冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

48 / 182
【コソコソ話】
(#ー#)<なあ、重傷って何があったんだ?

(・▽・)<ネタバレになるけど、簡単に言うなら――

(#ー#)<ら?

(・▽・)<「君の役目は終わった。死んでくれ」された。

(#ー#)<は!? ちょ、ちょっと待て!? 誰に!?

(・▽・)<誰かは言えない。完全ネタバレなので。

(㈩*㈩)<でも、鋭い人なら気づくと思う。

(㈩*㈩)<アレが色々あって、ああなって、サクを殺そうとした。

(・▽・)<……あの怪我、ディアンじゃなきゃ死んでましたよ?

(㈩*㈩)<サク、運はいいし、塞翁が馬してるから。

(#ー#)<運がいいだけで済まされないだろう……。


四十八

 ◇◆◇◆

 

 

 前半戦終了し、二日の休日となる。この間は、多少の打ち合わせや、軽い練習はしても良いが、それ以外はゆっくり休んでくれとなっている。

 なので、オウカは与えられた部屋でダラダラしていた。

 ベッドの上でゴロゴロしながら、考え事をしている。

 

(大会半分が終わって、結果はまずまず)

 

 新人戦では上位入賞者が多かったおかげで盛り返して来た。

 このままいけば、新人戦優勝どころか、総合優勝も見えて来たとの事。

 

「まあどうなるか……」

 

 思わず口に出してしまう。

 様々な経験をしてきた身としては、予定通り行くとは思えない。想定外のトラブルや、急に何かが起こる事だって有りうる。

 

(予定通りか……)

 

 ふと思ったオウカ。予定通りだったら、自分はどうなっていただろう?

 

(普通に考えて、今のチカラは持っていないな)

 

 《クロス》の蛇腹剣を振っていただろう。この大会には出ていないかもしれない。

 

(そして、《クロス》を奪われて、【オートクレール(アイツ)】と取引してあの世界へ行ったんだよな……)

 

 そこでも、本来手に入れるはずだったチカラは手に入らなかった。

 今のオウカはその代わりのチカラの残滓でやっているようなモノ。

 

「どうなっていたんだろうな……」

 

 オウカの呟き。

 それを聞いていた者が二人いた。

 

「何が?」

「何事?」

 

 マユとネラだった。

 なのでとりあえず、自分はどうなっていたのかを聞いてみると。

 二人は笑ってこう言った

 

「今と変わっていなかったと思う」

「同感」

「そうか?」

 

 首を捻るオウカに二人は続ける。

 

「うん。でもさ」

「?」

「そのおかげでわたしに会えたんだよ?」

「右同。切掛、御蔭、当機(わたし)、貴方、会事、出来」

「……」

 

 その言葉にオウカはなんとも形容しづらい顔をした。

 

 そして、オウカはこんな感じで二日間を休んだ。

 

 

 ******

 

 

 対校戦九日目。

 今日は『ハイパーレース』がおこなわれる。

 ルールは、複数人一組のチームで進み、チェックポイントを通過しながら、ゴールを目指す。学外実習でも使った方式を利用するので、言ってしまえば、ミニ学外実習である。

 ただし明確に違う点がある。一つ目が、幾つもの罠や障害物が仕掛けられている事、二つ目が、妨害工作がありという事。

 

「そういえば、学外実習はそういうのは無かったな」

 

 思い返したオウカ。それに答えるのはベニバナ。

 

「昔は有りだったらしいですわよ」

「昔って?」

「オウカは知ってますよね? <モンスター>の転移事件」

「うん。カナタから聞いた」

 

 知らない人のために簡単に言うなら、トロールの【ガラガラドン】が転移してきて、大惨事である。

 

「それより昔ですわ」

 

 つまりは数十年以上前だろう。

 

「でも、ある年はそのせいで誰もクリア出来なかったうえに……」

「うえに?」

 

 何でも傭兵を師に持つ人がいたらしく、エゲつない罠を作ったらしい。

 

「しかも、罠に引っかかった所を、 <モンスター>に襲われて殺されたり、食べられたりしたそうですわ……」

「そういうのあるよな……」

 

 これには遺族から大批判があった。実質殺されたようなものなのだから、当然ではある。                                                                                                                                                                                                                                                                                      

 

「だから、妨害工作は禁止となりましたわ」

「当然だな」

「ですが、<モンスター>を仕留める罠と言って色々する人もいて……」

「ルールは知っている人の味方だからな」

 

 法律しかり、校則しかり。

 

「いかにルールの穴を付くかだからな」

「……何かが盛大に間違っている気がしますわ」

 

 ベニバナがジト目でオウカを見て続ける。

 

「今ではそういうのは全面的に禁止になりましたですわ」

「だから、この間のアレまでは平和に出来たのかな?」

「……一応緘口令がしかれていますから、あまり言わない方がいいですわよ」

「はーい」

 

 そんなオウカを呆れた目で見るベニバナ。

 因みに。

 

「緘口令しかれているのに、ベニバナは知っているんだ」

「これでも生徒会副会長なので」

「……。そういえばそうだった」

「貴方、(わてくし)を何だと思ってますの?」

「……。ドラゴン大好きハイカラさん」

「失礼ですわ!?」

 

 こんな会話があり。

 

[間違ってはいない]

[確かに]

 

 オウカの相棒二人はこんな念話をした。

 

 

 ******

 

 

 そして、レースが始まる。

 開始のブザーと同時に、出発する各校の選手達。

 すると早速……

 

「ギャ!!」

「わ!?」

「いきなりかよ」

 

 巨大な落とし穴に纏めて落ちる選手達。

 

 観客席の人達は、それを映像越しに見ている。

 その中に、オウカとベニバナの姿もある。

 

「わからないのかな? 地面が僅かに違ったけど」

 

 オウカのコメントにベニバナがツッコミを入れる。

 

「難しいと思いますわよ? │私《わてくし》は目が良いからわかりましたけど」

 

 そういう専門の訓練を受けなきゃキツいと、ベニバナは語る。

 

「スドウ先輩とか、得意そう」

「そのはずですわ。あの人器用ですもの」

 

 実は彼、本戦のコレも出場選手候補になっていたらしい。

 

「まあ、最終的に『バトル✕三』になりましたけど」

 

 何でも、彼以外の候補がいなかった事と、点数の高さで選んだそうだ。

 実は、このレース、参加人数が多い代わり、一人当たりの点数が低いうえに、大変なので、やる側に人気がない。

 

「なるほど」

 

 会話をしながら、二人はレースを見守る。

 

 選手達は、罠に引っかかりながらも、どうにかゴールを目指していく。

 だが、罠は千差万別にあった。

 

 落とし穴、大きな網、鳥もちの海、括り縄、ゴムで出来たクローズラインなどなど。中には、乗り物系の《グレークロス》を使って進む人対策の、逃走車捕獲用の針トラップ、<モンスター>を足代わりにする人対策の、特殊な餌やモンスター避けまである。

 しかもこれらは上手くカモフラージュされているため、見つけにくい。

 なのだが、上手くやっている所もあった。

 

「あの高校は凄いな……」

「≪森峰≫は森にありますから」

 

 ≪鹿児島県立森峰高校≫は森の中にある。だから、授業でもそういう所でおこなう場合がある。

 だからこそ、この結果だった。

 そして、一位となった。

 

 因みに。

 

≪天ノ角高校≫(ウチ)は……三位か」

「まあ悪くはないですわ」

 

 そうコメントする二人だった。

 

 

 ■□■□

 

 

 そして、遂に新人戦最終日。

 この日におこなわれるのは『バトル×バトル×バトル』。

 対校戦の花にして、最大点数の種目。

 ルールは五人組の一チームで戦い、対戦校の全員を戦闘不能にする事。条件はVF値を削り取り零にするか、意識喪失させるかである。因みに、VFが張られる特殊なアクセサリーを全員装備するので、後遺症の残る怪我や、死亡する心配はない。

 

 試合前、待合室でジンナは精神統一していた。

 

(やれる事は全部やった)

 

 友人であるオウカや、姉であるザンカを筆頭に様々な人と模擬戦をした。

 <スキル>で何が出来るかを、改めて見つめ直した。

 そして、マユの助言で【エスペ・アヴァンチュルーズ】と会話をした。

 

(でも、やっぱり緊張する~)

 

 学外実習の時は、そこまで緊張しなかったのに。

 

「なんでだろう?」

 

 小声だが口に出してしまった。

 周りには聞かれずに済んだので、理由を考えてみる。

 あの時とは、状況や場合も違う。何より命が架かっていない。

 

(チーム戦のせい、かもしれない)

 

 あの時は、実質一人みたいなものだった。……協力してくれた二つの<冥刀>含めれば三人だが、今回はチームメイトがいる。

 

(チームワークが不安なのか、ボク)

 

 納得したジンナ。

 

(でもな……)

 

 同じ点もある。それは強敵と戦う点。

 オウカが仲良くしていた≪昴咲≫の生徒である、シンゲツ=バイカ。彼女は<冥刀>の使い手であるうえに、彼から教えて貰った、そのチカラはかなり厄介。

 加えて、学外実習の時は、ある程度有利な状況が働いていた。

 

(ああ、考えれば考える程、ドツボにはまる……)

 

 そう思ったジンナ。

 その時、ふと思い出す。それはオウカが言っていた言葉

 

『試合はさ、命が懸かっているいる訳じゃない。だから気楽に行け。死ぬ訳じゃないんだからさ』

 

 命を幾度も賭けて、懸けて来たオウカだからこそ言える言葉だった。

 

(それもそうだ。負けても死ぬわけじゃない。だったら肩の力を抜いて気楽に行こう)

 

 ジンナの心が安定してきた。

 すると、両手首の腕輪――待機形態の【エスペ・アヴァンチュルーズ】が震える。その通りだと言うように。

 

[キミもそう言うのか。わかった。ありがとう]

 

 その言葉に、愛刀は一瞬で大振りサバイバルナイフ二本に姿を変えた。

 

「まだ早いよ」

 

 苦笑してそう言ったジンナに、【エスペ・アヴァンチュルーズ】は腕輪に戻った。

 

 

 ******

 

 

 選手達が所定の位置に付く。そして、試合のブザーが鳴る。

 全員が動き出す中、大きく動いたのは二人の選手。

 

 ジンナは待機形態の腕輪を、二振りの大振りサバイバルナイフに変える。

 バイカは佩刀した刀を抜刀して、空に掲げる。

 

「「刃金の誓い(刃金、誓い)今此処に(今、此処に)!」」

 

 それは、この新人戦の『バトル×三』では、二人しかいない<デュナミスト>が切り札を抜錨する合図。

 

「蛮人は彷徨する。その果てに待つのは非業の死」

 

 

 それは詠唱。

 

「善因善果、悪因悪果、陰陽太極、白銀漆黒」

 

 

 ジンナは唱える。

 

「天、地、海。走り、奔り、疾り、駆け抜けろ」

 

 

 それは祝詞。

 

「刀、抜き、いざ、進め。背、跨る者、敵は無し」

 

 

 バイカは謳う。

 

「「光へ堕ちろ(光、堕ちろ)闇を照らせ(闇、照らせ)」」

 

 

 奇しくも二人の言葉が重なった。

 

剣轟抜錨(デュナミス)――《光と闇の境界線、陰陽剣(インヨウ・エスペ・アヴァンチュルーズ)》!」

 

 

 二振りのナイフが咆哮を上げた。

 

剣轟抜錨(デュナミス)――《踢雪烏騅・武黎威怒(テキセツウスイ・オーバギュ)》」

 

 

 魔法陣より、竜の頭を持つ巨大な馬が現れて嘶いた。

 

 そんな二人にチームメイトはと言えば。

 

「え!? もう使うの?」

「早くない?」

 

 そういう反応となる。

 だが、二人の答えは、

 

「ボクの【エスペ】はスロースタートだからね。これで良いのさ」

「一気、決める。問題ない」

 

 こうだった。

 

 そうして二人のデュナミストは動く。

 

 ジンナは、自身が前に出て戦い、強化を高めていく。前までは戦わないと強化が解除されてしまったが、今は違う。

 

「よいしょっと」

 

 ナイフを柄でくっつけて双刃刀にする。こうすると、強化が維持できる。

 双剣と双刃刀を使い分け、強化を累積していくジンナ。

 

 バイカは、呼び出した機械馬と別行動を取る。チームメイト達共別なので、実質一人になってしまう。だが。

 

「ギャ!?」

「グワッ」

 

 全く問題になっておらず、敵を蹴散らしていく。

 

「……手応え、なし」

 

 太刀を振るう度、脱落者が出る。

 

 更に、機械馬も大暴れする。足で蹴飛ばし、口から火炎を放ち、体からミサイルを放つ。

 

「こ、こんなのどうす……ギャー!?」

「勝てる訳がない……イヤー!」

 

 こうしてドンドンと脱落者が出て行く。

 因みに、VF値が零になって時点で、転移する仕組みになっているので安全。

 

 そうして、森のステージだった競技場は焼け野原になり、二人の<デュナミスト>以外いなくなった。




【コソコソ話】
(㈩*㈩)<サクは、この二日間はのんびりしてた。

(・▽・)<誰かと話したりとかはしてなかったのですか?

(㈩*㈩)<多少はね。でも皆休みたかったから。

(#ー#)<そういうのあるよな。


【TIPS:オーバギュ】
(㈩*㈩)<六徳の第二世代の<冥刀>。

(㈩*㈩)<竜頭の馬を呼び出す。武装は火炎放射とミサイル。

(#ー#)<完全に対軍勢を想定していないか?

(㈩*㈩)<そうだよ。第二世代は仮想敵として軍勢を想定しているから。

(㈩*㈩)<火力を高い兵器を詰んでいる。

(・▽・)<単純に機械馬暴れるだけで大惨事ですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。