主人《サク》」
「ん?」
「貴方、出場?」
「どーだろうな?」
首を捻るオウカ。それにカナタが断言する。
「出場すると思うわよ」
「そうですかね?」
「だって一人一種目しか出れないもの、優秀な生徒は出場でしょうし」
一拍置いて続ける。
「それに、貴方は色々やらかしてるでしょう?」
「……その言い方はちょっと」
事実ではあるが、言い方があるだろう。
「だから、本戦に出る可能性もあるわね」
対校戦は一年生だけの新人戦と、学年無差別の本戦がある。一年生は基本、新人戦に出場なのだが、稀に優秀な生徒が、本戦に出場することがある。その場合は、新人戦には出れない。
オウカはカナタの言葉にこう返す。
「まあ、いつも通りで行きます」
「いつも通り?」
「はい」
一拍置いて続ける。
「成り行き任せ大作戦!」
その場の全員ズッコケた。
******
そして、放課後。噂をすれば影となった。
帰宅部なので、荷物を纏めて帰ろうとするオウカ。そんな彼に声がかかった。
「サク君」
「ジンナ? どーした」
実は彼女は、オウカから「サク」と呼ぶ許可を貰えた。
「時間貰える? 対校戦の事で、生徒会長が用事あるんだって」
忙しいなら、明日でも良いらしいが、断る理由もないので、頷く。
「ああ、わかった」
そういう訳で、生徒会室へ向かう二人(マユとネラ含めると四人)。
てくてく歩く二人。そんな中、気になった事を、オウカは訊ねる。
「そういえば」
「?」
「何でジンナが呼びに来たんだ?」
「アレ? 言ってなかったっけ?」
何の事かわからないので、オウカは首を傾げる。それにジンナは納得する。
「言ってなかったようだね。ボク、生徒会の手伝いを偶にしてるんだ」
「役職にはついていないの?」
「うん。友達が役員だから助っ人で」
「ふうん」
納得するオウカ。そんなこんなで生徒会室に到着。
ジンナがノックをして二人で入室する。
「「失礼します」」
部屋の中は中々広い。中央に会議用の机と椅子があり、端にはパソコンなどの備品がある。
そして、奥に一人の人物がいる。白髪に色素の薄いサングラスをした男。彼が二人の姿を見て軽く微笑む。
「ああ来てくれたね。忙しい所すまない」
「いえ、大丈夫です」
「そう言って貰えるとありがたい。適当にかけてくれ」
お茶を淹れ始める彼を見た、オウカがジンナに訊ねる。
「この人が生徒会長?」
「ああ。カミキ=シンノスケ。通称“二ツ神” 」
「何、その凄い仰々しい通り名」
「名字と名前に神がついているから」
漢字で書くと『神木神之輔』。だから“二ツ神”。
そして、もう一つの理由。それは恐ろしく強いから。
何と彼は《クロス》を二つ持つ<
人工異能である《クロス》は、特殊なナノマシンを投与すれば手に入れる事が出来る。
適合しないと死に至るが、今はパッチテストを事前におこない、八、九割以上の成功を見込め、誓約書(死亡しても責任を負うことはない等の内容が書かれている)を記入すれば誰でも手に入れられる。
だが、それはあくまでも一回目に限る。
元々、黎明期でパッチテストが無く、希望者全員に投与していた時でも、成功率は六、七割はあった。だが、二回目以降は成功率はガクンと下がり、半分以下になる。
更に、二回目もガチャなので、どんな能力になるかはわからない。相性が悪いと、元からあった能力と潰し合い、前より弱体化と言う事例まである。
だからこそ、二回目残る投与をする人は少ない。さらなるチカラを求める人か、超モノ好き、そして、遅かれ早かれ死ぬ人が、生命力を活性化させるためにやるかどうかである。
因みにオウカはやろうとしていた。
【TIPS:
(#ー#)<二つの《クロス》を持つ<クルセイダー>。
(#ー#)<元々、《クロス》は眼に宿るチカラだから、理論上二つ持てる。だが……。
(・▽・)<適合率が低いんですね。
(#ー#)<ああ。一回目は六、七割の可能性で上手く行く。でも二回目は半分以下。
(#ー#)<そのうえ、能力はガチャだから、当たり外れがある。
(#ー#)<適合出来たとしても、弱体化なんて惨事もある。
(・▽・)<する人は少なそうですね。
(#ー#)<おう。でも、本編で述べた通り、ナノマシンを携帯しておいて、死に掛けた時に、生命力を活性させるために投与するという場合はある。
(㈩*㈩)<ねえ。ちょっといい?
(#ー#)<?
(㈩*㈩)<三度目以降ってどうなるの?
(#ー#)<無理だ。死ぬ。キャパオーバーって奴だ。
(㈩*㈩)<……抜け道ありそうだけど?
(#ー#)<今回はノーコメントで。
(・▽・)(㈩*㈩)<……(何かあるなコレ)。