冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【コソコソ話】
(#ー#)<サクヅキがいなかった場合、オオトリは苦しまずに死ねた。

(#ー#)<そして、上手くやれば逃げるチャンスもあった。

(・▽・)<あの護衛そんなに強かったんですか?

(㈩*㈩)<強い……というか厄介。正確には使ってる<冥刀>がだけど。

(㈩*㈩)<【ティル・ナ・ノーグ】って言うんだけど、異空間を作り出して潜れる、虚空叢雅の作品。

(㈩*㈩)<しかもコレの場合、自分しか潜れない。だから使い手は安全圏から攻撃可能だったんだけど……、相性が悪すぎた。


㊲~Once More Again~

 △▲△

 

 

 それは、とある戦闘の後に交わされた会話。

 そこには幾人もの人間がいた。

 だが、辺り一面は、命だったものが転がっている状態であり、その中で生きているのは二人。

 髪の長い少年と、髪の短い少女。

 少年は両手にロングナイフを持ち、少女は右手に三日月刀(シミター)を持っている。

 どちらの武器も血と油に濡れているが、その体には傷はなく、多少の返り血がある程度。

 

 少女が溜息を吐きながら、腰に三日月刀を収める。

 

「はぁ、手応えのない……」

「楽に済むならそれで良いと思うけど」

 

 この二人は、この近隣を根城にしている、野盗を始末するためにやって来た。結果は御覧の通り、雑魚ばかりで鎧袖一触だった。だがそれが少女には気に食わなかったらしい。

 

「わかってないね、サクは」

「何を?」

「人生は楽しまないと」

「それはわかる」

 

 一度しかないのだから。だがコイツの場合は違う。

 

「戦いこそが人生なのだから」

 

 少女の言葉に少年――サクヅキ=オウカは半眼になる。彼はこの少女の気質――戦闘狂なのを知っている。

 敵が強敵であればあるほど、苦戦すればするほど燃えるらしい。

 

「お前は、本っ当に戦いが好きだな」

「当然さ。だからソルは今の世界が好きだし、戦いの中で死ぬと決めている」

 

 そんな彼女――ソルドアットの言葉をオウカはこう返す。

 

「俺はこの世界は嫌い」

「知ってる。サクは弱肉強食が嫌いだもんね」

「当たり前だ。だってそれは獣の論理だ」

 

 人間の真価は弱者を救おうとした事。だからこそ、社会保障が出来て、どんな人でも幸せに生きられるようになった。なのに、この世界は完全に逆行し、外道、畜生、害悪、下衆しかいない。

 

「それに弱肉強食の果ては何も残らない。皆死ぬ」

 

 この世界はそうして滅ぶ。

 その言葉に、ソルドアットは神妙な顔をする。

 

「まあソルも今の世界は酷すぎると思う」

「おう」

 

 彼女は人の心が存在する。だからヒトである。

 

「でもさ、平和になったら、ソルの居場所はなくなるね」

「そんな事はないだろう」

「え」

 

 オウカの返しに、ソルドアットはキョトンとした顔をする。

 

「完全に争いはなくならないだろう。それにさ」

 

 一拍置いてオウカは続けた。

 

「お前はセラと違って殺したい訳じゃないだろう?」

「うん。ただ戦いたいだけ」

「だったら、偶になら付き合ってやるからよ」

 

 オウカ――友達の言葉にソルドアットは花のような笑みを浮かべた。

 

「じゃあ今から、遊ぼう(戦おう)!」

「……はいはい」

 

 そして、二人はエモノを構えぶつかり合った。

 

 こういう日々は全ての決着が付き、二人の道が違えるあの日まで続いた。

 この時の二人は知らなかった。最終的に全存在を掛けて殺し合いをする事を。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「ハッ」

 

 寝床代わりにしているベッドから起き上がるオウカ。

 時計を見てみると、時刻は早朝。普段起きる時間より遅め。

 

「寝過ごしたか……」

 

 そう呟いた。

 これでは朝の日課のトレーニングが出来ない。

 

(まさか、アイツの夢を見るとは)

 

 そんな事を思っていると。

 

「早朝、起床、時間、……?」

 

 声が聞こえた。しかもオウカの隣から。そういえば、何か暖かく柔らかいモノが傍らにある。

 

「……」

 

 沈黙して掛け布団を剥がすと、そこには――長髪の裸の女性が目をこすっていた。

 

「ネラ、お前何してんの?」

 

 オウカのツッコミ。それにネラは起き上がりながら答える。掛け布団で前は申し訳程度に隠している。

 

「睡眠」

「いや、そうじゃなくて、何で俺の寝床に潜り込んでいるの? それと人形態で」

 

 普段は機械アリ形態のネラだが、人形態にもなれる。なぜか、こういうタイミングで人形態になる彼女である。

 

「人肌、恋求。成行?」

「いや、疑問形で答えられても……」

 

 そんなオウカにネラは軽く微笑む。そして、顔を真面目にして聞いて来る。

 

「普段、比較、寝起、最悪。如何?」

「ん? ああ友達の夢を見てな」

「友達? 誰々?」

 

 実はネラ、オウカの過去を聞いている。だからこそ、彼の愉快な仲間達の事を知っている。

 

「ほら、戦闘狂の」

「……納得」

 

 思い立ったネラ。

 そんな彼女にオウカは続ける。

 

「前も言ったけど、あの世界はさ、地獄だった。馬鹿しかいないから」

 

 チカラを持ったモノが、驕り高ぶり弱者を虐げた結果、滅亡する事が確定していた。

 

「優しければ優しい程苦しむんだけど、アイツは結構上手くやってたんだ」

 

 チカラがあったうえに、あの戦闘狂気質。だからこそであろう。

 

「だから、俺とアイツは最終的n」

 

 最後まで言えなかった。

 ネラがオウカを胸に抱きしめた。

 

良々(よしよし)

 

 どこかの誰かさんがやったように、窒息する程は抱きしめず軽く抱きしめる。

 

「貴方、選択、正解」

「……」

 

 オウカは何も言わず抱きしめられたままになっていた。

 

良々(よしよし)

 

 ネラはオウカを抱きしめたまま仰向けになる。

 そのまま、オウカの頭をあやすように撫でる。

 

良々(よしよし)

 

 オウカは暫くされるがままになっていた。

 

 暫くして。

 

「……ありがとう」

 

 顔を上げたオウカの言葉に、ネラは微笑んだ。

 

 

 ******

 

 

 オウカが ≪天ノ角高校≫に入学して、あっという間に二ヶ月が経った。

 この日の昼も、オウカは、いつものメンバーと昼食を取っていた。

 

 普段は、オウカ、カナタ、マユの三人が主。

 あの実習以来、リア、ランコ、ジンナが偶に加わるようになった。タナカとその恋人は来ない。なぜだろう?

 そして、もう一匹? いやもう一人? が常に加わった。

 

「最近、校内、空気、緊張」

 

 そう言ったのは、オウカの右肩に乗る、手のひらサイズの赤い機械アリ――ネラ。

 あの実習以来、オウカの<冥刀>という事で、機械アリ形態で一緒に行動している。因みに、式神とか召喚獣扱いなので、学校に持ってきても大丈夫。

 

 ネラの言葉に、オウカの右隣に座っていたマユが同意する。

 

「確かに」

 

 ちなみに今日は人形態。最近、昼はこうなっている。

 そんな二人(?)の言葉に、オウカはこめかみを触りながら呟く。

 

「何かあったような?」

 

 思い出そうとする彼を、左隣に座ったカナタがフォロー。

 

「ほら、対校戦があるじゃない」

「ああ!」

「其確」

 

 オウカとネラは覚えていたし、知っていた。結構有名だから当然だが、知らない者が一名。

 

「何それ?」

 

 異世界出身なので、当然と言えば当然。

 そんな彼女に、オウカは説明する。

 

「<プレイヤー>を育成する高校同士、様々な競技で競い合うんだよ」

「何の為?」

「自分の腕試しとか、自己アピールだな」

「優秀な成績を残せれば、将来の進路に有利ですから」

 

 カナタが付け加えた。

 

 実際その通りで、高校卒業後に、通常は下位ランクから始まるプロの<プレイヤー>で、中位ランクからスタート出来たり、有名企業のお抱えになれたり、│と《・》│あ《・》│る《・》│大《・》│会《・》への出場権が獲得出来たりする。

 

 説明に納得するマユだった。

  それと同時にある疑問が湧き上がる。

 

「それで、どんな競技をやるの?」

「えっと、バトルとレース」

「色々」

 

 その説明では、スカスカである。なので、カナタが説明する。

 

「二人共。その説明だと、あまりにも大雑把過ぎるわよ」

 

 おこなわれる競技は六つ。

 

 

・出てくる大量の敵をいかに多く速く倒せるか――『殲滅戦線』

 

・目標物をどれだけのダメージを与えられるか――『大破壊』

 

・小さく大量の的をいかに正確に速く撃ち抜けるか――『クイック・シューティング』

 

・山有り谷有り罠有り妨害有りの――『ハイパーレース』

 

・どれだけ早く飛べるかを競う――『飛空』

 

・ほぼほぼ何でも有りのバトルロワイヤル――『バトル✕バトル✕バトル』

 

 

 そして、コレらに偶にルールが追加、改定されたりする。

 

 マユは納得と同時に、湧き上がる疑問を聞く。

 

「追加って?」

「禁忌術技や、心身に後遺症が残るモノの使用禁止、会場を消し飛ばす程火力過多なモノや、世界に影響与えるモノの使用禁止とか」

「……使った人いるの?」

「黎明期は凄かったらしいわよ」

 

 動画投稿サイトを見てみたら、と言うカナタ。

 

 実際、凄まじかったらしく、死傷者続出だった。しかも選手だけならまだ良いのだが、観客まで巻き込まれて、死傷する事態になっていたそうだ。

 ソレにルール追加をして、安全対策を万全におこない、皆が楽しめるモノになった。

 

 ネラがオウカに聞いてくる。

 

「│主人《サク》」

「ん?」

「貴方、出場?」

「どーだろうな?」

 

 首を捻るオウカ。それにカナタが断言する。

 

「出場すると思うわよ」

「そうですかね?」

「だって一人一種目しか出れないもの、優秀な生徒は出場でしょうし」

 

 一拍置いて続ける。

 

「それに、貴方は色々やらかしてるでしょう?」

「……その言い方はちょっと」

 

 事実ではあるが、言い方があるだろう。

 

「だから、本戦に出る可能性もあるわね」

 

 対校戦は一年生だけの新人戦と、学年無差別の本戦がある。一年生は基本、新人戦に出場なのだが、稀に優秀な生徒が、本戦に出場することがある。その場合は、新人戦には出れない。

 

 オウカはカナタの言葉にこう返す。

 

「まあ、いつも通りで行きます」

「いつも通り?」

「はい」

 

 一拍置いて続ける。

 

「成り行き任せ大作戦!」

 

 その場の全員ズッコケた。

 

 

 ******

 

 

 そして、放課後。噂をすれば影となった。

 帰宅部なので、荷物を纏めて帰ろうとするオウカ。そんな彼に声がかかった。

 

「サク君」

「ジンナ? どーした」

 

 実は彼女は、オウカから「サク」と呼ぶ許可を貰えた。

 

「時間貰える? 対校戦の事で、生徒会長が用事あるんだって」

 

 忙しいなら、明日でも良いらしいが、断る理由もないので、頷く。

 

「ああ、わかった」

 

 そういう訳で、生徒会室へ向かう二人(マユとネラ含めると四人)。

 

 てくてく歩く二人。そんな中、気になった事を、オウカは訊ねる。

 

「そういえば」

「?」

「何でジンナが呼びに来たんだ?」

「アレ? 言ってなかったっけ?」

 

 何の事かわからないので、オウカは首を傾げる。それにジンナは納得する。

 

「言ってなかったようだね。ボク、生徒会の手伝いを偶にしてるんだ」

「役職にはついていないの?」

「うん。友達が役員だから助っ人で」

「ふうん」

 

 納得するオウカ。そんなこんなで生徒会室に到着。

 ジンナがノックをして二人で入室する。

 

「「失礼します」」

 

 部屋の中は中々広い。中央に会議用の机と椅子があり、端にはパソコンなどの備品がある。

 そして、奥に一人の人物がいる。白髪に色素の薄いサングラスをした男。彼が二人の姿を見て軽く微笑む。

 

「ああ来てくれたね。忙しい所すまない」

「いえ、大丈夫です」

「そう言って貰えるとありがたい。適当にかけてくれ」

 

 お茶を淹れ始める彼を見た、オウカがジンナに訊ねる。

 

「この人が生徒会長?」

「ああ。カミキ=シンノスケ。通称“二ツ神” 」

「何、その凄い仰々しい通り名」

「名字と名前に神がついているから」

 

 漢字で書くと『神木神之輔』。だから“二ツ神”。

 そして、もう一つの理由。それは恐ろしく強いから。

 何と彼は《クロス》を二つ持つ<D(デュアル)クルセイダー>である。

 

 人工異能である《クロス》は、特殊なナノマシンを投与すれば手に入れる事が出来る。

 適合しないと死に至るが、今はパッチテストを事前におこない、八、九割以上の成功を見込め、誓約書(死亡しても責任を負うことはない等の内容が書かれている)を記入すれば誰でも手に入れられる。

 だが、それはあくまでも一回目に限る。

 

 元々、黎明期でパッチテストが無く、希望者全員に投与していた時でも、成功率は六、七割はあった。だが、二回目以降は成功率はガクンと下がり、半分以下になる。

 

 更に、二回目もガチャなので、どんな能力になるかはわからない。相性が悪いと、元からあった能力と潰し合い、前より弱体化と言う事例まである。

 

 だからこそ、二回目残る投与をする人は少ない。さらなるチカラを求める人か、超モノ好き、そして、遅かれ早かれ死ぬ人が、生命力を活性化させるためにやるかどうかである。

 因みにオウカはやろうとしていた。




【TIPS:D(デュアル)クルセイダー】
(#ー#)<二つの《クロス》を持つ<クルセイダー>。

(#ー#)<元々、《クロス》は眼に宿るチカラだから、理論上二つ持てる。だが……。

(・▽・)<適合率が低いんですね。

(#ー#)<ああ。一回目は六、七割の可能性で上手く行く。でも二回目は半分以下。

(#ー#)<そのうえ、能力はガチャだから、当たり外れがある。

(#ー#)<適合出来たとしても、弱体化なんて惨事もある。

(・▽・)<する人は少なそうですね。

(#ー#)<おう。でも、本編で述べた通り、ナノマシンを携帯しておいて、死に掛けた時に、生命力を活性させるために投与するという場合はある。

(㈩*㈩)<ねえ。ちょっといい?

(#ー#)<?

(㈩*㈩)<三度目以降ってどうなるの?

(#ー#)<無理だ。死ぬ。キャパオーバーって奴だ。

(㈩*㈩)<……抜け道ありそうだけど?

(#ー#)<今回はノーコメントで。

(・▽・)(㈩*㈩)<……(何かあるなコレ)。
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